もじもじトーク[110]明朝体の教室 ~神は細部に宿る~
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

さて、今日は「明朝体の教室~神は細部に宿る~」をお送りします。

●「明朝体の教室」とは?

先週土曜日、「明朝体の教室」というセミナーに参加しました。

明朝体の教室? えっ、なにそれ? 明朝体を制作する教室なのか? 文字マニアが集まる教室なのか?

こんなセミナーです。
https://www.visions.jp/b-typography/


連続セミナー『タイポグラフィの世界』は2010年12月に開始され、現在、「明朝体の教室」の連続講座が開催されています。





今回の連続講座「明朝体の教室」は、『タイポグラフィの世界・シーズン7』といったところです。

講師は、書体設計や書体史研究の第一人者である小宮山博史さんと、ヒラギノ書体シリーズや游明朝体、游ゴシック体などの、書体設計士として有名な鳥海修さんです。

もじもじトークの読者で、ある程度、書体に詳しい方は、「おぉ、そんな凄いセミナーがあるのかぁ」と感じたのではないでしょうか。

フォントやデザインに携わってる人にとって、小宮山さんと鳥海さんは、雲の上の人って感じですよね。活字やフォントの神様ですから。

実際にお話したり、食事をご一緒する機会が何度かありましたが、とても優しいお二人でした。神様ですが、気さくなお二人です。大好きです!

小宮山さんと鳥海さんのことが掲載されている、僕のおすすめのウェブページをご紹介しますね。

小宮山博史
https://www.dynacw.co.jp/fontstory/fontstory_komiyama.aspx


鳥海修
https://www.td-media.net/interview/osamu-torinoumi-vol-1/


小宮山さん、鳥海さんの講演は、今まで10回以上、参加していますが、毎回、新しい発見があります。そして、お二人のお話は、いつも楽しいのです

『タイポグラフィの世界』連続セミナーには、書体を制作する立場の人もいれば、仕事でフォントを使っているデザイナーも多数、参加されています。

また、タイポグラフィに興味を持っている学生のみなさん、タイポグラフィ初心者だけど、フォントに興味を持っている社会人の皆さんも参加されています。

開催場所は、阿佐ヶ谷美術専門学校(通称、アサビ)で、年に5回前後、開催しています。

書体に興味があれば、だれでも参加できます。「文字やフォントの集まりは怖い」ということを耳にしたことがありましたが(笑)、『タイポグラフィの世界』連続セミナーは、そんなことはありません。

興味のある方、ぜひ、参加ご検討くださーい。

●密度の濃い3時間

今回の「明朝体の教室」は第5回でした。毎回参加したかったのですが、自分の主催イベントや、自分が登壇するイベントの日程と重なることが多く、半年ぶりの参加でした。

今回のテーマは、「書きにくい漢字は、どうデザインすればよいか」でした。横線の多い文字の作り方、縦線の多い文字の作り方、曲線ばかりの文字の作り方などです。

ひとつの文字を題材として、1時間ぐらい講義に時間を掛かているので、1日の講義で3~5文字しか進まないのです(笑)

でも、それが退屈ということは一切なくて、楽しくて、あっという間に3時間が経過してしまうのです。正直言うと、鳥海さんと小宮山さんのお話を、合宿方式で朝までやって欲しいって思うくらいなんです。

では、講義の内容の一部をご紹介します。ジャーン!
http://bit.ly/2Lzs8cU


●神は細部に宿る

例えば、「家」という文字を、異なる書体で並べてみましょう。「明朝体なら、どれも同じでしょ!」と思う人、多いと思います。

でも、違うんです。

拡大して見比べると、微妙に曲線の膨らみ具合が違ったり、右払いの始筆の位置が異なっていたり、縦線の太さが微妙に異なっていたりするのです。

「でも、10.5ポイントの大きさにしたら、どれも同じ明朝体に見えるんじゃないの?」と思うかもしれませんね。

でも、違うんです。

こちらで、ご確認ください。
http://bit.ly/2YtmIUc


実際に文章に組んで読んでみると、水のような空気のような明朝体に出会ったり、懐かしさを感じる明朝体に出会ったり、芳醇でまろやかな明朝体に出会ったり、そんな感覚を味わったこと、ありませんでしたか。

すべての文字を細部に渡って、理論に裏付けられたアウトラインを引いて、研ぎ澄まされた感性で、0.01mm単位で調整しているというお話を聞くと、まさに「神は細部に宿る」ということなのだと思いました。

最近は、電子書籍で読む人が増えたので、同じ明朝体で読むことに慣れちゃった人がいるかもしれませんが……。

僕は紙の本が好きなので、自宅は本だらけなんです。「場所をとるので、読んだら、古本屋に持ってってねー」とよく言われます。

だけど、文字関係の書籍は捨てる気にはなれず(古書や絶版の本が多いので)、大きな書籍棚を部屋にくくり付けることを考えているのですが、いつになることやら……。

●筆書体と明朝体

毛筆の漢字は大きく分けて「篆書」「隷書」「草書」「行書」「楷書」に分かれます。

また、江戸時代に生まれた「勘亭流」や「寄席文字」なども筆文字と捉えることもできまし、「教科書体」も筆書体のひとつと分類される場合もあります。

「そもそも、明朝体ってなに?」「何のために生まれた書体なの?」って思いませんか?

僕も、明朝体のことを、そこまで深く考えたことがなかったので、今回の「明朝体の教室」を通じて学んでいます。次回で、そのあたりを書いてみます。

●素敵な出会い

自宅の本棚には、文字に関する書籍がたくさんあります。本棚に入りきれず、床に積み上がれらている書籍のほうが多いのですけど。

何冊か気になる書籍を抜き出して、奧付を眺めてみました。そうすると、日頃、お世話になっている方々ばかりじゃありませんか。

それら書籍と奥付の写真を撮ってみました。
http://bit.ly/2LxON9i


著者が小宮山さんだからとか、鳥海さんだからとかという理由で購入することもあります。大半は、神保町の本屋さん、もしくは、オークションサイトで、気になる書籍を見つけると、思わず入手してしまうことがあります。

セミナーの懇親会で楽しくお酒を飲んで、親しくさせていただだいた方が、あとになってから、お気に入りの書籍の著者の方だったことに気付くことが、最近、多いです。

素敵な本との出会いは大好きなのですが、その本を制作した方々と思いがけずお会いすることも、とてもありがたいことですね。

では、また、二週間後の木曜日にお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/