[4700] 愛媛のびやびやかつおと高知のぐびってるかつお

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《『KH Coderによる計量テキスト分析セミナー』聴講レポート》

■ Otaku ワールドへようこそ![294]
 愛媛のびやびやかつおと高知のぐびってるかつお
 GrowHair




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■ Otaku ワールドへようこそ![294]
愛媛のびやびやかつおと高知のぐびってるかつお

GrowHair
http://bn.dgcr.com/archives/20181214110100.html
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「びやびやかつお」って何だろう。ふつうのかつおと、どこが違うのだろう。単に新鮮であることを示すだけの、愛媛県の方言だろうか。

2009年6月13日(土)、宇和島や御荘(みしょう)であちこちのお店が「びやびやかつお」を出すことを掲げているのを目にしたが、それが何なのか判明しないまま帰ってきた。高知出身の同僚に聞いてみたら、そんな表現は聞いたことがないという。

2018年12月8日(土)、高知駅近くにある居酒屋「土佐」でふと思い出して聞いてみると、やはり知っている人が店に一人もいなかった。しかし、一人がググってくれたおかげでやっと謎が解けた。高知では「ぐび」というのだそうで。

まだ死後硬直していないかつお。新鮮すぎて、魚の生臭さがまったくしないのだという。

●高知に至るつながり連鎖

高知に用事ができたのは、不思議なご縁の長い長い連鎖をたどった末のことである。高知行きを決めるまでのことは、すでに書いている。

『利他性、前向き、頭いい ─ その業界で成功する三条件か』
http://bn.dgcr.com/archives/20181019110100.html

一文でざっと振り返ると、5年前、もみのこゆきとさんに会いに鹿児島に行ったときに連れていってもらったお店で出している鶏もも焼きが気に入って、近所の鹿児島郷土料理のお店によく行くようになったが、そのお店がたまたま噺家の三遊亭とむ氏の行きつけであることから、とむ氏の独演会を見にいくことになり(息継ぎ)

休憩時間にロビーで、一緒に写真を撮らせてくださいと声をかけてきた着物姿の写真家・夏野苺さんとお友達になり、苺さんが文章教室を通じて知り合ったあかねさんのことが、後日の飲み会の席で話題になり、前日に苺さんと会ったあかねさんが私と会いたがっているそうで、そう言っている端からfacebookであかねさんから友達申請が来て(息継ぎ)

翌々日の10月14日(日)、「M性感 Mirage」というお店のデリヘル嬢として働くあかねさんに会いに静岡へ行き、濃厚なサービスを受け、静岡駅に戻る途上、お客さんの中に私と話が合いそうな人がいるから、今度紹介すると言ってくれた、その人が素人童貞(あるいは素童)氏であった。

素人童貞氏との顔合わせは11月4日(日)に実現した。

●『和菜美会議』議事録

名称;和菜美会議
日時:2018年11月4日(日)4:00pm〜6:00pm
場所:東京駅八重洲口「個室と和食 和菜美‐wasabi‐八重洲店」
参加者:あかねさん (静岡M性感 Mirage / セミナー講師) 25歳素人童貞 a.k.a 素童氏 小林秀章(記)

【参加者プロフィール】

(1)あかねさん
https://twitter.com/mirage_akane

現役風俗嬢。静岡 M性感Mirage所属。
http://netsi.org/
セミナー講師

(2)25歳素人童貞 a.k.a 素童氏
https://twitter.com/sirotodotei

風俗エッセイスト。現在は26歳素人童貞。著書に下記のものがある。
素童『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』ぶんか社(2018/11/10)

テレビ朝日『タモリ倶楽部』2018年1月12日(金)放送回に出演。テキスト分析ソフトKH Coderを用いて、デリヘル店のウェブサイトに掲載された風俗嬢の「お店からの紹介文」を分析した研究結果が紹介される。
http://halohalo-online.blog.jp/archives/1069613210.html

【背景】

2018年10月14日(日)、静岡であかねさんに会った際、静岡駅に戻る道すがら、お客さんの中に、私と話が合いそうな人がいるから、今度、紹介する、と言ってくれた。それが素人童貞氏。

