[4919] 音のフェティッシュあれこれ◇超堪能! Adobe MAX Janan 2019レポート

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《始発の新幹線で行き、最終の新幹線で戻る》

■羽化の作法[98]現在編
 音のフェティッシュを分かち合いたい!
 武 盾一郎

■LIFE is 日々一歩(111)[ウェブ]
 超堪能! Adobe MAX Janan 2019レポート
 森 和恵




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■羽化の作法[98]現在編
音のフェティッシュを分かち合いたい!

武 盾一郎
https://bn.dgcr.com/archives/20191210110200.html

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曲を好きになる時、「音のフェティッシュ」から入ることが多いのですが、あなたはどうですか?

小学生の頃、ピンクレディーは爆発的に人気がありました。自分たちで組んだミニバスケのチーム名を「渚のシンドバッド」と名付けて、体育館で遊んでいたくらいですから。学期末に行われる「クラスのお楽しみ会」では、ピンクレディーを男子たちで踊ったものです。

『渚のシンドバッド』


これが数年上の世代だと、キャンディーズなるんですよね。ピンクレディー動画を今観ると結構エロいんですが、小学生の頃はまったく分かりませんでした。

そのピンクレディーなのですが、「この音が好き!」と、テレビで流れるのを心待ちにしていた曲がありました。

『サウスポー』です。


イントロの部分で、歌の直前「デデデデ、デデデデ」の後に「ピュピュピュピュピュピューン」とシンセドラムの音のフィルインが入るのです。

分かりますか? ただ、この動画だとちょっとシンセドラムの音のニュアンスが違うんです……

子供心にこの音が衝撃的で、そして心地良かったのでした。この「ピュピュピュピュピュピューン」という音が聴きたくて、ピンクレディーがますます大好きになっていたのです。

ところが、当時のテレビは生演奏なので生ドラムの場合も多く、その時は泣くほどがっかりするのです。

例えば、「'78 FNS歌謡祭」のこの動画では、歌の直前は生ドラムのフィルインの音なのです。


生演奏で口パクではなく生声。今からしたらとても贅沢な歌番組なのですが、「ピュピュピュピュピュピューン」音の感触だけがお目当てだったで、ガクッとなるのです。がしかし、ピンクレディーの振り付けが楽しくて、すぐに気を取り直して楽しく観るんですけどね。

ちなみに私はミーちゃん派でした。

中学生に上がったか上がらないかくらいでしょうか。さらに衝撃的な「音」を聴いて、死ぬほど焦ります。焦るんです。どうにもしようがない気持ちが全身を駆け巡り、爆発しそうになるのです。思春期のこの感覚、分かってもらえますでしょうか?

それがこの曲です。
リップスの『ファンキータウン』


「ピピピピ、ピッピ、ピピピピ」という衝撃的に直線的なメロディ音。「なんだこれは!」×10です。これがエリック・クラプトンが弾くようなメローなエレキ・ギターの音だったら、スルーしてたかも知れません。

更にすごいのが、歌い出しのボーカルの音が人間の声とは違うのです!「なんだこれは!」×100です。

のちに「ヴォコーダー」という機械であることを知りました。思春期真っ盛りに、このヴォコーダー音を探し廻って「クラフトワーク」にハマるのです。

『The Robots』


曲に痺れるのではないのです。音に痺れてるのです。分かってもらえますか? このクオリア。

例えば、このクラフトワークの『ロボット』という曲は、短調なので重くて暗い感じしますよね? 幼少の頃から私は長調の曲が好きだったので、曲自体は大好きか? と問われるとそうでもないのです。

このヴォコーダーのボーカル音が聴きたくて、レコードをひたすら聴いたのです。ただ、聴いてるうちに曲も好きになってしまうのですけどね。

で、クラフトワークには地声で歌う曲もあるのですが、猛烈にがっかりしてたのです。

例えば、『Radioactivity』とか。いや、いい曲ですよ。好きですよ。


「長調でヴォコーダーの声の曲がないかなあ」って、ずっと探していたところで見つけたのが『アウトバーン』でした。

最初の「アウトバーン」ってところだけがヴォコーダーの音で、そのあとは地声の歌なのでちょっとがっかりしたのですが、何と言ってもクラフトワークでは珍しい長調の曲なので本当に大好きでした。

『Autobahn』


そしてYMO。『テクノポリス』の冒頭で「TOKIO」って言ってるのですが、その音を聴いた時は夜が開けたような気分でした。で、メインテーマの楽曲に入るともうあんまり聴いてないんです(笑)いや、好きですよ。曲も。もちろん。

