[4738] 日刊アナログクリエイターの巻◇もじもじ勉強会に参加して

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《苦行のような細かい作業だね》

■わが逃走[234]
 日刊アナログクリエイターの巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[102]
 もじもじ勉強会に参加して
 関口浩之




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■わが逃走[234]
日刊アナログクリエイターの巻

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20190221110200.html
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●塗料の大革命

先日、ちょこっとプラモデルの話を書いたけど、模型業界ではここ数年、塗料の大革命がおきているらしい。

いままで主流だった「ラッカー系塗料をエアブラシで」から、「アクリル系塗料を筆塗りで」へと急激にシフトしているのだ。

簡単に言っちゃえば、モデラーの意識と年齢が上がってきているから、とも言える。いい大人が有機溶剤をガンガン噴霧する環境にこもるのはもちろん、家族の健康も考えなきゃねえ。という流れと、高性能な水溶性塗料が世界中で開発されて、それらを扱う店舗が増えてきている、といった要因があるらしい。

エアブラシを用いたラッカー系での塗装は、広い面積もムラなく美しいグラデーションで塗装可能。

とても便利ではあるが、油断すると最大公約数的な仕上がりになってしまう。つまり、ラクしてきれいに塗れるので、個性的に仕上げるにはある程度の意識が必要なのだ。

そして有機溶剤の問題と、それ以上に準備と後片付けがものすごくめんどくさい。なので、私はここ10年ほとんど使ってない。缶スプレー(ラッカー系)を屋外で吹いて下地とし、アクリル系塗料を基本色に少しずつ調子を加え、エナメル系塗料でディテールを描き込む方法で、ちまちまと塗っていた。

アクリル系塗料は彩度が高く水で洗えて便利だが、塗膜が弱く乾きが遅いのが難点だった。なのでアクリルカラーをラッカー溶剤で溶くという、環境や臭気の問題を無視したような使い方もしていたのだ。

ところが近年、輸入品の模型用アクリル塗料がそこここで話題となっている。スペイン生まれのファレホカラーや、英仏共同開発というシタデルカラーなどは、筆塗りの際の伸びもよく塗膜も丈夫、しかも速乾性だと聞いている。もちろん無臭。

ファレホは色数が豊富で、戦車や飛行機など専用色のセットなどもあるらしい。しかし取扱店舗がやや少なく、値段が高い。

シタデルは独自のシステムを持ち、カラーチャートと連動したアプリが、必要な色調を表現するまでの重ね方を瞬時に教えてくれる。これはとくに初心者には便利! 塗装の敷居を一気に下げている。しかし、値段がファレホより高い。つまり、とても高い。

むむー、いずれもコストがネックなのだ。うっかり数色買ってしまうと、そのまま買い足し続けることになりそうなのである。

仕事に使えるならまだしも、私の場合そういった言い訳が効かない。試用するにせよ、例えばシタデルを5色買ったら3000円くらいになる。3000円といえば10gpに相当する(300円のガンダムのプラモデルが10個買えるの意)。これはキビシイ。

しかし、いずれも他のアクリル塗料との混色が可能とある。で、あるなら! タミヤなど国内メーカーの模型用塗料はもちろん、画材屋さんで手に入るアクリル絵具を、これらのシンナーで溶けば、かなり面白いことになりそうではないか??

幸いなことに、ホルベインやターナーのアクリルガッシュは部屋の片隅の絵具箱に入っている。四半世紀くらい使ってないけど。フタを開けてみると、チューブの半数以上は固まってなかった。いける!

●シタデルカラーを使ってみる

というわけで、今回はシタデルカラーを使って試してみることにした。単に新宿のヨドバシで扱っていたから、というのがその理由である。初期投資1180円でベースカラー1色(ベージュっぽい明るめのグレー)と、エアブラシ用シンナーを入手。各590円。

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今回購入したベースカラー「RAKARTH FLESH」とシンナー(CASTE THINNER)シンナーが塗料と同量でこの値段というのは模型用としてはやはり高価な印象。ちなみにボトルの大きさは親指の先程度だ。

そんなわけで、ジャンクパーツ入れからテキトーなものを用意。途中まで作って飽きた、ガンダムかなんかのパーツだ。サイズは天地がだいたい38ミリくらい。これに対しサーフェイサーあり/なし、下地にラッカー系塗料を塗る/塗らないで実験してみた。

