羽化の作法[74]現在編 13月世とガブリエルガブリエラ
── 武 盾一郎 ──

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こんにちは。武盾一郎です。近況報告です。

12月3日まで代官山アートラッシュ『カオスな夜展』に、ユニット「ガブリエルガブリエラ」と、ポオ エ ヤヨ・武 盾一郎のソロ作品を展示しております。お時間のある方はぜひお立ち寄りください!

第七回展覧会『金色野原の小さな精霊たち』(ガブリエルガブリエラブログ)
https://gabrielgabriela-jp.blogspot.com/2018/10/blog-post.html


アートラッシュ https://twitter.com/artsrush

ポオ エ ヤヨ https://twitter.com/Poelett

ガブリエルガブリエラ https://twitter.com/G_G_jp






●13月世について

「ガブリエルガブリエラ」で表現しているのは「13月世の物語」です。「13月世」とは「この世(12月世)」と織りなして存在する、もうひとつの世界です。

物質や肉体がある物理的なこの現実世界に対して、言ってみれば魂や霊や精神や心の世界です。

ひとことで言うと「ファンタジー」になります。ファンタジーとは現実逃避のための虚構と捉えてる人もいるでしょうが、「嘘のような本当のこと」かも知れないと思っています。

それはどういうことかと言うと、この現実世界は物理法則に支配されていますよね。その法則を使ってどんなに頑張って解き明かそうとしても、今のところどうにもならない「意識」の問題があるからです。

脳科学がどんなに進歩しても、「ではなぜその脳から意識が発生するのか?」ということについてはまるで分かってないようなのです。

とは言うものの、科学は意識の謎を前に手をこまねいているわけではなく、様々な研究がなされてるようです。その中で現在最も注目されているのが「意識の統合情報理論」というものです。

「特定の公理から出発して、情報の統合の度合いを表すΦという数値を導き、その値が高ければ意識が生じると考える」理論だそうです。現在これでサルの意識が確認できた、とのことです。

『サルの意識は確認できた、統合情報理論で存在を証明』
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/092800138/00003/


ただ、この理論に基づいて意識を持つ機械を作ったとしても、「本当に意識が宿ってるかは外から見ても分からないではないですか!」と言うツッコミは否めません。

そこで、『脳の意識 機械の意識』の著者、渡辺正峰氏は、脳を半球に分けて片方を機械と繋げば機械に意識をアップロードできると主張してます。

第21回AI美芸研(2/4)渡辺正峰公演「意識の脳科学ー人工意識による仮説検証から意識のアップロードへ -」


このプロジェクトは、20年後に開始されるようです。

人工意識研究は「なぜ意識が生じるのか?」ではなく「意識があることにする」という自然則としてのアプローチで、謎に迫っていくようです。

意識が自然則になると、「なぜ意識があるの?」という問いは除外されますよね。「なんで運動量は保存されるの?」とか「なぜ光速は不変なの?」とか「なぜ重力があるの?」とか、問いても無駄なことで科学は支えられています。

それに「意識」を加えようとしているのです。それは物凄く革命的なことでしょう。

ただ、この方法で意識の謎が解明されていったとしても、意識の世界が掌握されたような気はせず、むしろ神秘として温存されたようにも思えてくるのです。

例えるなら、月にうさぎがいないことが科学的に分かっても、夜空に月を見つければ相変わらず神秘的な霊的な気分になるような。

科学技術が強大な力で前進していく社会に私たちは生きていきますが、その事とは別の次元で、私たちは心を豊かにさせる遊びや戯れがもっと必要になってくると思います。それには、神秘や霊性を感じることがとても重要だと私は信じています。

ただ、ちょっと心配なのは、現実と神秘が分離してしまうことです。

私たちは月にはかぐや姫もうさぎもいないことは知っていながら、お月様の神秘を愛でています。現実は現実、神秘は神秘、と。もちろん別けて把握することは悪くはないのですが、実はそれは繋がっている、ことを感じているって大切な気がするのです。

