[4719] ◇ツマランデザインとプラモデルと◇祝100本 ~継続は力なり~

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《楽しさが継続を生み出す》

■わが逃走[232]
 一見無意味と思われる作業から食い扶持のヒントを得て、
 無意味な作業を正当化したいの巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[100]
 祝100本 ~継続は力なり~
 関口浩之




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■わが逃走[232]
一見無意味と思われる作業から食い扶持のヒントを得て、無意味な作業を正当
化したいの巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20190124110200.html

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デザインがツマラン。
なぜツマランことになったのか。
オモシロくするにはどうすべきか。

と常日頃から考えているのだが、まったく答えが出ない。出ないなあ、などと思いながらプラモデルを作っている。

プラモデルは遊びであり、学業と無関係なので罪悪である、との教育を親から受けている。

しかし、ああ早く宿題しなくちゃ、などと後ろめたさを感じながら作り続けて今年で45年になる。

国産プラモデルが世に出て60年、初めてプラモを作ったのが4歳のときだから、私はその歴史の3/4を共有していることになる。我ながらたいしたものだ。

プラモデルは芸術ではないし、美術品でもない。組み立てることを前提とした「工業製品を縮小した工業製品」である。完成すると「置物」になる。

置物とは、テレビの上のでっかい将棋の駒や、下駄箱の上の鮭を狩る熊を見るまでもなく、あってもなくてもどうでもいいものと言えよう。

しかし、「ただ組み立てただけ」の状態に留めず、自分なりの思い入れを込めて接着面の隙間をパテで埋め、色を調合し、省略されたディテールを追加するなどして納得のいくものに仕上げると、ただの「置物」ではない“なにか”に化けるのだ。そこが面白い。

芸術はムズカシイし、わからない。
わからないものをわかったふうに装うのは疲れる。

それに対し、模型は車にしろ飛行機にしろ、誰もが知っている実物(実物が存在しないものもあるが)があるので、それをいかにそれらしく表現するか、という目標をすべての作り手が認識できる。

動かないけど動きそうに見せる。あたかも実物と同素材に見せる。

「組み立てる者に委ねられる部分」を最大限に活かし、本物以上に本物“っぽく”見せる。そこに共感をおぼえるのだ。

ただ組んだだけでは、あたりさわりのないものしかできない。そこから、自分なりの解釈をくわえてより「らしく」仕上げることこそ本来の楽しみ方と言えよう。

作り手に残された余地をいかに引き出し、いかに自分のイメージに近づけるかが楽しい。

プラモデルにはある程度の「正解」があり、その正解の幅の中で改造したり情景を作ったりしながら、より伝わる「超正解」まで持ってくるかの勝負なのである。こう書くと、模型製作はデザインの仕事に似ているな。

最近のプラモデルは、最初から色分けされていたり、接着が不要だったりと、誰にでもそれなりの完成度のものに仕上がるようになった。

また、昔では考えられなかった「完成品」が販売されていたりと、世の中もずいぶん変わってきた。

こういった状況は過保護と思えなくもないが、新たな作り手に対し敷居が低くなることは歓迎したい。作りたい者が作りたいように作ればいいのだ。

作っているうちに、さらにディテールを追加して自分のイメージに近づけたい! ここをこういう色にした方が伝わる! と思ったときが、沼への入り口かもしれないし、創造力の目覚めなのかもしれない。

最近のツマランデザインは、色分けされたキットを組み上げただけの状態に例えられると思う。

つまり、誰もがそれなりの水準で、同じ形の完成品を手にすることができ、またそれ以上のものを作らなくても事足りる状態なのだ。

そもそも、まっとうに組み上げた高密度な完成品を見たことがないから、現状で満足したような気になってるのではないか。

それを解決するために、我々にできることとは何か。何を作るべきか。どう作るべきか。

そのヒントを得るべく、今日もタミヤの1/35キングタイガーを作るとしよう。いつまでもプラモデルなんか作ってないで、宿題やりなさい! と脳内で母さんの声が聞こえる。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[100]
祝100本 ~継続は力なり~

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20190124110100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

今日で100回目のメルマガ投稿になります。パチパチパチーーー(自分に拍手w

デジクリ編集長や濱村デスクにご迷惑をお掛けしながら、どうにか、一回も休まずに連載し続けました。ありがとうございます。そして、自分を褒めてあげたい(笑

2014年7月11日に、デジクリデビューしてから早四年半……。いつも、お付き合いいただき、ありがとうございます。

文字をテーマとした記事を中心に(ときどき、天体テーマ)、100本、書いてきました。こちらが、もじもじトークの記事一覧です。
http://bit.ly/mojimojitalk


記事タイトルを眺めてみると、文字の千本ノックみたいな感じですね。4年半前に書いた第1号が懐かしいです。こちらも、ぜひ、読んでねーーー!

