まにまにころころ[151]ふんわり中国の古典(論語・その14)弁舌など役に立たない/川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

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コロこと川合です。本年もどうぞよろしくお願いします。日本史の話をしてた名残で、毎度のように触れてきたNHKの大河ドラマですが、今年は近現代が舞台です。

日本人最初のオリンピック選手で、日本マラソンの父と呼ばれる金栗四三さんと、1964年の東京オリンピックの招致に尽力された田畑政治さんを、リレー形式でダブル主人公に据えた『いだてん~東京オリムピック噺~』です。

ちょうど第三回の放送を見てからこれを書いているのですが、なんというか、面白くなくはないんですが、大河ドラマとしてはコレジャナイ感がすごい。

クドカンこと宮藤官九郎による脚本ということで、コミカルにテンポよく話が進んでいくし、豪華キャストの演技もいい感じなんですけども。なんでしょ、「明治中期から昭和初期のスポーツ界」に対して、みなさんそれほど興味ってないですよね。私だけじゃないですよね。

日本人最初のオリンピック選手にはまだ少し興味もありますけど、それだけなら日テレでやってた波乱万丈とかで、一時間くらいにまとめて見せてくれって話で。





例えば昨年の『西郷どん』って、西郷隆盛というスーパー級のメジャー人物を主人公にしつつ、その生涯を通じて幕末から維新という、日本史の中でもトップクラスの大転機を描いていたわけですよ。

それに比べるとどうしても、視聴のモチベーションが低くなる。二人の主人公で半々とすれば、半年間もこれを見ていくのかと……。ちょっとしんどく感じる。『西郷どん』だと逆に、一年ではやっぱ足りないよねって感じになるのに。

第一話でもっと、人物と時代への興味を喚起すべきだったんじゃないかなー。第二話で一気に視聴率落ちたのも、その辺なんじゃないかなと。

ということで、ここでNHKとクドカンに代わって、金栗四三さんへの興味喚起を試みてみようと思います。(笑)

少しネタバレになるんですけどいいですかね。いいですよね。ネタバレも何も、どうせみんなほとんどの人が見てな……いや、なんでもないです。歴史上の話ですし、ググれば出てきますし。金栗さんを知ってる人は知ってる、超有名なエピソードをひとつご紹介しようと思います。

金栗さんが日本人最初のオリンピック選手として参加したのは、スウェーデンで1912年に開催されたストックホルムオリンピックなんですが、金栗さんがその時に記録したマラソンのタイム、どれくらいだと思います?

第一話で国内の予選会に参加していましたが、その時のタイムは、世界記録をとんでもなく上回る大記録で、2時間32分45秒でした。

その金栗さんがストックホルムオリンピックでたたき出した記録はなんと……

「54年8か月6日5時間32分20秒3」

すごいでしょ! もう絶対に破られることのない記録でしょ!

ゴール後のスピーチで金栗さんは、「この間に孫が5人できました」と語られたとか。このウィットに富んだ言葉を聞くためだけに、大河を半年見られるでしょ。

孫も5人できていますが、最初のオリンピックをゴールするまでの間に、他のオリンピックに2回参加されてますからね。

どうしてそうなったのか、知りたい方はNHK大河ドラマをご覧ください。放送を待てない方は、金栗さんゆかりの熊本県玉名市が公式サイトに掲載している以下のふたつの記事をご覧ください。

・マラソンの父 金栗四三さん
https://www.city.tamana.lg.jp/q/aview/112/2193.html
https://www.city.tamana.lg.jp/q/aview/186/9019.html

毎週ちゃんと見てるよ、昨日も見たよという方には新鮮な話をひとつ。昨日の、綾瀬はるかが自転車で汽車と並走するシーン、あれ、全力疾走一発撮りらしいですよ。すっごいなーと思ってみてたんですが、そう聞いてさらにびっくり。

・大河ドラマ「いだてん」Twitterアカウント @nhk_td_idaten より。


最後に、宮藤官九郎氏がスポーツ雑誌『Number』に寄稿されたエッセイが特別に全文公開されているので、ご紹介します。

・Number Web
https://number.bunshun.jp/articles/-/833236

では、大河話が長くなりましたが、今年も論語スタートです。


■──巻第三「公冶長第五」一

・だいたいの意味

孔子先生が(弟子の)公冶長について、「妻を取らせていい人物だろう。捕縛されて獄にいたことがあるが、本人に罪はなかった」と評されて、先生の娘を公冶長にめあわせられた。

