わが逃走[233]瀬戸内の構造美の巻 その2/齋藤 浩

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気がつけば一年の12分の1が過ぎ去ってしまいました。
このままいくと、すぐ夏になってしまう。
私は夏はキライなのです。暑いから。
嗚呼、早く秋にならないものだろうか。

さて前々回、因島で散歩中に発見した物件について書きましたが、今回はその続きであります。




運転中、視界の端に妙なものが映り、たまたま信号で停車したので凝視すると、なにかとても不思議なものを発見。
かなりなトマソンである。

鉄筋コンクリート建築二階建の公民館なのだが、
その二階部分、屋外へ通じる扉が左右ひとつずつ、計二つある。

扉を出ると、それぞれ上に登る階段があり、中央の踊り場とおぼしきところで合流している。それだけ。

つまり、ふたつの「高所ドア」を「純粋階段」が繋いでいるダブルトマソンといえよう。この存在感はスゴイ。

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隣の部屋に行くための廊下を付け忘れたので、外廊下にしたとか?
でもわざわざ階段で上り下りする必然性があるだろうか。

バリアフリーとか言う以前の問題である。
最初見たときはヒサシとして機能しているかとも思ったのだが、その下には何もないのだ。

さて、後にGoogleマップで見てみたところ、つい先ごろまで手前の敷地には消防署があったらしい。
これはそこと行き来するための通路だったのだろう。
謎が解けると、ちょっとワクワク感が減っちゃうものだなあ。

おそらく手前にはすぐ新しい建物がつくられるので、
この物件が見られるのも今だけかもしれない。
トマソンとはそういうものなのだ。
それにしても、近くで見ても離れて見てもその強さは圧倒的だ。

その後、向島へ。
昨年話題になったこの島はけっこう広い。
私も尾道通いが長いわりに、この島で歩いたことのある場所は、ごく一部だ。

今回は島の東側に向かって(ほとんど)あてもなく歩いてみたわけだが、そこで、ものすごいカワイイ物件と出会ったのである。

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この壁にくっついてる蛇口とちいさな水鉢。
これはなんとも「佇まいの美」といえましょう。
周囲に人影もなく、
今はもう使われていないっぽいけど、
かつてはここから打ち水や(井戸じゃないけど)井戸端会議がなされたりしたのだろうか。

近づいてみる。
この小ささはどうなのよ!
もう、かわいすぎます。
当然職人さんの手作りでしょう。風情があふれ出ています。
作った人も使ってた人もイイ人にちがいない!
そう思わずにはいられない。
そして、そう思わせる力ってすごい。

こういうデザインを超えた物件による「数値化できない力」、
偶然とか、無作為とか、そういったものの持つ力ってなんなんだろう。
これこそ理力ってやつなのかしら。

「おもしろいね」だけで終わらない、コトワリの力を
世のため自分のために活かせないものかのう。
と思うのだった。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。