素人童貞氏はブログを持っている。
http://shirotodotei.hatenablog.com/

2018年1月1日(月)には、2017年を振り返る記事を上げ、「一番すげーって思ったのは、静岡のM性感ミラージュのあかね先生だった」と書いている。私は彼と兄弟になったというわけだ。いや、ケツの穴をいろいろされた仲だから、姉妹か。
http://shirotodotei.hatenablog.com/entry/2018/01/01/022605

素人童貞氏は、デリヘル嬢の「お店からの紹介文」を統計解析することによって、書き手の本音が読み取れるようになるという研究を2017年8月19日(土)と 9月2日(土)のブログに上げている。
http://shirotodotei.hatenablog.com/entry/2017/08/19/175613
http://shirotodotei.hatenablog.com/entry/2017/09/02/205538

お店としては、紹介文で嬢をほめるに決まっている。しかし、本気でいいと思っているか、特にいいところがないけどお座なりにほめているだけなのかは、単語のチョイスに現れてしまうのだという。

各店舗のランキング第1〜3位の嬢の紹介文に現れる最頻出単語は「お客様」であるが、ランキング圏外の嬢の紹介文では、出現頻度順 第10位までの単語の中に入ってきていない。

逆に、圏外の嬢の紹介文で出現頻度第2位の単語は「清楚」であり、ランキング第1〜3位の嬢の紹介文の頻度順第10位までの単語の中に入ってきていない。「清楚」は響きのいい言葉ではあるけれど、使われすぎてインフレを起こし、言葉として死んでいるのだという。

この2語を伏せてクイズにして出題してみたところ、風俗業界で働く人たちであっても、ごくごくわずかの人しか正解できなかったことから、完全に無意識のうちにそうなっているのだという。

この内容は、前述の著書にも記述されている。

お店からの嬢の紹介文を分析する際に使用している、テキスト分析ソフトウェアKH Coderについて私はこのブログで初めて知り、興味を持った。開発したのは、樋口耕一氏(立命館大学産業社会学部准教授)。

12月8日(土)に高知大学で樋口氏の計量テキスト分析セミナーが開催されることを知り、静岡の翌日、10月15日(月)に参加申し込みした。

あかねさんが東京に来る用事のできた機会に、3人で会うことになって、今回の会が実現した。

【目的】

あかねさんの紹介により、素人童貞氏と顔合わせし、主として統計解析についてお話を伺う。

【内容】

素人童貞氏の著書は発売前だったが、一冊ご献本いただいた。

4:30pm〜5:00pm ツイキャスにてライブ配信。お二人は顔出しNGとのことで、私しか写っていない。
https://twitcasting.tv/mirage_akane/movie/504479560

素人童貞氏は特に統計学が得意というわけでもなかったが、お金をかけずに、手間暇はたっぷりかけて何か面白いことに取り組みたいと思い立ち、風俗嬢紹介テキストの分析をテーマに選んだとのこと。

KH Coderについては、2017年7月28日(金)に掲載された「Daily Portal Z」の記事で知ったという。その記事では、いわゆる「マンションポエム」を分析するのに、このソフトウェアを使っている。
https://dailyportalz.jp/kiji/170728200270

素人童貞氏は学生時代、哲学を専攻していた。哲学は一般的なことを論じる学問なので、何にでも適用することが可能であるが、風俗に適用した事例はあまり多くなさそうなので、自分が取り組んでみたとのこと。

【所感】

素人童貞氏は哲学の基礎知識に裏打ちされた、深い思索がご自身の中で回っていて、書く文章が抜群に冴えている。それでありながら、実生活では決してしゃしゃり出ようとすることがなく、地味に生きることを指向する姿勢を伺い知ることができた。