もじもじトーク[01]デジタルフォントが豊富に手に入る時代
http://bit.ly/mojimojitalk001


●祝100回 ~継続は力なり~

文章を書くのは嫌いじゃないのですが、得意というわけではありません。学生の時、読書感想文や詩を書いたり、卒論を書くのは苦手でした。とういか、苦痛でした。

だけど、ポスターやCMで使われている格好いいキャッチコピーを探して、メモしたりするのは好きでした。

また、レンタルレコード屋のPOP制作(新曲のキャッチコピー)を、ボランティアで手伝ったりするのも好きでした。

デジクリにデビューすると決めた時、「100回までは、どんなに忙しくても、体調悪くても休まずに書く」という目標を立てました。それは実現しました!

あと、「義務感で書かない」ということも決めました。自分が感動したことなどを「肩の力を抜いて楽しく書こう」と考えました。そうしたら、もじもじトークは100回になりました。

100回まで続いたんだから、これを通過点と考え、これからもがんばります。

興味があることなら、真剣に文章を考えるし、調査・分析もできますよね。好きなテーマであれば継続できるということなのです。

●楽しさが継続を生み出す

「継続は力なり」は、その通りなのですが、「楽しいから継続する」のほうが大事だと思います。だって、継続しなかったら「力なり」にならないわけで……。

楽しくやるってことは、「遊んでいるんじゃね」とツッコミを入れたいと思う人、いるかもしれませんね。

でも、「徹底的に楽しむ」を実践すると、頭をフル回転させるわけで、結果として、良い答えが導き出されたり、新しい発想が生れたりします。

徹底的に楽しむことを実践すると、チームのコミュニケーションも活発になり、良い結果を出せると思っています。

●100本の記事ってどれだけの文章量なの?

「もじもじトーク」の平均的な文字量は3,500字でした。3,500字の記事が100本なので、35万字ということです。

四百字詰原稿用紙で875枚。えっ、すごいじゃん!

長編小説の『吾輩は猫である』の文章量を調べてみたら、36万字でした。えっ、ほぼ、同じぐらい(笑

小学校の時、四百字詰原稿用紙一枚書くのも苦手だった自分としては、「俺っ、すげーじゃん」って、ほんと、思いました。

読者のみなさんの中で、デジクリデビューしたいなぁと思っている方がいたら、ぜひ、チャレンジしてみてください。

こんな僕でも100本、書けたんだから。

●僕が主宰しているFONTPLUS DAYコミュニティ

自分が主宰している「書体とデザイン」のコミュニティ『FONTPLUS DAY』コミュニティは、発足4年目を迎えました。

実は、昨日、第18回のFONTPLUS DAYセミナー開催日でした。

FONTPLUS DAYセミナー Vol. 18[Graphic Means リバイバル上映会]
https://fontplus.connpass.com/event/115539/


このセミナーも「継続は力なり」と考え、「まずは10回、ためしにやってみよう」と決めました。

そして、「主催者と登壇者と参加者全員が楽しめる」ということを第一に考えました。

巷では、フォントのコミュニティは、こんな意見をよく耳にします。

・敷居が高そう
・気難しそう
・マニアな方が中心のような気がする
・間違った発言すると怒られそう
・初心者は参加していいのだろうか

そんなイメージを払拭するために、毎回、下記を宣言してきました。

FONTPLUS DAYセミナーは、「書体とデザイン」を、みんなで楽しく学ぶためのイベントです。「活字やフォントに興味はあるけど初心者」という方のご参加、大歓迎です。

昨日のセミナーで、とてもうれしかったことがありました。

「初めて参加しました。とても楽しかったです」と数名の方から言われました。数名から声を掛けられたということは、その何倍も、そういう方がいるということですよね。

早速、アンケート用紙を確認してみたら、半数以上の方が「初めて参加」にチェックしてました。

「あれっ、リピート率、低いじゃん。満足度が低いのでは?」と思われるかもしれません。でも、今回も満足度は「非常に良い」「良い」が9割以上でした。

リピーターが多いというのもうれしいことですが、「初めて参加」が多いことのほうが、主催者としては、うれしいことなのです。

セミナー会場の都合で定員は80名ですが、毎回、募集開始してから2日ぐらいで定員に達してしまいます。申し訳ありません。でも、ありがたいです。

こちらが、今までに開催したFONTPLUS DAYセミナーの一覧です。
https://fontplus.connpass.com/


今後も、主催者と登壇者と参加者が一緒に楽しく学べるセミナーを開催していきたい。

そして、もじもじトークも、編集者と筆者と読者が、肩の力を抜いてお茶でも飲みながら楽しめる、そういう記事つくりを目指していきたい。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com

フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして日本全国を飛び回っている。

Schoo、マイナビ IT Search+、日刊デジタルクリエイターズ等のオンラインメディアで文字に関する授業や記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。

Twitter: @HiroGateJP
Facebook: フォントおじさん
https://www.facebook.com/hiroyuki.sekiguchi.8



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編集後記(01/24)

