ローマでMANGA[148]檜舞台に返り咲いた!/Midori

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●ルッカコミックス&ゲームス2019

https://www.luccacomicsandgames.com/it/2019/home-2019/

毎年、10月の末から11月の始めにかけての水、木、金、土、日の5日間はルッカ・コミックスの日と決まっている。今年は10月30日から11月3日の5日間だった。

雨………………………

毎年、1日か2日は、小雨に見舞われるのがお決まりになっている。季節柄、しかたない。でも今年は金曜以外、すべて雨だった。傘をこんなに使ったルッカコミックスは初めての経験。てるてる坊主を作らなかったのがいけなかったか。

雨にもかかわらず……

切符販売数合計が27万飛んで3。昨年は25万1千85枚。

販売数の内訳は、
10月30日:24,372
10月31日:35,903
11月 1日:88,635
11月 2日:81,399
11月 3日:39,694
すごい数字ですね。

他に数字的なところでは、
シンポジウム、ワークショップなど。1,600件
サイニングセッション 4,000件
ゲーム、ゲームセッション 1,500件
コンサート 16件
芝居 2件
ゲスト 1,000人、内外国人150人

初日動画


3日目(一番人出が多かった日)動画


外壁に囲まれたルッカ旧市街の、ほとんど全部を使っての大掛かりなフェアで、コミックス以外にゲーム、映画、コスプレの展示、販売、紹介、トークショーなど、街をあげての一大祭になっている。





●今年の私のお役目は

八年前に、今は亡き谷口ジローさんが公式ゲストとして招待された時に、アテンドおよび通訳で参加して以来、日本人ゲストのお世話でルッカコミックスのスタッフとして毎年参加している。

正式のスタッフはルッカ・クレオという会社に所属して、年間を通して祭典の準備をする。私はフェア期間中だけの協力者、という形だ。毎年夏前に「参加しますか?」という打診があり、「はい」と答える。期日が迫るとゲストのスケジュールが送られてくる。

当初はメインゲスト(出版社だけでなく、ルッカコミックスで展示会をしたり受賞した作家)のイベント通訳の役をもらっていた。正直なところ、このお役目は自尊心を大いに満足させてくれた。

スポットライトを浴びて、聴衆の前で喋るのが実は好きだったという私を発見してビックリ。主人公は当然、招待作家だということはわかっている。作家さんを押しのけて前へ出ていくわけではない。

司会者や聴衆の質問、作家の答えをうまく双方に理解できるように通訳し、かつ日本の漫画界では当たり前のことがイタリアではそうでないことを、素早く解説を入れたりして、会場の雰囲気が熱くなっていくのを目の当たりにすると、「偉いぞ、私」「役に立ってるぞ、私」と、ひじょーに得意になり、気持ち良いのだった。

ところが、ルッカコミックスの内部事情が色々変わって、三年前に、言ってみれば「窓際」に追われた。何のイベントも仰せつかなかったのだ。

正直に言う。自尊心が傷ついて凹んだ。なによ、なによ。

でも伊達に年は取っていない。
「どんな状況でも受け入れて、役に立ってみせる!」

手に入れた全ゲストのスケジュールから、日本人ゲストのイベントの時間と場所を書き出して、先に会場へ着き、ルッカコミックススタッフとして、お迎えして挨拶をし、なにか困ったことなどがあれば聞く、というクッションの役目を自分に課した。

自由時間が出てくるので、ここぞとばかり興味のあるイベントを覗いたりもした。私を呼びながら仕事を振り当てず、宿と交通費、食事券をフェアが負担してくれるのだから、役得と勝手にしてもよかったのだけど、報酬が出る以上そうするのは気分が落ち着かない。

で、今年はメインゲストの一人、丸尾末広さんのアテンドおよび通訳というお役目を頂いた。「ルッカ・コミックス」事務所内部でなにがあって、私に再び「栄光の席」を与えることにしたのかは知らない。また檜舞台に返り咲いた。

●丸尾末広さんという作家

丸尾末広さんという作家は、作風題材が特殊で好きな人は好き、きらいな人は受け入れられない漫画家さんだと思う。エログロの巨匠なんて言われたりする。
http://www.maruojigoku.com/index.html

まぁ、例えば若者にすごく受けて世界中でヒットしている「ONE PIECE」は、私にはどうしても面白さがわからないので、どの漫画も「好きな人は好き」という言葉を使えるのだけど、言いたいのは、万人向けではない、商業的ではない、ということ。

イタリアでは2000年にココニーノプレス社から「笑う吸血鬼」が出て、初めて紹介された。
https://www.fandangoeditore.it/shop/marchi-editoriali/coconino-press/manga-fantastico/il-vampiro-che-ride-vol-1-nuova-edizione/

「芋虫」や「パノラマ島綺談」も出版され、今年ココニーノから「トミノの地獄」全4巻が出た。
https://www.fandangoeditore.it/shop/marchi-editoriali/coconino-press/coconino-cult/tomino-la-dannata-vol-1/

今年のルッカ恒例原画展の4人の中に丸尾氏も入っていて、ココニーノのゲストであり、ルッカコミックスのゲストでもあるわけだ。それでルッカのスタッフがコミックス開催中のアテンドを受け持って、私にその白羽の矢が刺さったわけだ。

●アテンドは……

何かを見たり聞いたり、食べたり、の反応の仕方は人それぞれ。丸尾氏の場合は、ほとんど無反応。

ルッカの道案内をしつつ、あるいは、フィレンツェの旧市街を歩きつつ、ただ黙って歩くのもなにかと思い、知ってることをご案内する。つまり、解説する。丸尾氏、無反応。遠足に連れられた小学生のように、だまって下を見て足元に気をつけているように歩く。