『Technopolis』


それから、思春期の心を鷲掴みにした音と言えばベース音です。小学高学年から中学生くらいだったでしょうか。汗っかきで太っちょの友達、H君が貸してくれたカセットテープが、なぜか「クイーン」でした。

「この曲の最初の音ってなんなの!!!??」と焦りました。それは『地獄へ道づれ』という曲のイントロのベース音でした。

でも、普通のエレキベースの音とは違いますよね? 「グニョッ」っていう感じがするのです。この「グニョッ」て感じの低音、痺れませんか? あと、がらんどうな感じ? 空っぽな感じの音も好きでした。

クイーンは割と音が埋まってる感じの曲も多いのですが、80年代に突然ガランとした空っぽな感じの音になってそれが特に好みでした。

『Another One Bites The Dust』

(しかしこの時代の洋楽の邦題ときたら……)

クイーンのベース音はシンセベースではないのですが、私はシンセベースの「グニョ」音が好きになります。

そして、グニョッとした低音とヴォコーダー音のコンボである、ビックリするような音と出会うのです。そうです。アース・ウィンド&ファイアーです。

『Let's Groove』


聴くとなんだかもう、ヨダレが垂れてくるんですよ。もちろんモーリス・ホワイトのヴォーカル最高ですよ。けど、「生麦生卵(本当は“WE CAN BOOGIE DOWN DOWN DOWN”)」の音が好きなんです。

ヴォコーダー以外にも好きな音は当然ありました。例えば、吉川晃司の『サヨナラは八月のララバイ』では曲の最初にガラスの割れる音があって好きでした。

『サヨナラは八月のララバイ』


ちなみにこの頃の歌謡曲って、「Aメロの次にBメロが来てそしてサビになる」パターンが多いのですが、これが思春期心に大大大大嫌いだったんです。

この曲ももろにそのパターンなのですが、Aメロはとてもカッコよく感じていました。80年代独特の空っぽな音がしてますよね。

けれど、”サヨナラを切り出すほど強くない〜”と、Bメロに差し掛かると、なんだかすっかりがっかりするのです。

それから家にビートルズのレコードがあったので、小学生の頃から好きでかけてたのですが、曲が好きというよりかは、ジョンのかすれた声とか、息を吸う音や、口につばが溜まってる感じの発語、リップノイズが好きだったのです。密閉式のヘッドホンでその「音」を聴いていました。

思春期に最も痺れた曲として、ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」があります。最初のささやき声とギターの音がなる前の数秒の「音」で、思春期小僧は痺れたのでした。

『Happy Xmas (War Is Over)』


歌い出しの“So this is Christmas”「ソー・ディスイズ・クリスマス」の「クリ」の発語で、もう痺れマックスです。ちょっとかすれた、引っかかりのある声。

そして、ギターが入ってからのジョンの、少し揺らぐ音程とかすれた声で、痺れ過ぎて泣き崩れました。曲もBメロとかないし。もう生きてられないくらいの、どうしようもない気持ちになったのです。

この気持ち、分かってもらえますか?

悲しいかな今はもうあの頃のように痺れません。思春期に痺れた記憶が蘇って、それでうっとりする感じです。

それから「たまらんわ!」となってしかたがないのがプリンスです。

『When Doves Cry』


イントロでリズム音が「ドカカコ チュチュ ドゥンコ ッコ」と鳴りますよね? この「ドカカコ」の「カカ」という部分の音に痺れて、よだれが出そうになるのです。

ああ、このクオリアを共有してくれる人がいたら本当に嬉しいのに! この「ドカカコ」という音は、曲の全編に渡って流れてくれます。もう本当に「どうにかして!」っていうくらいに痺れていました。

プリンスは痺れる音をよく出してくるんです。ご存知『Let's Go Crazy』ですが、この曲も痺れる音だらけでどうにかなりそうでした。

『Let's Go Crazy』


まず、イントロでオルガンが鳴るのですが、このオルガンの音が微妙に音程が揺らぐのです。まずそこで「クラッ」としますよね? どうですか?

「もうやばい、絶対なんか来る!」って、この時点で分かります。そして、超絶かっこいいリフに入ります。

リフは「ジャージャー ジャージャー ドゥルルーン」ですよね。これが繰り返されます。で、この「ジャージャー ジャージャー ドゥルルーン」のあとに「カラッカ」っていう音が入るんです! 分かりますか?

