[4748] 日刊アナログクリエイターの巻 その2◇ガムテープ文字・修悦体

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《「フォントおじさん2019」in 大阪》

■わが逃走[235]
 日刊アナログクリエイターの巻 その2
 齋藤 浩

■もじもじトーク[103]
 街中で見つけた素敵な書体探険記 その2
 ~ガムテープ文字(修悦体)~
 関口浩之



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■わが逃走[235]
日刊アナログクリエイターの巻 その2

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20190307110200.html

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まず前回の続きから。

高性能な水性アクリル系塗料の出現により、模型業界における筆塗り表現が注目されている昨今、最新の塗料と四半世紀前のアクリルガッシュ(いわゆる画材)を併用して、塗装の実験をしてみた。

結果的に「けっこうイケた」のだが、その後、最新の溶剤を使って四半世紀前のアクリルガッシュ「のみ」での塗装を試みたところ、前回のようにはいかなかった。

下地色としての隠蔽力(透けない性能)は問題ないのだが、素材への食いつきを考えて設計された模型用塗料に対し、絵画用のガッシュは塗膜が弱く、後から異なる性質の塗料(エナメルなど)を乗せると、ひび割れたり剥がれ落ちることが判明。

ただし、模型用ベース色とアクリルガッシュを混色することは問題ないようなので、ベース色をいくつか揃えた上でガッシュで調色していけば、有害なシンナーを使わずに自由度の高い表現が可能となりそうだ。

そんなことを考えていたら、日本のメーカーから、新製品が発売された。その名も『アクリジョン ベースカラー』。発売元はGSIクレオス。模型用塗料のトップメーカーだ。

アクリジョンとは同社のエマルジョン系水性アクリル塗料シリーズで、現在発売中のラインナップに加え、下地処理に特化したものが今回登場したベースカラーということらしい。

製品紹介には、隠蔽力を高めた成分設計により上塗りするカラーの発色が向上、素材に対する食いつきもイイとある(意訳)。

というわけで、さっそく発売日にヨドバシにて購入した。ラインナップは白、グレー、赤、黄、青、緑の6色だ。

商品名は「ベースホワイト」「ベースグレイ」「ベースレッド」「ベースイエロー」「ベースブルー」「ベースグリーン」。

フタを開けてみたところ、ほぼ無臭。棒で撹拌してみると、粘度はサラサラとトロトロの中間程度。筆塗りに適した印象だ。使用方法の欄にも、筆塗りの場合は薄めずにそのまま使えとある。

試し塗り用にテキトーな部品を用意した。以前作りかけて放棄したガンダムのランナー(部品がついてる枠)だ。ちょうどパーツが6コついているので、それぞれに各色塗っていこうと思う。

白いパーツだと透け具合が判断しづらいので、わざとイジワルして濃いグレーの成型色のものを選んだ。
https://bn.dgcr.com/archives/2019/03/07/images/001

筆塗り1回目。
https://bn.dgcr.com/archives/2019/03/07/images/002

感覚はアクリルガッシュで色面を塗るのに近く、ジェッソにガッシュを混ぜて、粘度を抑えたような使い心地だ。乾くのも早いし、発色もイイ。表面に細かい粒子を感じるので、重ねる塗料の食いつきも期待できそう。

筆塗り2回目。
https://bn.dgcr.com/archives/2019/03/07/images/003

ホワイトとイエローに多少筆ムラが残ったが、この成型色にこの発色であれば、まったく問題ないレベル。下地としては充分だろう。

これに、模型用塗料を重ねてみた。
https://bn.dgcr.com/archives/2019/03/07/images/004
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ベースホワイトの上に……

アクリル系明灰白色ベタ塗り。さらに溶剤で薄めに溶いたエナメル系フラットブラックを全体に塗り、溶剤を染み込ませたティッシュペーパーで拭き取り。下地に浸透するような印象で、かなりしっかり乗る。汚し過ぎたようだったので、上からアクリル系の明るいグレイを乗せた後、スポンジヤスリでならした。

