ローマでMANGA[146]新しいmanga構築法/基礎学習
── Midori ──

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●新年度のプログラム見直し

早くも9月です。家庭の事情で、今年もバカンスなく夏が過ぎ去りました。

もっとも、郊外に住んで、定職がないから、バカンスがあってもなくても、そう生活に変わりはないのですが。

マンガ学校は大学に準じて、例年10月の半ばから新学期が始まります。が、今年は二週間早く、9月の3週目に開校となります。ということは、授業の準備にとりかからねば、なのです。

一昨年に始まったユーロマンガコースは、その始まった年にプログラムを組みました。問題は学習すべきことが沢山あって、授業数が十分ではない。

それに加えて、各コースに講師は二人いますが、我がユーロマンガでは一人交代しました。講師それぞれに得意、不得意があり、講師が交代するということは、プログラムを見直す必要があるということです。





昨年までいた講師は、mangaを習得していたので、日本のプロ漫画家が使うつけペンやスクリーントーンの技法に長けていました。そして、原稿を早くきれいに仕上げるということも。

ですから、授業でもそのように、徹底してつけペンに慣れさせ、授業時間内に1、2ページの完全原稿を仕上げる、ということをさせていました。

新しい講師(私の昔の生徒でもあります。昔の生徒と一緒に教壇に立つって、教師冥利に尽きます)は、キャラの創造に優れ、キャラのバックグラウンドに合わせた背景を創造することに長けています。

学校卒業後、フランスの出版社と仕事をしているので、フランス風マンガ+元々の好みであるmangaを合わせて、まさしくユーロマンガを製作しています。

https://www.artstation.com/diaxyz

https://instagram.com/dia.xyz?igshid=zel19zzi1odn


彼女はじっくり時間をかけて製作するタイプなので、前の講師のやり方を踏襲するわけにはいかず、また、彼女はつけペンではなく、ミリペンや筆を使うので、これもまた昨年までの授業を踏襲するわけにはいかないわけです。

●「構文と動詞の活用と時制」を一緒に教える

コンビを組む講師が代わったというだけでなく、私の授業もこの2年の経験から変更する必要を感じていました。

言語の学習の場合、本当にものにするには最低10年は必要、と聞いたことがあります。でも、例えば英語塾に行こうとする場合、一年くらいで基本を習いたいと思う人も多いはずで、それに合ったカリキュラムを組んでるわけです。

ユーロコースは、8か月でmanga構築法の基礎を学習してもらいます。過去2年間は、mangaとマンガの違い(mangaはキャラの感情をベースに、マンガは行動をベースに構築する)、感情を表現するために読みの時間をコントロールする。そのための、主な4項目を分けて授業をしていました。

1)誰の目からの展開か
2)セリフの位置
3)コマの大きさと形
4)構図

例えば、英語だと主語+動詞+述語の構文、動詞の活用、時制と分けて授業を構成するようなものです。

今年は分けずに、一緒に学習してもらおうと決めました。構文と動詞の活用と時制を、一つの文で一緒に説明するわけです。

その方法は分析。manga文法を理解し、かつ自分の作品に当てはめられるようになるには、既成のものを分析する力があると、速くできるようになります。つまり、演出家の目を持つわけです。

既成のmangaから、特に感情を表現しているページを選び、それをモニターで見せながら、感じること(作者が意図したキャラの感情)を言ってもらい、そのページを構成している要素を全部書き出してもらう(この書き出す作業は個々にノートにやってもらって、終わったら答え合わせをする、っていうのはどうかな)。

●「Simply Piano」に教わる

最初は私が誘導しながらやっていく。それから段々と手を離して、個々にやってもらう。

まぁ、当然といえば当然なやり方ですが、今年の1月からSimply Pianoというピアノのレッスンをしていて、そのレッスンが実に丁寧に、すごく簡単なものを手を取りながら一歩づつ歩くように繰り返し、少しづつ難しくしていくというやり方で、授業構成の考え方という意味で大いに参考になりました。

Simply Piano di JoyTunes di
https://apps.apple.com/it/app/simply-piano-di-joytunes/id1019442026


ちなみに、幼少時にヤマハのオルガン教室に2年ほど通ったという実績はあるものの、弾けるのは「猫踏んじゃった」だけ、というありさまでした

今、6コードを覚えて、エルトンジョンの「YOUR SONG」を弾き、クラシックではモーツァルトのソナタ11を弾く、しかも画面に流れてくる楽譜を見ながら弾くという有様です!

