[4722] 全豪オープン決勝◇鷹野依登久個展の写真◇やってみせる大人になる

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《やっぱりお蝶夫人だった~(泣)》

■装飾山イバラ道[238]
 「エースをねらえ!」的全豪オープン決勝
 武田瑛夢

■Scenes Around Me[43]
 東京大学駒場寮の事(22)
 オブスキュアギャラリー・鷹野依登久個展の写真
 関根正幸

■crossroads[57]
 やってみせる大人になる
 若林健一




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■装飾山イバラ道[238]
「エースをねらえ!」的全豪オープン決勝

武田瑛夢
https://bn.dgcr.com/archives/20190129110300.html

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最近はテニスで錦織選手と大坂選手が頑張っている。スポーツ中継のテレビ観戦というと、やっぱり生放送で手に汗を握って応援したい。

WOWOWとNHKや他の局でLIVEの試合を放映している場合、どちらで見るか何度か画面を切り替えて検討することがある。解説者が変わるだけで、同じ試合なのに受け取るものが変わるからだ。

私は錦織選手の試合なら、試合が終わった後の番組で、松岡修造氏の話を聞きたくなる。やはり熱く語る姿を見たいのだ。試合中は冷静な実況の方がいいけれど……。

●全豪オープン決勝

今回の全豪での錦織選手は、途中棄権で残念だった。長時間の試合が続いていたので、しょうがなかったかもしれない。しかし、大坂選手は順調に勝ち上がり、決勝戦まで残った。これは見逃すわけにはいかない。

クビトバ選手と大坂選手の女子全豪オープン決勝は、日本では土曜日夜のちょうど良い時間で、視聴率も高かったはずだ。

この日私は、インスタライブやYouTubeなど、面白そうな生放送が多くて何を見るかを選ぶのが大変だった。大坂選手の試合はもちろん優先順位高めだったので、とにかく体はテレビ前にいようと思った。

1セット目は大坂選手が取った。ギリギリだったので本当にホっとした。若い大坂選手に1セット目を取られるのは、クビトバ選手にはプレッシャーになったのではないだろうか。

●お蝶夫人の焦り

私は途中から、クビトバ選手が「お蝶夫人」に見えて仕方がなかった。お蝶夫人とは少女漫画「エースをねらえ!」の、あのお蝶夫人だ。髪型は違うけれど、クールな美形でなんだか似ている。大坂選手は岡ひろみとは似ていないけれど、若くて勢いがあるという共通点で、今日は私のイメージの中では岡ひろみ役だ。

「エースをねらえ!」は昭和のテニスブームの火付け役となった漫画で、この漫画の精神論は松岡修造氏によって、今も語り継がれている。とにかく熱血なスポ根漫画の王道だ。

お蝶夫人は主人公の岡ひろみが憧れる高校テニス部の先輩、竜崎麗香。お父様は庭球協会理事長で、生粋のお嬢様だ。お蝶夫人は日本の高校生らしからぬ高貴な存在で、当時は誰もが憧れた。

なぜか金髪に見えるゴージャスな縦ロールの髪型も、漫画をマネして描けるように練習したものだ。巻き髪に大きなリボンは、マリーアントワネットや姫川亜弓など、別格な女性の髪型の定番だ。少女マンガの描写練習では、高難度の部類。

全豪オープン決勝では、クビトバ選手は大坂選手にエースを決められてしまう度に、一瞬顔を歪める。しかし、すぐに表情を平静に戻す雰囲気がカッコよかった。押されていても顔には決して出すまいという意思の強さ。

私はここで、自分に憧れていた岡ひろみがテニスの腕を上げて、いつしか脅威になっていく、お蝶夫人の焦りを思い出したのだ。

お蝶夫人が素直だから可愛がってきた、下級生の岡ひろみと試合で対決するシーン。「あなた、いつの間にそんなに強くなって?」という驚き。お蝶夫人の独特の言い回しが懐かしい。クビトバ選手は大坂選手とは初対戦なのに、勝手な妄想が止まらない。

途中でクビトバ選手がヘアバンドを外して出てきた時も、お蝶夫人のリボンが解けてヒラヒラしたような、そんなシーンを思い出した。

「私を本気にさせたわね。」とかなんとか、お蝶夫人のあの声で思っていそうだった。このセリフも完全に適当に、私が当時を思い出してイメージしたものだけれど。

最初の大坂選手のマッチポイントのシーンも、もう優勝だと浮かれた気分で見ていた人もいたはずだ。ポイントの貯金もだいぶあったし、大坂選手のサーブが崩されるとは思わなかった。

