「ジウジアーロ」と聞いてピンときたあなたは、車好きか、腕時計好きかのどちらかではないでしょうか。名デザイナー「ジョルジェット・ジウジアーロ」の仕事、とくに腕時計についてまとめました。
★デザインの巨匠・ジウジアーロ
ジウジアーロはカーデザイン、インダストリアルデザインの巨匠として知られています。代表作はこれ、というのが難しいほど、多くのプロダクトデザインを成功させています。
フォルクスワーゲン・ゴルフ、ロータス・エスプリ、ランチア・デルタ、フィアット・パンダなど、現在も語り継がれる名車達、またいすゞ・117クーペやピアッツァ、スズキ・フロンテクーペ、スバル・アルシオーネSVXなどのエッジの効いた国産車、ニコンのカメラや岡村製作所の椅子など、誰もがどこかで目にしたことがあるものばかりです。
★ジウジアーロのデザイン
1970年代には、直線を基調としたいわゆる「折り紙細工」と称されるデザインで人気を集めました。日本で特に知名度が高いモデルは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にも登場した「デロリアン・DMC-12」ではないでしょうか。1981年に登場したDMC-12は、デロリアン社の唯一のモデルでありながら、その先進的なデザインが多くの人を魅了しました。
★セイコーとジウジアーロ
ジウジアーロは、セイコーと何度か仕事をしています。「車やバイクのドライバーに似合う腕時計」をコンセプトに、4種類の腕時計をデザインしました。ジウジアーロがデザインした腕時計の、一番の特徴は「左右非対称」であることです。
そもそも腕時計には竜頭やプッシャーがありますので、左右非対称なデザインではあるのですが、ジウジアーロはこれを強調するかのように、プッシャーを大型化したり、文字盤を傾けることで、ドライビングポジションでも見やすく、グローブを嵌めたままでも操作しやすい腕時計にしようとしたのです。
これらの腕時計は大きな歓迎を持って市場に受け入れられ、ちょっとしたムーブメントにもなりました。
★4つのモデル
「ジウジアーロの腕時計」と聞いて、多くの人が想起するのが回転ベゼルを備えたクロノグラフモデルです。右側に大きめのプッシャーを備えると同時に、ベルトの位置を少し左にずらし、装着感と使用感を向上させています。
二つ目のモデルは、プッシャーの角度が12時-6時方向に並行になるようリデザインしたモデルです。ケースに沿う形のプッシャーから、ボタンとしてより押しやすいような配置にしました。
三つ目は液晶を搭載したモデルです。液晶を傾けて配置することで、ドライビングポジションでも見やすい腕時計となりました。四つ目はやや小ぶりな液晶モデルですが、ベルトの調整が自由にできるため、ライダーズスーツの上などでも着け外しがしやすいスタイルでした。
★復刻版の登場
ジウジアーロの腕時計はこれまでに何度か(1999年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年)復刻モデルとして再販されています。バックライトをつけたり、最新のモジュールを採用するなど徐々に進化しながら、いずれも時計雑誌などで話題を集めています。
時計店やファッションブランドとの、コラボレーションも積極的に行われており、そのデザイン性の高さは30年が経過した今でも失われていないようです。なお、初期のモデルにのみ、セイコーのクロノグラフモデルであることを示す「スピードタイマー」の名前がつけられていますので、1980年代のオリジナルモデルを探すときにはチェックしてみてください。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。