もじもじトーク[102]もじもじ勉強会に参加して
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

前回からスタートした新連載「街中で見つけた素敵な書体探検記」ですが、今回は、お休みとさせてください。「ガムテープ文字(修悦体)」探検記は、次回お送りします。

●もじもじ勉強会

「もじもじトーク」は、フォントおじさんこと、ぼく関口浩之の連載コラムの名称です。日刊デジタルクリエイターズにて隔週木曜に配信してます。連載5年目になりました!

そして、「もじもじ勉強会」は、Yahoo! JAPANが主催するセミナーです。名称が似てて、なんか、兄弟みたいですね。親近感を感じます!

文字に関するセミナーや勉強会を、いくつか主催してますが、「もじもじ勉強会」の名称は思い付きませんでした。シンプルだけど、良いネーミングですね。

実は、数週間前まで、「もじもじ勉強会」の存在、知りませんでした……。Facebookで、もじもじ勉強会の情報を、たまたま発見し、申し込みしました。

もじもじ勉強会(第3回)イベントページ
https://yj-meetup.connpass.com/event/117038/






イベントを見つけた時、一般参加枠80名に対して、すでに150名がエントリーされていてたのですが、ブログ枠の最後の1名が残っていたので、それを、即、申し込みしました。

Yahoo! JAPANが不定期に開催する「もじもじ勉強会」は、第1回が字游工房の鳥海修さん、第2回がアドビシステムズの西塚涼子さん、という豪華講師陣が登壇している勉強会です。

そして、第3回は、フォントメーカートップ企業であるモリサワのタイプデザイナーが登壇するという、今回も素敵な企画なのです。

ブログ枠で参加したので、イベントレポートを書かなくっちゃ。

●「モリサワのフォントデザイナーが語る! フォントの作り方と使い方」

このタイトルに強く心を惹かれました。今まで、30名以上のタイプデザイナーの方々にお会いし、直接、お話を聴く機会がありました。しかしながら、モリサワのタイプデザイナーが登壇するセミナーに、今まで一度も参加したことがなかったのです。

というか、そういうセミナー、なかったような気がします。なので、とても貴重なイベントだと思ったのです。

ここでは、イベントに参加した感想、会場の雰囲気、記憶に残った話題などを中心に書きますね。

今回のイベント、なんと、2時間半のセミナーの様子がYouTubeで見れます。ご興味のある方、ぜひ、ご覧ください。

もじもじ勉強会(第3回)セミナー録画 in Yahoo! JAPAN LODGE
~モリサワのフォントデザイナーが語る! フォントの作り方と使い方~


フォントの作り方、美しさ、最新のフォントトレンド、フォント品質の高さの裏側の話が聞ける2時間半の動画です。

●リラックスした雰囲気のイベント

「もじもじ勉強会」のイベントプロデューサーは、Yahoo! JAPANの市川大翔さんです。オープンコラボレーションスペース「LODGE」で、プロモーションやデザインを担当されている方です。

そして、セミナー本編の進行役は、モリサワの相川晴俊さんと富田哲良さん。僕はフォントおじさんなので、お二人とお会いしたことはあります。

進行役の3名が爽やかで、オープニングトークも和やかだったので、フォント初心者の方も、リラックスして楽しむことができたと思います。

オープニングトークに続き、モリサワの若手タイプデザイナー3名の自己紹介が行われました。

トップバッター小針優弥さんは、大学在学の時に、鳥海修さんの文字塾に参加し、卒業後、タイプデザイナーとして2014年にタイプバンクに入社し、合併により2018年にモリサワへ入社とのことです。

モリサワではタイプデザイナーが十数名、在籍しているとのことですが、入社する前に大学などで文字を本格的に学んでいた人が、タイプデザイナーになるとは限らないそうです。おおっ、そうなんだぁ……。

次に、樽野さくらさんの自己紹介。2011年にモリサワ文研に入社し、2018年よりモリサワで主に欧文書体のプロジェクトを担当しています。

富田さんから「A1ゴシックに携わったんだよね」とツッコミがありましたが、樽野さんから「私はサポートです。加工したぐらいです。携わったことで勉強になりました」という謙虚な回答があり、会場が和みました。

次に、本間由夏さん。大学で油画を学び、2017年にモリサワ文研に入社した若手タイプデザイナーです。2018年からモリサワにて、主に和文書体のプロジェクトに関わっているそうです。

冒頭の15分間ぐらいが登壇者の自己紹介でしたが、その時点で、幸せな気分になりました。

僕は、登壇者から自己紹介を聞くのが好きです。もちろん、セミナー本編の書体制作話とかも勉強になるのですが、まずは、登壇者がどんな方なのかという点に興味があります。

どういう経緯でタイプデザイナーになったのか、どんな性格なのかを聞くのが楽しみなんです。

みなさん、しっかりとした自分の意見を持っているし、参加者をひきつける個性を、3名それぞれが持ってました。すばらしい!