アレンジで簡単にしてあって、しかも伴奏もつくし、ポップスの場合は歌も入るので、すごく弾ける感を与えてくれます。これも大事ですね。「できるんだ!」と思えること。

ちなみに使っている楽器はCASIOの電子ピアノWK-1800。中古買い。フロッピーディスクが使えるという古い機種だけど、白黒合わせて76鍵盤、一人でオーケストラやビッグバンド演奏ができます。それを使いこなせるようになるのはまだまだ先ながら、音楽のある生活というのはいいもんですね。

授業に戻ります。

分析をいくつか繰り返した後、SMPLY PIANOに倣って、ある程度範囲を狭めた課題でネーム(manngaのストーリーボード)を作ってもらいます。

「ある程度範囲を決めた」というのは、「なんでもいいから2ページのネームを作って」と突き放してしまうのではなく、こちらである程度キャラや状況を設定してしまって、この感情を表現するネームを作ってもらうようにします。

そして、徐々にページ数を増やすのではなく、表現すべき感情をさらに深めていくということを考えています。

例えば、「思いがけないプレゼントをもらって喜ぶ少女」から、「思いがけない」のがどう「思いがけない」のか、複雑にしていく。

「喜ぶ」表現は笑顔になるだけではなく、状況によっては泣くこともあるだろうし、それが「シクシク」かもしれないし、号泣かもしれない。ひたすらじっくりとそのプレゼントを握って静かに感動してるのかもしれない、などなど。

●そうだ、ストーリーもあった

ユーロマンガはmanga同様、ストーリーも作画家も同一という前提で進めますので、ストーリーの基本も授業に入れます。

脚本家やmangaの原作者の本を読んで、いろいろ勉強してます。目から鱗(他の本もそうだけど)だったのが、ハリウッドの映画脚本家シュナイダーの「SAVE THE CAT」

このブログで内容を紹介してます

https://maamaa-create.com/save-the-cat/


この本に出てくる映画ストーリーの分析表を利用させてもらって、実際の映画を見ながら分析を試みます。

これは昨年もやって、題材は「ローマの休日」。2時間行かない映画なので、授業時間内に全部鑑賞できるし、説明できる時間も取れます。

シンプルなストーリーながら、巧みに伏線を使い、キャラの成長をしっかりと描いています。白黒映画の白と黒の使い方も見事で、学習すべきことが端的に学習できる優れた題材です。

さぁ、新しいクラスの生徒たちに会うのが楽しみです。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

今回はなぜか「ですます」調で始めてしまった。丁寧な感じが出て、これはこれでいいかも。

旦那が年金生活に入って3年目。「亭主元気で留守がいい」という格言を身に染みているところ。いや、いい人なんです。いい人で、しかも、さっさと色々やることを見つけてテキパキ動くタイプ。ただ、それにこっちも付き合わされるのです。私の制作時間が……。

夕食が終わって、後片付けも終わる午後10時半以降が私の時間。でも、一日の疲れが出るし、旦那がリラックスして見ているテレビの音が気になって集中できない(最近若干聴力が衰えてきた旦那は、テレビの音を少し大きめにする)。

つまり、早朝を使うしかないな、という結論に達し、起きる時間をずらそうとしてるとこです。今のところ、8時台。少なくも7時に持っていきたい。無理に起きると頭がぼーっとして1時間くらい使い物にならないので、目覚ましじゃだめ。「7時に起きます」と念じながら寝るのがいいかも。

[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT


お絵かきインスタ
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MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
更新しようしようと思いつつ、そのまま…
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/


主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
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