[4755] 腕時計の洗剤◇InDesign◇「ザ・スクエア」思いやりの聖域

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《畳の隙間にはまって脱出不能ロボ》

■腕時計百科事典[74]
 腕時計の洗剤
 吉田貴之

■クリエイター手抜きプロジェクト[574]InDesign編
 フォルダ/サブフォルダ内にあるすべてのAIファイルを配置する(2)
 古籏一浩

■映画ザビエル[72]
 ザ・スクエア 思いやりの聖域
 カンクロー



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■腕時計百科事典[74]
腕時計の洗剤

吉田貴之
https://bn.dgcr.com/archives/20190318110300.html

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「腕時計の洗剤」といっても、腕時計をまるごと洗える便利な洗剤があるわけではありません。一般的な家庭にあるものを洗剤や溶媒(汚れを溶かすもの)として、腕時計をきれいにする方法についてまとめました。なお、これらの方法はあくまでも簡易的な洗浄方法であり、ご自身の腕時計にためす場合は、自己責任でお願いします。

▽水

腕時計の汚れを落とす一番の溶媒は「水」です。大抵のホコリやヨゴレは、水で落とすことができますが、ポイントは「汚れた直後」に水洗いすることです。皮脂などの油性の汚れであっても、水に濡らした後、乾いた布で拭えばおおむねきれいにすることができるでしょう。

もちろん、アンティークやヴィンテージには水が厳禁ですし、現行の腕時計であっても、蛇口から直接水をかけるのは避けたほうが良いでしょう。

▽お湯

お湯は水よりも汚れが落ちそうなイメージがありますが、これはブレスレットなど金属部分に限ります。風防にお湯を使うと、表面の保護コーティングが取れてしまうことがありますので、あまりおすすめしません。

▽石鹸

水洗いで落ちない汚れは、「石鹸」を使うと良いでしょう。固形石鹸でも液体石鹸でも、きちんと泡立ててから使ったほうが良いです。石鹸残りは新たな汚れになりますので、石鹸を使用した後はよく水洗いしましょう。

▽中性洗剤

食器用などの中性洗剤も、石鹸同様いろいろな汚れを落とすことができます。泡切れや水切れも良いので、オススメの洗剤のひとつです。直接かけるよりも、少量の水で泡立ててから使うほうがより効果が期待できます。

▽オイル

石鹸や中性洗剤では簡単に落とすことができない油性の汚れは、「油(=オイル)」で落とすことができます。油といっても食用油やオリーブオイルではなく、揮発性の高いライターオイルやしみ抜き用のベンジンなどがオススメです。

複雑な構造のブレスレットなどは、雑巾の上にブレスレットを置いて、オイルをかけて汚れを溶出させると、効率よくお汚れを落とすことができます。オイルを使ったあとは、必ず石鹸などを併用しながら水洗いをして、オイルが残らないようにしましょう。

▽アルコール

消毒用エタノールなどに代表されるアルコールは、水に溶ける汚れも油に溶ける汚れも落とすことができるので、万能の洗剤と言って良いかもしれません。

ただし、一部のプラスチックやガラスには、アルコールに反応して変質するものがありますので注意が必要です。上記のオイルを使ったクリーニング後に使うのも効果的です。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
https://www.idia.jp/

腕時計ポータルサイト:腕時計新聞
https://www.watchjournal.net/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。


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■クリエイター手抜きプロジェクト[574]InDesign編
フォルダ/サブフォルダ内にあるすべてのAIファイルを配置する(2)

古籏一浩
https://bn.dgcr.com/archives/20190318110200.html

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今回もInDesignのスクリプトですが、前回掲載したものに機能を追加したものになります。ちょっとスクリプトが長くなっているので、使い方だけ書きます。

以下のスクリプトは、フォルダ/サブフォルダ内にあるすべてのAIファイルを1ページに1つずつ配置していきます。AIファイルの数に応じて自動的にページが追加され、さらにPDFファイルをデスクトップ上に保存します。なお、このスクリプトは見開きページでは動作しません。