◎──巻第三「公冶長第五」一について

ここだけ読めば「知らんがな」って話なんですが、この公冶長第五ではこの先、主に孔子先生の人物評が次々に紹介されます。それを通じて、孔子先生が良しとする人となりはどういったものか、どのような価値観を持たれているのかを知ることができます。

ここでは公冶長がどのような人物かは分かりませんが、前科がある人物でも、それが実際には罪に当たらないような理由であったならそこにはこだわらず、本人の人柄を評価して娘を嫁に出す孔子先生を知ることができます。

娘を嫁に出す父親の気持ち、なんていうのは現代日本と当時の中国ではきっと違うものだと思いますが、親戚となる重みは今以上のものがあったと思います。

続く話も、また婚姻の話です。


■──巻第三「公冶長第五」二

・だいたいの意味

孔子先生が(弟子の)南容について、「国に道義が行き届いているならば捨て置かれることなく、国に道義が行き届いていなくとも刑死するようなことにはならない人物だろう」と評されて、先生の兄の娘を南容にめあわせられた。

◎──巻第三「公冶長第五」二について

今度こそ「知らんがな」って話ですよね。南容の人となりが分からないので。

南容はずっと後ろのほうにも出てくるのですが、そこでは『詩経』にある詩を何度も繰り返していたと語られています。そこでもまた、兄の娘をめわせたと紹介されています。


■──巻第三「公冶長第五」三

・だいたいの意味

孔子先生が(弟子の)子賤について、「君子だなあ、この人は。魯国に君子がもしいなければ、子賤はどこでその徳を学び取ることができただろうか。

◎──巻第三「公冶長第五」三について

魯国には君子がいたから、子賤はそこに学び自らも君子と評されるに至ったと。……知らんがな。


■──巻第三「公冶長第五」四

・だいたいの意味

子貢が孔子先生に「私はどうでしょうか」と尋ねた。先生は「君は器だね」と答えられた。「何の器でしょうか」と尋ねると「瑚※だ」と。(※王に点が二つの連)

◎──巻第三「公冶長第五」四について

瑚※(これん)とは、宗廟で供物をささげる貴重な器だそうです。これもまた知らんがなって話ですが、単に立派だと褒めているだけでなく「用途は限られるが立派な器だ」ということだそうです。

為政第二の十二で「君子は器ならず」とありましたが、それと対比しつつこの評価を考えると、子貢は君子とは言えないがそれなりに立派だといったところでしょうか。

■──巻第三「公冶長第五」五

・だいたいの意味

ある人が、「雍は仁者だが弁舌が立たない」と評された。孔子先生は、「弁舌など何の役に立つのか。人に対して口先だけでいるようなら、しばしば人から憎まれる。雍が仁者かどうかは知らないが、弁舌など役に立たない」と仰った。

◎──巻第三「公冶長第五」五について

雍(よう)も孔子の門人で、ここでは孔子先生にはそれほど評価されていないような書かれ方をしていますけど、次の篇では、政治家として国政を任せてもいいと高く評価されています。


■──巻第三「公冶長第五」六

・だいたいの意味

孔子先生が(弟子の)漆彫開に仕官を勧めたところ、「私にはまだそれほどの自信がありません」と答えた。先生は喜ばれた。

◎──巻第三「公冶長第五」六について

色々な解釈があるようですが、自身の学問レベルに満足せず仕官を断り、さらに学びを深めようとする謙虚さを、孔子先生は喜ばれたと。

今の時代だと、さっさと世に出て実践してこそ、と言いたいところですけども。

孔子先生のところに学びに来る人は、基本的には就職を目指して礼を身に着けようとしている人なんですよね。でも漆彫開は、仕官よりも学問をより深めることを優先したということで、それを孔子先生は喜ばれたんですね。

少し先に、三年学んでもさっさと仕官しようとしない人材は得難い、という話がでてきます。


□──今回はここまで。

今年もこんな感じで、デジタルでもクリエイティブでもない話を延々と続けていきますが、どうぞお付き合いよろしくお願いします。

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
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