神秘や霊は特別な場所にあるわけでもありません。今ここに、あなたのいる現実の時空に織り込まれて、あるのです。

ひょっとしたら、神秘を感じる霊的な世界が「元」で、この現実世界はその射影なのではないか? とすら思うのです。科学が示す事実と神秘は本当は映し鏡のような双子なのかも知れない、と。

それは信仰のようなものなのか、または単なる妄想かも知れません。しかし、ひょっとしたら真理に近いのかも分かりません。

科学が意識の謎を解き明かしてくれるのを期待してはいるのですが、現在の科学はメカニズムを解明して力(force)を手に入れる一辺倒という感じもしなくもないのです。私が知りたい意識のこととはベクトルが違う感じがして、結局、私が知りたいことは謎のままのような気もしてきます。

だからこそ芸術があるのでしょう。その神秘の世界を「13月世」と名付けて物語を綴るのがガブリエルガブリエラの仕事なのです。

「ファンタジーとは嘘のような本当のこと」そんな気持ちで制作していますので、ぜひとも作品を観て頂いて、もしお気に召されたなら、お求め下さるとと幸いです。

●13月世大使館

「13月世」の話の続きなのですが、今年から自宅のアトリエとして使っていた小屋部分を「13月世大使館」という名前のプライベート・ギャラリーにして、ガブリエルガブリエラの二人で運営しよう、ということで工事を始めました。

いろいろあって工事が中断し、未だに工事中なのですが、ようやく外壁までの工事着工の目処が立ちました。本日11月27日、デジクリが届く頃には、これからの工事をやってくれる新たな大工さんとの、打ち合わせを終えてるところでしょう。

工期が長引いてしまったので、部屋と外壁で取り敢えずの完成とし、外庭と屋根は後でやることにしました。大工さんの工事の後に、パテ埋めなどの補修を、デジクリで長いことチャット・レビューをやり続けてきたヤマネ氏に頼もうと思ってます。

彼は今補修の仕事をしてまして、次期社長になるかも知れないという出世ぶりなのです。忙しそうなので実現するかは分かりませんが、もしヤマネにやってもらえたとしたら本当に嬉しい限りです。

その後、ペンキ塗りと居間の床はりは自分たちでやります。ペンキは白塗り、居間と台所の床はモノトーン市松模様にしようと考えてます。そして家具や室内装飾を設置したら完成です。

なんとか来年2019年の2月までに完成させたいです。そして、運営を始めて、しばらくしてから庭や屋根を綺麗に工事できたらと考えております。

ギャラリーから居間を見る
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213823167955678&set=pcb.10213823169275711&type=3&theater


居間からギャラリーを見る
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213823168235685&set=pcb.10213823169275711&type=3&theater


ギャラリーメインの壁
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213823168515692&set=pcb.10213823169275711&type=3&theater


ギャラリー入口側
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213823168755698&set=pcb.10213823169275711&type=3&theater


外観
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213823169035705&set=pcb.10213823169275711&type=3&theater


運営ですが、最初は予約制にして月に二日くらいオープンする予定です。依頼の仕事の打ち合わせ場所としても活用します。そして、ゆくゆくは撮影などに貸し出すことも出来たらいいなあと思っております。

これで、活動拠点が出来上がります。ようやくアーティストとして社会に一歩を踏み出せる気持ちです。

●ガブリエルガブリエラ発足までの道のり

95年に新宿西口地下道段ボールハウスに絵を描くことから自称芸術家を始め、10年以上に渡り、アクティヴィストとアーティストの両方を兼ね備えたような活動をしていました。

2009年の個展『Real FanASIA』からは「作品を描いて売る」という、社会の中にちゃんと入れてるアーティストとして生きて行こうと決めました。

しかし、その後、売れることなく、2011〜2012年は稼ぎがほとんどありませんでした。それなら近所の雑草を毟って食べればいいじゃないか、と早朝に散歩しながら雑草を探して食べたりしていました。