// フォルダ内のすべてのAIファイルを配置(PDF生成&保存)
(function (){
var aiFolder=Folder.selectDialog("AIファイルがあるフォルダを選択");
if(!aiFolder){ return; }
var targetPage=0;
getAiFile(aiFolder);
// PDFとして保存
app.activeDocument.exportFile(
ExportFormat.PDF_TYPE,
new File("~/Desktop/"+aiFolder.name+".pdf")
);
// 再帰処理を行う関数
function getAiFile(targetFolder){
var fileList=targetFolder.getFiles("*.ai");
for(var i=0; i<fileList.length; i++){
var totalPage=app.activeDocument.pages.length-1;
if(totalPage<targetPage){
var pageObj=app.activeDocument.pages.add(
LocationOptions.AT_END // 最後にページを追加
);
}else{
var pageObj=app.activeDocument.pages[targetPage];
}
targetPage++;
var aiFrame=pageObj.place(fileList[i]);
aiFrame[0].parent.move(["20mm","20mm"]);
}
// フォルダの場合は自分自身の関数を呼び出す
var folderList=targetFolder.getFiles();
for(var i=0; i<folderList.length; i++){
if(folderList[i].getFiles){
getAiFile(folderList[i]);
}
}
}
})();

上記のスクリプトでは、新規に作成したInDesignドキュメントが残ってしまいます。単純にPDFだけ生成できれば用が足りるのであれば、以下のスクリプトを使用してください。PDF生成後にInDesignのドキュメントは、保存されずに閉じられます。

// フォルダ内のすべてのAIファイルを配置(自動生成&PDF保存)
(function (){
var aiFolder=Folder.selectDialog("AIファイルがあるフォルダを選択");
if(!aiFolder){ return; }
// ページ設定
var dp=app.documentPresets.add({
facingPages:false, // 単ページ
pagesPerDocument:1, // ページ数
pageWidth:210, // ページの横幅
pageHeight:297 // ページの縦幅
});
var doc=app.documents.add(true,dp,{
zeroPoint:[0,0], // 原点設定
});
var targetPage=0;
getAiFile(aiFolder);
// PDFとして保存
app.activeDocument.exportFile(
ExportFormat.PDF_TYPE,
new File("~/Desktop/"+aiFolder.name+".pdf")
);
app.activeDocument.close(SaveOptions.no);
// 再帰処理を行う関数
function getAiFile(targetFolder){
var fileList=targetFolder.getFiles("*.ai");
for(var i=0; i<fileList.length; i++){
var totalPage=app.activeDocument.pages.length-1;
if(totalPage<targetPage){
var pageObj=app.activeDocument.pages.add(
LocationOptions.AT_END // 最後にページを追加
);
}else{
var pageObj=app.activeDocument.pages[targetPage];
}
targetPage++;
var aiFrame=pageObj.place(fileList[i]);
aiFrame[0].parent.move(["20mm","20mm"]);
}
// フォルダの場合は自分自身の関数を呼び出す
var folderList=targetFolder.getFiles();
for(var i=0; i<folderList.length; i++){
if(folderList[i].getFiles){
getAiFile(folderList[i]);
}
}
}
})();

逆にInDesignファイルも残しておいて、さらに自動的に保存して欲しい場合は、以下の行を変更してください。デスクトップに、フォルダ名.inddというファイル名でドキュメントが保存されるようになります。

app.activeDocument.close(SaveOptions.no);
 ↓
app.activeDocument.save(new File("~/Desktop/"+aiFolder.name+".indd"));


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/


ロボット関係のノウハウが皆無に近いので、とりあえずいくつか安いロボットを購入してみました。obnizのRobotkit使って、お掃除ロボットみたいなことをやらせてみたけど、思ったほどうまくいかず。

回転角度などの問題もあるんだろうけど、いかんせん段差に弱く畳の隙間にはまって脱出できなかったり、いろいろ問題発生。キャタピラタイプの方が、ここらへん強いんだろうけど、そうすると壁際でうまく180度回転できなかったりしそう。(まだ、キャタピラタイプのは組み立ててないけど)ある程度ノウハウがたまったらデジクリのネタにでも……。

