[4802] 雨の日の北陸地方のローカル線で◇筑紫書体の魅力

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《アノラック!》

■わが逃走[239]
 雨の日、ガラス越しに写真を撮ると、勝手に特殊効果がかかって
 フィルター1枚分トクした気分だ。の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[108]
 既存概念にとらわれない未知なる領域へ──筑紫書体の魅力
 関口浩之




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■わが逃走[239]
雨の日、ガラス越しに写真を撮ると、勝手に特殊効果がかかって
フィルター1枚分トクした気分だ。の巻

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20190606110200.html

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やたら北陸地方にご縁のある、今日この頃なのである。

前回の終わりに、「次回はもう少し深いところまで踏み込んで、よりシブい物件を探したいと思う。」と書いたわけだが、あくまでも仕事で出向いているわけなので、常にそういった時間がとれるわけでもない。

とはいえ、日帰りはキツいので(たとえ経費は出なくても)一泊くらいしたい。そこで得られる微妙な時間をどう使うべきか。

今回はかなりハードなスケジュールの上、日本海側の天気は雨。なので、「移動方法」を工夫してみた。

東京から金沢方面に向かうには、まず北陸新幹線を思い浮かべるが、東京・金沢間の往復よりも、東京から米原経由で福井、金沢そして東京と一筆書きルートをとったほうが、JR運賃は安かったりする。

車内は貴重な「資料まとめタイム」であり、「読書タイム」であり、「車窓鑑賞タイム」なのだ。

つまり、これからプレゼンする資料を再度読み込みつつ、別件のアイデアを読書と車窓との往復運動からひねり出す。車内ではこれらを同時にできるので、すこぶる効率がいい。

速さだけではないのだ。米原経由だと、太平洋と富士山と琵琶湖と白山を見て仕事に向かうことができる。これはテンション上がるってもんだ。

一仕事終えた後は、日本海と立山連峰と浅間山を見ながら帰途につける。これで旅の疲れもなんのそのである。

とはいえ、前回心残りだった福井鉄道のシブい車両・200形を、一目拝んでおきたい。

幸い福井鉄道福武線はJR北陸本線とほぼ平行して走っている。ここはひとつ、武生駅で途中下車し、JRなら15分のところ、福武線で1時間かけて福井まで出てみよう、ということにした。

米原で新幹線から「しらさぎ」に乗り換え、武生駅で下車。時間帯もあってか、乗降客はまばらだ。ここからから、福武線越前武生駅までは徒歩約5分。目の前、というほどではない距離だ。あいにくの雨である。

途中までは建物の中を通って行けるが、駅前は重たいスーツケースを引きながら、傘をさしての移動となった。

前をゆくレインジャケット姿の旅人が視界に入った。彼も「スーツケースの男」だ。

アノラック!※

そのいでたちから直感した。

(※登山用の防水ジャケットのこと。イギリスで鉄分多めの人に愛用者が多いことから、転じて鉄道マニアをさす。「オタク」の意)

なにも雨のこんな日、乗客もまばらな電車にテツが2人も! まあ、気にすることはない。今日の私はマニアではない。ただの「出張のひと」である。と平静を装う。

外はもはや豪雨といっていい。切符を買い、車両に乗り込んだ。がら空きである。さて、先頭車両の最前列に……。

アノラック!

すでに彼が、運転手さんのすぐ後ろの特等席、「かぶりつき」ポジションをおさえていた。

さて、どこに座る?

実際、最前列の座席は2つあり、そのひとつに彼がでかいスーツケースとともに座っている。その向かい側は空いているとはいえ、そこ以外のほぼすべての席も空いているのだ。

ここで躊躇してはいかん。ごく自然に、彼の向かい側の「もうひとつの最前列」に座った。でかいスーツケース2つが通路を塞いだ。しかし、他に利用客もほとんどいないので、構うこたあないのだ。

大雨の中、列車は定刻に発車。

隣の北府駅に車庫があり、お目当のシブい車両・200形もここに留置されているはずだ。晴れていれば一旦下車して写真でも、と思ってはいたものの、あまりの雨の強さにその気も失せた。今日はこのまま福井に直行しよう。

線路の周りは渋い木造建築が残ってはいたが、大規模な再開発・区画整理の影響か、取り壊されたものも多く、更地が目立つ。

道路の曲がり方や道幅も不自然に均等になっていて、ここでも日本古来の侘び寂びは消えつつあるようだ。

北府駅着。なんと彼が下車した。さすが気合いが違う!「よい鉄分補給を!」心の中で挨拶をする。

しかし、今思えば彼がテツだという確証などなにもないのだ。ただの地元のおっさんだったのかもしれない。

さて、北府駅を発車。200形は「車窓からの見学」となった。窓ガラス越しの視界は雨水で歪み、なにがなんだか判別もつかないが、かろうじてそれらしき車両が留置されているのが見えた。少し安心した。

