わが逃走[249]八幡宿を少しだけ歩く。 の巻/齋藤 浩

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先ごろ信州は佐久、上田、小布施あたりをドライブしてきました。ところどころに台風の爪痕も見られました。しかし、そうじゃないところはいたって普通なのです。

被害にあった方の心境を考えると、旅行に行くなど不謹慎に思えてくるものですが、自粛気分の影響により観光業が大打撃を受けているとも聞きます。実際、普通に楽しく観光できるんです。

観光客の増加は、そのまま復興につながるものだと思います。なのでキャンセルしないで、信州に行きましょう。りんごもきのこも美味しいですよ。




初谷温泉でゆったりのんびり過ごした翌日は快晴だった。

ゆっくりめに宿を発ち、荒船山を眺めつつ神津牧場や内山峡の奇岩群などを巡っている頃、ようやく空腹に気づいた。

しかし、この辺りはランチどきを逃すと、大半の店が一旦クローズしてしまう。なんとか営業中の蕎麦屋を探し出したのが2時半頃で、旨くもなくまずくもない蕎麦を食べ終わったのが3時。

さて、これからどうするか。中山道の宿場に行くことにした!

去年は小田井宿、塩名田宿、芦田宿、長久保宿を訪ねたので(といってもと慌ただしくロケハン的に見ただけではあるが……)、今年は八幡宿に行ってみようと。

さっそく温泉でもらったパンフレットを見たところ、宿場巡りを推奨しているようではあるが、具体的な案内に乏しい。

また、実際に訪れてみると観光を意識している宿場もあれば、そうでないところもあり、八幡宿には資料館も案内板もなければ、駐車場もなかった(あったのかもしれないけど、見つけることができなかった)。

なので、少し離れた場所の食料品店に車を置かせてもらい、徒歩で30分ほど散歩するに留めた。というか、30分で日が暮れてしまったのだ。

八幡宿は、慶長年間から続く中山道の(江戸から数えて)24番目の宿場だ。

塩名田宿から千曲川を渡り、ほん一里足らずの距離にあること、つまり近すぎることが不思議だったが、千曲川が川止めになったときの旅人オーバーフロー対策として整備されたと聞き、なるほどと思う。

周辺はかねてより穀倉地帯だったこともあり、米の集散地としても栄えたらしい。皇女和宮が宿泊したという本陣も健在。

まあ、歴史とか文化とか、そういったことはお手持ちの資料を見ていただくとして、今回もニッチな私目線の散歩の記録をご紹介しましょう!

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いかにも中山道! な光景。着いたときはもう陽が傾いていた。宿場の風景を見るたびに思うのだが、車がものすごいスピードで走り抜けていくので、常に周囲に気を配る必要がある。

そもそも宿場町は徒歩を前提に設計されたものなので、車の通行は無理があるのだ。しかし、地方に行けばいくほど車が生活の中心となっていく。

車を優先すればそのぶん歩行者にしわ寄せが来る。なので、ほとんど誰も歩いていない。町の人が暮らしやすく、観光もしやすく、車も人も安心して通れる解決策はないものかなあ。

風景そのものが失われてしまう前に、その答えが出ると嬉しいし、そのために協力もしたい。

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脇道から中山道を見る。写真右側が江戸で、左方向が京都。ここを新撰組も歩いたわけだ。そう考えるとスゲー。

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八幡バス停。なんと塀の内側にある! インパクトのある不思議物件である。こうしておけば歩行者が車道にはみ出さない。たしかにその通りなんだけど、より根本的な安全対策とはなんぞや? って思うよね。思ってるだけじゃだめなんだけど。ちなみに写真奥が江戸方。この先に本陣、八幡神社がある。

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郵便局だった建物をのぞいてみると、そのときのまま時間が止まっているようだ。「夜間受付」の書体がイイ。次回の金田一耕助の映画のロケ地にどうだろう。

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本陣近くのステキ看板群! 美学を感じる。「月星」って靴のイメージが強いけど、トタン板とは! しかもホーロー看板に西陽の反射。たまらんです。ちなみに本陣の写真はありません。

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八幡神社を正面から。堂々とした佇まいの楼門の下、ゲームに興ずる学校帰りの中学生男子が3人。

50年前だったら、近所のじいちゃんに「この罰当たりが!」とか言われそうなくらい、キャッキャウフフと楽しげである。

「学校帰りに神社でゲームしようぜ」とか誘い合っているのかと思うと、妙に微笑ましくなってくる。

しかしなぜわざわざこんなところで?案外、神社WiFiが飛んでるからだったりして。

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寝転ぶ中学生を踏まないように参道を進むと、おそらく私が今まで見た中で最も重いであろうベンチが。

ベンチだよね? ベンチだと思う。すわらなかったけど。隣りの国宝より、こちらの方がインパクトがあったので紹介しておきます。

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そうこうしているうちに、周りが暗くなってきた。街道から一本入ると、またイイ感じの風景がみつかったりするのだけれど、今日のところはこのへんでお開きにいたしましょう。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。