・InDesign自動化サンプルプログラム逆引きリファレンス上/下
https://www.amazon.co.jp/dp/4844396846/

https://www.amazon.co.jp/dp/4844396854/


・創って学ぼうプログラミング
https://news.mynavi.jp/series/makeprogram


・みんなのIchigoLatte入門 JavaScriptで楽しむゲーム作りと電子工作
https://www.amazon.co.jp/dp/4865940936

[正誤表]
http://www.openspc2.org/book/error/ichigoLatte/


・After Effects自動化サンプルプログラム 上巻、下巻
https://www.amazon.co.jp/dp/4844397591

https://www.amazon.co.jp/dp/4844397605


・IchigoLatteでIoT体験
https://www.amazon.co.jp/dp/B06X3X1CHP

http://digiconcart.com/dccartstore/cart/info/2561/218591


・みんなのIchigoJam入門 BASICで楽しむゲーム作りと電子工作
http://www.amazon.co.jp/dp/4865940332/


・Photoshop自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00W952JQW/


・Illustrator自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00R5MZ1PA/


・4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/


・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/



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■映画ザビエル[72]
ザ・スクエア 思いやりの聖域

カンクロー
https://bn.dgcr.com/archives/20190318110100.html

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◎ザ・スクエア 思いやりの聖域

英題:THE SQUARE
公開年度:2017年
制作国・地域:スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク
上映時間:151分
監督:リューベン・オストルンド
出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、
テリー・ノタリー

◎だいたいこんな話(作品概要)

クリスティアンは、スウェーデン王立現代美術館のキュレーターで、常に洗練されたファッションに身を包み、美術館の実質的な責任者としての地位もある。

彼は、次の展覧会に「ザ・スクエア」という作品を展示する準備をしていた。それは地面に正方形を描いた作品で、そのスクエアの中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」「思いやりの聖域」であるという参加型アートだった。

クリスティアンは、この作品のテーマを通して、現代社会のエゴや経済的格差について問題提起するつもりでいた。

ある日、クリスティアンは多くの人が行き交う街中で、何者かから逃げ惑う女性を助けるが、その直後、自分の財布と携帯がないことに気づく。「助けて」と叫んでいた女性が、実はスリだったのだ。

彼は携帯のGPS機能を利用して、奪われた財布と携帯を取り戻そうと画策する。しかし、この一連の出来事がきっかけとなり、クリスティアンは思いも寄らぬ事態に巻き込まれていく。

◎わたくし的見解/絵なら猿でも描けますから

テーマはとても面白い(興味深い)のですが、あまり、面白い映画ではありません。

私の場合、意地悪な映画を好んで見るところがあるので、それが理由で評価を辛くしているのではありません。個人的には、社会風刺にせよ痛烈な批判精神に基づいているにせよ、そういったものならば一層、惹きつける見せ方をして欲しいのです。

この内容ならば、151分も要らないなぁと思ってしまいました。120分にまとめてくれていたら、テーマのみならず「面白い映画」だと評価していたし、100分を切っていたら、きっと人に強く勧められる作品になっていたと思います。

さて、すでにキーワードを挙げてしまいましたが、痛烈な批判精神に基づいた社会風刺と問題提起が、映画の内容のすべてです。アレルギー反応を示す人の多い、カンヌ映画祭パルムドール作品らしいテーマですが、評価すべきは「あなた(達)って、こうでしょ?」ではなく「私(達)って、こうじゃないですか?」という目線にあります。

まず、特に大きく取り上げられている風刺の一つは、「私達はいとも簡単に傍観者に陥ってしまう」という指摘です。

予告編でも使われている、猿のリアルな物真似をするパフォーマンスの中で、女性客が襲われるシーンがあります。パフォーマーによる行き過ぎた演出ですが、女性は本当に怯えています。しかし、ほとんどの観客がその光景を見て見ぬ振りし、誰も彼女を助けようとしない。