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左:サーフェイサーなし(=パーツまま)、右:サーフェイサーあり

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それぞれの右半分にラッカー系塗料のグレイを筆塗り。これらに対し、まずシタデルのベースカラーを塗る。

ボトルをよく振ってから平筆ですくい、ペーパーパレットに乗せてみた。サラサラとトロトロの中間的な粘度で、筆塗りに適した印象だ。

ポスターカラーでムラのない色面を作るのに適した濃度に近い。もちろん無臭。筆を一旦水につけ、やや水を含ませた状態で再度パレット上で伸ばす。いい感じになってきたので、まずはさっとパーツに乗せてみた。

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ベースカラー塗装1回目。やはりサーフェイサーを吹いた方が食いつきがイイ。それなりに筆ムラは出るが、気にせず乾燥を待つ。乾くまでの速度はラッカーとタミヤアクリルの中間くらい。

気温や湿度によっても違うと思うが、「気がついたら乾いてた」という印象。筆を動かさないときは、常に水の入った筆洗につっこんでおいた方がイイ。

おそらくエアブラシを使う場合は、足元に水を張った大きめのバケツを用意し、ハンドピースごと突っ込んでおかないとすぐ目詰まりするのではなかろうか。

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ベースカラー塗装2回目

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ベースカラー塗装3回目

3回塗ったところ、ムラのない均一な塗膜ができた。水で薄めながら素早く筆を動かすと、ディテール部分に細かい泡が発生することもあるが、放置しておけばほぼ消えるし、ブロワーで軽く吹けばすぐなくなる。

ちなみに今回はあくまでも試し塗りなので、多少のホコリ混入などは気にせず塗っている。さて、ここでアクリルガッシュの登場。

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若かりし頃使っていたアクリルガッシュを、

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混色し、程よい色をつくる。ちょっと赤みのある茶色を作り一旦筆を洗い、あらためて少しだけすくった赤茶に、シタデルのシンナーを一滴垂らして伸ばしてみた。わりとシャバシャバな濃度。これをパーツ全体に乗せてみた。

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シタデルベースカラーの上に、シタデルのシンナーで溶いたアクリルガッシュをのせたところ

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別角度。ここへ来て、サーフェーサーの有無による差が出てきた。手作業なので厳密ではないが、サフを吹いた方が食いつきが良い印象。微細とはいえ凹凸があることで、薄く溶いた絵具の引っ掛かりが増しているのだと思う。

この上からシタデルベースカラーとアクリルガッシュの緑、白を同様に混ぜ、さらに乗せた。

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シタデルとガッシュをペーパーパレットで混色し、

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乗せた。嬉しいことに、混色は全く問題ない。補色を加えることでナマっぽさがなくなり、落ち着いてきた。

さらに明るいグレー(アクリルガッシュ)でハイライトを入れた後、油彩系の塗料(GSIクレオスのウェザリングカラー)をのせた。彩度の高い青と茶色。

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ハイライト追加

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さらに油彩系塗料を乗せる。下地を侵すことなく自由度も高い印象。

ここまでの作業を振り返るに、絵画用のアクリルガッシュをシタデルのシンナーで溶けば、模型用塗料として充分に使えるのではないか。と思うのだった。

塗膜の強さを検証。パーツ下部のエッジをワイヤーブラシで軽くたたく。軽くこする。

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ワイヤーブラシでたたく

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別角度。まあ、普通にハゲるわな。サフなし(左)は白いプラがそのまま出るので、ちょっとカッコ悪い。とはいえ、塗膜は必要にして充分の強さだ。

ここで、ラッカー系の模型用つや消しクリアをスプレーした。

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つや消しクリアをスプレー

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別角度。下地が侵されることもなく、問題なし。つやが整い、より落ち着いた印象。さらに、パーツ上半分をエナメル系塗料でドライブラシ。

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エナメルでドライブラシ

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別角度。もともとエッジに明るい色を置いているので、今回はさほど効果ナシ。