自分の存在が、他人の中で認識されることでさえ好まず、コンビニで「いつもありがとうございます」と言われただけで、もうそのお店には行けなくなってしまうのだそうだ。

奇矯な身なりで出歩いたために、ネットで知れ渡ってしまった私とは、かなり対称的な性格で、正直、理解しがたい部分もあるが、たいへん好ましい人柄だと感じられた。

楽しい会であった。この不思議なご縁の連鎖は、まだまだ続いていくのであろうか。

●『KH Coderによる計量テキスト分析セミナー』聴講レポート

名称:KH Coderを利用した計量テキスト分析セミナー
日時:2018年12月8日(土)1:00pm〜5:00pm(0:15pm 受付開始)
場所:高知大学メディアの森 6階「メディアホール」
講師:樋口耕一氏(立命館大学産業社会部准教授)
主催:高知大学教育学部英語教育研究室

セミナー概要:アンケートなどの自由記述やインタビュー記録といったテキストデータをどう分析したらいいのだろうと悩まれている方も多いのではないでしょうか。本セミナーでは、計量テキスト分析の理論的実践的な理解を深めることを目的とし、樋口氏が開発したKH Coderを使いながら、どのようにデータを準備・整形すれば良いのか、より良い結果を得るためにはどんなテクニックが必要なのか、どうすれば意義ある発見を導きやすいのかなどをわかりやすく解説していただきます。
定員:100名
入場料:無料
聴講者:小林秀章(記)

【タイムテーブル】

13:10 〜 14:30 計量テキスト分析の考え方とKH Coder
        漱石の『こころ』を事例に(80分)
14:30 〜 14:40 休憩(10分)
14:40 〜 15:40 アンケート自由記述の分析
        研究事例と利点・注意点 (60分)
15:40 〜 15:50 休憩(10分)
15:50 〜 16:20 成功した分析事例に学ぶ活用法
        貢献の可能性と、上手く使う方策(30分)
16:20 〜 17:00 質疑応答(40分)

【ケバヤシが聴講する狙い】

10月14日(日)、ひょんな巡り合わせから、KH Coder の存在を知った。KH Coderは、形態素解析と統計処理の合わせ技でテキストデータを分析して、潜在していた情報を掘り出すソフトウェアツールである。

KH Coder を活用してテキストを分析した事例として、いわゆる「マンションポエム」を対象としたものがネットの記事に上がっている。

2017年7月28日
Daily Portal Z
マンションポエム徹底分析!
大山顕
https://dailyportalz.jp/kiji/170728200270

マンションポエム1,148件を分析して、「物件そのものよりも『街』にフォーカスして、その機能を資源のように消費できることを謳う傾向」、「東京における関西高級住宅街は台東区、大阪における東京郊外は豊中市と千里線沿線」、「首都圏には『歴史』がなく、関西には『緑』がない」などの分析結果を提示している。

意外性+納得性が統計の真骨頂だと私は考えている。膨大なデータを人手で眺め渡すには根気が要るし、ある程度以上大きくなれば、そもそも眺め渡す作業自体が現実的ではなくなってくる。がんばって分析しても、潜在する情報に気づくのが難しくて、なかなか掘り出せないことがある。また、分析者の主観によるバイアスが入ってきやすいという問題もある。

統計的な手法を用いて機械的に分析して提示してきた結果が、人にとって意外性があり、しかし、よくよく吟味してみれば、なるほどと腑に落ちるとき、統計が本領を発揮したという感じがする。

マンションポエム以外にも、好事例がいくつかあるようだ。「KH Coderは学術分野でも広く利用されており、2,000件を超える研究発表で活用されている」とある。

自分もまた、形態素解析と数理的解析のコンビネーションで、大量のデータから有益な情報が引き出せないかと目をつけていたところだったので、非常に近いところを攻めている研究事例として興味をもった。

翌日、15日(月)、KH Coderの開発者である樋口耕一氏による今回の講演のことを知り、即座に参加申し込みするとともに、著書をhontoで注文した。

樋口耕一
『社会調査のための計量テキスト分析 内容分析の継承と発展を目指して』
ナカニシヤ出版(2014/3/1)