これでノックアウトです! この音も曲全般に渡って入ります。
痺れて文字通りレッツ・ゴー・クレイジーです。

この音のフェティシズムに、「うんうん分かる!」という方がいてくれるといいなあ。(つづく)


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/厨二心を大切に】

iPhone11と第7世代iPadとApplePencil、そしてSonyスマートスピーカーとイマドキの機械だらけ。MacBookAirとiMacもある。なんだか自分でもすごいなあと思ってしまいます。

それも13月世大使館に来ていただく方のため。頑張ろう! ということで12月もオープンします!

◎『13月世のクリスマス展』
日時:2019年12月14日(土)13:00〜18:00
場所:ギャラリー13月世大使館

新作呪薬などの出展作品詳細はこちら
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◎アーティストとアートファンを繋ぐプラットフォーム「メセロ(mecelo)」に、私のページができました! 応援よろしくお願いします! インタビューもあります。
https://mecelo.com/artists/take_junichiro


インタビュー前半
https://mecelo.com/artists/take_junichiro/interviews/57

インタビュー後半
https://mecelo.com/artists/take_junichiro/interviews/58


◎装丁画を担当しています! 『星野智幸コレクション・全四巻』(人文書院)

星野智幸コレクションI スクエア
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b226418.html

星野智幸コレクションII サークル
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b226413.html

星野智幸コレクションIII リンク
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b226414.html

星野智幸コレクションIV フロウ
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b278897.html



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■LIFE is 日々一歩(111)[ウェブ]
超堪能! Adobe MAX Janan 2019レポート

森 和恵
https://bn.dgcr.com/archives/20191210110100.html

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こんにちは、森和恵です。12月に入ると師走が一気に押し寄せてきますね。お体大切に、焦らずゆきましょう!

さて、今回は恒例の「Adobe MAX Janan」レポートです。今年は参加者として、朝から夜までどっぷりと楽しんできたので、その様子をレポートします。

●Adobe MAX Janan 2019レポートを明後日にYouTubeライブ配信します!

12月11日22:30より、わたしのYouTubeチャンネルで今年のMAXの様子をライブ配信します。


まだ整理しきれてませんが、たくさん撮影してきた写真や動画をご覧に入れたり、セッションで学んだことを少し後追いしてみて、ハンズオンしたりを予定しています。

動画URLより《リマインダーを設定》をぽちっと押していただくと、放送前にお知らせが入ると思います。ぜひ、一緒に楽しみましょう。

●大阪から日帰りで参加にチャレンジ!

昨年のMAXは、自分の登壇があったので前日入りの翌日帰りでした。前日にテックリハ(予行演習)があるのと、イベント当日は遅くまで飲み会があるので2泊で参加しました(講師費用を全額突っ込んで、ちょっと予算オーバーなぐらい)。

LIFE is 日々一歩(87)[ウェブ]無事終了!Adobe MAX Janan 2018レポート
https://bn.dgcr.com/archives/20181127110100.html


今年は登壇もしてないので、そんなに豪遊するわけにもゆきません。始発の新幹線で行き、終電の新幹線で戻るという強行突破をしました。

始発に乗って現地までのツイートはこんな感じです。何度も会場に行った経験はあるのですが、極度の方向音痴のために乗り換えやら歩くルートやらを、何度もシュミレーションして望みました。


当日朝の開門待ち行列は1時間以上前から始まっていたらしく、最短で向かって開門20分前についた時には長蛇の列になっていました。朝9時からの開門に、8時前から並んでるなんて! 地方民に勝てる術はないと思いました(涙)。

会場に着いてから終了までのツイートがこちらです。


入場が遅れて失敗したなと思うのは、Adobe MAX Storeと呼ばれる物販ブースへの入場が遅れてしまったことです。グループ4という整理券が渡され、物販ブースへは15時まで入れませんでした。

会場に入ってからは、予定通りスムーズに進めることができました。

どのセッションに参加するか、セッションの間の空き時間はどのぐらいあるか、どのブースの出し物をみたいかなどを、事前にきちっとリサーチしておいたので、おおよそ希望通りに回れました。よかった。

しかしその代償に……とにかく時間がなかった!