パーツ下半分にコピック(アルコール系マーカー)で調子をつけてみた。つや消しクリア層のおかげで、染み込むように定着する。

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まずはパネルラインを囲むように色を置き

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カラーレスブレンダーを使ってなじませた

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別角度。かなり味わい深くなってきた。

仕上げ。コピックは使いやすい画材だけど、つやの処理が少々悩ましい。水性トップコートでのオーバースプレーを試したこともあるが、調子の面白さがなくなってしまうのだ。

なので今回は、明るいベージュ色のパステルを、紙やすりの上で粉状にしたものを用意し、軽く筆で撫でて仕上げとした。当然触れただけで落ちる。なので触らない。最後に一部のエッジに鉛筆をあてて輪郭を際立たせている。

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パステルと鉛筆

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別角度。ブレードランナーを見ながら塗っていたので、なんだか色調がそんな雰囲気になってしまったが、絵を描く感覚で楽しく塗装ができた!

シタデルカラーの高性能っぷりはよくわかったが、私にとっては高価だ。幸いにしてアクリルガッシュはたくさん持ってるので、適宜まぜこぜしつつ使っていきたい。

こんどは全工程アクリルガッシュで作ってみるのも楽しそうだ。そうそう、ファレホも試してみたいものよのう。

●立体に立体の絵を描く

最後に模型の塗装に関する私の考えを書いておきます。まず、これは単なる趣味なので、楽しけりゃイイ。

極端な話、塗らなくても満足であればそれでよいのです。その上で、塗りたくなったときは、どのように意識して作業を進めるべきか。私の場合、「立体に立体の絵を描く」ことを念頭においています。

つまりドイツ軍のIV号戦車の形をしたキャンバスにIV号戦車の絵を描く。ガンダムの形をしたキャンバスにガンダムを描く。ということです。

絵の描き方にもいろいろあります。ペン画に軽く色をつけることもあれば、絵具を何層も重ねていく表現もある。

こうしなきゃダメなどというルールはないので、そのときの気分で、そのときに楽しいと思う表現を選択すればいいのです。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[102]
もじもじ勉強会に参加して

関口浩之
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

前回からスタートした新連載「街中で見つけた素敵な書体探検記」ですが、今回は、お休みとさせてください。「ガムテープ文字(修悦体)」探検記は、次回お送りします。

●もじもじ勉強会

「もじもじトーク」は、フォントおじさんこと、ぼく関口浩之の連載コラムの名称です。日刊デジタルクリエイターズにて隔週木曜に配信してます。連載5年目になりました!

そして、「もじもじ勉強会」は、Yahoo! JAPANが主催するセミナーです。名称が似てて、なんか、兄弟みたいですね。親近感を感じます!

文字に関するセミナーや勉強会を、いくつか主催してますが、「もじもじ勉強会」の名称は思い付きませんでした。シンプルだけど、良いネーミングですね。

実は、数週間前まで、「もじもじ勉強会」の存在、知りませんでした……。Facebookで、もじもじ勉強会の情報を、たまたま発見し、申し込みしました。

もじもじ勉強会(第3回)イベントページ
https://yj-meetup.connpass.com/event/117038/

イベントを見つけた時、一般参加枠80名に対して、すでに150名がエントリーされていてたのですが、ブログ枠の最後の1名が残っていたので、それを、即、申し込みしました。

Yahoo! JAPANが不定期に開催する「もじもじ勉強会」は、第1回が字游工房の鳥海修さん、第2回がアドビシステムズの西塚涼子さん、という豪華講師陣が登壇している勉強会です。

そして、第3回は、フォントメーカートップ企業であるモリサワのタイプデザイナーが登壇するという、今回も素敵な企画なのです。

ブログ枠で参加したので、イベントレポートを書かなくっちゃ。

●「モリサワのフォントデザイナーが語る! フォントの作り方と使い方」

このタイトルに強く心を惹かれました。今まで、30名以上のタイプデザイナーの方々にお会いし、直接、お話を聴く機会がありました。しかしながら、モリサワのタイプデザイナーが登壇するセミナーに、今まで一度も参加したことがなかったのです。

