もじもじトーク[119]文字と組版、印刷展に参加して
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

少し前の展示会ですが、2019年10月14日(月・祝)~10月22日(火・祝)の9日間、大阪で「文字と組版、印刷展」というイベントが開催されました。

今日のもじもじトークは、「展示会で出逢った珍しい電算機」を紹介したいと思いまします。




●電算入力校正機「MK-110」

今回の展示会で、いままで見たことがなかった装置に出会いました。これです。
http://bit.ly/2OsA7sY


大きなキーボードにたくさんの文字が並んでますね。そして、キーボードのひとつのコマに9個の文字が書かれています。そして、CRT画面があります。

この装置は、電算入力校正機「MK-110」というもので、電算写植のデータ入力や校正を行うためのシステムです。

キーボードには、たくさんのファンクションキーが配置されています。この装置、メカ好き、かつ、文字好きな人間にとって、感動ものでした。

いいものを見せてもらいました! 展示を実現してくれた宮地(えむ)さんに大感謝です。

●手動写植機と電算写植機

「もじもじトーク」をいつも読んでいただいている方でしたら、写真植字(略して写植)がどんなものか、ご存知かと思います。過去に何度も記事にしてきました。

でも、写植の予備知識がない人にとって、先ほどの写真を見た際、「これって、初期の日本語ワードプロセッサですか?」と思ったかもしれません。

写植とは、写真の原理を応用して、書籍や雑誌、チラシなどの版下を作成する仕組みのことです。そして、文字データを入力し、印画紙やフィルム出力する装置を写真植字機(略して写植機)といいます。

写植機をざっくり分類すると、手動写植機と電算写植機があります。手動写植機は仕組みが理解しやすいですが、電算写植機は僕もよく理解できていません。

手動写植機は何度も見たことがあります。一昨年の2017年4月の『書体の誕生』展の手動写植機の記事を再掲しますので、ぜひ、ご覧ください。

動く手動写植機を見た!
http://fontplus.sakura.ne.jp/mojimojitalk/osakadtp/


もじもじトーク[61]「書体の誕生」展で動く写植機に感動!
https://bn.dgcr.com/archives/20170420110100.html


手動写植機は、先ほどの連続写真を見れば、どうやって文字を選択しているのか、そして、文字盤を横方向(文字送り)と縦方向(行送り)に動して、どのように組版しているのかが想像できますよね。

電算写植機の装置を見たのは今回が初めてでした。この入力校正機は、写植の歴史において、大きな変化をもたらした第一歩だったかもしれません。

なぜなら、「動く手動写植機を見た!」の一連の作業工程が、ほとんど電算化されたのです。手動植字機の仕組みにおいては、文字盤をスライドさせて、文字を選んでガチャンと押すとカメラシャッターが開いて、マガジン(暗箱)の中の印画紙に文字を焼き付けてました。

校正確認する画面もありませんでした。つまり、印画紙を現像するまで、入力情報が確認できない仕組みでした。でも、この装置では、入力情報がCRT画面で確認できたことは(出力結果と同じWYSIWYGではないにしろ)、すごいことだったのです。誤字をその場で修正することもできるのです。

そして、フロッピディスクにデータが保存できるようになったのです。入力データが再編集ができるのです。当時としては画期的でした。フロッピディスクが8インチだったと記憶してます。

1970年代から1980年代の写植全盛期の時代、僕は写植の仕事に携わっていなかったので、間違ったことを書いているかもしれません。

●展示会を通じて感じたこと

学生時代に愛読していた「ラジオの製作」「FMステーション」「ポパイ」「ホットドックプレス」などの多く表紙、紙面、広告ページは電算写植で組まれていたと思います。

電算写植は、僕にとって未知の世界ですが、学生時代に愛読していた雑誌を制作していた組版システムや技術、知恵などを、きちんと知りたいなぁと感じた展示会でした。

来年は、電算写植のことをいろいろと調べて、「もじもじトトーク」で記事にしていきたいと思います。

では、また、2週間後にお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/