しかし、クビトバ選手は決してあきらめない気持ちの強さで、ポイントを許さなかった。勝てば自分が世界ランク1位なのだから、あきらめるわけがなかったのだ。

「私が負けるわけがない。だって私なのだから。」と思っていそうだった。(セリフはイメージです)

結果的には大坂選手が優勝。その後のクビトバ選手のインタビューは、大坂選手を丁寧に讃える素晴らしいもので、胸が熱くなった人は多いはずだ。

「クビトバ姉さん、やっぱりお蝶夫人だった~(泣)。」が私の感想だ。

お蝶夫人も自分を超える強さを持つ岡ひろみを支え続けた、素晴らしい人格者だったのだ。誇り高きお蝶夫人がいたからこそ、「エースをねらえ!」は品格のあるスポ根漫画になりえたのだ。

それにしても、「エースをねらえ!」を好きな人が語る話って、熱すぎてねらいがわかりにくくなりがちだ。我ながら「ねらいを絞れ!」である。

上の文章を自分で読み直しても、人物が混ざりあっているのでひどいなと反省する。

本当はここに宗方コーチとか、藤堂さんとかも入れたかったけれど、自重したので許してほしい。スポ根の恋を禁止されるシチュエーションは、昭和的で良かったんだよなー。

話を戻して、今回は本当に大坂選手にはおめでとうと言いたい。全豪オープン優勝で世界ランク1位。私はテニスをしないので、普通に試合をレビューすることができなかったけれど、感動の試合をありがとう。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


少女漫画の縦ロールに加えて、フリルやリボンの布の重なりの描写をよく練習した。キャンディ・キャンディの髪型はカールされた段カットのツインテールで、実際の髪の毛では再現できないとか。画像検索してみると、今見ても可愛い。毛の描写って深いなぁ。


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■Scenes Around Me[43]
東京大学駒場寮の事(22)
オブスキュアギャラリー・鷹野依登久個展の写真

関根正幸
https://bn.dgcr.com/archives/20190129110200.html

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1998年8月1日のオブスキュアギャラリー1周年記念パーティーの後、ギャラリーはしばらく休廊していた記憶があります。

次の展示は、1998年9月、鷹野依登久くんの2回目の個展だったと思います。鷹野くんは展示のクロージングパーティーで、ライブペインティングを行うことになっていました。

その際、鷹野くんから、ライブペインティングのバックでノイズを流してほしいと依頼されたこともあり、私は展示の準備段階から関わるようになりました。今回は、その時撮った写真を紹介することにします。

https://farm8.staticflickr.com/7915/32911422748_14657e74f2_c

1998年8月26日頃、駒場寮で鷹野くんが住居兼アトリエとして使っていた部屋で撮った写真。鷹野くんの部屋は北寮の1Fの中ほど、入口から見て左側にありました。前回紹介したコーキくんの部屋と、廊下を挟んではす向かいだったと記憶しています。

写真の中央にハッチと鷹野くんがいます。また、左手前に写っているのがチュンジ(中瀬健二)くんで、この3人はオブスキュアが駒場寮を出た後、コーキくん達と共同生活に参加しました。

後ろの棚に、ギャラリーで使っていたプロジェクターとフレームが置いてあるのが見えます。

https://farm8.staticflickr.com/7871/46062123634_fd22fe3e8f_c
https://farm8.staticflickr.com/7922/39821829853_97a7d8551c_c

鷹野くんの部屋で製作中の絵を撮影しました。

おそらくこの時期だと思いますが、鷹野くんは原宿にあったギャラリーでも同時に個展を行い、そちらの会場に流す音も頼まれて私が制作しました。2枚目の写真の絵は原宿で展示したのかもしれません。原宿の展示の写真は撮影していません。

https://farm8.staticflickr.com/7827/32911422468_7c667640ed_c

展示設営中のオブスキュアギャラリー、一番左にコーキくんが写っています。

https://farm5.staticflickr.com/4855/32985324168_39c9b56f17_c

1998年9月12日頃、展示のオープニングパーティー。この頃私は潰れるまで酒を飲むことが多く、この日もベロンベロンに酔っ払って写真を撮り、大半の写真がブレブレだったり、ピンぼけだったりしました。

