わが逃走[251]「無」の巻 その2/齋藤 浩

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ちょっと前に書いた「無」の話のつづきです。

おかげさまで「無」デザインの風呂敷が京都の職人さんの手で染められ、現在銀座ガーディアンガーデンで展示・販売中です。

・Creation Project 2019
167人のクリエイターと京都の職人がつくる「ふろしき百花店」
WEB:http://rcc.recruit.co.jp/creationproject/2019

展覧会会期:2019.11.26(火)〜12.21(土)
開館時間:11:00a.m.〜7:00p.m. 日曜休館 入場無料





さてその後、「無」って奥が深いなあ、なんてことを考えまして、さらに違った側面の「無」を制作してみたくなりました。じゃあ、違った側面って何?

まず、純粋に文字としての面白さを考えてみた。

たとえば「壺」という字は見るからに「壺」だけど、それは実在する壺に字が似ているから面白いんだと思う。

明快な象形文字。おそらく漢字文化圏外の人も納得する、わかりやすい形なのだろう。

しかし「無」は概念である。概念を記号化するというのは、とてもクリエイティブな作業だ。数字の「0」も、身近すぎて気づかないけど、考えてみれば凄い記号だ。

「無いという数字」を発見したヤツも凄いが、そこにこの輪っか状の記号を当てはめたヤツも凄い。

「無」という漢字の成り立ちにも、凡人には思いつかないような奥深いものがあるのではなかろうか。

そう思い、さっそく調べてみると……。

もともとは人が舞い踊る姿=「舞」という意味で使われていたところ、音が同じだったので、「無」という意味でも使われるようになり、その後「無」と「舞」とに枝分かれしていったという。

つまり当て字だったのである。意味なんか「無」かったわけだ。すげえ。

ということは、新たな「無」を制作する場合、この文字を一旦バラして「舞」のイメージで再構築する、というのもアリか。

こういう作業はけっこう楽しい。つまり記号化されたものからオリジナルの姿を想像する、ということ。

うーん、「無」とはなんぞや。「超地球的存在」かもしれん。そろそろ宇宙からやってくる頃合いなんじゃないかなあ。

そう思い、そいつの姿を想像してみる。

脳裏に浮かんだのは、円盤に乗ったクラゲであった。このあたりのイメージの貧困さはどうにも恥ずかしいかぎりだが、「無」という文字を、円盤に乗ったクラゲが舞い踊っている姿に再構築せよ! と、宇宙からの電波を受信してしまったんだから仕方がない。

で、こんなのができました。
http://bn.dgcr.com/archives/2019/12/12/images/001.jpg

つづく!


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。