また晴れた日に来ようと思った。

列車は単線をまっすぐ進む。周りは田んぼが多いが、中途半端に都市化が進み、風情はあまりない。例えるなら、S玉県を見るようである。

ほとんどの駅舎も最近建て替えたらしく、既製建材を使った構成が単調さに拍車をかける。

同じ北陸の単線でも、「日本の原風景しか見えない」富山地方鉄道の車窓とはまったく違う。

うーん、住むならやっぱり富山かな。などと思いつつ、運転席のすぐ後ろから雨の車窓を眺める。

ここで、まだ写真を撮ってないことに気づいた。あまりの豪雨に撮影という選択肢を完全に忘れていたのだ。

窓ガラスに合焦しないようオートフォーカスを解除し、コンパクトカメラのファインダーを覗いてみる。

お。意外に楽しいかも。ピンは合ってるはずなのに、滲む、歪む。雨水のフィルター効果のかかった不思議な風景が見えてきた。

https://bn.dgcr.com/archives/2019/06/06/images/001

島式ホームの両端にはアーチ状の構造物が設置されている。初めは何のため? と思ったが、どうやら雪からポイントを守るためのものらしい。

https://bn.dgcr.com/archives/2019/06/06/images/002

直線をゆく。ここは確か川を渡っているシーンだと記憶しているが、何が何だかわからない。

https://bn.dgcr.com/archives/2019/06/06/images/003

カーブをゆく。ほぼ90度。この後さらに反対側に急カーブし、併用軌道に入る。

https://bn.dgcr.com/archives/2019/06/06/images/004

福井市内の併用軌道走行中、対向列車とすれ違うの図。

雨の日の撮影って、どうしてもテンション落ちてたけど、けっこう楽しい!ってことが判明した。機材や服がが雨に濡れたり、という問題も、濡れない場所から撮ればイイじゃん!

と、これからは前向きに考えることにします。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[108]
既存概念にとらわれない未知なる領域へ──筑紫書体の魅力

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20190606110100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。早くも、もう6月なんですね。

6月といえば、そうそう、僕の誕生月なんです。今度の日曜で59才になります。えっ、そんなんだーー。最近、歳をとることに抵抗を感じなくなりました(笑)

開き直っているわけじゃなくて、まだまだ、学びたいことがたくさんあるし、仕事もしなくっちゃいけないし……。

体力的にも、経済的にも、今まで通りとはいかない年代になりますが、「60才は単なる通過点に過ぎない」と考えるようになりました。やっぱ、開き直りか……ww

前回のもじもじトークは、「文字に潤いと体温を 筑紫書体のコンセプト」をお送りしました。今回は、その続編をお送りします。
https://bn.dgcr.com/archives/20190523110100.html


●明朝体、何種類知ってますか?

明朝体の名称、何個ぐらい、頭に浮かびますか?

僕は10個ぐらい、すぐに出てきますが、皆さんはどうですか?

ヒラギノ明朝、MS明朝、リュウミン、筑紫明朝、小塚明朝、游明朝あたりが、すぐに頭に浮かびますよね……。ですかね??

それ以外では、秀英明朝、凸版文久明朝、源ノ明朝、イワタ明朝、モトヤ明朝、砧明朝、TP明朝、貂明朝、平成明朝、マティス、A1明朝、黎ミン、などなどでが浮かんできました。かなり、ざっくりな分類名称ですが。

同じように見える明朝体、ゴシック体ですが、よく見るとそれぞれの書体は、それぞれの表情は異なり、個性がまちまちなのです。今度、上記のすべての明朝体を並べたサンプルを作ってみますね。乞うご期待。

さて、前回から、フォントワークス書体デザイナーの藤田重信さんが手掛ける、筑紫明朝にフォーカスしてお話しています。

筑紫書体シリーズ、実にさまざまな種類があります。種類の単位をファミリーと呼んでいます。例えば、「筑紫Aオールド明朝」、「筑紫Q明朝S」、「筑紫アンティークS明朝」などです。

そして、それぞれのファミリーには、複数のウエイト(太さ)をもつ書体もあれば、ひとつのウエイトしかない書体もあります。新書体の時は、1ウエイトでリリースすることが多いです。一度に、たくさんのウエイト(太さ)を出すのは時間の関係で難しいのです。