歩いていて偶然に出会った知り合いの方とも、次の予定があるから満足に話せず。帰りの電車があるため懇親会にほとんど出られずで、ぼっち感が半端なかったです。

●Keynoteが日本向けに調整されていて感動

今回の楽しみのひとつが、Keynote(基調講演)でした。MAXへの登壇は4回ありますが、自分の登壇が午後からある時は朝から自由に動けなくて、見たことがなく、今回がkeynoteへの初参加でした。

keynoteは、アドビの会社としてのソフト設計の方針や、今年の新機能の目玉、今後出てくる新機能のちら見せ紹介などが、アドビの社員さんから直接聞けるセッションです。

keynoteは、既にYouTubeでアーカイブが公開されています。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLF_lcvNhVWn9JG7K3NrtfzYlsCFVRTGQR


冒頭は、代表取締役社長 James McCready(ジェームズ マクリディ)さんのあいさつから始まりました。

英語のセッションでは同時通訳が行われていましたが、英語そのままに少しだけ聞いてみると、日本人でも理解しやすいやさしい英語で好感が持てました。英語NGな私でも、おぼろげに意味がわかって嬉しくなりました。

「左利きのエレン」や「映像研には手を出すな!」など、アーティストが主役の日本アニメと、アドビがコラボしていることを紹介するところから話が進みました。

続いて「ディレクターがクライアントから要望を聞いた後に、デザイナーがモックアップを出して形を作っていく」という、日本の独特な現場のワークフローに合う「CCライブラリを用いたシームレスなデータのやりとり」が紹介されました。

クリエイティブの「時間を短縮する」ことが、いまのアドビの最大課題なのだそうです。

先だって開催されたUSのMAXでの基調講演と比較すると、日本の現場に合わせたセッション内容となっていて驚きました。それだけ、日本市場を重要視しているということでしょうか。


いろんな新機能やアプリが紹介されましたが、keynoteの目玉は、iPad版のPhotoshopとIllustratorだったと思います。

既にリリースされているiPad版Photoshopは、レイヤー・選択範囲・マスク機能なども備えており、ある程度のところまではデスクトップ版さながらに作業することが可能だと見て取れました。

出先のちょっとした空き時間や、複数人でディスカッションするような「サブマシンで作業する状況」に役に立つツールに仕上がっていました。フォトレタッチやコラージュが、ペンや指で進められるのが新鮮でしたね。

今後リリースされるiPad版Illustratorは、ペンツールでスピーディにパスで描ける気持ちよさを味わったり、radial repeatという、オブジェクトを放射状に複製する機能が加わったり、手書き絵を撮った写真をパスに変換したりと、カンバスに向き合って絵を描く楽しさを味わえるツールになっていました。

わたしはSurfaceユーザーなので、デスクトップ版のPhotoshopとIllustratorをタブレットで利用していますが、iPad版だけでなく、タブレットを使っているデスクトップ版ユーザーに対しても、これらの機能が追加されるといいなと思ってみていました。

●一番熱く聞いたセッションはコレ!

午後から3つのセッションに参加しました。どのセッションも勉強になり、貴重な体験でした。

その中で、一番ワクワクしてきて「帰ったらすぐ調べたい!」となったのは久保知己さんの「手間をかけずにコーディングを効率化するデザインシステムの活用法|Adobe XDのコンポーネント機能とBootstrapの連携」でした。
https://maxjapan.adobe.com/sessions/4/


最後のセッションということもあり、正直めちゃめちゃ疲労感に襲われていて、最後まで集中して聞けるか不安でしたが、杞憂に終わりました。

LIVE配信がなかったので、アーカイブ映像は公開されないかもしれませんが、公開されたら絶対もう一度視聴しようと思います。

大まかなポイントだけ書いておくと、

□制作における「Design Token」徹底の重要性

Design Token(デザイントークン)とは、制作物の見た目のトーンを揃えるために決めておくデザインルールのことで、デザインの属性(色・フォント・空白・動き……など)を取り決めておき、制作者同士のコミュニケーションを計るものだそうです。

今回のセッションではウェブサイトを題材にしていましたが、アプリにせよ印刷物にせよ、デザインが必要な制作物に対して必要な考え方だと思います。

ルールが決められていないと、各自が好きなように作ってしまい、サイトオープン時は整っていたデザインのトーンも、時が経つに連れて統一感がなくなって崩れてきます。

事前にDesign Tokenを取り決めておけば、制作工程のトーンの崩れが防げて後戻りする無駄が減りますし、運用段階でもデザインのトーンが担保できます。

□「Design Token」をまとめたものが「Design System」

最近よく耳にするのが「Design System(デザインシステム)」という言葉です。大規模なサイトの場合に作られ、運用されている印象があります。

アドビの開発現場で使われているDesign Systemは、「Spectrum(スペクトラム)」といい、アプリ設計をはじめ多くの制作現場で使われる、共通ルールとなっているそうです。
https://spectrum.adobe.com/