ここ5年ぐらいで、若手タイプデザイナーが、どんどん活躍する時代になりましたね。みなさん、絶賛、応援しているので、素敵な書体をどんどん作ってください。

そして、その後は、「フォントが作られるまで」「文字のデッサン」「フォントの美しさ」「書体の選び方」「トレンド」「モリサワ製品について」「座談会」へ続いていきます。

こんなノリで感想を書き続けると、すごい長文になりそうなので、気になった話題をふたつご紹介します。

●日本語を制作するということ

日本語って、Adobe-Japan1-6という規格であれば、23,000文字以上あります。フォントメーカーでは、それを全部、制作するわけです。すごいね。

画数の少ない文字もあれば、画数が多い複雑な文字もあります。漢字は、偏(へん)や旁(つくり)、冠(かんむり)などのパーツで構成されてますよね。

でも、それらパーツを機械的に組み合わせて、文字を作るだけでは、美しいフォントは作れないのです。

「フォントが作られるまで」のセッションで、「きへん」が入った文字で画数が比較的同じものを十数個並べて、それらを重ねたときのスライドを見せてもらいました。

「はらい」のアウトラインの輪郭がすべて異なっていたり、「縦画」の太さも微妙に異なっているのです。その様子を説明したスライドを掲載します。
http://bit.ly/mojimoji10201


また、単語や熟語を何千通りも実際に組んで、目で確認してバランス調整したり、黒みにバラツキが出ないように微調整など、地道に行っているとのことです。やっぱ、タイプデザイナーってすごいなぁ。

富田さんが、「その作業って、苦行のような細かい作業だね」と言ってました。
そのような地道な作業しているからこそ、美しい書体が生れるわけです。

●ベトナム語を制作するということ

2020年にオリンピック開催ということもあり、今年は、多言語対応するためのフォントが重要テーマのひとつになっています。

英語、ドイツ語、フランス語、そして、中国語(中国語・簡体字)、韓国語あたりまでは、見たことはありますよね。イメージもある程度できます。

でも、ベトナム語はどうでしょうか? 僕は、まったくイメージできませんでした。

小針さんは、ベトナム語のタイプデザインで、日本で一番、詳しい方です。制作過程のベトナム語をみせてもらいました。これです。
http://bit.ly/mojimoji10202


おぉ、こんなアクセント符号(文字の上に付いているマーク)なのね……。知らなかった。しかも、字形は、欧文由来なんですね。

どんな外国語の場合であっても、書体デザインする際は、その国の文化や歴史をしっかり学ぶことが重要とのことです。

そして、その言語のネイティブの人が、組まれた文字を見たときに、違和感を感じさせない文字の形をデザインすることが大事とのこと。その通りだね、と感じましたが、それを実践するのは容易くありません。

富田さんから、「小針さんは、ベトナムへ行ったことはないんだよ」と言ってました。えっ、本当なの? ネイティブの人が見ても違和感のない書体デザインしているということは、相当、勉強しているんだなと思いました。

●ツイッターまとめ発見

今回のセミナーのツイッターまとめを発見したので、ご紹介します。

2019.02.13「もじもじ勉強会」のツイッターまとめ
https://togetter.com/li/1319293


デジクリの読者は、書体に詳しい方はあまり多くないと思います。でも、毎日、接している文字が、どのように制作されているかを知ることも楽しいです。

ポスターの文字やテレビで出てくるテロップ文字をみた時、「このフォントを制作した人がいるんだね」とか、「2万文字以上も地道に制作してくれてありがとう」という気持ちになると思います。

難しいことを書いている部分はスルーしてもいいので、気になるところだけでも、目を止めて読むと、新しい発見があると思います。

なお、フォントマニアの方は、がっつり、ご一読ください(笑)

最後に、僕が会場で撮影したスナップ写真を10枚ほど掲載します。公開OKをいただきました。じゃーん!
http://bit.ly/2mojimoji10203


●Yahoo! JAPANは、僕のベンチャースピリッツ原点

今回のセミナーは、Yahoo! JAPANの「LODGE」というイベント会場で開催されました。

ところで、Yahoo! JAPANという検索サービスがいつ誕生したか、ご存知ですか? 1996年4月1日です。もう、23年も前のことなんです。

僕は、23年前、Yahoo! JAPANの検索エンジン開発プロジェクトで、コンテンツプロデューサーを担当しました。過去にYahoo! JAPANの取材記事で、そのことが書かれていたので、公開情報です。

でも、僕は、Yahoo! JAPANの社員になったことはないんです。Yahoo! JAPANがサービス開始するまでの、立ち上げプロジェクト参画メンバーのひとりでした。

1995年12月、上司から、「明日から米国Yahoo!へ出張して、検索サービスを日本語するための聞き取りしてきてね」と言われたのが切っ掛けでした。

でも、この規模の開発なら、通常、半年から1年掛けて開発すると思います。それを3か月でやり遂げたプロジェクトだったので、僕は、そこでベンチャースピリッツを学んだような気がします。

その3か月間は、正直、しんどかったけど、予定通り、サービスを立ち上げることに情熱を燃やした奮闘記は、僕にとっての宝物です。

あれから23年経って、Yahoo! JAPANと「もじもじ」で繋がったこと、とても感慨深いです。

最後に、セミナー会場が素敵だったので紹介します。

Yahoo! JAPAN 「LODGE」
https://lodge.yahoo.co.jp/


イベント登壇で何度か訪問したことがあります。解放的で素敵な空間です。Yahoo! JAPANが運営するオープンコラボレーションスペース「LODGE」、みなさんも、ぜひ、ご活用ください。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、オトナンサー等のWebメディアにて、文字に関する記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/