迷わず申し込んだのは正解だった。10月29日(月)、主催する多良氏からメールが届き、その日に定員の100名に達したので、申し込みサイトを閉鎖したとのこと。

「北は北海道から南は九州まで、そして様々な職業の方がお集まりになります」。

【概要】

用意された100席がほぼ埋まっていた。ほぼ全員がPCを持参。

4時間にわたるセミナーだったが、構成がよく練られており、樋口氏の解説は、よくありがちな懐疑論やつまづきポイントを先取りして、広く目配りを効かせて分かりやすかったので、まったくたるむことなく、張りのある空気が続いた。

各自が持参したPC上でKH Coderを走らせての分析体験は、指示されたとおりに操作するだけで、適切な分析方法を受講者が主体的に工夫する形ではなかったが、私のように、初めて操作する者にとってはそれぐらいでもけっこう大変で、機能や操作を実践的に覚えるのにたいへん役立った。

質疑応答時間が40分と長めに取られていて、実際には講演が伸びて30分に縮まったが、時間いっぱいいっぱいまで活発に質問が出た。

【ケバヤシの動き】

前日、12月7日(金)の夜にソフトウェアをダウンロードして、持ち運び用のノートパソコンにインストールした。ファイルがでかくて、ダウンロードに時間がかかり、あせる。

8日(土)羽田空港から高知へ。
9:30 羽田(NHD)- 11:00 高知竜馬(KCZ)JAL493便。座席番号29K

バスではりまや橋へ。喫茶店で昼食。12:17はりまや橋発のとさでん伊野線伊野行を目前で逃し、タクシーで高知大学へ。乗り逃がした電車をほどなく追い越す。0:40pmごろ到着。

高知大学の「メディアホール」は立派だった。椅子は机と一体化して畳まれており、引き出して座る。各席にはコンセントが備わっている。また、隣り合う二人の間に一本ずつマイクが生えていて、ボタンを押してしゃべると登壇者と同じようにスピーカーから声が出るようになっている。

路面電車ではりまや橋へ。

17:17 朝倉 - 17:42 はりまや橋、とさでん伊野線文珠通行。

徒歩で高知駅へ。「コンフォートホテル高知」にチェックイン。「居酒屋土佐」へ。

12月9日(日)、ホテルで朝食。チェックアウトして、徒歩で高知駅へ。

10:13 高知(始発)- 12:40 岡山 特急南風10号 岡山行
15:23 岡山(始発)- 19:33 品川 ひかり476号 東京行

【内容】

□事前準備

主催する多良氏から11月27日(火)にメールが届き、Windows PCを持参して分析体験に参加する場合は、2点、準備をお願いします、とのこと。

・KH Coderをダウンロード、インストール、動作確認する
  http://khcoder.net/1208.html
・分析体験用のデータファイルをダウンロードする
 (参加者にのみ公開)

KH Coderには2種類の形態素解析エンジン(「茶筅」と "MeCab")や統計解析処理ソフト"R"やサンプルデータなどが同梱されており、EXE形式のインストーラが560MBもある。

チュートリアル用のサンプルデータとして『こころ』も入っている。全文テキストを段落に切り分けて、Excel表に入力してある。

□イントロ

多良静也氏(高知大学教育学部准教授)より講師紹介等。

□第一パート 13:10〜14:30(80分)
「計量テキスト分析の考え方とKH Coder 漱石の『こころ』を事例に」

テキストデータを統計的に分析することについて、懐疑的な立場からよく言われることを3点挙げ、それらがすべて杞憂であることをこれから示す、と宣言。

第一に、計量的な分析は「乱暴」であり、微妙なニュアンスが失われてしまうのではないかという疑問。第二に、計量的な分析は「浅い」ので、人間のような深い分析は無理ではないかという疑問。第三に、本当にメリットはあるのか、利点は単に「客観的」なだけではないか、という疑問。

KH Coderについて解説。大きく分けて三つの機能がある
(1)統計的な分析、可視化(ソフトウェア任せの自動処理だが、パラメタは人が調整可能)
(2)人間の補助的な入力を伴う意味的な分析、可視化(「コーディング」と呼んでいるが、ソフトウェアそのものを書くわけではない)
(3)元データの検索・閲覧