Googleの MATERIAL DESIGN は、有名ですね。Androidアプリ開発のお手本となっています。
https://material.io/


最近ロゴを変更したメルカリにも、デザインシステムがあるそうです。
https://tech.mercari.com/entry/2019/08/26/090000


どのデザインシステムにも、サービスに合わせた必要なコンポーネントが過不足なく備わっていて、とても立派に見えます。デザインシステムは案件ごとに最適化されているようで、そのまま流用することはできなさそうでした。

小規模な案件に携わることの多い私には、ここまでのものを準備することは到底手が出ない……と思っていたのですが、セッションの話の続きを聞いてみると、はじめから全部作ってしまうわけではなくて、プロジェクトを進めながらデザインシステムを育てていくのだそうです。

帰ってから検索してみると、次のようなブログ記事を見つけました。デザインシステムを一度に作ってしまうのではなく、スタートアップ、スケールアップ、エンタプライズと育てていき、最適化していくということでした。

https://medium.com/@Roy_S_Kim/%E6%88%90%E7%86%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E4%BD%9C%E3%82%8A%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93%E3%81%AE%E3%82%8A-c8288b4d9b6e


□手間をかけない「Design System」のすすめ

セッション後半に入り、《……とはいえ、デザインシステムを作ってから案件に取りかかるのは、現実問題難しそうだな……》と思っていたところに、この言葉を投げかけられました。

「小規模な案件では、手間をかけない最低限のDesign Systemを利用しよう」

手間をかけないDesign Systemとは何かというと、大規模な案件ほどルールを決めずに「ここは絶対外せない」という部分にのみ注力するというものでした。「Design System Lite」と呼ばれていました。

今年の「Adobe MAX Japan 2019」の公式サイトでも、「Design System Lite」の考え方で、Design Systemを作って運用したのだそうです。

「カラー・タイポグラフィー(文字属性)・スペーサー(余白)・ボタン・ヘッダ・フッタ」など、3回以上利用されるコンポーネント(部品)について、Design Systemに落とし込んでルール化したそうです。

作ったDesign Systemは、完成前にクライアントへ提供する「中間成果物」にも利用でき、クライアントにもこのルールを知っておいてもらうことで、制作途中の後戻りを防ぐこともできたそうです。

Design Systemをチーム全員が共有することで、デザインのルールが視覚化され、結果としてスムーズに進むことになりそうですね。

わたしはこのセッションを聞きながら、Design Systemを作る工程をマニュアル化できれば、どんな案件にも取り入れやすくなるだろうと思っていました。

セッションの中でも触れられていましたが、BootstrapなどのCSSフレームワークを元にしたDesign Systemを作ることで、作り方の一般化ができそうな気がします。

今回のセッションのスライドは公開されないようですが、代わりにAdobe Blogで連載記事が公開されるようで、いまから楽しみです。

……というわけで、今回はこちらまで。楽しさも学びもあった、参加しがいのあるよいイベントでした。

来年の開催日は〈2020年11月24日〉だそうです。次はできれば、また登壇させてもらえたらいいなぁ……なんて思っていますが、そのためには、アドビさんに貢献できるように、自分が何か活躍をしなければなりませんね。

その布石となるかどうかはわかりませんが、年明けからウチのYouTubeチャンネルで、ちょっと無理めのチャレンジを始めようかと思います。

さてさて。このコラムも今年最後のお届けとなりました。今年は23本のコラムをお送りすることができました。
https://bn.dgcr.com/archives/%E6%A3%AE%E5%92%8C%E6%81%B5/


わたしの日々の徒然を好きなように書いているコラムですが、興味を持って読んでくださる方のお役にたったり、少しでも楽しみになっていたりすると嬉しいなと思います。

ではまた、来年にお目にかかりましょう!
(^^)

【 森和恵 r360studio ウェブ系インストラクター 】
mail:r360studio@gmail.com
サイト: http://r360studio.com/



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編集後記(12/10)

●偏屈BOOK案内:内館牧子「女の不作法」

私って底意地が悪いんです。とキッパリ書くから、内館さん、大好き。「男の不作法」を先に読んで我が身を振り返り、おおいに恐縮したものだが、それでわたしの作法が少しはまともになったかというと、自信はない。「女の不作法」の項目は60以上の候補があったが、老若男女の意見を参考に、30項目に絞った。書くべきは書いたが、かなり気を遣ったと本音をもらす。女性は怖いからな。