人によっては、外からの解説やら解釈やらに邪魔されずに、自分の五感で受け取る方を大事にしたい人もいると思う。だから、丸尾さんに付き添ってきた日本の編集者さんが聞いてくれるので、解説は主にその方に向かってした。

主賓をおろそかにしているような気もしたけど、解説に興味がない人に無理に聞かせるわけにもいかない。

実際、ご自分に興味のあることには一言二言もらし、時には感嘆の声をあげたりしたので、やっぱり、顔を上げない時は興味がない、と判断してよかったのだと思う。丸尾さんに限らず、ガイドをしていてこのへんが疲れるところ。

●ルッカの食事にはハズレがない

ルッカはおいしい。ローマやミラノなどの大都市、かつ、観光客が多い場所だと当たり外れが往々にしてあるけれど、ルッカにはハズレがない。

丸尾さんはメインゲストの一人なので、事務所が予約してくれたレストランは毎日、昼食も夕食もおいしかった。

編集者さんは「いちいち美味しい!」といちいち喜んでくれたし、「ここも美味しいですよね?」と問いかける編集者さんに、丸尾さんも「うん」と応じていた。

美味しいトスカーナ料理を味わいたければ、迷わずルッカへどうぞ。プッチーニの生まれ故郷でもあるので、クラシック音楽に興味がある人にもいいかも。

●スパッと切って捨てるように答える丸尾さん

聴衆を前にしてのトークイベント。

丸尾さんは寡黙の人である。というか、原稿用紙に表現した様々なエレメントについて、なぜ自分がそれを欲したのか、いちいち潜在意識から理由を掘り出さない人である。

質問者が「○○をここに持ってきたのは何故ですか?」と問うと、丸尾さんは「そうしたかったから」とか「それが描きたかったから」と実に端的に答える。

漫画家によっては、特に欧米人は、なにをどうしてどうやって原稿にするか、を言葉にしながら(思考しながら)作成していく人が多い。こうしたイベントを見ると、かなり多弁だ。皆、自分の批評家だ。哲学を産んだだけのことはあると思う。

丸尾さんはある意味、とても日本的。感覚を前面にもってくる。アシスタントを使わず、一人で作業してるし、自分の感覚とお喋りはしても、他と原稿制作について言葉にする必要がない。自分とだけ向き合って原稿を作るから、あのような独特の世界ができるのだと思う。

丸尾さんのあまりにも簡単な答えに、インタビュアーが一瞬詰まって困る場面もあった。普段言葉にして考えないで制作していても、質問されれば、必死に考える人もいる中で、スパッと切って捨てるように答える丸尾さんの、インタビュアーの都合を考慮しないあり方が、人の顔色をうかがって暮らしてきた私には気持ちよく感じられた。

●嬉しいんです

こうして、8年にわたり、一人に付いたり、数人のトークイベントやインタビューの通訳をしながら、プロの漫画家さんを間近に見る機会を与えられているのが本当にうれしい。

一緒に数時間いたからといって、何かもらうとか(サインを頂いたことや、付添いの編集者から、日本のお菓子をお土産に頂いたことはある)何か私の人生に変化が起きる、とかいうことはない。

6歳の頃からもはやほぼ60年、いつも近くにあった漫画、その漫画を制作する人々のそばに一瞬でもいて、近しく言葉を交わせるのがただ単純に嬉しい。

なぜそれが嬉しいのか、心理学的に色々解釈は出てくると思うけど、ここは丸尾末広式に行きたい。

「嬉しいんです。特に理由はありません。」

・原画展動画



【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

旦那には尿路結石がある。15年ほど前に一度だけ、激痛の発作を起こして救急病院に一晩お世話になったことがある。その後、結石はおとなしくしていたのが、昨日、また発作が起こった。今回は激痛ではなく、血尿。

午前7時ごろ、旦那の呻き声で目が覚めた。旦那は便器に座り、頭を壁に持たせかけて唸っている。顔色が不気味に灰白色。何が起こっているのか皆目わからず、とりあえず血圧を測ってみると上が99で下が80。脈拍68。

旦那は心臓弁膜の手術をしていて、経過は良好なのだけど、素人の無知から、具合が悪くなるとそっちのせいか? とも思ってしまい不安が増す。

息子を起こして、救急車を待つよりも運んだほうが早いということで、息子の運転で最寄の救急病院へ運んだ。救急病院でまぁ、色々のろのろと事が進んで、12時間ほどして帰宅。

その後の症状が初めての経験で怖かった。結石で炎症が起きて血尿が出ると、よくある症状らしいのだけど、普通にしてたのにいきなり寒がりだして、ガタガタ震えるのだ。

その震え方が尋常ではない。そしてあっという間に高熱、39.5度。その時はそんな事とは知る由もなく、熱が出たのだということも、震えながら旦那が熱を測ってくれと言ったので分かった。

かかりつけの医者に電話して、病院の血液検査の結果を送ると「炎症が出てるのは明白なのに、抗生物質を処方しなかったとは信じられない!」

救急病院では、心臓弁膜手術後に血液をサラサラにするために飲んでいる薬が多すぎたせいだと言っていた。で、薬を今日は飲まないでいればいい、とだけ言ったそうだ。ヤブ……。

土曜の夜で閉まっている薬局が多い中、Google様の助けを借りて開いている薬局に行って医者が指示した抗生物質を買って家に戻り、旦那に服用させた。

診療時間外なのに快く電話で回答してくれ、「心配しないで。大ごとじゃないから」と言ってくれた、かかりつけの女医様に感謝。

[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT (活動停止中、残念!)


お絵かきインスタ
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MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
更新しようしようと思いつつ、そのまま…
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
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