ここは尺が長いのが玉に瑕ですが、実に分かりやすい場面でもあります。女性客の味わっている緊迫感や恐怖は、相当なものであることが、よく伝わってきます。けれども一番の肝は、映画の鑑賞者が、きっと自分もあの状況では女性を助けたりできないだろう、と思い知らされることです。とても意地悪な見せ方であり、そのために大変効果的だと思いました。

特筆すべき点は、このような指摘をするにあたって、決して青臭い正義感を振りかざして終わらないところです。誰かが助けを求めている時は、手を差し伸べるべきだ! と豪語し、観客に説教するスタンスではありません。

映画の序盤、主人公のクリスティアンが、街で女性の「助けて」の声を耳にした時、はじめ彼は傍観者に甘んじようとしていました。しかし、近くにいた男性に、その女性を助けるために「君も手伝ってくれ」と頼まれて、仕方なくかかわります。

クリスティアンは、女性を助けた直後は人助けをした達成感で、もう一人の男性にハイタッチを求めるほどテンションも上がり、笑顔を見せてくれます。ところが残念なことに、それは人助けをする人の善意につけ込んだ犯罪(スリ)だった訳です。

このように、困っている人に手を差し伸べたけれど、結果的に酷い目に遭ってしまう。というのも、現代社会の中で否定できないリスクであり、その部分も取り上げるあたりに、大人の批判精神を感じました。単純に、傍観者を断罪することが映画の目的ではないようです。

もう一つ大きな風刺の軸は、主人公のクリスティアンがハイソサエティーに属する人であることに、大きく関わっています。彼が、財布と共に盗まれた携帯のGPS機能を利用して、犯人の所在地を特定する場面があります。

そこは、低所得者層のための集合住宅でした。クリスティアンはマップを確認した時点で、そのことに気付いているようでした。

そして、いつもパリッとしたスーツを着て高級車(テスラ)に乗る主人公が、その集合住宅の全世帯に「財布を返せ、さもないと」と書いた脅迫状をばら撒いてしまう。この行動がスリに遭ったことよりも、実質的なトラブルの始まりでした。

自分が被害者だからと言って、犯人であるなしにかかわらず、そこの住人をまとめて泥棒呼ばわりする手段をとってしまったのは、彼らへの誤解や偏見があったからだ。と、映画の終盤で主人公自身が告白しています。

福祉大国のスウェーデンとは言え、物乞いが人目につくところで小銭を要求してくる。移民はたとえ物乞いまでしていなくても、貧困層の多くを占めている。そして、それ以外の人間の無意識下に差別意識が存在する現実も、主人公を通して浮き彫りにしています。

他に、「ザ・スクエア」の展覧会に注目を集めたいがために、意図的に過激なPR動画を製作し、炎上を狙うなど。映画の中の出来事というよりは、今の世の中そのものとも言えるでしょう。

そういった笑い飛ばせない大きな問題提起の隙間に、クスッと笑える小さな風刺を差し込んで構成されています。

砂を円錐状に盛り付けた現代アート作品を、清掃員が掃除してしまって、美術館スタッフが慌てるくだりは、私もクスッとさせて貰いました。どうやらアートも、本作では揶揄されているようです。

作品内での「ザ・スクエア」が参加型アートであるように、この映画自体も参加型、ちょっとした社会実験だと考えてよいと思います。

冒頭でお伝えした通り、他の皮肉を利かせた作品と比べても、それほど面白いものだとは思いませんでしたが、他の人と語り合う題材としては、とても興味深い映画だと言えます。

個人的には、この作品を観て登場人物をただ批判する人よりも、「これは自分にもあてはまるな」とか「明日は我が身だな」と感じた人と、仲良くしていきたい。生意気にも、そう思ってしまいました。


【カンクロー】info@eigaxavier.com

映画ザビエル
http://www.eigaxavier.com/


映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。


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編集後記(03/18)

偏屈映画案内:「リンカーンを殺した男」

2013年2月17日に、アメリカのナショナルジオグラフィックチャンネルで放送され、大好評を得た2時間の政治ドキュメントドラマである。リンカーンを暗殺した男、ブースを中心に描いている。日本でも「リンカーン大統領暗殺の真相」というタイトルで放送されたというが、わたしは見ていない。