本人の恥ずかしい話も披露する。全然好きなタイプではないが、結婚相手として悪くないと気づいたエリート男がいた。彼を逃がす手はない。なんとか彼と恋人ランクに進めるよう、似合わないブリッコもいとわず、上を目指して努力した。今になって思えばあの程度の男は幾らでもいる。当時の彼女は気づかなかった。一方、若きエリート君は「俺ほどの男はいない」と自信満々である。

ある時、突然「俺、結婚して下さいって両手つく女なら結婚するよ」と言われた。驚愕した彼女は反射的に「両手をつくのは相撲の立ち合いだけよ」と言い放つ。うまい! 「私ながら、見事なうっちゃりではないか」。男のプライドは傷つき、しばらくしてから会社の年上の女子社員と婚約した。両手をついた女なのだろう。立派、でも私にはできないと、腹の中でちょっとせせら笑った。

だが、今になって思う。人生で「ここぞ!」という時に身を捨てることは、何の恥でもない。プライドなんてなんぼのもンよ、当時そういう境地に達していた覚悟ある女性たちがいて、自分の幸せをつかみとったのだ。ならば、あの時、内館も両手をつけばよかったのか。いや、今でも身を捨てる性分ではない。若い頃の「私にはできない」が、今では「舐めンなよ」になった彼女……。

女友達4人との会話で、一人が「若い女の人の言ってること、わかる?」と困ったように言った。「話の内容ではなくて、言ってる言葉よ。聞き取れる? 私、全然ダメ。娘や姪の言ってることも聞き取れるのは……半分くらいかな」。すると、聞き取りにくいよねえ、何言ってるのかわかんない、わけわかんないから「はい」と言ったら高い商品を買わされた、など次々と反応がある。

内館先生は大学の第一回目の授業で必ず言う。毎回作品の合評会をやるが、語尾までしっかり言うこと、大きな声でハッキリ言うこと、ピヨピヨしゃべるな、カン高い声を出すな、語尾を上げるな、どれかひとつでもダメなときはやり直し。音声学のスペシャリストによれば、日本の若い女性の声は、先進国の中では信じられないほど高い。無意識に声を高くつくっている人が大勢いる。

「女の不作法って、どんな時に感じますか?」と幅広い年代の男女に聞いたところ、年代による違いは当然と思っていたものの、興味深いことが度々あった。顕著な例が「自分の大変さを訴える不作法」である。いい歳した女性が放つ、「仕事に、子育てに、家事が大変」の自己宣伝。若い男女からはすごく聞き苦しい、と猛反発。「ろくに聞いちゃいないけどね。言ってろ! みたいな〜」

内館がこの本を書きながら痛感したのは、自慢でも愚痴でも自信でも、一言二言なら不作法とまでは思われまい。垂れ流しの「過剰」が何よりもまずいということだ。そう気づくと、意識しておさえ込むことが何よりの作法だ。分かりました。私って底意地が悪いうえに過剰なので痛い目に遭うってこと。(柴田)

内館牧子「女の不作法」幻冬舎新書 2018
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344985249/dgcrcom-22/



●武さんとは同世代なんだな……。/「Design System」見たい見たい見たい見たい。/「仕事に、子育てに、家事が大変」の自己宣伝。えー、これって自己宣伝になるの? ぽろっと出てしまう愚痴じゃなくって? えー、めんどくさーい。確かに毎回同じこと言っていたら、成長していない、解決策を模索すらしていないと思われてしまうかもな〜。

/今更ラグビー、アルゼンチン対トンガ続き。後半25分、トンガがトライ。お客さんの声援が届いたのかもしれない。粘り勝ち。試合自体は28-12でアルゼンチン勝利。

試合後、選手らが観客席に向かってお礼をし、カメラマンに向かってポーズを取った後、引き上げる。のんびりしていたら、アルゼンチンの選手が数人出てきてファンサービス。観客から渡されたスマホを手にして、ツーショットを撮ってあげたり、サインをしたり。

その後、スター選手が時間を置いて出てきては、観客の声に応える。トンガの選手は一人だけだったような。近くで見るラグビー選手は、大きくて太くて分厚かったよ。(hammer.mule)

アルゼンチンが28点リードから冷や汗勝利。トンガ魂が花園沸かす。
https://rugby-rp.com/2019/09/28/worldcup/41561

冷や汗って感じじゃなかったけどなぁ。