装飾山イバラ道[253]「ライオン・キング」を見て/武田瑛夢

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ライオン好きな私。作品もライオン多数。現在は新作製作の真っ只中ですが、「ライオン・キング」を見てきました。

・ライオン・キング|超実写映画|ディズニー公式
https://www.disney.co.jp/movie/lionking2019.html

※以下は映画のネタバレをかなり多めに含みます。未見の方はご注意願います。





●超実写版というもの

今回の「ライオン・キング」は「超実写版」とのこと。

画面はどこを切り取ってもアニマルプラネットか、ディスカバリーチャンネル、ナショジオみたいな、大自然と動物の現実感。ライオンだけじゃなく、地面も草木も水も、超絶にリアルだ。

とにかくモフモフのライオンの赤ちゃん時代は、もうたまらん。すぐに子供時代になってしまうけれど、もっとあのモフモフ時代のエピソードが欲しかった。

イボイノシシの背中にミーアキャットが乗っているのだけは、自然界にはないですね。動物園ならありそう。

そういえば日本では、イノシシの背中に日本猿の赤ちゃんが馬乗りになっていたのがニュースになった。そりゃあ、かわいいですからね。萌え萌え。相棒の動物が馬乗りなのは、アニメ版でもそうなので、拘りがあるのかもしれない。

しかし、それ以外のシーンのどこを切り出しても、私には普通に動物の生活シーンの実写に見えた。

動物の動きも、人間味がある仕草などはかなり少なく、動物らしい。なのにストーリーは幼馴染との甘酸っぱいやりとりや、大人たちの邪悪な嫉妬心が描かれていく。描かれているのは、極めて人間的な心理なのだ。

ジャングルでの生活も、正直言って逃避行動だ。人生の本題から逃げて逃げて、でも気づかされて立ち戻っていく。逃げてる間に成長して、時間が解決するということもある。

これは、以前「天気の子」の記事で私が書いた、「早く大きくなってしまえ」という意味と重なるかもしれない。

●オススメのシーン

気に入っているのは、やはり皆が死んだと思っているシンバが、ジャングルで暮らしている時のシーン。

見た方は、あのシンバの毛が飛んでいくシーンです。触れずにいられないシーンなので書きますが、これから見る方は読まない方がいいかもしれません。少々あらすじと一緒に書きます。

主人公のライオンシンバは、王の父ムファサの死に直面し、責任を感じて悩みながらも群れを離れる。実は父の死は、邪悪な叔父ライオン、スカーの策略だったとも知らずに。

ジャングルで出会った仲間のイノシシとミーアキャットと共に、虫食をしながら暮らし、大きくなったシンバ。サバンナ一帯は、王となったスカーとハイエナ一味のものになり、すっかり荒廃してしまった。

そんな中、シンバの抜け毛の塊がフワフワと風に乗って飛んでゆく。サバンナの中を転がったり、動物の群れの中を通り抜けながら。

これはきっと群れの誰かに毛が届いて、気づいてもらえるんだ! と見ている誰もが期待する。しかし、キリンが葉っぱと一緒に、パクリと毛玉を食べてしまう。えー、残念! ここで終わりか。と一瞬思うけれど、まだまだ続く毛の旅のシーン。

美しいし、この世のつながりを感じさせる上に、アニメでも実写でもない不思議なリアリティだった。こんな表現が出来るなら、他にももっと見てみたいものだ。

そして、動物たちに意図した動きをさせるためのCGだけれど、動きは擬人化しない方向で徹底していることは凄い。

しかし、なんとこのシーンあたりで、うちの夫はウトウトしていたらしい。アクティブなアクションシーンよりも、この静かな静かなシーンこそ素晴らしかったのに。もったいない。

とはいえ、夫が退屈したのも理解できる。超実写の美しさも、一時間もすれば目が慣れてしまうかもしれないのだ。ストーリーに強く惹きつけられない限り、単調に感じる人もいたのではないだろうか。

●擬人化された心

キャラクターの動きの擬人化は、極力抑えていると書いたけれど、心理は完全に擬人化されている。心の中身は人間の考えてる喜びや、しがらみにまみれているということだ。自分たちの人生を、ライオンやサバンナの動物で見せたといった感じかもしれない。

人間が考えたストーリーだから、そうなるのは自然だけれど、どうしてなのか考えてみた。類似性のある番組を思い出したので触れてみよう。

「ミーアキャットの世界」という番組をご存知だろうか。アニマルプラネットの人気番組だ。何家族かの集団で群れを作って暮らしているミーアキャット。ナレーションによって日々の食事探しや、恋愛模様が展開されていく。

ミーアキャットは群れの中の決定権はメスが握っていて強い。愛らしい見た目とは違い、サバンナで最も同種の殺し合いが多い動物と言われている。常にナワバリ争い、権力抗争の緊張感の中にいる。

そして、何十匹にもなる群れの中では、トップのメスとオスのみが繁殖を許されているそうだ。究極のピラミッド社会で、下位のメスが生んだ子供は殺されることもあるという。掟やぶりが許されないのは、マフィア的でゴッドファーザーとも比喩されることあるくらいなのだ

私はこの「ミーアキャットの世界」のストーリーの進め方と、ライオン・キングがかなり重なって見えた。

実写のナレーション番組なので違いはあるけれど、実写であっても動物の暮らしは、十分ドラマチックで面白みがある。動物も同じように悩みや喜びに揺れ動いているのだ。

動物を人間に見立てて話を作るわけでなく、生きる上で起こるエピソードを語るだけで番組が成り立ってしまう。そもそもが同じ命で、姿が違うだけ、暮らしている環境に合わせて、悩み苦しむのは生物は皆同じなのだ。

しかし「ライオン・キング」では、ほぼ動物的な動きの中でも「目」だけは違っていた。CGの強みである。

視線の動きだけは、極めて人間の心を映しているように見えた。興味を持ったものをジっーと見たり、考えたりする時の目に現れる感情は、とても共感しやすいものだったのだ。

アニメーションのキャラクターは、擬人化によって感情が瞬時にわかりやすくなる効果がある。擬人化を捨てた超実写では、目の動きにそれを担わせていると感じた。

目が心を語っているのが、実写を超えた部分なのかどうかはわからない。もしかしたら、もっと顔のアップを使っても良かったのではないかとか、今は思う。超実写の美しさだけでなく、さらなる工夫がないと、アニメーションとの比較にまだ勝てない気がする。

とにかく私はライオン好きで、上げ底判定なはずなのに、作品的には物足りなさもあった。超実写の次回作があるとしたら、さらなる進化を期待したい。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/

私は以前、サファリパークで赤ちゃんの抱っこ会に行った記事を書いたことがあるように、ライオンの赤ちゃんが大好き。子猫も好きだけれど、ライオンの赤ちゃんは子猫みたいにあちこちにいないし(笑)。

ライオン・キングのシンバのお披露目シーンのように、赤ちゃんライオンを両手に抱えた毛の手触りは、映画よりもしっかりとした毛。例えるなら、猫と柴犬の中間くらいの柔らかさかな。わかりにくいか(笑)。

・装飾山イバラ道[179]ライオンパワー/武田瑛夢
http://bn.dgcr.com/archives/20160614140300.html