[4827] 文体かもしれない◇流行、地域に降りてくる◇年齢と味覚の話

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《カメムシが布団に卵を……》

■ショート・ストーリーのKUNI[249]
 【番外編】文体かもしれない
 ヤマシタクニコ

■ショート・ストーリーのKUNI[250]
 【番外編】流行、地域に降りてくる
 ヤマシタクニコ

■晴耕雨読[53]
 年齢と味覚の話
 福間晴耕




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■ショート・ストーリーのKUNI[249]
【番外編】文体かもしれない

ヤマシタクニコ
https://bn.dgcr.com/archives/20190711110300.html

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(いつも原稿を出すのが遅いと柴田編集長に叱られ、今回はあわてて、とにかく何でもいいから早く書こうと思って書いた)

人生いたるところ文体あり。と以前も書いたような書いてないような。

最近またそう思ったきっかけは、6月16日に東京で行われ、話題になっていた「年金デモ」である。ネットを通じて呼びかけた人たちは、このデモは年金問題というシングルイシューにしぼったものであること、用意された「年金返せ」「年金払え」の文言がデザインされたポスターを、各自プリントして掲げるように、他の文言は控えてください、とあらかじめ指示していた。

ふーん、とちょっと気になったのだけど、やはり当日デモが行われると「年金返せ? 今まで払った年金保険料をすべて返せというのか」「じゃあ返してあげれば」といった書き込みが出たし、「年金払え」も「いや、払ってるだろ」「まだもらえる年齢じゃないだろ」と言われそうである。

もう30年ほど前のことだが、地元で「○○病院よくする会」という会があって、活発に活動していた。入社間もない私がよく知らないまま校正をしていて、記事を書いた人に「○○病院をよくする会、じゃないの? 『を』が抜けてるよね?」と言うと「いや。それは、『○○病院の民間移譲に反対し地域医療をよくする会』の略称やねん」と教えられ、がーん! となった経験がある。

その略称のほうが正式名称より圧倒的によく使われていて、事実私の勤務していた地域紙でも、正式名称が載ることはほとんどなかったように思う(たぶん……です)。本文ではさらに略して「よくする会」となっていたりした。

確かに「○○病院をよくする会」なら、○○病院によくないところがあって、それを改善しようという風に聞こえる。そうではない。私の質問は内容をまったく理解していないあほの質問なのだろうけど、それじゃ誤解されるのじゃないかなと、説明を聞いたあとも思った。

だけど、たぶん、そういう世界ではそういう略し方が普通なのである。そうするもの、なのである。それがその世界の文体なのである。

「年金返せ」というのも、「消えた年金」問題があったし、「とかした年金」問題もある。自分たちがまじめにはらってきたお金を勝手にどうこうしないでほしいという気持ちが、たぶん「年金返せ」になっている。知らんけど。

「年金払え」は、同じ日のデモで「生活できる年金払え」というコールもされていたし、そういう意味合いであろうことは、察することはできる。だけど、揚げ足をとることもできるよね。

集団行動って難しいと思う。さまざまな混乱も予想される。だから主催者側はあらかじめ文言を統一する、それも短くてインパクトのあるものをと、いろいろ考えた末のことだったのかなと思う。つまりこれも、こうした世界の文体なのではないか。30年前の「○○病院よくする会」みたいに。

また、実際にデモの様子の動画が流れていたが、「年金寄越せ」のフレーズでリードをとっている人に対し「寄越せって言葉を使ってほしくない」と苦言を書き込んでる人もいて、同感だと思った。

デモでそんな甘っちょろいこと言ってられるか、細かいことにこだわるな!……とは言えないような気がするんだよね。むかしならいざしらず。

もちろん、私はデモという行動に対して批判する気は全然ない。気持ちはわかるし(退職金をもらえない非正規労働者やシングルの人が多い、そしてこれからも増えるだろうことを考えると「老後に2000万円」どころではないはず)、実際に自分の貴重な時間を割いて参加する人たちを、なんとかエモンみたいにばかにしようなどと思わない。ただ、難しいもんだなと、つくづく思うのだ。