https://farm5.staticflickr.com/4868/32985323348_e25ab9e603_c

アレクさんが、私が写真を撮っているのを見てポーズを取ってくれましたが、ピントが合わず、何枚も撮影しています。

https://farm5.staticflickr.com/4877/32985323708_32e69879ef_c

中村しのぶさん。これもピンぼけ。

https://farm8.staticflickr.com/7871/32985322618_20ea625cbb_c

1998年9月21日頃。この日、コーキくんは北寮脇にあった庭で、鷹野くんが絵を描いているところを撮影し、クロージングパーティーに映像を流しました。

https://farm8.staticflickr.com/7808/45946146245_b683df952f_c

1998年9月26日、クロージングパーティー。この時は、ギャラリーの後方に機材を置いてノイズを流しました。

https://farm8.staticflickr.com/7881/46062123274_705130aed6_c

ライブペインティング中の鷹野くん。

https://farm8.staticflickr.com/7807/45946146485_9e658deb64_c

ライブペインティングで鷹野くんが描いた絵。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos(2019年3月まで)


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を
多に撮影しています。記録魔


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■crossroads[57]
やってみせる大人になる

若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20190129110100.html

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こんにちは、若林です。

インフルエンザ、流行ってますね。私の周りでも倒れる人が続出しています。ワクチンを接種したのにかかってしまったという人も多く、面倒でワクチン接種していない私が元気なのが申し訳ないぐらい。

とはいえ、いつも流行が終わった頃に風邪を引くことが多い私なので、気を抜かないようにしなければ。みなさんもどうぞお気をつけください。帰宅後の手洗いうがいが効果的だそうです。

●今の私の目標

自分がやってみたいこと、成し遂げたいことというのは、いつも数えきれないほどあるのですが、その中のひとつに「やってみせる大人になる」というのがあります。

今までは、「もう自分はいろんなことをやってきたし、これからはいろんな人をサポートしていく側だな」と考えていました。自分がどんどん何かをやる、というよりは他の人(主に若い人)がやることを、サポートしていくのが今の役割だと。

その考えは今も同じで、主役は若い人たちであるべきだと思っていますが、サポートする方法として、「まずは自分がやってみせる」ということを増やしていこうと考えています。

例えば、CoderDojoでたくさんの子どもたちと接していると、子どもたちの進化の速さを目の当たりにすることがたくさんあります。

子どもたちは新しいことができるようになると、意欲もわき、どんどん成長していくのですが、完成形というか、ある程度まとまった形になると、そこからの伸びが停滞する子もいます。

新しいものは作るんだけれど、同じテクニックを繰り返し使っているので、だいたい似たようなものが多くなる。こうなると、なかなか抜け出せなくなってしまいます。

そんな子どもたちに新しい世界を見せられるよう、まずは「自分がやってみる、やってみせる」。

難しいのは子どもたちの興味・関心を引くこと、いくら新しくても子どもたちが関心を持っていなければダメ。それを実践していくには、僕たちも学び続けることが必要になります。

子どもたちに新しい世界をみせるには、まず自分たちが学び、そして「やってみせる」。大人にとっても学び続けることは大切です。自分のために学ぶというのはモチベーションの維持が難しいですが、子どもたちのためになら楽しくできるかもしれません。

子どもにとっても、大人にとっても意味のある、大人の「やってみせる」。まずは私自身がやってみて、そして周囲の大人にも広めていきます。


【若林健一 / kwaka1208】
https://croads.jp/aboutme/


子供のためのプログラミングコミュニティ「CoderDojo」
https://croads.jp/CoderDojo/

貧困問題に取り組みお寺の福祉活動「おてらおやつクラブ」
https://otera-oyatsu.club/



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編集後記(01/29)

●偏屈BOOK案内:「10年後の仕事図鑑」落合陽一・堀江貴文
20万部突破!! とカバー帯にある。堀江は初っ端でこう書く。「未来のことを考えるのが嫌いだ。未来を想像したところで、その通りに実現することなんてありえない。未来を想像して怯えるなんて暇人のやることだし、今を懸命に生きることが大事だと思っている」。それじゃあ、この本の意味ないじゃん!