(1)と(2)は元のテキスト型データから集計・解析して視覚化する方向。
(3)は逆に、視覚化結果を人が見て、原文に立返って文脈などを調べる方向。

KH Coderは2001年に公開されたフリーウェア。単に無料であるというだけではなく、Perl のソースコードが公開されていて、改変や改良版の配布が自由。

第一パートの後半は、KH Coder実践。使用したデータは、夏目漱石『こころ』の全文。段落別に、切り分けてある。Excel 表、A列に文章、B列に段落番号。

「対応分析」がおもしろい。平面上に、上・中・下の三部が互いに離れて配置されていて、それぞれの周辺に、その部に特徴的な単語がわさっと散りばめられている。全体の中心付近には特徴のない一般語が集まり、周辺部には注目に値するかもしれない単語が散る。

□第二パート 14:40〜15:40(60分)
「アンケート自由記述の分析 研究事例と利点・注意点」

アンケートの自由回答欄に記入された文章を、分析対象として取り上げる。選択方式のアンケートは、網羅的で完全な選択肢を準備するのが困難であるという問題点がある。また、選択肢を提示すること自体によって、肯定的反応を誘発する場合があるという問題点もある。

選択肢型の回答と自由回答とを組み合わせることで、知見に相乗的な広がりが得られるという効果がある。

ある社会問題について、回答者の性別や所属と賛否の選択との関係性を分析することに加えて、その理由についての自由回答を分析することで、回答者がどんな期待や恐れを抱いているのかが、よく見通せるようになる。ここでも、「対応分析」が役に立つ。

平面上に、「男性賛成」、「男性反対」、「女性賛成」、「女性反対」が分散して配置され、それぞれの周辺に自由回答から拾い出した特徴的な単語がごしゃっと散りばめられている。「死ぬ」、「かわいそう」、「電気」、「テレビ」、「家族」、「お金」など。

また、切り口を変えて、「理系クラス」、「文系クラス」、「就職クラス」の周辺に単語を配置させると、これまた価値観の分離性が際立っておもしろい。

□第三パート 15:50〜16:20(30分)
「成功した分析事例に学ぶ活用法 貢献の可能性と、上手く使う方策」

KH Coderを活用した応用研究は、把握しているだけでも約2,100件。年々増加している。

テキストデータの有効な分析には、狙いの定め方や結果の読み解き方にコツがあり、成功事例から学ぶのがよい。驚くほど深い分析ができる。

週刊誌『アサヒ芸能』で使われる単語の変遷を'70年代前半、後半、'80年代前半、後半と比較してみると、言葉の変化は「物語の変更」さえも意味していることが浮かび上がる。「線」の時期の「ファンタジー」から「点」の時期の「ベタ」へ。

また、松井剛氏(一橋大学商学研究科教授)が「言葉とマーケティング」について研究していて、「観光ビジネスにおける≪癒し≫ブーム」などをテーマに取り上げている。

とにかく計量テキスト解析を始めてみることを勧め、「理論的思索とデータ分析の両面からのアプローチが現実的」と結んでいる。

□質疑応答 16:20〜17:00(40分)

【来年、東京でセミナー開催】

2019年に東京神楽坂で、樋口氏によるKH Coderの実践セミナーが二回、開催される。2月22日(金)は初級編、3月8日(金)はステップアップ編。
https://www.screen.co.jp/as/semi/

高知まで行く必要なかった、と思いきや、企業が主催するセミナーで、受講料がそれぞれ32,184円と64,584円とか。高知往復よりも高いじゃん。お金はあるけど時間がない人向け。ステップアップ編は非常に気になる。

【所感】

計量テキスト分析の手法を用いることによって、大量のテキストから掘り出すことのできる情報は、それほど浅い領域にとどまるわけではないことは、さまざまな成功事例が裏付けている。

しかしながら、統計的手法では、意味論(semantics)にまで立ち入ることができないという限界は依然としてある。このところの人工知能(AI)の進歩は目覚ましいものがあるけれど、「記号接地(symbol grounding)問題」は解決していないし、まだ当分は解決しないと思う。現時点において、意味的解釈をする主体は人間に任せるしかない。