ついでに。言葉つながりでいくと、最近ネットで見かけて気になるのが「義両親」という言葉だ。配偶者の両親、つまり義父と義母のことだろうけど、「え?」と思う。

辞書には載っていない。初見ですぐに意味がわかるんだから使用に問題ないといえるかもしれないが……ためしに入力してみるとATOKも、なんと、ことえりも変換してくれた! これはもう広く受け入れられている言葉なのか。いや、ことえりが変換するということは、単なるぼけの可能性があるな……。

なんだかひっかかる、できたら使いたくない言葉ではあるが、そうこう言ってる間にこれが普通になるかもしれないのが、言葉のおそろしいところだ。ちなみに「義理の実家」という言い方も見かけたが、これは意味が崩壊してるよね。


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最近ショックだったこと。カメムシに布団に卵を産み付けられていたこと。それに気づかないまま、その布団で数日間寝ていたらしいこと。気がついたときには、すでにいくつかの卵が孵化したあとだったこと。孵化したやつが見つからないこと(どどどどどこに行ったんだー!)

以来、洗濯物や布団を取り込むときにはメガネをかけ、しつこく、しつこくチェックしております。そろそろ産卵の季節も終わると思いますが……。


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■ショート・ストーリーのKUNI[250]
【番外編】流行、地域に降りてくる

ヤマシタクニコ
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(締切日より早く書いて送ったら、柴田編集長から「短すぎる。もっと書け」と言われたので追加です。柴田さん、私をこき使わないでください)

流行のものでもおばさんが着るようになったらおしまいとか、言葉もおっさんが使うようになれば「それは死語」と言われるわけだけど、最近、私の周囲で急速に普及……しているのかなあと思われるひとつが、書くのもはずかしいが、LINEである。

ああ恥ずかしい。ええ、いまごろ? なんで?! どういうこと?!って、絶対言うよね。いや、知りませんってば!なんか知らないけどそうなんです。

もちろん私も何年か前から、アカウント持ってて、勤め先の同じ部署のメンバーでグループ作って連絡用に使ってた。「メールですむのになあ」と思いつつ。

会社を辞めてからはそれも使わなくなり、「やっぱりメールで十分だよなあ」「LINEって必要かなあ」としみじみ思ってた。

それがここへきて「LINEやってます? LINEで連絡しますから」「LINEで送りたいものがあるのでアカウント教えて」「電話したいからLINEのアカウント教えて。LINEだと無料なんでしょ?」等々、アカウントを聞かれることが立て続けに何件かあった。私と同年代の人たちから。

ついに、ついにLINEが地域に降りてきた……。何年もかかって……。メールですむのに……。

まあそういうわけで仕方なく、私のアカウントって何だっけとか、ともだちになるのってどうするんだっけとか、ほとんど使ってないから調べながら使っている。その姿はまぎれもないスマホ音痴のおばちゃんやないかーい。

違うの! メールですむから、使ってなかったの!

だいたい、いい年した大人が「ふるふる」したり、QRコードを表示して読み取ってもらったりするのは、何というか、ものすごくあれだよね。まあいいけど。

そうそう、そういえば去年、とある印刷屋さんに仕事をお願いすることになり、打合せする機会があったのだが、その印刷屋さんが「言うときますけど、LINEでデータ送るのだけは、やめてくださいね」と、こっちをまじまじ見ながら言うのである。

そのときは「あ、はい」と答えたが、内心「印刷用のデータをLINEで送る人なんかいてるんかい」と思ってた。

最近「友だち」になった人たちがまずすることは、画像を送ってくることなのである。写真が早く送れるので、みなさんお気に入りのようだ。ていうか、写真を送りたい、じゃあLINEしなきゃ! と思うみたいだ。どうしてそうなる。

だが、LINEで画像を送ると自動的に圧縮されてしまう。そうならないようにすることもできるみたいだけど、たぶんそのまま送る人が多いのだろう。

先の印刷屋さんによると、過去、「すいません、送っていただいた写真は画質が悪くて使えないんですが」「そんなはずはない!」「いや、でも粗くて」「ちゃんと送った! こっちの画面ではきれいに見えてる!」と、なかなか納得してもらえなかったそうだ。