15年前にリリースされた筑紫明朝は、今では、「L/LB/R/RB/M/D/B/E/H」のように9種類のウエイトが揃っています。

筑紫書体は、現在、20ファミリー以上に分類されます。前回の復習です。
http://bit.ly/30K55Bg


それでは、今年3月、名古屋で開催された「中村書体と筑紫書体」セミナーの藤田さんのお話で、記憶に残ったことをいくつかご紹介します。

●普通の書体とは異なる、異色を放つ、筑紫書体

普段から見慣れている明朝体やゴシック体を、普通の書体と呼ぶことにします。普通の明朝体やゴシック体は、比較的、正方形の枠にギリギリ収まるように作られています。専門的な表現をすると、「ふところが広い書体」といいます。

2004年に発表された「筑紫明朝」は、筑紫書体シリーズの中では、ふところが広い部類になります。ただし、金属活字のインク溜まりや滲み、写植のボケを感じさせる処理をしているので、普通の明朝体とは雰囲気が明らかに違います。

そして、筑紫後期と言われる、「筑紫アンティーク明朝」「筑紫Q明朝」「筑紫ヴィンテージ明朝」は、ふところが狭い書体です。「東」の形を見比べると、明らかに、キュッと締まった形になっています。

そのあたりの解説をしている藤田さんのスライドを掲載します。
http://bit.ly/31bB7WT


そっか、筑紫アンティーク以後の文字をじっくり観察すると、台形または三角形をしていますね。

なぜ、普通の明朝体や普通のゴシック体は、四角形に収まるような書体が多くなってしまったのでしょうか。

20世紀後半、写植(写真植字)による組版が主流だった頃、写植文字を設計する現場は、金属活字の文字を写植に移植することに一生懸命でした。そして、書体の近代化の流れを作った「タイポス」「ナール」「ゴナ」が1970年代初頭にリリースされました。

それら新書体は、四角形に目いっぱい収まるような書体であり、その後、ふと
ころの広い書体が主流になりました。

1990年頃までは、そのような書体をリリースすれば、写植用フォントが売れる時代だったので、ふところが狭く、築地5号のような書体を開発する余裕がなかったということが理由なのかもしれません。

これは、良い悪いの話ではなく、時代の流行だったのです。

●祖父江慎さんのオフィスにあった古い書物の活字の話

藤田さんは、新書体の開発中に、祖父江慎さんの事務所によく足を運んでいます。新書体候補の組み見本を持参して見せて、祖父江さんの意見を聞くためのようです。

そういえば、5年ぐらい前、藤田さんが祖父江さんの事務所を訪問する際、僕も同席させていただいたことがあります。その時の写真を掲載しまねす。じゃーん!
http://bit.ly/2K3k83M


僕は以前から、祖父江慎さんと藤田重信さんの大ファンだったので、三人でのスリーショット写真、僕の宝物になったのは言うまでもありません!

話を戻します。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の撮影の時の話です。

2時間ぐらい、カメラを回しながら対談していたので、お茶が切れたようです。そうすると、祖父江さんが、「じゃ~、ぼくがお茶を入れてくるね~」(祖父江さん口調)と言って立ち上がる時、書棚から本を取り出して、「藤田さん、お茶を入れる間、これでも見ててね~」と一冊の古い本を、テーブルの上に置いたそうです。

そもそも、祖父江さんが自分で、みんなのお茶を入れるって凄いですね。でも、その姿、想像できます。

その時の本の活字がこれです。じゃーん!
http://bit.ly/2Kwc1vR


「ふ」が素敵ですね。藤田さんは、それ以外の仮名には目が行かず、この「ふ」に引き込まれたようです。

この本は、祖父江さんが無意識に選んだように聞こえましたが、僕は、祖父江さんの無意識の深層心理に、『この『ふ』、すごくいいよね~ 藤田さんが、この『ふ』に心奪われて、文字を作っちゃったらうれしいなぁ~』ということがあって、自然とそうさせたのだと思いました。

●筑紫書体、未知なる領域へ

藤田さんの凄いところは、それら「ふ」や「あ」の独特のムードを、50音の仮名へ展開しちゃうところにあります。

もちろん、その雰囲気がそのまま、踏襲できる仮名もあれば、しづらいものもあります。しかしながら、実際の単語や文章を組んでみると、あの独特の世界観が生れてくるんです。

細部にわって、さまざまな事柄を考慮し、チューニングを繰り返して、ひとつのフォントが誕生しているのです。

筑紫オールド明朝には、AタイプとBタイプとCタイプがあります。書体名で書くと、「筑紫Aオールド明朝」「筑紫Bオールド明朝」「筑紫Cオールド明朝」の3種類のファミリーがあります。

それぞれ、何が違うかというと、平仮名/カタカナのスタイルが異なるのです。なので、この3つの書体で、「お味噌汁」と「パンケーキ」とか、実際に組んでみると楽しいです。書体を変えると、味が違うものに見えてくるのが、書体の面白いところです。

