わが逃走[231]瀬戸内の構造美の巻/齋藤 浩

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年末に、尾道行ってきた。こう何回も通っていると、知り合いもできる。そうなると、より故郷に帰る感がアップしていく。

「ホントに親戚とかいないの?」と地元の人に聞かれることが、なんだかうれしい。

今回は、いままであまり行かなかった場所を中心に、レンタカーとレンタサイクルを使って散歩。

それにしても瀬戸内はおもしろい。個性的な建築・土木があふれている。それらが集まって、美しい集落、美しい暮らしが生きている。

階段にしても路地にしても、必然から生まれたものであって「カッコイイものを作ろう」という下心などないはずだ。それぞれが必要だから作った。その結果、芸術以上の物件が生まれ、それらが調和して独特な空間を作っていく。

町とは暮らしであり、暮らしは「ゆっくり」変化する。私のように、たまに訪れる者の利点は、そこに暮らす人には気づかない変化に気づけることだろうか。

そういうことにして、年に何回か街並みや物件を記録していこうと思っている。ちなみに今回の写真は尾道市因島にて撮影。ことしもよろしく。





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なつかしい看板。いま見るとシンプルで味のあるピクトグラムだ。しかし、最近のヒトには何の絵だかわからんだろうな。

気になるのはその下、かつて看板を支えていたであろう物体。曲線からすると、「たばこ」や「塩」とは違うみたいだ。こういうことを正月に考えるのは実に楽しい。

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その看板の近くで看板建築を発見。お店は閉店してしまっているようだ。それにしても書体がイイ。タイルとの対比もあいまって、実に風情がある。現役時代に訪れたかった。きっとここの練り物は旨かったにちがいない。

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やや高所ドア。よく見ると微妙な形状の踏み石が設けてあり、しかもセメントで固めてある。機能しているようなのでトマソンというわけではなさそうだ。しかし、なぜこの高さに? 想像しながら散歩する。楽しい。

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由緒正しいおもちゃ屋さん。しかも、ところどころにモダニズムな意匠が。

ここにばあちゃんと孫が買い物に来るのだ。正月はコマやタコ、夏は花火も売ってるはず。
断言しよう、おもちゃ屋さんのある商店街は良い商店街だ!

そして三世代にわたって同じ街並みを共有できてこそ、一流の町といえる。さらにこの数件先には由緒正しい模型店もあった。

ショウウィンドウにプラモデルの完成作例が飾ってあり、しかも超絶改造モデルも多数。この町に住みたい!

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こう見えて公道のようだ。

玄関まわりの植物が増えて、そのまま「なんとなく」ファサードが延伸していったのだろうか。こういう大らかさもまた瀬戸内的。

車が入ってこれない個性的な路地がたくさんある。一日中歩いてみたかった。

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元気に育て、雨樋の植物。ふと見上げるとこういう物件がある。瀬戸内の散歩は楽しいなあ。

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こんな路地も発見。先を急ぐので、立ち止まってシャッターを切ったのみ。この狭さ! 向こうから巨漢さんが来たら、すれ違いはキビシイか。

あー、歩いておけばよかったな。デス・スター攻撃シーンのような視点だったかも。ここを歩くために、再訪を誓う。

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なんと躍動的な! 水がバシャーッと流れているかのようです。

しばし見入ってしまった詠み人知らずの芸術。色もイイ。これが無作為によるものとは到底思えない。こういった物件は全国に存在するのだろうが、穏やかな気候もあってか、瀬戸内のものはとくに見ていて楽しい。

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ものすごいタワーです。これも芸術を超えたなにかだろう。心の師・赤瀬川原平先生がご存命だったら、なんと思われるか。レンガ造の煙突に植物がからんだものだが、呪術的ともいえる迫力をおぼえる。

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ちいさな階段。ホントにちいさな階段。機能美というだけでは説明しきれない、実直さを感じる。周囲までたゆたう控えめな雰囲気がまた愛らしい。この2段を作った職人さんの人柄が偲ばれる。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。