ベースグレイの上に……

油彩系ブラウンを流し、エッジにエナメル系スカイグレイをドライブラシ。

ベースレッドの上に……

ベースカラーのみで調合した濃いグレイ(ベースグレー+ベースグリーン)を水で薄め、全体に乗せた後、ティッシュで拭き取り。乾燥後、同じく明るい赤(ベースレッド+ベースイエロー)をエッジまわりに重ねた。ベースカラーだけでも、わずか2工程で立体感のある表現ができる。

ベースイエローの上に……

ゴールドを塗装。ラッカー系塗料を筆塗りしたにもかかわらず、下地が溶けたりひび割れたりすることはなかった。やや薄めて塗ったのだが、一発で発色。乾燥後、溶剤で薄めに溶いたエナメル系クリアレッドをコートしている。さらに、ハイライト部分をエナメル系チタンゴールドで描き込み。

ベースブルーの上に……

ベースカラーのみの混色による濃いブルー(ベースブルー+ベースグレー+ベースレッド)をを水で薄め、全体に乗せた後、ティッシュで拭き取り。乾燥後、同じく明るい青(ベースブルーを基にベースホワイトを添加)をエッジまわりに重ねた。

ベースグリーンの上に……

アクリル系NATOグリーンを溶剤で溶いたものを全体に乗せ、すぐにティッシュで拭き取り。乾燥後、エナメル系スカイグレイをやはり溶剤で薄めに溶き、凹みを中心に重ねてみた。

さらに他の画材で描き込みなど。
https://bn.dgcr.com/archives/2019/03/07/images/006

ベースホワイト:ラッカー系つや消しクリアをスプレーした後、アルコール系
マーカー(コピック)でエッジを中心に色を置いた
ベースグレイ:エッジに鉛筆で輪郭を描き込み
ベースレッド:アルコール系マーカーで軽くシャドウを描き込み、鉛筆で輪郭をなぞる
ベースイエロー:鉛筆で輪郭をなぞったのみ
ベースブルー:タミヤのウェザリングマスター(アイシャドウのような半固形粉末塗料)のサンドカラーを適宜重ね、鉛筆で輪郭を描き込み
ベースグリーン:ウェザリングマスターをやや大げさに擦り付けた後、水を含ませたティッシュペーパーで軽く落とした

ベースレッドのアップ。
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ベースイエローのアップ。
https://bn.dgcr.com/archives/2019/03/07/images/008

ひととおり試してみた印象は、とても使いやすく、融通のきく塗料と感じた。ベースカラーシリーズだけでもさまざまな表現が可能で、より絵画的な方向で製作したら面白いと思うし、もちろん失敗しても塗り重ねたり削り落とすことができるので気楽だ。

なによりも有機溶剤を使わずに、水さえあれば作業ができる。

これは死ぬまで作り続けたいジジイにとっても、新たに始める人にとっても、まさに福音と言えましょう。

塗料の残り香により、勉強サボってプラモ作っていたことが母さんにバレずにすむという、夢のような時代が到来したのかもしれない。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[103]
街中で見つけた素敵な書体探険記 その2
~ガムテープ文字(修悦体)~

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20190307110100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

新年を迎えたばかりだと思っていたら、もう3月なんですね。そして、平成は残すところ、あと2か月……。時が経つは早い。

新連載『街中で見つけた素敵な書体探検記 その1』では「春日駅フォント」を紹介しました。本日は「ガムテープ文字」です。

●ガムテープ文字ってなに?

JR山手線の新宿駅、階段付近の工事エリアでこんな看板を発見しました。
じゃーん!
http://bit.ly/syuetsutai


愛嬌があって可愛らしい文字ですよね。撮影したのは先月2月24日です。

この文字、ガムテープで作られています。テープ幅を変えてウエイト(太さ)違いの文字があったり、テープ色を変えて背景色や文字色が異なる文字があったり、バリエーション豊富です。

フォント名は「修悦体」と言います。なぜ、修悦体かというと、考案者が佐藤修悦(さとう しゅうえつ)さんだからです。

制作工程の動画を発見しました。すごい。

ロケットニュース24(取材動画: 2分間)


下書き線のような縦横グリッドが、最終的には、実際の文字の縦線と横線になります。論理的であり、レタリング技術の応用と言えそうです。

●修悦体の誕生秘話

修悦体は、2004年にJR新宿駅で誕生しました。

2004年、JR新宿駅東口で改築工事があったんですが、駅は迷路のような状態でした。佐藤さんは、当時、三和警備保障の警備員として、乗客の誘導整備をおこなっていました。