●偏屈BOOK案内:桑原嶽「乃木希典と日露戦争の真実 司馬遼太郎の誤りを正す」PHP新書 2016(「名将 乃木希典」中央乃木会 平成2年刊を再編集 復刊)

司馬遼太郎は伊地知が参謀長という要職に任命されたのは、乃木が長州出身だから、人事のバランス上、薩摩の伊地知に決めたのだと説く。乃木が軍司令官になったのも、この大戦争に長州出身が一人もいないのはまずいという山県元帥の考えだと説く。一国の興亡をかけた大戦争で、そんな配慮があるもんか。

まあ、小説としてはいい案配なのだろう。児玉大将独壇場を描くために、他の連中は何をしていたのだと思わせるのが狙いなのだから。児玉が旅順に行って直接指揮をとったから203高地が落ちた、などという設定がいかに滑稽極まるものであるかは、冷静に戦史を読み客観的に戦闘の経過を分析すれば分かる。

これも谷中将の「機密日露戦史」をタネ本にしている弊害であるが、「筆者にいわせれば同戦史の理解不足としかいいようがない。司馬氏のような軍事にずぶの素人の文人が、これを理解するのはどだい無理な話であろう」。よって司馬の見解は「市井の床屋談義にひとしく、彼の戦術的無智と言わざるを得ない」。

司馬は第4巻のあとがきで「まず旅順のくだりを書くにあたって、多少、乃木神話がわずらわしかった。それを信奉されているむきからさまざまなことを言ってこられたが、べつに肯綮にあたるようなこともなかったので、沈黙のままでいた」と書く。肯綮にあたる、とは「意見などが、ぴたりと要点をつく」という意味で、そうではないから放置したということだ。増上慢か、逃げか。

乃木愚将論に対しては少なからぬ反論があるが、司馬は一度たりともこれらの意見に対応していない。公開の対談も拒否していた。筆者は「見解の相違ではなく、あまりに多すぎる史実の誤りに、彼は資料を本当に読んでいるのか疑問を持つようになった」と書く。「小説が面白いのは結構なことだが、それが歴史の事実となってしまうと大変だ」と心配するが、既にそうなっているようだ。

「司馬氏が膨大な資料を集めながら、とうとうノモンハンについて1行も書けなかったのは、『坂の上の雲』を書いたあとの苦い後味が原因ではないだろうか」。NHKは大河ドラマに「坂の上の雲」の採用を再三希望したが、生前の司馬は拒み続けた。没後、2009年11月から2011年12月まで3年にわたりNHKがテレビドラマの特別番組を放送した。乃木、伊地知の扱いときたら、案の定……。

乃木は柄本明、伊地知は村田雄浩。この風采の上がらぬ、むしろダメな人物役に向いた見た目の二人を、一国の興亡をかけた大戦争の最重要人物に配するとはなんという悪意だ。高橋英樹の児玉源太郎のかっこよさといったら。架空の話なんだけどなあ。「第一回総攻撃の損害多発の原因は、乃木や伊地知の無能のためなどいう輩こそ、戦術戦史にまったく無知な人間という他はない」

ステッセルも感服した火力集中をやったのは、総司令部から来た児玉である、というのは砲兵の知識がまったくない司馬の空想から生まれた作文だ。公刊日露戦史が児玉について一言も記述していないのは当然である。この本は厳しい実戦を何度も経験した軍人が、自らの体験に立脚して検証した「戦場の実相」を描いたものである。桑原嶽さんは大正8年生まれ、平成16年逝去。 (柴田)

桑原嶽「乃木希典と日露戦争の真実 司馬遼太郎の誤りを正す」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01GPVJ4S6/dgcrcom-22/



●Webサイト制作で言えば、ほとんど「それ以上のものを作らなくても事足りる状態」だと思う。そして、「それ以上」のサイトのコーディングだけを頼まれると、難しくてしんどいです……(笑)。やりがいはあります。

/連載100回おめでとうございます! ありがとうございます! これからもよろしくお願いいたします!!

/トイレの電灯続き。メーカーや買う場所はほぼ絞り込めた。工事が必要なことを知った。LED電球取替型を選ぶことにした。次の課題は、今のものについているセンサーが必要かどうか。

価格や機能比較のためパナソニックのサイトを見ると、いまのシーリングライトにはBluetooth搭載、スピーカーつきや防臭防菌タイプがあることを知った。

Bluetooth搭載シリーズは、専用アプリ「あかリモ」で、専用リモコンの設定をしたり、タイマー、点灯・消灯・調光・調色、シーン切替(勉強・くつろぎ・シアター・だんらん・常夜灯)を、個別または複数まとめて、スマホからコントロールできる。続く。 (hammer.mule)

Bluetooth搭載シリーズ LINK STYLE LED
https://panasonic.jp/light/led/linkstyle.html


専用アプリ「あかリモ」アプリについて
https://panasonic.jp/light/led/linkstyle/akarimo.html