Chapter1・Chapter5:過去に築き上げられた“常識”が通用しない、現在のありようを詳細に記述した
Chapter2:「なくなる仕事」と「減る仕事」を経営者としての視点と、AIを作る側の視点から紹介している
Chapter3:「生まれる仕事」と「伸びる仕事」
Chapter4:働き方の変化に伴うお金の変化 貨幣中心経済から信用中心の経済へのシフト
Chapter6:人生のグランドデザインを描く術 ……という章だてになっている。

「順に読み進めていただければ、これからの未来にワクワクし、読了後の人生が輝き出すことだろう」とどちらかが言ってた。結果として、わたしにはそんなことはまったく生じなかった。「僕が見ている未来の一部を知ってほしいし、これからの時代に踏み出していってほしい」とどちらかが言ってた。えっ、あなたは未来の一部を既に見ているのか? どうやって見たのか教えてくれ。

最先端の人とひそかに尊敬していた落合が、「くら寿司の“半人力・半機械”がこれからの最適解」というが、回転寿司屋の半人力、半機械のオペレーションなんてずっと前からあったんじゃないの? 堀江はまたしても言う。「1年後だってどうなっているかわからないのに、10年後の未来を想像することに何の意味があるのだろうか」。じゃ、やめろよ。縦組の本で、一を1と書くな。

50くらいの職業を挙げて、各1〜2ページ、下手なイラストを入れ、罫線使って行間をあけ、文字数少なく、今後どうなるか簡単に解説している。ページ数をふやす仕掛けだ。これを見る限り、各職業の10年後の明暗差がはっきりしているが、ほんまかいなと思う。落合は「波を待つな、自ら波を起こせ」、堀江は「好きなことを掛け合わせ“100万分の1”を目指す」と言う。なにそれ?

落合「もはや、ワークとライフの関係性は完全に『バランス』ではなくなった。これからは、差別化した人生価値を、仕事と仕事以外の両方で生み出し続ける『ワーク“アズ”ライフ』を体現する者だけが生き残れる時代になるだろう。リスク“アズ”ベネフィットである」。……わたしには全く意味がわからない。

もっとやさしく言うと、未来を生き抜く二つのパターンがあり、他人と違うことをやっていくか、責任と生存戦略をコンピュータに委譲するか、どちらかだという。そして、このふたつのパターンを戦略的に、まだらに用いればいいのだそうだ。正解かもしれない。堀江は「過去を振り返るな、未来に期待するな」
「商売が成功する基本的な秘訣は成功するまでやり続けろ」……勝手にしろ。

落合「AIが人間の仕事を奪うことは変えようのない事実であり、そうした未来がすでに始まっている。本書をここまで読んでくれた皆さんは、きっと今から『AIを使いこなす人間』へとマインドセットが切り替わっているだろう」……悪いが何も変わっていない。20万部の何万人かもそう思うだろう。(柴田)

落合陽一・堀江貴文「10年後の仕事図鑑」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797394579/dgcrcom-22/



●「10年後の仕事図鑑」は積ん読中。内容によっては、甥らにあげようと思っている。YouTubeやeSports(ゲーマー)が花形職業になるとは予測できなかった。写植屋さんはいなくなってしまった。写植の技術を生かしている人もいるが、生かせないまま別の職業に移った人もいる。

いや、今の私の仕事だってそうだ。テーブルコーディングなら自信があったのに、使えないものになってしまった。スライスは消えた。初期CSSも頑張って覚えたが拡張されていき、過渡期ハックもいらなくなった。

Flashだって使えるように勉強した。他のアプリも生まれては消えて行った。バージョン違いの技術本が本棚にずらり。Webサイトデザインのフォーマットがレスポンシブのためにほぼ決まり、ブログを更新する感覚でサイトが作れるサービスサイトも増えた。

結局、デザインや編集、コピー、アイデアに戻ってきたが、これもAI云々。悲観的になっているわけではなくて、現実的に考えて、昔より職業や技術サイクルが早まっている気がするから、予測と予防がいるよねって。

未来に関しては、のんびり屋である。そうすぐには世の中変わらないと思ってしまう質だ。ただ、一つの仕事を一生やり続けられる人の割合は減りそうだとは思っている。だから甥らには、予測できる一番大きな振り幅を伝えておいて、案外大丈夫だったね〜と話せたらなと。そのヒントがこの本の中にあるかは、読んでいないのでわからないっ。  (hammer.mule)