ローマでMANGA[140]マンガ学校中間考査と三人の先生/Midori

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●中間考査(ディアナ編)

2月末から3月にかけて、マンガ学校は中間考査の季節に入る。中間考査には副校長か、教務課長の出席が必須。体は二つ、クラスはたくさんなので、どうしても中間考査の期間が長くなる。

我がユーロマンガコースは、副校長が担当してくれることになった。副校長は校長の娘で、昨年12月の誕生日で40歳を迎えた才媛。批評家の目を持ち、実に的確な読みをする。

本来、中間考査は担当主任講師(私)と副校長か教務課長の二人で行うのだが、ユーロマンガでは三人だった。

前回のテキストで、同僚だった講師がペドフェリア的な絵をインスタグラムに投稿したことをきっかけに、結局、学校を辞めざるを得なくなったことを報告した。彼の後釜として、校長以下関係者一同の賛成で、かつて私の教え子だったディアナ嬢が入ることになった。

ディアナは生徒だった時に三年間満点を取り、奨学制度で一緒に東京を旅行した。超絵が上手いのだけど、不運が重なって彼女のオリジナルでの出版に至っていない。不運だけではなく、彼女の自己信頼の欠如から来る完璧主義も災いしてると思う。




例えば、ゲーム「ファイナルファンタジー」のキャラクタデザイナーさんが、イタリアのフェアに招待された時に、ディアナは会いに行ってスケッチブックを見せた。

そのお方はいたく感心して、何枚も彼女のスケッチを写真に撮り、東京に来ることがあったら連絡しなさいと言い残されたのだ。

私はすぐに行くべき! と言ったのだけど、喜びながらも大いに不安に駆られたディアナは「ちゃんと見せられるポートフォリオを作ってから行く」と言って、一年の期間を置いてしまった。

その後、東京へ会いに行ったけど、そこから何も生まれていない。すぐ行ったら何か変わったかどうかはもちろんわからないけれど、ディアナに対する興味がまだ新鮮なうちに行くのと、そうでないのとでは与える印象も違ってくると思う。

一緒に講師を始めるようになったら、なんとか彼女の余計な不安を取り除いていけるような機会になれたらいいな、と思う。

自分を売り込むのに自信のない彼女だけど、かなり勉強してる人で、文化的教養が広い。マンガ、manga、アニメ、ゲームはもちろん、それにとどまらない。

三年間30点を取る、というのは並大抵ではない。それに到達する人というのは向上心がずば抜けている、という共通点がある。

幅広い視覚伝達の知識、眼識から、作品の良いところ、残念なところを的確に突いていった。

●中間考査(ジョルジャ編)

副校長のジョルジャは、かなり「受信機」が発達してる人で、彼女に中間考査を見てもらえる生徒は幸せだと思う。

時間がかかっても面倒がらずに、生徒の作品を丁寧に見ていく。そして、たとえ技術的なレベルが高くなくとも、やる気のある生徒には、そのやる気に応えて、いいところを引き出そうとする。また、その生徒が目指していそうなスタイルの参考になりそうな作家をポンポンあげて、参考にしたら? と示唆を与える。

目の前の作品の出来がどうであるか、という評価より、さらに向上するためにはどうしたら良いかというサジェスチョンをする。

ジョルジャとディアナの考査は、生徒にとって良い刺激になる。

●中間考査(midori編)

生徒の中間考査は私の中間考査でもある。生徒が見せる作品は、私の講義の結果でもあるからだ。自分ではそのつもりはなかったけれど、かなり緊張していたと見えて、ただでさえトイレが近いのに輪をかけてさらに近くなった。午前中だけで5、6回は行った。

ジョルジャもディアナも私も、作品を見始めるとついついじっくり見てしまう。いい先生たちだね。

ほかのクラスがさっさと終わっていくのに、昼食時になってもまだやっと4人を終えただけ。残り10人。

別の日にしようかという案も出たけど、この日はなんと交通公共機関のストライキで、それが始まる前の8時半には皆学校に到着していた。そんな思いをしてきた子達をすげなく返すのも気がひける。