KH Coderは、そのあたりのことがよく考慮されており、統計解析結果を見やすい形でグラフィカルに可視化した後、人がそれを眺めて、どこに特徴が表れているかピンと来たら、個別のキーワードから原文に立ち返って、用法や前後の文脈を見てみることができる。

統計手法による機械的な順方向の分析・可視化と、人間による逆方向の解釈を往ったり来たりすることによって、データに潜在していた本質に徐々に迫っていけるようになっている。そこがよくできていると思った。

可視化結果を人間が解釈することによって、データにもともと潜在していた本質を探り当てる手助けをするのがソフトウェアツールの役目であると言える。

自分の立場からすると、このツールを、データ分析そのものに利用するのではなく、自分なりに工夫した分析手法を試してみるための土台として活用できないかという思いがある。

ある画像処理手法を考案したら、それを単独のソフトウェアとして実装するよりも、Photoshopのプラグインとして組み込んだほうが、他の豊富な機能とのコンビネーションで使えるので便利ということがある。

画像処理手法を試す土台としてのPhotoshopと同様、統計処理手法を試す土台としてKH Coderを活用できないか、という考え方である。

KH Coderはソースが公開されていて、自由に改変してよいとのことなので、やってできなくはない。

しかし、今のところ、自分のプログラムはPythonで書いており、KH CoderのソースはPerlで書かれているので、移植がたいへんという問題がある。どっちが得かと天秤にかける感じ。

KH Coderの「共起ネットワーク」機能において、中の計算で用いている「距離」の定義に関して「Jaccard係数」、「コサイン距離」、「ユークリッド距離」の三種類がサポートされているが、エントロピー系の距離を導入すると、もっといい結果が得られるのではないかと考えている。

エントロピー系の距離とは、確率pに対して - p log(p) のディメンジョンをもつ指標、あるいはそれを区間 [0, 1] に正規化した指標であり、たとえば、相互情報量(mutual information)や正規化相互情報量(normalized mutual information)がある。

これを組み込もうとすると、ソースを読み込んで、どこに手を入れればいいかを探り当てなくてはならず、そうとう手間がかかる。KH Coderのコーディング担当者に頼めば作ってくれるというのが理想なのだが。

また、入力テキスト全体から単語を抽出して出現頻度順に表示する基本機能があるが、頻度順だと「私」、「思う」、「今」、「事」など、どの文章にもほぼ均等に頻出する、注目しても無意味な単語が、多数混ざり込むという問題がある。

ここでもエントロピー系の指標が使えると考えている。カテゴリ群のうち半分に出現して半分に出現しない単語に最も価値があるとする指標とか。あるいは、カテゴリごとに出現頻度が均等ではなく、偏りのある単語こそが価値が高いと評価する指標とか。これに基づいて順位づけすれば、意味のある単語が並ぶのではないか。

また、たくさんのアイテムの集まりをもとにして、アイテム間のつながりの強さを抽出して、全体像を重みつき有向/無向グラフとして出力する手法についても構想があり、同様の損得問題が浮かび上がる。

KH Coder に関するネット上のコミュニティがあり、そこでディスカッションする手はあるとのこと。実際にどうするかは、さしあたって置いておいて、いちおう念頭においておきたい。

本セミナーに参加したことは、自分にとって得られるものが非常に大きかったと感じている。

●びやびやかつおとぐびってるかつお

話が大幅に逸れた。新鮮なかつおはどこへ行ってしまったのだ。いやいや、そこに至るまでの経緯を説明してきたのであった。では、本題に入ろう。

職場の同僚である愛媛県高松出身のH野氏に教えてもらって、御荘 (みしょう)へ行ってみたのは、2009年6月13日(土)〜 14日(日)のことである。2009年7月3日(金)配信分に書いている。

『マイル修行とロケハンを兼ねて四国へ行ってきた』
http://bn.dgcr.com/archives/20090703140100.html

宇和島や御荘には、「びやびやかつお」を出していることを掲げる飲食店が、あちこちにあるのを目にした。しかし、それが何であるか分からないままに帰ってきた。

高知出身で、実家がかつおの定置網漁を営んでいるという同僚のY崎氏に聞いてみたが、そんな表現聞いたことがない、と言っていた。

12月8日(土)、JR土讃線高知駅の近くにある「コンフォートホテル」にチェックインする際、近くに海のものが食べられるお店はないか聞いてみると、「居酒屋土佐」を勧めてくれた。来る途中、その前を通っていて、よさそうだな、と思っていた。