JR新宿駅は多くの人が乗降するので、左側通行の案内を音声を使って誘導するのには限界があったようです。また、「階段はどっちですか?」などと多くの人から尋ねられたそうです。

そこで、佐藤さんが手に取ったのは、工事現場にあった「ガムテープ」なのです。カッターを駆使して、手作り書体が完成したのです。

JR新宿駅から「案内板を制作して欲しい」と依頼があったわけではなく、必要に迫られて、勝手に制作したところ、駅員に褒められそうです。

そして、正式許可がおりて、ガムテープ文字「修悦体」が完成したのです

工事現場にあったガムテープは、最初、白・黒・黄の3色だったのですが、その後、赤・青・緑の3色が追加で認められ、電車の色に合わせた案内板の制作が可能になったそうです。

案内板を設置するのであれば、専門業者に発注するのが普通ですよね。でも、制作には数週間は掛かるはずです。現場の人だからこそ、必要に迫られ、知恵が働いて、味わいのある素敵な書体が完成しちゃったんです。

●みんなから愛される修悦体

修悦体のことは、記事で読んだことがあったので知ってましたが、実際に見たことはありませんでした。

実は、1年半前の2017年夏に、修悦体をJR新宿駅で発見して、「おぉ、これがガムテープ文字かぁ」と感激したのを、今でもしっかり覚えてます。

今まで、3回ほど、SNSで「本物の修悦体を発見したよ」と写真掲載したら、多くの人からコメントをいただきました。

・ウェイトの違いや長体、結構バリエーションあるんですね!
・「ぎょうにんべん」のアレンジがすごい!
・職人技! すごい!
・サインシステムとしての機能も、ちゃんと果たしている!
・ほんと見やすいですよね!
・一瞬、左側通ッテ、と見えてしまうけどそれでも間違ってないw
・レタリングの基礎習ったの? っていうくらい秀悦。お名前もしゅうえつさん。

……などなど、たくさんのメッセージと、いいね! をいただきました。みなさんも、ガムテープ文字「修悦体」が好きなんですね。

JR新宿駅だけでなく、JR日暮里駅では工事看板のみならず、さまざまな広報掲示物も手がけたそうです。

2007年、駅長特別賞として賞状と靴下2足が贈呈されました。そんな記事も読んで、ほっこりしました。

●「フォントおじさん2019」in 大阪

最後に、セミナー情報です。今度の日曜、大阪開催のクリエイターズ向けセミナーイベントに出演します。

第38回リクリセミナー「Webデザイントレンド in Osaka 2019」
2019年3月10日(日)14:00〜18:45
https://recreators.doorkeeper.jp/events/87226


僕は「フォントセッション」を担当します。タイトルが「フォントおじさん2019」になってる。なんかタイトルが変ですけど(笑)

「Webデザイントレンドセッション」では、グローバル500企業、上場3,400社、自治体1,700サイトを定点観測して、傾向を発表するという企画なんです。

これだけの数のサイトを、実際に目で確認してるって変態技ですね。(←褒めてます)

原一浩さんが、『Web デザイントレンド in OSAKAをより楽しむためのキーワード』プログを公開しているので、こちらもご覧ください。
https://kansock.industries/ja/articles/static__api__20190305_01/


原さんは、2014年に「フッター山」のトレンドを発見しましたが、そのトレンドは、今でも、さまざまなサイトで脈々と引き継がれているみたいです。

すでに150名以上の方にお申し込みいただいてますが、まだお席がありますので、ご興味ある方で、関西方面の方(関西じゃない方ももちろんOK!)、ご参加を検討してください。

リクリセミナーの「リクリ」は、「Re:Creator’s Kansai」の略です。リクリは2007年3月27日に発足した伝統あるコミュニティでです。12年間、セミナー&コミュニティを継続するのって凄いです。継続は力なりだと思いました。

では、二週間後に、もじもじトークでまたお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、オトナンサー等のWebメディアにて、文字に関する記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/



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編集後記(03/07)

