グラフィック薄氷大魔王[630]Sidecarを使ってみた
── 吉井 宏 ──

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● MacBook Pro 13で試す

macOS Catalinaの目玉機能「Sidecar」。iPadをMacの外部ディスプレイ&液タブとして使える。ネーミングが絶妙。しかし、メインマシンの黒筒Mac Proが対応機種外でガッカリ。

とりあえず、サブマシンのMacBook Pro 13で試してみた。





メニューバーのAirPlayから簡単に接続できる(Wi-FiとBluetoothが必要)。単に外付けディスプレイを繋ぐのと同じで、ミラーリングもできる。Astropadのように画面の一部を割り当てることはできないけど、そういうものとして使えばぜんぜん大丈夫でしょう。

AstropadはMacの画面を借りてくる感じだけど、SidecarはiPadが主体(メインディスプレイ)になれる。ミラーリングすると、Mac側の解像度が変わり、比率で足りない分は黒フチになる。その分、わずらわしさは少ないとも言える。

心配してた通り、Apple Pencilの筆圧を調整できないようで、僕的にキビシイかも。有料版のAstropad Studioを使ってるのは筆圧調整できるから。

Photoshopのブラシ設定で「流量/筆圧」を最小0%だったのを、30〜50%くらいまで上げたらとりあえず普通に描けるようにできた。もちろん、筆圧が影響しないブラシなら問題ない。Modoのテクスチャペイントも、ブラシ設定を変えなきゃいけないけど大丈夫。
http://www.yoshii.com/dgcr/sidecar-IMG_2342

USBで繋いでも動くけど、有線接続になってるのか不明。有線/無線で速さの違いはわからない。

Commandなどの修飾キーのボタンがサイドバーにあるので、スポイトツールや右クリックなど使えたりする。まあ、Macのキーボードを使うほうが現実的なので、サイドバーは非表示にしてる。

タイミングによるのか、ミラーリングで設定してる最中に、カーソルが左の狭い範囲でしか動かなくなるというトラブルが2度あった。Macを再起動するしかなくなる。

何度か使ってみたところ、やはり範囲設定しなくていい分、取り回しがラクなのは大きなメリットかな。iPadの解像度が低くて狭いという意見もあるようだけど、文字やパネルが小さくなりすぎなくていい感じに思える。せめて17インチのiPad Proがあれば解像度的にも満足できそう。

総合的にはAstropad無料版といい勝負、ってところかな。まもなくリリースされるであろうiPad版のPhotoshopが出てきたら、いろいろひっくり返っちゃうんだけど。

● Catalinaあれこれ

・先にMacBook Pro 13に入れ、普段使ってるソフトで大きな不具合がないことを確認した上で、メインマシンのMacProにも入れた。使用環境によっては、アップグレードしないほうがいいことがあるらしいので注意。

・とりあえず「困ったこと」は今のところひとつだけ。MacProを起動すると、ファンがフル回転のままになってしまうことがある(MacBook Pro 13では起きない)。アクティビティモニタを確認してもよくわからない。

別の重そうなソフトを起動すると、おさまるっぽい(その後のアップデートで、ファン回りっぱなしは解消した模様)。

・Mail.app、クラシックレイアウトで旧式のリスト表示がついに廃止されてしまい、カラム表示を基本にリストっぽく使う形式になった。まあ、慣れるしかないけど、以前のカラム表示よりは使いやすい。

不具合なのか、アカウント情報のリストで、削除してないメールが「削除されたメッセージ」に表示されるなど不正確になってる。

・Dashboardが廃止されてしまったので、世界時計のウィジェットが使えなくなってちょっと困る。アプリを探してみたけど、Webの日本航空の「世界時計・カレンダー」がシンプルで良さそう。
https://www.jal.co.jp/worldclock/


・アクセシビリティの音声コントロールは、たぶん相当便利なもの。数字キーやコマンドを声で操れないかなと思ってやってみてるけど、今のところ思うようにならない。

・ヒラギノ角ゴPro/ProNなど一部フォントが、ヒラギノ角ゴに統合されて消えた。使い分けがよくわかってなかったから、混在してる書類あるだろうな。実際使ってみると、ヒラギノの選択がシンプルになって使いやすい。最初からこうすればよかったのに。

・プレビュー.appの右開きはCatalinaでも実現せず。

・メモ.app、新規メモで書き始めたら文字が太くて大きい! これなら使いやすいぞ、と思ったら、1行目が「タイトル」扱いになるだけで、2行目以降は小さくなるのだった。Evernoteばりの高機能になってきたけど、メモ.appって、リスト表示ができるプレーンテキストでいいのになあ。

・iTunesが3つのアプリ「Music」「TV」「Podcast」に散開。あれ? 音楽はApple Musicのみになって、ストアでダウンロード購入ができなくなった? と思ったら、右上のボタンのプルダウンメニュー「iTunes Storeで表示」でいちおう購入できるらしいけど、わかりにくい。もうダウンロード購入はメインの機能じゃないのね。

・iOSに近い使い勝手になったMusic.app、再生しながら他のアルバムを開いて確認とかできなくなってるのは不便。

・QuickTime7(Pro)がCatalina非対応に。手軽な動画編集ソフトとしてQT7を使ってきたけど、これから連番画像を動画化するのどうしよう? と思ったら、QuickTime Playerに「イメージシーケンスを開く」が追加されてる! 確かに動画化できた。ちゃんと見越して対処してくれてるな。

ただし、QT7のように「6フレーム/秒」とかの遅いFPSにできなかったり、選択して削除やコピペなどの簡易編集もできない。普通に動画編集ソフトを使えばいいんだけどね。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


Twitterで話題になった件「まさかウィルキンソンを外国のブランドと思ってないでしょうね?」……思ってましたとも!w ウィルキンソン・タンサンの「タンサン」っていうカタカナ表記はレトロ調表現かと思ってたけど、明治37年からのブランド名だったとは!

緊急追加。ああああ、吾妻ひでおが亡くなった。僕がSNSとかでよく使うこの「ああああ」だって、元を辿れば吾妻ひでお由来だし。不気味なわけのわからない生き物をかわいらしく描くってのもそうだし、SFに深入りするきっかけもそう。直接の影響を受けたマンガ家としては一番大きかったかも。

80年代半ばまでの僕の頭の中は「YMOと吾妻ひでお」だった。当時、「OUT」の特集はじめ、ほとんど全部の単行本やムック本を買ってたと思う。しばらく見ないと思ったら「失踪日記」での復活は衝撃的だったなあ。

◯Studio City Macauのデコレーション展示中
https://bit.ly/30olPNF


○吉井宏デザインのスワロフスキー、7月半ばに出た新製品4つ。

・幸運の象 LUCKY ELEPHANTS
https://bit.ly/30RQrqV


・HOOT HAPPY HALLOWEEN 2019年度限定生産品
https://bit.ly/2JZVVcm


・SCS ペンギンの赤ちゃん PICCO
https://bit.ly/2JStbC4


・SCS ペンギンのおばあちゃん
https://bit.ly/2YbmnJ7