松田卓也先生のオンライン勉強会が10:00pmに終了した後、行ってみた。

刺身盛合せがたったの1,350 円。6品あって、一切れ一切れがやたらとでかい。かつおも入っているし、鯨も入っている。それとは別に鯨の唐揚げも注文したが、やはり量があった。小学校の給食でときたま出てくると大喜びした鯨の竜田揚げよりも、もっとあったと思う。

日本酒は「亀泉 CEL-24」(純米吟醸生酒、650円)と「亀泉吟麓」(純米吟醸無濾過酒、650円)という地酒を注文した。この酒のつぎっぷりの気前よさが、またいい。皿で受けたコップにすりきりまで注ぎ、少しこぼす。

高知の人の飲みっぷりはきっとすごいんだろうな。荒々しい海を仕事場にして生き抜くたくましい男たちというイメージがある。

この酒はフルーティーな香りが強く、飲むと幸福感が高まる。

愛媛で正体の分からずじまいだった「びやびやかつお」のことをふと思い出して、お店の人に聞いてみた。5人ほどいる人たちみんなにも聞いてくれたが、びやびやなんて、誰も聞いたことがないという。

一人がGoogle検索してくれて判明した。まだ死後硬直していない、やわらかいかつおのことだ、と。高知では「ぐび」というのだそうで。新鮮すぎて、魚のにおいがまったくしないのだという。

そういうのを一度食してみることはできないだろうか。しかし、お店の人によると、市場で売っている時点で、ぐびってるのはすでにそんなにいないのだそうで。市場を介さずに食卓に直行させることのできる人たち、つまりは漁師だけの特権なのだろうか。

「びやびやドットコム」なんて、そのまんまのサイトがあるではないか。
http://biyabiya.com/

「愛南びやびやかつお」のサイトで、それの定義は、
1.一本釣りまたは曳縄釣りされたもの
2.釣り上げてすぐに活け締め・血抜き処理をしたもの
3.釣り上げたその日のうちに水揚げされたもの
4.水揚げした後、ハイブリッドアイスで保管されるもの
5.愛南漁協が管理し、品質の確かさを認めたもの
の条件を満たしたもの、とある。

これだと、ハイブリッドアイスで保管されている間は、それなりに日持ちしそうに読み取れる。しかし、高知のお店の人が言っていた「ぐび」のほうは、時間との戦い、みたいな感じに聞こえた。

Y崎氏にあらためてメールして聞いてみると、なんだそれか、ぐらいの反応だった。確かに田舎では柔らかい物を「びやびや」と表現するのだそうで。定置網漁師の息子なので、子供の頃はびやびやしか食べたことがなかったと。

そりゃうらやましすぎる、と言ったら、「定置網は朝と夕に漁に行って、夕の獲物を持ち帰って食卓に並べます。想像して下さい毎日です。肉を食わせろ、ってなります」。

しかし、びやびやにありつけるのは漁師の特権ではないようだ。高知市や四万十市では、周辺から送られてきて中央市場を通すので、ほとんどがすでにぐびってないけれども、季節になったら久礼 (くれ)や土佐清水などの漁村に行けば、近くの料理店ではびやびやしか出てこないそうで。

これは耳よりな情報だ。4月ごろ行ってみようと思う。不思議なご縁の連鎖は10年がかりで、新鮮なかつおにつながっていくのか。


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
http://www.growhair-jk.com/

師走らしく、ばたばたしてます。そのばたばたの内容を書き出すとたいへんなことになるので、このへんで。


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編集後記(12/14)

●近藤大介「未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること」を読んだ。筆者は数か月に一度の訪中を自分に課している。自分で街を観察した肌感覚を大事にしたいからだ。北京のコンビニやスーパー、レストランなどで定点観測していると、年間の物価上昇率は政府発表よりはるかに高いと感じるいう。