●偏屈BOOK案内:「アメリカも中国も韓国も反省して日本を見習いなさい」
 ジェイソン・モーガン その2

日本の総理大臣は、祖国のために命を捧げた人々、英霊に哀悼の意を表し、御霊の安らかな眠りを祈ることが「できない」という異常な状態だ。平和への誓い、祈りを、妨げる勢力がある。アメリカの左翼は別にしても、一般的なアメリカ人は日本人が靖国神社に参拝しようがしまいが、まったく関心がない。しかし、仮にアメリカ人が同じ立場だったら、靖国神社には必ず参拝するはずだ。

「アーリントン墓地に参拝しない」というアメリカ人がいたら、あるいは「参拝するな」という人がいたら、絶対に異常だと思われる。普通の人であれば、祈りを捧げに行くことになんのためらいもないはずだ。「戦争で亡くなった方たちを悼むのは日本人もアメリカ人も、いえ、どの国の人でも同じです」

「歴史観・歴史認識は日本のアキレス腱です。南京大虐殺などは明らかに捏造なのに、何十年もその嘘に振り回されています」。これは史実ではなく「情報戦」だが、日本は明らかに後れを取り、敗北を重ねている。南京大虐殺は西洋では眉唾物とされているのに、当の日本人は嘘を信じている人が少なくない。

そもそも中国人には大虐殺を糾弾する資格はない。いつの時代を見ても、中国人を一番殺しているのは、ときの中国政府である。毛沢東は文化大革命で3000万人を殺したという。なぜ日本では「自虐史観」が根強いのか。それは日教組の教育界支配が長く続いたからだ。ノンポリの教員が増え、真っ赤な反日教員が定年で減ってはいくが、教育現場には未だに反日思想の残滓が存在する。

筆者が大学で専門に教えているのは「日米関係史概説」と「国際関係概説」と「日本文化研究」である。講義をしていて分かったのは、学生たちが高校まで教科書で習ってきた内容で、日本を理解することはほぼできない。自国の歴史、特に近現代史の知識が弱い。アメリカの大学生も同じで、アメリカ史に対する理解はゼロに近い状態だという。そして、日本の自虐史観は客観性に乏しい。

授業ではできるだけ客観的な視点から、日本は人種差別の少ない文化であること、アジアのヨーロッパ植民地解放に貢献したことなどを講義しているが、日本が好きではないという日本人学生が少なくない。「日米関係史概説」最後の授業で、日本とアメリカの国歌を起立してみんなで歌った。「君が代」の成立や詞の内容をアメリカ人に教わって初めて知る若者たち、残念な事態である。

「君が代」は「古今和歌集」の詞から生まれたが、アメリカ国歌は戦争中に作られた。フランスも同様だ。多くの国歌が戦争で敵を倒すという内容だ。アメリカ国歌は1812に勃発した米英戦争の史実が元になっている。米英仏そして中国の国歌の歌詞を掲載していて、米英の歌詞はナイス、仏中は感嘆符だらけ。

筆者は、今後もアメリカに頼ることは非常に危険だという。アメリカの寿命はもう間もなく尽きる。いつ内戦が勃発してもおかしくない状況に陥っている。連邦政府内の権力争いが激化していて、国民も真っ二つに分かれ、少しでも火花が散ったらものすごい火事になる。財政危機も深刻だ。ソ連が崩壊したようにアメリカもそう長くはないと覚悟し、日本はしっかり準備せよと。(柴田)

「アメリカも中国も韓国も反省して日本を見習いなさい」扶桑社 2018
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/459408012X/dgcrcom-22/



●Macで音声入力。古いヘッドセットで試す。誤認識ばかりで使い物にならない。入力スピードも遅くて待たされる。iPhoneでの音声入力の精度やスピードとは桁違い。

しかしSiri(Macの)だと、ちゃんと聞き取ってくれるし、反応してくれる。Siriからの音声はブチブチ切れて聞こえるけど。語尾は途中で切れる。仕様を見ると、Bluetooth2.1だったわ。このせい?

そういや、電話しながらパソコンを両手で触れるようにと思って買ったヘッドセットだったが、相手から聞こえにくいと怒られたので使わなくなったのであった。AirPodsならそんなことないのかな。

Macの前で「Hey! Siri」すると、近くのiPhoneからも待機音が鳴る。秘書が二人いるみたいだったわ(笑)(hammer.mule)