3Dプリンター奮闘記[113]光造形の3Dプリンターの近況
── 織田隆治 ──

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もう12月ですよ!

なんか、年を取るにつれて、時間が経つのが早くなっているような気がします。ちょっと前まで、暑いなぁ……って言ってたんですけどねぇ……。

街に出ると、クリスマスソングが聞こえるようになってしまいました。

特に最近、お仕事の量がハンパなく、余計に時間が早く感じるのかもしれません。このコラムの記事を書く時間もなかなか取れず、今回は短めですみません。

さて、話は本題に移しましょう……。

11月25日に、僕が主催する「シゴトバLAB 3Dプリントコンテスト03」の表彰式/懇親展示会を、無事終えることができました。

https://shigotoba-base.com/event/1027/






今回で三回目になるんですが、毎回出品される作品のレベルが上がってきています。

基本的に、3Dプリントするための3Dデータと企画書(PDF)にてご応募、審査が行われるのですが、最近はすでにご自分でお持ちの3Dプリンターで出力され、その写真を企画書に添付される方も増えてきました。

3Dプリンターの普及も、かなり進んできたのかもしれませんね。

教育機関等でも、3Dプリンターを導入するところが増えてきているのは、僕なりに実感するところですし、若い学生さんが使用できる環境が整ってきているように思います。

工業系、技術系、芸術系の学校では、かなり普及してきているのではないでしょうか。

実際、コンテストに応募される方でみると、学生さんの出品がかなり増えてきています。学校単位で応募していただくことも増えてきました。

これは、本当に喜ばしいことですが、僕の印象では、まだまだ少ない気がしています。

これだけ安価で安定した3Dプリンターが登場してきているのですし、もっと教育機関にてどんどん導入し、「使える人」を育てて行く必要があるんではない
でしょうか?

みなさん! もっともっと、こういったコンテスト等に応募してね〜!

近年、安価で安定した3Dプリンターも色々出てくるようになりました。FDM(熱でフィラメント状の樹脂を溶かし、押し出して成型する3Dプリンター)はかなり熟成されてきた感じがします。

ほんの三〜四年前から考えると、嘘のような進歩ですね。

他にも、光造形の3Dプリンターも昨年から今年にかけて、安価な3Dプリンターが沢山出て来るようになりました。

これは、この掲載にも何度か書いていますが、特許からみの縛りが減って来ているからでしょうね。

基本的には、レーザー方式(レーザー照射で硬化させる)、プロジェクタ方式(プロジェクターからの光で断面を投影)する3Dプリンターがメインでしたが、最近ではパネル方式(液晶パネルを搭載し、断面を液晶に表示して硬化させる)も色々出てくるようになりました。

レーザー方式やプロジェクタ方式などの光造形の3Dプリンターは、基本的に一点から放たれた光源を投影する方法ですが、このSLA方式は液晶パネルに直接投影します。

一点から放射される光は、当然、広がるにつれて光が当たる角度が変わってきてしまいます。ですから、照射面が大きくなるにつれ、端に当たる光は硬化面に対して垂直ではなくなります。

この微妙な光の当たり具合が、少なからず造形に影響してきますね。液晶パネル方式の光造形3Dプリンターは、直接断面を液晶パネルに表示されるので、常に硬化面に対して最適な角度で光が当たります。

ですから、大きい面で出力する場合には、この液晶パネル方式の光造形3Dプリンターでは、均一に光が造形面に照射されるので、光の拡散によるブレが少ないと言えます。

最近では、かなり解像度が高く、安価な液晶パネルも出て来ているので、今後の発展に期待するところです。

しかし、良い点ばかりではありません。問題点を上げるとすれば、液晶パネルの輝度と寿命です。

特に、安価な光造形3Dプリンターの液晶パネル式タイプでは、この問題が顕著に現れて来ます。

光造形の3Dプリンターは、光に当たると硬化する液体に、それぞれの方式で光を当てて硬化させます。その輝度が高ければ高いほど、照射する時間を短くすることが可能です。

レーザーであればそのパワー、プロジェクターも輝度により硬化時間がかなり変わってきます。液晶パネルを使うSLA方式の3Dプリンターも同じです。

輝度を上げることで解決出来るとは思うのですが、レーザーやプロジェクターより、液晶パネルの輝度と寿命には、今のところまだまだ前記の方式には至らない事が上げられます。

液晶パネル方式の3Dプリンターを導入する場合、この液晶パネルの寿命について、特に注意する必要があります。

今現在、安価な液晶パネル方式の3Dプリンターの液晶パネルの寿命は、かなり短いものは多いです。ということは、頻繁にこのキモ部分を交換しないといけないということですね。

液晶パネル方式の3Dプリンターで一番高価な部分とも言えるので、ランニングコスト、手間を考えると、今のところでは、まだまだ良い状態ではないような気がします。

光造形の3Dプリンターでは、『どうやってどれくらいの光を素材に当てて硬化させるか?』ということがキモになっています。

当然、光の輝度が高いほど、樹脂は早く固まります。一面にかかる時間も少なくなりますね。

プロジェクター式や液晶パネル式の、光造形の3DPプリンターの最大の特徴は、積層ピッチ一面にかかる時間が短い、ということです。

レーザー方式の場合は、実際にガルバノミラーでレーザー光線を拡散して照射するので、一面の面積が多いとそれだけ時間がかかります。

例えば、積層ピッチが0.05mmとすると、1mm厚の造形をする場合に20枚のレイヤに別れます。この、一面にかかる高価速度の違いは、造形時間に大幅に影響してきます。

例えば、プロジェクター方式の光造形の場合、一面にかかる時間は、この『輝度』によって大幅に変わります。

輝度の高いプロジェクターの場合は2〜3秒。輝度の低いプロジェクターの場合は10〜15秒。

とすると、1mmの高さを積層するのに、
輝度の高いプロジェクターの場合は40秒〜60秒ほど。
輝度の低いプロジェクターの場合は200秒〜300秒ほど。

こう見ると、断然、光りの強さが造形スピードに直接関わって来ることが分かりますね。

少ない光量で固まる樹脂も最近は研究、開発されてきていますが、この造形スピードの『速度差』ということでは、光のパワーが断然影響することも考えて選んで行くべきだと思います。

今後の発展には期待大ですね。

さて、年末に向けてちょっと仕事追い込みますよ!

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織田 隆治 
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