当初、前回の続きとして、駒場寮の最期についての思い出を書くことも考えていたのですが、いくつかの理由で先送りします。
それは、駒場寮に対する強制執行が実施されたのは2001年で、私が駒場寮に行かなくなってから2年以上後の事であるのが一つの理由です。
また、強制執行の現場は私も目撃しているのですが、その時の状況をどこまで公にしてよいかわからないこともあります。
そして、2001年頃、駒場寮に出入りしていたイラストレーターのオオスキトモコさんが、当時の思い出の連載を始めたことも挙げられます。
https://www.danro.bar/article/12342305
私もそれを読んで何か思い出すことがあるかもしれません。
そこで、私は引き続き、駒場寮を離れて共同生活を始めたオブスキュアの人たちとの思い出を書くことにしますが、その前に、この頃開催され私の写真の撮り方に影響を与えた二つの展覧会について書いておくことにします。
1. ウジェーヌ・アジェ回顧展ー開かれゆく20世紀のパリ
東京都写真美術館
1998年9月3日〜11月4日
以前の連載で書いたように、この頃の私は他の写真家にそれほど関心がありませんでした。
例外的に、ダダイズム、シュールレアリズムとの関連で興味を持ったマン・レイや、NHK教育の番組で知った、ジョエル・ピーター・ウィトキン、ロバート・メープルソープ、サンディ・スコグランド、シンディ・シャーマンなどの写真家については、写真集を購入したり、展覧会に行ったりしました。
アジェのことは、本屋で立ち読みした写真家の辞典にマン・レイが発見した写真家、と書いてあるのを見て、興味を持ちました。
とはいえ、その本に紹介されていたアジェの写真はぼんやりした画像で、アジェがどんな写真を撮っていたのか分かりませんでした。
そうしているうち、東京都写真美術館でアジェの展覧会が行われると知り、見に行くことにしました。
東京都写真美術館はガーデンプレイスができる以前、広大な恵比寿のビール工場跡地の片隅にぽつんと建てられているのを何度か見ていたこともあり、気にはなっていましたが、展覧会を見に行くのはこの時が初めてでした。
https://bn.dgcr.com/archives/20180925110100.html
展覧会を見た印象は、以前の連載に書いた通りなので繰り返しませんが、この頃から他の写真家の写真にも関心を抱くようになりました。
私はカメラのことについて何も知らなかったので、1998年頃からディアゴスティーニが出していた「DO PHOTO」という週刊誌を購読するようになり、そこに紹介されていたアンリ・カルティエ・ブレッソンやヨゼフ・クーデルカの事を知るようになります。
また、都立中央図書館で岩波書店「日本の写真家」のシリーズを読み、森山大道、東松照明さんなどの写真を初めて見ました。
森山大道さんの写真は、オブスキュアのコーキくんが当時、森山さんのことを頻繁に話していたので、気になっていました。
森山さんの写真はともかく、私自分がシュールレアリズムに関心があったこともあり、東松さんの写真には興味を覚えました。
●
2. アクション 行為がアートになるとき 1949-1979
東京都現代美術館(MOT)
1999年2月11日〜4月11日
東京都写真美術館と違い、それまでにも、MOTにはアンディ・ウォーホル展を含めて何度か足を運んでいました。
この展覧会に興味を抱いたきっかけは思い出せませんが、ハイレッドセンターやフルクサスが取り上げられていたからかもしれません。
ただ、展示物や記録映像の多さもあったのですが、結果的にこの展覧会には会期中に3回通いました。
また、この展覧会を通じて、ヴィト・アコンチ、マリーナ・アブラモヴィッチ、ゴードン・マッタ・クラーク、アル・ハンセンなどのアーティストの名前を知りました。
私が特に影響を受けたのは、図録にも使われている記録写真のカッコよさでした。特に、ウィーンアクシオニズムのルドルフ・シュワルツコグラーの写真には興味を惹かれました。
●
それに関連するかもしれませんが、今回は2002年7月22日に渋谷EDGEで撮影された写真を紹介します。
プチ耽美は、アラカワアツコさんとホタル(宮エリコ)さんのユニットで、二人がまだ大学生の頃、緊縛師に師事していたそうです。
二人は最初、岡画郎の岡さんたちが、クリスマスイブの夜に歌舞伎町でゲリラ的に行っていたイブトーというイベントに飛び入り参加し、その後、岡画郎の定例会にも顔を出すようになりました。
1998年4月のお見合い展でも展示を行っています。
https://bn.dgcr.com/archives/20170725110100.html
プチ耽美はその後も何度かイベントを企画していますが、2000年頃にPT2001Turboと改名、2002年7月に渋谷EDGEで開催されたグループ展で「矛盾するペルソナの花」という展示を行いました。
プチ耽美の展示は、小部屋の中二階で行われました。ホタルさんのマネキンと大量の縄を使った展示に感動し、何枚も写真を撮っています。
狭い場所で引きが取れなかったので、21mmの広角レンズで撮りました。ある程度絞って、シャッタースピードが5.6秒だったのを覚えています。
三脚をセットしている時、中二階への階段で立ち話をしている人がいたのですが、振動が伝わってきたので、「お願いだから、シャッターを開けている間動かないで」と念じながら撮った記憶があります。
【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos(2019年3月まで)
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