中国政府は今後も、自転車操業のような経済成長を続けていかなければならない理由がある。経済成長のストップ→若者の就業がストップ→若者の失業者の増加→1989年に若者が民主化を求めて立ち上がった天安門事件の二の舞、という恐れ。その意味で、若者の就業は共産党政権の存続に直結する大問題なのだ。

2023年、世界一の経済大国となり中間層4億人が「爆消費」。中国のGDPは40年で44倍になり、いまや不動の世界第2位をキープしている。中国経済は2023年から2027年頃にアメリカ経済を追い越すとみられるが、習近平はメンツにかけて2023年に追い越す。なぜなら2023年は2期目の習近平政権が終わる年だ。

筆者が常々、念頭に置くのは「現在の韓国が、5年後の日本」ということだ。2017年日本の外国人観光客は前年比19.3%増の2869万900人、うち中国人はトップで735万5800人、全体の25.6%である。この割合はまさに、その5年前の2012年の韓国における中国人観光客の割合25.5%(全体1114万28人中、中国人が283万6892人)と一致する。5年後の銀座の姿は、いまのソウルの明洞だ。

中国人の消費はスマホ決済が主流になりつつある。2018年の初の段階でスマホ決済システムWeChatPayの登録数は約8億4000万人、Alipayのそれは約5億2000万人。二社合計で13億6000万人。累計ではほぼ中国の全人口に匹敵する。なぜ中国でスマホ決済が普及したのか。紙幣は偽物、カードは不正使用、そんな中国で初めて「信用できる決済」が現れ、便利だから一気呵成に浸透したのだ。

日常の消費活動をスマホ決済する=自動的にあらゆる個人情報が運営会社のテンセントやアリババにストックされる=共産党政権に流れる、ということは容易に想像できる。両社も正式に否定したことはない。さらに、「芝麻信用」というプライバシーの点数化サービスも広がっている。個人が5段階評価される、恐るべきリアル格付けチェックである。わたしなんか速攻「ダメ人間」に。

「こうしたスマホ決済から応用されるサービスの進化は、国家が国民のプライバシーをすべて管理する社会に直結するということだ」と筆者は警告する。共産党は国家を管理するだけでなく、指示も出してくる。ジョージ・オーウェルの「1984年」で予言した通りになる。ビッグブラザー・習近平。2017年10月8日から、10億人以上が利用中のWeChatで事実上、自由な発言が禁止された。

2024年、年間1200万人離婚時代がやってくる。世界最大の離婚大国である理由は極端な拝金主義にある。無宗教の中国人はカネ教徒、カネDNAと一人っ子世代のジコチュー世界観が重なって、大都市の離婚率は4割近い。ああ、とんでもない国家が日本のそばにあるのだ。未来の中国年表、まだ続く。(柴田)

近藤大介「未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること」2018
講談社現代新書
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●今日のデジクリは、迷惑メールボックスに分類されるそうな予感……。/マンションポエム面白い〜。コピーライターさん大変だな。うちのマンションはどうだったんだろうと検索したら、チラシは出てこず、医師組会の提携割引1%の文字が出てきて、割引なしで買った身としては、ちょっとイラッとした(笑)。

/PayPayの100億円キャンペーン終わっちゃいましたね。/ポケモンGOで対人対戦が始まった。試してみたら負けてばかりで、とっても気分が悪い(笑)。

/a-blog cms続き。a-blog cmsだと、まずはテキストのみのブロックを作り、そこに文章を入れる。次に画像のブロックを作り、その専用ブロック内のボタンから画像を呼び出し、左寄せなど位置指定をプルダウンメニューで選ぶ。また次のブロックでテキストを呼び出せば解除もできている。お作法を知らなくても、なんとなく使える。

cssもあてやすく、カスタマイズしたボタンが追加できるので、たとえば画像専用ブロック用のボタンにクラスのつけたものを用意すれば、商品紹介ページやブログの任意の場所に、装飾フチをつけた画像を置きたい、などというわがままニーズにも応えられる。続く。(hammer.mule)

a-blog cms
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