というか、そういうセミナー、なかったような気がします。なので、とても貴重なイベントだと思ったのです。

ここでは、イベントに参加した感想、会場の雰囲気、記憶に残った話題などを中心に書きますね。

今回のイベント、なんと、2時間半のセミナーの様子がYouTubeで見れます。ご興味のある方、ぜひ、ご覧ください。

もじもじ勉強会(第3回)セミナー録画 in Yahoo! JAPAN LODGE
~モリサワのフォントデザイナーが語る! フォントの作り方と使い方~


フォントの作り方、美しさ、最新のフォントトレンド、フォント品質の高さの裏側の話が聞ける2時間半の動画です。

●リラックスした雰囲気のイベント

「もじもじ勉強会」のイベントプロデューサーは、Yahoo! JAPANの市川大翔さんです。オープンコラボレーションスペース「LODGE」で、プロモーションやデザインを担当されている方です。

そして、セミナー本編の進行役は、モリサワの相川晴俊さんと富田哲良さん。僕はフォントおじさんなので、お二人とお会いしたことはあります。

進行役の3名が爽やかで、オープニングトークも和やかだったので、フォント初心者の方も、リラックスして楽しむことができたと思います。

オープニングトークに続き、モリサワの若手タイプデザイナー3名の自己紹介が行われました。

トップバッター小針優弥さんは、大学在学の時に、鳥海修さんの文字塾に参加し、卒業後、タイプデザイナーとして2014年にタイプバンクに入社し、合併により2018年にモリサワへ入社とのことです。

モリサワではタイプデザイナーが十数名、在籍しているとのことですが、入社する前に大学などで文字を本格的に学んでいた人が、タイプデザイナーになるとは限らないそうです。おおっ、そうなんだぁ……。

次に、樽野さくらさんの自己紹介。2011年にモリサワ文研に入社し、2018年よりモリサワで主に欧文書体のプロジェクトを担当しています。

富田さんから「A1ゴシックに携わったんだよね」とツッコミがありましたが、樽野さんから「私はサポートです。加工したぐらいです。携わったことで勉強になりました」という謙虚な回答があり、会場が和みました。

次に、本間由夏さん。大学で油画を学び、2017年にモリサワ文研に入社した若手タイプデザイナーです。2018年からモリサワにて、主に和文書体のプロジェクトに関わっているそうです。

冒頭の15分間ぐらいが登壇者の自己紹介でしたが、その時点で、幸せな気分になりました。

僕は、登壇者から自己紹介を聞くのが好きです。もちろん、セミナー本編の書体制作話とかも勉強になるのですが、まずは、登壇者がどんな方なのかという点に興味があります。

どういう経緯でタイプデザイナーになったのか、どんな性格なのかを聞くのが楽しみなんです。

みなさん、しっかりとした自分の意見を持っているし、参加者をひきつける個性を、3名それぞれが持ってました。すばらしい!

ここ5年ぐらいで、若手タイプデザイナーが、どんどん活躍する時代になりましたね。みなさん、絶賛、応援しているので、素敵な書体をどんどん作ってください。

そして、その後は、「フォントが作られるまで」「文字のデッサン」「フォントの美しさ」「書体の選び方」「トレンド」「モリサワ製品について」「座談会」へ続いていきます。

こんなノリで感想を書き続けると、すごい長文になりそうなので、気になった話題をふたつご紹介します。

●日本語を制作するということ

日本語って、Adobe-Japan1-6という規格であれば、23,000文字以上あります。フォントメーカーでは、それを全部、制作するわけです。すごいね。

画数の少ない文字もあれば、画数が多い複雑な文字もあります。漢字は、偏(へん)や旁(つくり)、冠(かんむり)などのパーツで構成されてますよね。

でも、それらパーツを機械的に組み合わせて、文字を作るだけでは、美しいフォントは作れないのです。

「フォントが作られるまで」のセッションで、「きへん」が入った文字で画数が比較的同じものを十数個並べて、それらを重ねたときのスライドを見せてもらいました。

「はらい」のアウトラインの輪郭がすべて異なっていたり、「縦画」の太さも微妙に異なっているのです。その様子を説明したスライドを掲載します。
http://bit.ly/mojimoji10201

また、単語や熟語を何千通りも実際に組んで、目で確認してバランス調整したり、黒みにバラツキが出ないように微調整など、地道に行っているとのことです。やっぱ、タイプデザイナーってすごいなぁ。