メールで送ればいいのに……。

もうひとつの、「やっと地域にも降りてきた」と思えるものは、ポケモンgoのレイドバトル。最近、うちの近所で遅ればせながら、かなり盛り上がっているのだ。

卵の割れる(レイドボスが姿を現す)少し前から、ぞろぞろと人が集まりだし(とはいってもお互い知らん顔。ものかげに隠れたり)、大物だとちゃんと20人近く集まる。

少し遅れてもう始まってしまってても、そんなに大物でなければ、つまり数人でも倒せそうなレイドボスなら、第二陣でできることもある。平日でもそこそこ集まる。

ということは、毎日できるのである。やっと、都心なみにできるようになったかも……。いつの間にかサークルみたいなのもできているようで、シニアの男女数人がにこにこと楽しそうに教えあっていたりする。これは郊外の住宅地ならではであろうか。

あと、週末などお父さんと小学生らしい息子が一緒に参加してて、無事終わると「よっしゃ、次はここや」と勇ましく次のジムを目指すお父さんに、息子がついていくという風景が見られたりする(かわいい)。

ところで、この間ジムバトルしたら、トレーナー6人ともレベル40(最高レベル。それ以上はない)であることに気づいた。ひょー。もはやそういう時代なんだ。もうポケモンgoがスタートして3年だもんな。私、まだ36だけど、早く40になって楽隠居してみたい。40になったら……どんな気分なんだろう……。あと12000000XP以上必要だけど。


【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
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というわけで、お目汚し連続2本で失礼しました。ところで、私の目下の悩みは最近ゲットしたアローラのロコンを、進化させるべきかどうか。真っ白のキュウコンは美しいと評判ですが、真っ白のロコンもかわいくて、どうしたものか。


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■晴耕雨読[53]
年齢と味覚の話

福間晴耕
https://bn.dgcr.com/archives/20190711110100.html

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少し前に話題になったモスキートという装置がある。これは大人になるにつれ周波数の高い音が聞こえなくなることを利用して、17KHzという高い周波数の不快な音ブザーを流し、店頭や駐車場などで迷惑行為をする若者を追い払うというものだ。

これを逆手に取って、若者の方も「大人に聞こえない携帯の着信音」として、この音を利用するようになったという後日談もあるのだが、今回の話と直接関係ないのでここまでにしておこう。

実はこうした子供にしか関知できないというものは、音に限らず存在する。悲しいことに人間は、加齢により身体のいろいろなところが衰えて、感度が落ちてしまうのだ。

例えば、目の水晶体は加齢とともに屈折率が衰えて老眼になってくるし、透明度も落ちてくる。そして、

舌もまた感度が落ちてしまうのだろう。私の周りですばらしい舌を持った人を何人か知っているのだが、年とともに薄い味のものを「味が無い」と言うようになり、味付けもだんだん濃くなっていくのを見るにつれ、それは今では確信になりつつある。

そういえば、年を取ると苦いものが食べられるようになるというのも、あるいはこれと関係あるのかもしれない。

悲しいがこれも人間の宿命なのだろう。お年寄りに料理を出す機会があるときには、それを頭の隅に置いて、ちょっとだけ味付けを濃くしてあげて欲しい。

そして、この話には続きがある。Wikipediaのピーマンの項目によると、なんでも子供の野菜嫌いの理由の一つは味覚が鋭敏な故、この野菜の苦みを大人より強く感じているためでもあるらしい。つまり、まだ若いつもりの大人でも、子供たちの味覚よりは既に感覚が鈍っているというわけだ。

こうして考えると、せっかく鋭敏な味覚を持っている子供のうちに、ジャンクフードや極端に味付けされた食べ物を食べさせるというのは、とても罪深いことだと思うのだ。

【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/


HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。


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編集後記(07/11)

●偏屈読書案内:黄文雄「なぜ韓国は未来永劫幸せになれないのか」2

小中華(韓国)からの脱出を希望する者は、総人口の約2/3と統計数字に出ている。「新両班」といわれる「脱南者」は、金持ちの企業貴族が家族だけを海外に移住させている。文在寅大統領の長女と家族が東南アジアに移住し、公的予算を使って警護されている。小中華は、今でも「世界に冠たる養子輸出大国」であり、いまだに人さらいや子供の誘拐が多いのが深刻な悩みであるらしい。