リンカーンを描いた映画では、暗殺シーンがあるのはお約束。暗殺者ジョン・ウィルクス・ブースを主役に、計画、決行、その後の逃避行まで丹念に描くという映画は初めて見た。トム・ハンクスがナレーターとホストを務め、きちんと史実に沿った解説をしてくれるので、非常に分かりやすい構成だった。

ブースは俳優のようないい男で、って本当に俳優であった。クライマックスの暗殺シーンは完璧に史実に基づいている。それどころか、映画に出てくる人々はすべて実在の人物だという。劇中の会話も同様で、三つの文献にあたって、誰が何を言い、どう行動したかを確認している。史実の考証を徹底したので、どのシーンにも歴史の細部が映し出されているとのことだ。そこまでやるか。

スクリーンに映っているのは、すべて特定された誰かなのだ。俳優全員が当時の誰かを演じている。実在の人物だから白黒写真が残っている場合もある。見た目も服装もそれに合わせた。衣装デザイナーもメークアップデザイナーも、正確さを求めてリサーチを重ねた。そこまでやるかという徹底ぶりである。

これまで知られていなかった、暗殺者ブースの内面にも焦点を当てている。彼は差別主義者だが、社会では認められていた。彼は奴隷制に反対する有力議員の娘と婚約していた。しかしその娘は二股をかけており、相手はリンカーンの息子のロバートだった。それがブースのリンカーンへの怒りを爆発させた理由でもあると原作者は語るが、証明は不可能で、映画では触れていない。

ブースは活躍中の俳優である。実際に大袈裟で芝居じみた男であった。映画の中の彼のセリフは、彼自身の言葉だ。現存する手紙や日記から抜粋したものだから、言い回しも感情表現もブース自身のものだと監督は語っている。日記では、「私を裁くのは神であり人間ではない」以下18ページが行方不明らしい。

ブースはリンカーンを襲撃した後、「南部に自由がもたらされる!」と叫んで3.5mの高さから飛んで(もちろんスタントマンが)足を折り、逃避行は難儀を極める。南部の地下組織のリーダー宅に辿り着いたが、家に入るのは拒否され、松林に5日間隠れていた。史上初めて、指名手配ポスターに写真が使われた。

彼らはバージニアまで逃げた。ギャレットの農場でニューヨーク州の第16騎兵隊に包囲され、ブースは首を貫通する一弾を受け、後に死亡。同志3人も逮捕され軍事法廷で死刑。暗殺から10週間後、南北戦争が終結した。「本作で気に入っているのは、真実は謎のままだと示したところだ」と監督は語るが、それはないだろう。でも今までみたリンカーン映画で一番、暗殺の真相と当時の世相が理解できた。(柴田)

「リンカーンを殺した男」2013 ナショナルジオグラフィックチャンネル
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00H1GZVL4/dgcrcom-22/



●「カメラを止めるな」続き。とにかく見終わった時に、おおー、やられたーって思えたら、気持ち良くて満足。こちらの想像力を超えたものを感じさせてくれるのが快感。答え合わせをしたくて、また見たくなる。

真面目に地味に生きている町民が、あくどい商人に騙され、(視聴者が)憤慨していたら、それまでのんびりしていた何もできなさそうな老人が実はとても偉い人で……みたいなもん……か?(違うけど思いつかない)

この老人が何者かわかっちゃってるお芝居もあることはあるが、そういうのはあまり見に行かなくて、いや、宝塚歌劇の大劇場公演や全国ツアーとかはそうだけど、そっちのどんでん返しは期待してないからなぁ。

「カメラを止めるな」では、このお芝居だからのお約束、観客の想像力で大幅補完するものを、映像として実現させていて、凄いと思ったなぁ。

ワンカットでホラー、血が出てしまうから撮り直しするには、また1から。考えるだけでしんどくなるよ〜。エンディングで拍手しました。楽しかった。 (hammer.mule)