装飾山イバラ道[241]インコの鷲掴み
── 武田瑛夢 ──

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私は猫動画が大好きだけれど、最近はインコやオウムの動画を目にする機会が多い。YouTubeでも歌を歌うインコや、音楽に合わせて頭をリズミカルに振る大きなオウムの動画が人気だ。

鳥たちは飼い主に向けて歌ったり喋ったりする以外にも、一人ブツブツブツブツ何か言っている子もいる。

「ピーちゃんはお留守番、えらいねー」などとインコのピーちゃんが口にすれば、私の心はもう鷲掴み(わしづかみ)だ。インコに鷲掴みされるとは、なんとも不思議。





●人間の声を真似する理由

もともとインコやオウムは、ヒナの頃から親の声を真似しながら育つものだけれど、その存在がいないペットの場合は、飼い主の声や周囲の音を真似るしかないそうだ。そう考えると少し切ない。

生活の中で自然に人の言葉を覚えて繰り返しているだけで、言葉の意味の理解はないという人もいる。

しかし、どうやら言葉をわかって喋っているように見える動画もあり、とても可愛いものだ。これは見ている側の心が、勝手に意味を重ねて見ているせいかもしれない。

そして野生のオウム類はパートナーの鳥の声を真似る「ラウドコール」という方法を使って、多くの鳥仲間の中から相手を見つけることができるのだという。

人からオウムの群れを見ても、みんなほぼ同じような顔に見える。オウムは洋服や髪型の違いもないので、オウム自身にも自分の妻は見た目ではすぐにわからないものなのだろうか。

しかし相手の声で鳴いて、返事を待つというやりとりを想像すると愛らしい。しっかりと絆を結んだ相手を、数多くの中から見つけ出して、自分の巣に帰ったりしているのだろうか。

飼われている場合は、飼い主の電話の声を真似したり、歌ってくれた歌を真似するのだろう。家族の一員だから、家族の出す音の真似をする。インコにとって当たり前で普通のことなので、言葉の訓練はストレスを与えない範囲でゆっくりするのが良いそうだ。

●なぜ鳥なのに人の声が出せるのか

人間に近いというチンパンジーでさえ人の声を出せないのに、まったく異なる口の構造をした鳥から、録音したように人の声が出てくるのはなんとも不思議なことだ。

これはインコの舌はほぼ筋肉で出来ていて複雑な動きが可能で、あらゆる音を再現できるからだそうだ。

そういえば子供の頃飼っていたインコが、ヒエやアワの種の粒を口の中に入れてクルクルと器用に皮をむくのを見ていた。

結構な肉厚の舌だった記憶がある。あの技も舌先を器用に使えるからこそなのだ。クチバシは硬くても、舌の形を器用に変えて、声を出している。

そして「今日何たべたの? 葉っぱ食べたの。」のようなことを一人喋りしている声は、少しこもったようなインコ特有の濁りがある。

これはもしかしてインコの耳で捉えた音だから、人の耳で聞く音とはトーンが変わっているせいではないだろうか。インコの小さい頭の小さい鼓膜で捉えた音の世界なのかもしれない。

インプットかアウトプットのどちらかで生じる微妙な差。インコらしさとなる魅力的な部分でもある。

さらにYouTube動画でヨウムなどの大型インコの人真似の声を聞いていると、その表現力の高さに驚かされる。人間の声帯模写の人もすごいけれど、大型インコ類はブザーや電気工事のドリル音なども、まるで録音して再生するように、音の質や抑揚をコピーすることができるのだ。

ヨウムは知能が高く、言葉の理解があると言われている。五歳児並みの知能で、平均寿命で50年というからすごい。

こうなると、経験から言葉の意味を理解しても不思議ではないし、人間と深いコミュニケーションが取れる存在なのだと思う。

●オウムとインコ

先ほどからオウムとインコを混ぜて喋る鳥として説明しているけれど、この違いは何だろう。これが結構難しいのだ。

ヨウムの場合は、オウム目、インコ科、ヨウム属なんだそうだ(笑)。

オウム目でオウム科がオウムで、オウム目でインコ科がインコ。「科」の違い。最近はDNA研究が進んで、祖先が違うことがわかっているので、しっかりと異なる科の鳥だそうだ。

見分け方は色、大きさ、冠の毛が生えているかどうかで違うらしい。なんとなく大きくて地味な色のがオウムなような気がスル? こだわる人は調べよう。

●インコと人間の共存

飼われているインコやオウムは、餌もあり危険もなく、遊ぶ余裕のある状態だからこそ「歌う」のかもしれない。これは人間と同じだ。作業中でも余裕のある時だけ鼻歌を歌ったり、気分の良い時に体を揺らす人は多いものだ。

相手の行動を真似ることは、その相手を好きな場合に多いと思う。なんと言っているかわからなくても、真似して返すことでコミュニケーションの一歩が始まるのは、どんな生き物でも同じような気がする。

実際に人間が好きなタイプの鳥が、多く声真似をするらしい。

「生命の危険がなくて好きな人のそばで暮らせる」から、喋ったり歌ったり踊ったりする。この状態は「幸せだから」で間違いないと思う。もちろん、野生の状態でないことや、自らその状態を選んでいるのかを考え始めたら単純ではない。

それでもインコたちが幸せそうに歌う動画に私は癒されるし、人間味のある愚痴をこぼすインコに笑う。インコの頭の中の記憶に残った、同居人の暮らしぶりの再生。一緒に暮らせば似てきて当然なのである。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


花粉が大量に飛散する毎日。私はさほど症状はきつくないけれど、マスクはした方が快適だ。ピッタマスク(PITTA MASK)って人気らしいので買ってみたら、すごく息がしやすい。洗えるって知らなくて、一枚目は使用後捨てちゃったけど、次のからは洗おう。