富田さんが、「その作業って、苦行のような細かい作業だね」と言ってました。
そのような地道な作業しているからこそ、美しい書体が生れるわけです。

●ベトナム語を制作するということ

2020年にオリンピック開催ということもあり、今年は、多言語対応するためのフォントが重要テーマのひとつになっています。

英語、ドイツ語、フランス語、そして、中国語(中国語・簡体字)、韓国語あたりまでは、見たことはありますよね。イメージもある程度できます。

でも、ベトナム語はどうでしょうか? 僕は、まったくイメージできませんでした。

小針さんは、ベトナム語のタイプデザインで、日本で一番、詳しい方です。制作過程のベトナム語をみせてもらいました。これです。
http://bit.ly/mojimoji10202

おぉ、こんなアクセント符号(文字の上に付いているマーク)なのね……。知らなかった。しかも、字形は、欧文由来なんですね。

どんな外国語の場合であっても、書体デザインする際は、その国の文化や歴史をしっかり学ぶことが重要とのことです。

そして、その言語のネイティブの人が、組まれた文字を見たときに、違和感を感じさせない文字の形をデザインすることが大事とのこと。その通りだね、と感じましたが、それを実践するのは容易くありません。

富田さんから、「小針さんは、ベトナムへ行ったことはないんだよ」と言ってました。えっ、本当なの? ネイティブの人が見ても違和感のない書体デザインしているということは、相当、勉強しているんだなと思いました。

●ツイッターまとめ発見

今回のセミナーのツイッターまとめを発見したので、ご紹介します。

2019.02.13「もじもじ勉強会」のツイッターまとめ
https://togetter.com/li/1319293

デジクリの読者は、書体に詳しい方はあまり多くないと思います。でも、毎日、接している文字が、どのように制作されているかを知ることも楽しいです。

ポスターの文字やテレビで出てくるテロップ文字をみた時、「このフォントを制作した人がいるんだね」とか、「2万文字以上も地道に制作してくれてありがとう」という気持ちになると思います。

難しいことを書いている部分はスルーしてもいいので、気になるところだけでも、目を止めて読むと、新しい発見があると思います。

なお、フォントマニアの方は、がっつり、ご一読ください(笑)

最後に、僕が会場で撮影したスナップ写真を10枚ほど掲載します。公開OKをいただきました。じゃーん!
http://bit.ly/2mojimoji10203

●Yahoo! JAPANは、僕のベンチャースピリッツ原点

今回のセミナーは、Yahoo! JAPANの「LODGE」というイベント会場で開催されました。

ところで、Yahoo! JAPANという検索サービスがいつ誕生したか、ご存知ですか? 1996年4月1日です。もう、23年も前のことなんです。

僕は、23年前、Yahoo! JAPANの検索エンジン開発プロジェクトで、コンテンツプロデューサーを担当しました。過去にYahoo! JAPANの取材記事で、そのことが書かれていたので、公開情報です。

でも、僕は、Yahoo! JAPANの社員になったことはないんです。Yahoo! JAPANがサービス開始するまでの、立ち上げプロジェクト参画メンバーのひとりでした。

1995年12月、上司から、「明日から米国Yahoo!へ出張して、検索サービスを日本語するための聞き取りしてきてね」と言われたのが切っ掛けでした。

でも、この規模の開発なら、通常、半年から1年掛けて開発すると思います。それを3か月でやり遂げたプロジェクトだったので、僕は、そこでベンチャースピリッツを学んだような気がします。

その3か月間は、正直、しんどかったけど、予定通り、サービスを立ち上げることに情熱を燃やした奮闘記は、僕にとっての宝物です。

あれから23年経って、Yahoo! JAPANと「もじもじ」で繋がったこと、とても感慨深いです。

最後に、セミナー会場が素敵だったので紹介します。

Yahoo! JAPAN 「LODGE」
https://lodge.yahoo.co.jp/

イベント登壇で何度か訪問したことがあります。解放的で素敵な空間です。Yahoo! JAPANが運営するオープンコラボレーションスペース「LODGE」、みなさんも、ぜひ、ご活用ください。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、オトナンサー等のWebメディアにて、文字に関する記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


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編集後記(02/21)