「事大(弱者が強者に仕えること)主義」は、朝鮮半島有史以来の最大の生存原理で今も変わらない。李朝時代の両班と奴隷という二極の階級社会意識は、依然として存在している。それは南では大財閥に継承され、北では党幹部が相続している。習近平の大中華意識たっぷりの尊大な発言に対しても、南北朝鮮とも中華に仕える「事大」意識から、「知らんぷり」を決め込んでいる。

朝鮮半島には英雄がいない。韓国政府が懸命に持ち上げる両班出身の安重根は、伊藤博文を暗殺しただけのテロリストに過ぎない。現代になって「反日」が英雄の基準と定められてから、救国の戦士も日本軍で働いた過去があると「親日名簿」に入れられ、売国奴にされた。一方で、日本と敵対した人物は徹底的に義人扱いされる。テロリストや卑怯極まりない「抵抗の英雄」ばかりである。

「近代朝鮮文学の父」李光洙は、朝鮮人の性格について「虚言、詐欺、相互不信、美辞麗句、空理空論、阿諛迎合、面従腹背、大勢順応、無恥、悪口、臆病、無決断、反社会的利己心」と指摘する。また近代韓国の大功労者、朴正煕元大統領は著書「韓民族の進むべき道」で、自国民の国民性についてこう語る。

「四色党争(四つの党派に分かれて抗争を繰り返したこと)、事大主義、両班の安易で無事主義な生活態度によって、後世の子孫にまで悪影響を及ぼした。民族的な犯罪である」。李朝史をそう総括しながら、「今日のわれわれの生活が辛く困難に満ちているのは、さながら李朝史の悪循環そのものである」

「今の若い世代は、既成世代とともに先祖たちの足跡を恨めしい眼で振り返り、軽蔑と憤怒をあわせて感じるのである」。さらに韓国人の「自律精神の欠如」「民族愛の欠如」「開拓精神の欠如」「退廃した国民道徳」を痛烈に批判した。筆者は韓国人を、「外華内貧」で「我執が強すぎる」とイメージしている。

そして大中華と小中華社会の共通のメンタルについては、「ウソつき、ホラ吹き、裏切り」の三点セットを挙げる。中国人と日本人のちがいについては「詐と誠との一字の差だけ」と即答する。異文化同士の遭遇で起こるいざこざを多く見てきた筆者は、たいていは日本人の「片思いの結果」であるという。

日本でよく耳にする「以心伝心」「腹を割って話合えば互いに理解できる」は中華だけでなく、外国には通じないと注意を促す。大中華には「すべてウソ、本物はペテン師だけ」という俚諺があり、小中華には「息を吐くようにウソをつく」がある。「ウソつきは泥棒の始まり」と親にしつけられる日本とは大きな違いがある。ウソつきでないと生きられない中華の不幸……。(柴田)

黄文雄「なぜ韓国は未来永劫幸せになれないのか」2019 ビジネス社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4828420835/dgcrcom-22/



●あまり好き嫌いがないのだが、これは舌が……まさか……。

/私も「がーん」。そんな略し方って。意味が変わっちゃうのはいいのか。

/LINEで画像送る人は結構いる。やり取りの履歴がチャット形式なので見やすいし、既読マークつくし。すぐにアカウント変えられるのもいいみたい。スマホメインの人だと、LINE=メーラーの感覚じゃないかな。

メーラー使ったことない人多そう。アンドロイドの人に、Gmailの話をしたら、何それ? って言われること多いよ。アカウント持ってますって、って伝えると驚かれる。

/貧乏性なので、二体以上にならないと進化させないのであった。薬草やエリクサーなどをゲームクリア後に大量に残っているタイプ。予備がないと不安。好きなものを最後に食べる。チャンスの神様は前髪しかないって、頭ではわかっているのに〜。

/今日から31日まで「アーマードミュウツー」が出現するので、賑わうと思う! 二体は取りたい!! 90%以上のが取れたらいいなぁ。(hammer.mule)