作品の売上と依頼の仕事だけで生きて行きたかったので、お勤めに就くことを拒んできたのですが、依頼も売上も全くありません。雑草をむしりながら、労働している人たちを見ると、ものすごく悲しく落ち込んでしまうのでした。

段ボールハウスに描いていた当時は、社会から外れている自分が痛快でもあったのですが、この頃ではすっかり惨めな気持ちになってしまうのでした。

これではさすがにまずいと思い、ハローワークに通いました。すぐに仕事が見つかると思いきや、絵を描きながら働けるような短時間労働はみな女性向けで、なかなか見つかりませんでした。

2012年の春先から職を探し続け、見つかったのは10月過ぎでした。仕事は牛乳配達でした。最初は社有車を借りて配達し、月収三万円でした。一年間それで働きました。

一年後に中古車を買いました。車種は「スバル」の「サンバー・ディアス・クラシック」95年車です。自分の車を持ち込むと配達の収入は大分増えます。


この車はとても可愛くて今でも気に入って乗ってるのですが、軽ワゴン車を探してる時に、ポオ エ ヤヨさんがネットで見つけてくれたのです。

ポオ エ ヤヨさんとは、僕が雑草を食べて暮らしてる2012年に初めて会いました。前年、同じ市内に住んでいる画家をツイッターで探してたらた、またま見つけてフォローしていたのでした。

「お互いに作品を見せ合いっこしませんか?」と声をかけてみたのです。

私の家で作品を見せ合いました。私は大きいサイズの線画、ヤヨさんは小さいサイズの細密水彩画。小学生の頃に描いた漫画を見せ合うような、中学生の時に好きなミュージシャンのアルバムを聴かせ合うような、ドキドキがよみがえります。

そして、その時、何の気なしに私の線画の前にヤヨさんの絵を重ねて置いてみたのです。すると、不思議。なぜかすごくしっくり来たのです。二人ともこれにはすっかり驚いたのでした。

当時のヤヨさんは国際幻想芸術協会・IFAA(アイファ)にも所属しておらず、絵を発表する展示のあてもありませんでした。そして「パニックなるので電車に乗れない」と言っていました。

私も2011年の震災後から、混んでる電車に乗ると怖くなってしまう状態に悩んでいたので、そんなところでも意気投合しました。展示のあてもない、作品を売るあてもない、電車に乗ることもままならない二人でした。

「まずは電車に乗れるようになることからだよね。電車で東京に行って帰って来よう」

今思えば、これが二人の共同作業・コラボレーションの始まりでした。

それから二年後の2014年、二人はアートユニット「ガブリエルガブリエラ」を立ち上げます。一つの絵の中で二人がコラボレーションする、段ボールハウス絵画の画法で「13月世の物語」を紡ぎ始めたのでした。

ガブリエルガブリエラが「13月世」というファンタジーを作り、そこに幸せそうな精霊たちを描いているのには理由があります。

この現実世界(12月世)でうまく立ち回れずに苦しみ、悪態をつく人も、内には心の美しさを隠し秘めているもの。そんな心を描いているのです。なので、どんな状況も、とびっきりに美しく描くのが私たちの使命なのです。

「13月世の物語」に触れた時に、秘めたるあなたの美しさに気が付き、そしてまた現実世界で元気に生きて行けますように。

痛手を負った後の人生、失敗してしまった後の人生、大病を患ってしまった後の人生、もうそんなに若くはないから、手遅れだから、と諦めてしまわないよう、そんな再生への祈り。

そういったちょっとツラく重暗い感じのことが根っこにはあるのですが、それらを乗り越えて陽気にハッピーにいきましょう! というのがガブリエルガブリエラなのです。

今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。(つづく)


【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/年内にもう一つ大きなラッキーが欲しい】

◎代官山アートラッシュ【カオスな夜展】11/14〜12/3
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