●偏屈BOOK案内:「自衛隊防災BOOK」

マンションの自主的・防災委員をもう何年もやっている。輪番制の理事を一年やった人は、次の年は防災委員をやることになったのは数年前だ。わたしはそのずっと前から、勝手にひとり専任となり「震災対応マニュアル」を作り続けてきた。一昨年からは「震災・火災・水災対応マニュアル」と大冊になった。

今年は内容の半分ぐらいを新情報と入れ替えた。編集するのはわたし一人で、制作は管理会社の担当がやっている。実際は社内のデザインチームがやっているのだろう。カラーコピーで24ページという、けっこう見ばえのいい冊子だ。今回、資料にしたのは「自衛隊防災BOOK」だ。自衛隊、防衛省、博報堂が協力している。楽しく読んだが、マンションの防災にはほとんど関係がなかった。

マンションは建物が丈夫だから、かなりの震度の地震でも耐えられる、と希望的観測をしていて、とにかく避難所行きは前提になく、長期間をマンションの自室で堪え忍ぶつもりのお気楽な住民が多い。だが現実には、水や食料の備蓄もしていないようだ。水がない、あっても流せない「トイレ問題」について、深刻に考えていない人が多い。上の階に行くほど地獄を見ることになるのに。

この本は、危機管理のプロ・自衛隊が、災害や日常生活に役立つ100のノウハウを解説する。災害に備えて自衛官が日頃から心がけていること、地震発生時にまず最初にすべきこと、身近なものを使ってピンチを切り抜ける方法、海・山・川で遭難したときに助かる方法、災害時・日常生活に役立つライフハック(いかに作業を簡便かつ効率良く行うかを主眼としたテクニック群)など。

シャツを、ズボンを、ペットボトルを浮き輪代わりにする方法とか、海で沖に流された際の対処法とか、上空から見つけてもらいやすくする方法とか、たぶん今後一生出会わない事態のことを熱心に読んだ。危機管理のプロが教える、と銘打ったわりにはショボいというか、小さな雑学っぽい内容が多い。ライフハックが中心で、わざわざ「自衛官が〜」というほどでもないような気がする。

わたしがコレは役に立つかも、と思ったのが「ブルーシートと新聞紙を寝袋にする方法」だ。ブルーシートを納豆の藁容器のような形にし、両端をまとめてガムテープで巻き付ける。その中に新聞紙を敷き詰めれば即席の寝袋になる。中に入り顔だけ出して使う。家を追い出されたときに使えるテクニックだ。

開きにくい壜のフタを開ける方法とか、缶切りなしで缶詰を開ける方法とか、はさみの切れ味を良くする方法とか、迷彩服着てやるにはショボすぎるやつも。本当に役立つと思ったのは、「ストップウォッチなしで正確な時間を計る方法」で、数字の前に100をつけるとよい。101、102、103……110までだな。確かに秒間隔がズレにくい。面白い。しかし、そんなテクニック使うときがあるのか。

ホンモノの自衛官がでてきたのに、内容は「ちょっとしたアイデア」みたいなものが多いし、防災に特化したわけでもないし、中途半端でしまらない本だ。「本書を読んで防災意識を高めてみませんか?」なんて言われてもなあ。そもそも、ライフハックがコンセプトで防災本ができるわけないだろう。(柴田)

「自衛隊防災BOOK」2018 マガジンハウス
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4838730101/dgcrcom-22/


●こんなに重ねてあるのか〜。/Yahoo! JAPANが出来た頃を知っている。まさか日本版が出来るなんてと思った。歳とったな……。

/MacBook Pro+キャッシュレス続き。自分の買うものや懐事情を把握されるのは気持ち悪い反面、マイナンバー社会になるならどうでもいいや、と。個人情報は今まで使っていたネットサービスが漏らしてくれているし(汗)。便利さとのトレードオフと割り切ってる。

以前にも書いたが、クレジットカードの返済によって信用を積み上げることが大事だとも考えている。急に物入りになった時に借りられるようにと思ってのことだが、今のところ少ない貯蓄でまかなえるぐらいしか使っていない……。

なのでカードを作る際に断られたことはなく、使ってないのに限度額がどんどん上がる。明細には逐次目を通しているよ。続く。(hammer.mule)