それで、頑張って考査を進めることにして、全部終わったのが午後8時。

来年も10人以上だったら、初めから2日に分けた方がいいんじゃなかろうか。あるいは午前と午後に最初から分けてしまう。もっとも、ストライキがあると移動できる時間が限られてしまうけど。

●中間考査(生徒編)

14人の生徒の中で、画力も分析力も物語を作る力もある生徒が4人いる。画力にちょっと欠けるけど、やる気があり、オリジナリティがある生徒が2人。同上でオリジナリティに欠けるのがひとり。

やる気はあるし、課題も全部やってくるけど、今まで何を習ってきたの? と言いたくなる生徒が4人。特に可も不可もないのが2人。欠席が多く、かといって休んだ分を取り戻そうという、気概が一向に見えない生徒がひとり。

できる生徒は、課題をこなすスピードも速く、全部きれいに仕上げて、考査へ持ってきて、見せ方にも気を使う。「製作する」ということの考え方の基本がわかっているので、こちらのサジェスチョンの飲み込みも的確。つまり、ちゃんと通じている、というのがわかる。それで、さらに上達していくのだ。

困るのがそれ以外の生徒たち。一番困るのが最後のひとり。欠席が多い生徒だ。課題を全部持ってこなくて、なんだかんだと言い訳ばかりで、建設的な要素がかけらも見られない。金八先生が必要なのだろうけど、どうしたらいいのか、実際のところわからない。

可もなく不可もない、というか、ある種のことはできて、でもそれだけにとどまっている女生徒は、迎えに来ていたおじいちゃんが「朝早くから待機してるのにまだ終わらないのはどうかしてる」と怒鳴る声を聞いて、明らかに動揺していた。

せっかくのジョルジャのサジェスチョンをうわの空で聞いて、反応しない。家族の大人の男の怒声に怯える経験は、私にもあって気持ちはよくわかる。私はその彼女の怯えに入って行くべきなのか、それはそれ、と置いておいた方がいいのか、困惑中。

できる生徒の中にも、もう大丈夫! という生徒ばかりではない。すっかり出来上がってまとまってしまって、先へ進む気概が見えない生徒もいる。

やる気がない、という意味ではなくて、「作家」としてそれ以上の進展を、この歳でやめてしまってる。自分のスタイルを見つけたのはいいけど、なんというか、描き慣れたからそれがスタイルになった、という感じ。哲学がない、と言ったらいいのかな。

画力はあるので、しつこくあちこちに見せまくればちらほら仕事にはありつけると思う。まぁ、ちんまりとまとまって、つつがなく生きるのも悪くないけど、そこへはもうちょっと後で到達してほしい。まだ20歳前半なのだから、色々冒険してほしい、と先生は思う。


【Midori】
マンガ家/MANGA構築法講師/イタリアの畜産における動物虐待精通者

いやー、まいったまいった。ガイドやら通訳やらの仕事をくれる会社からの依頼で、「EU指令の動物保護に関するイタリアにおける処置(法律にしているのか。実態はどうなっているか)」の調査を仰せつかった。

ほぼネットでの調査でどうにかなる、ということで受けた。たしかにどうにかしているけど、法律用語なんてイタリア語も日本語もわからない。お陰で脳みそがオーバーヒート中。

政令を読み解いていったり、その理解のために動物保護団体の抗議的ビデオを見たりすると、人間に食べられるために飼育されている動物の哀れな実態を知ることになって、なんだかなーと考えてしまう。

だからといって、菜食主義者になろうとは思わないけれど、例えばスーパーの中でもCOOPは、動物保護の政令に従っている畜産業者から肉、卵を仕入れているのだと知った。ほかのスーパーより割高だけど、消費者の方も値段ばかり見てないで、そうやって応えて行かないと虐待はなくならないだろうなと思った。

試しにCOOPで、鶏の手羽を買ってみた。いつものスーパーより高い値段で。ジャガイモと一緒に塩胡椒、ローズマリーでオーブン焼きにしたら、たしかに美味しかった。抗生物質漬けで育ったブロイラーの臭みがないし、肉がプリプリしていた。

[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT


MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
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主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
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