その違いは、パーレン(括弧)や特殊記号まで、徹底して、味付けをしているそうです
http://bit.ly/2Xu4S2P


筑紫書体とは「既存概念にとらわれない」、そして「新たな領域へ」がテーマのフロンティアスピリット溢れる書体だと感じました。

「人には個性があるように、文字にも個性があっていいじゃないか」「同じものばかりだとつまらない」

藤田さんは、デジタルフォント時代における革命家だと思いました。

藤田さんのお話で、心に残ったこと、書ききれなかったので、次回は「筑紫書体の魅力 第3話」をお送りします。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)
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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/



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編集後記(06/06)

●偏屈BOOK案内:「東大から刑務所へ」堀江貴文・井川意高

あざといタイトルだ。イージーな企画だ。幻冬舎だもん。面白いか、といったら面白い。興味深いテーマだもん。ライブドアの堀江貴文と、大王製紙前会長の井川意高が、楽しそうに、得意そうに語る留置所と刑務所の体験記。悪いことしたからぶち込まれた二人の男の対談だが、ハレンチ罪ではないから悪党といった感じはない。読み終わって思う。この二人、まったくいい気なもんだよ。

「なにしろ私は有数の進学校から東大を卒業し、創業家の3代目として一部上場・大王製紙の代表まで務めた人間である」と自分で書いているのだから、だめだこりゃー。井川はマカオやシンガポールのカジノのVIPルームに出入りして、負け総額は106億8000万円、会社法の特別背任容疑で東京地検特捜部に逮捕されるが贈収賄容疑はシロ、あてが外れて特捜部ガックリ。懲役4年の実刑。

個人が106億8000万円も使い込んだのもケシカランが、それだけのカネを使い込みながら借金を全額返せたのがなおケシカラン。それだけカネをもってるのが許せん、こういう感じですよ。裁判官は自分の年収より大きいカネに関わった人間は全員が極悪人ですから、とは懲役の先輩・佐藤優から井川が聞いた話。

井川は刑務所に入ったことで長年の不摂生を是正し、健康体になれた。獄中でたくさんの本を読めた。苦手だった理系や宗教、古典、近現代哲学についても勉強し直せてよかったね。他人事だから言うけど。「これが犯罪と言えるのか」という案件が立件され、東京地裁特捜部に逮捕されて懲役2年6カ月、堀江は娑婆で96キロあった体重が65キロまで減ってた。スマートになってよかったね。

井川「昔から『出る杭は打たれる』という通り、目立ちすぎると碌なことがない。人間の嫉妬ほど怖いものはありませんな」。堀江「若いヤツが一代で成上がってイノベーションを起こすのを、旧世代の連中はよしとしない。寄ってたかって潰す。こういう日本の風潮はつくづくくだらない」。両方とも同意する。

文中に1ページを使って「ムショの教え」なる二人のコメントが白抜きでドカンと出る。17か所もあった。よりぬき名セリフかと思ったら、「残念ながら日本はヤバい国なのだ 井川意高」「この国では一歩間違えば、誰もが刑務所の中に行く 堀江貴文」といった、面白くも何ともない陳腐な一言ばっかり。

同様に「東大の教え」なる4か所では「東大時代からBMWを乗り回していた 井川意高」「僕なんてど田舎から東大に入った『西本タイプ』だった 堀江貴文」といったみっともない自慢話。二人の話はネタがいいから、とても興味深いのだが、エラそーに講釈垂れるんじゃないよとムカつく個所もある。懲役に堕ちた二人のバカが、たまたま東大出(堀江は中退)だったから、という企画だろ。

刑務所で一番ウマいのは、なんといっても市販のレトルト食品だって。死ぬほどウマかったのは運動後の麦茶とSNICKERSだって。塀の中の同窓生の話は尽きない。実用的である。実用したくないが。「シャバに出てきた瞬間から、水を得た魚でしたよ」と自分から言う堀江。恥ずかしい。編集者の校正がゆるいわ。いい気になりすぎて足下をすくわれた堀江、懲りていないみたいな。(柴田)

「東大から刑務所へ」堀江貴文・井川意高 幻冬舎新書
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344984714/dgcrcom-22/



●QRコード決済の続き。今使っている我々は、オープンベータテスターだと思ってる。アプリや仕組みがどんどん変わっていっているから。

この間まで即時クレジットカード引き落としだったのに。利用限度額が減った。本人確認が必要になった。決済方法に口座引き落としが追加された。クレジットカードのアプリアップデートしたら決済時に音が鳴るように。次は音量変えられるように。

画面内のバーコードとメニュータブから表示されるバーコードとで、決済方法が違ってたけど同じに。ユーザー間で無料送金できるように。割り勘機能が。などなど。アプリや仕組みがアップデートされていくのが面白い。続く。 (hammer.mule)