装飾山イバラ道[259]レインボークィーンの覚悟
── 武田瑛夢 ──

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今年最後の長いテキストです。今年は準備や練習、収集と整理をしていた。来年はそれを生かして具体的な形にしていきたい。

●まとまった会話

高齢者家族がいる人は、親の日常の出来事で頭を抱えることも多い。しかし、笑える失敗なら、笑って過ごすことができるようにもなる。

玄人になると、きっと大抵のことは笑えるようになるのかもしれない。母は最近のことよりも、昔のことの方をよく覚えているのでついつい昔話が多くなる。

私の日常は英会話と絵と、夫と母のご飯作り。英会話は一日で2コマ行くと、40分×2。80分くらいは人と話すことになる。大抵は週に1回だが、たまに週に2回入れることも。

SNSの友人とダイレクトメールで話し込むこともあるけれど、長い時間になることは滅多にない。英会話って、私にとっては大きな会話の機会なのだ。





英会話学校なのでテキストを開けて勉強する人が多いと思うけれど、私はほぼマンツーマンのフリートークにしてもらっているので、100%雑談だ。今これを書いていて、何て贅沢な雑談をしているのだろうと笑った。

一日の中で40分×2回話すのは、カフェや食事に出かけて話すのと近いわけだ。毎週となれば、それはもはやかなりの仲良しレベルでないと、実現しない頻度での会話になる。

もちろん、スケジュールの空いている講師の予約を入れる。あまり同じ人が重なると、話のネタが尽きて困ることも。

ふと、仲良しでもない私と会って話す講師が、気の毒な気もしてくる。本当はNGを出したい生徒もいたりしないのだろうかと、考えてみたり(笑)。いや、お仕事ですし、そんなことはないですね。

講師の中には、私の英語の間違いをサラサラと正しい文章にして、ノートにとってくれる人もいる。知らない単語も書いてくれる。大概は、話のネタを振って、それに対する意見を語り合う感じだ。

私にはまとまった会話は貴重なので、大事な時間だ。

●イギリス王室

今年は令和の時代が始まって、私の記事に書いたようにパレードのお祝いの列に並んだことを話した。イギリス人講師だったので、王室との違いなどの話題が興味深い。

パレードの写真を撮るなどした具体的な経験は、自分でも話しやすいのだ。

驚いたのはそのイギリス人講師は、歴代の日本天皇の名前をすっと言えたり、皇室の目立った話題はほとんど知っていたことだ。日本に住んでいるのだから、当たり前だろうか。

そういえば私もチャールズやカミラとか、イギリス王室の話題を結構知っている方かもしれない。ロイヤルファミリーのゴシップ的な話題は、何かと耳に入ってくるものだ。

エリザベス女王は今年93歳で、在位67年。ほとんどのイギリス人は、今のエリザベス女王の時代を生きて来たわけだ。考えてみるとものすごい長さだ。

しかし昭和天皇も63年なのだ。過ぎてしまうと実感がなくなる。長く大変な時代を頑張られたのだなぁ。

●派手な理由

私のエリザベス女王の印象と言えば、あの可愛らしいピンクのスーツや帽子のファッション。とても華やかな色を使っていて、遠くからでも驚くほど目立つ。

「エリザベス女王」で画像検索すれば、満面の笑みの華やかなカラーのお洋服の姿がたくさん出てくる。そこに幼少期や若かりし頃のモノクロの写真も。この色の対比こそがそのまま、女王の歴史の長さを感じさせる。

過去にそのカラフルなドレスの写真を虹色に並べた、「Rainbow Queen」というカラーチャートが、UK Vogueのファッション誌に掲載されたぐらいだ。

「Rainbow Queen」で画像検索すると、今までに着た洋服は赤系からオレンジ系、黄色系、緑系から青系へとほぼ完璧に虹色になるほどカラフルだ。レインボークィーン、なんかカッコイイ。

今年またWEB新聞「ロンドン・イブニング・スタンダード」の記事で、華やかな洋服について書かれたのでリンクを貼っておく。

・London Evening Standard
https://www.standard.co.uk/insider/royalssociety/queen-elizabeths-most-colourful-outfits-from-her-neon-green-memes-to-her-official-red-robes-a4159521.html


そして、イギリスではエリザベス女王を実際に見たことがある人が、とても多いのだと言う。かなり地方の行事まで女王自身で行くので、地元の人はきっとその機会を逃さず会いに行く。それを67年続けている訳だから、見たことがある人が増える一方でも当然かもしれない。

決して個人的に派手好きだから派手にしているわけでなく(笑)、会いに来た人からよく見えるようにと配慮されているそうだ。

外国の場合は、選ぶ色を慎重に吟味して決めるそうだ。帽子だけでも、手袋だけでも動いているのが見えたなら、その人の歴史には「女王に会った」と刻まれるのだ。

私が参加した即位パレードでも、天皇陛下のお車が通り過ぎた後に「えー、見えなかった。もう通り過ぎちゃったのー!」と、ショックを隠せない人が何人もいた。前列には昔そういった悔しい思いをした人が並んでいるのだ。どんなに早く来ていても、もう1時間早ければ良かったと思うようになる。

人の垣根が視界を遮る悲しさを、目立つ色でカバーしようとするアイデアは一つの方法として素晴らしいと思う。

エリザベス女王はダイアナ妃亡き後、英国王室の華やかな存在感を維持させるために、頑張って来られたのだ。

「派手に生きる覚悟」。覚悟のショッキングピンク。いや、レインボー。72%というエリザベス女王の支持率も、それらの積み重ねの結果だろう。

・世論調査機関「YouGov」
https://yougov.co.uk/ratings/politics/popularity/royalty/all


女王に会いに来る人がどれだけ長い時間、寒空の下に立っているのかを考えて、華やかな出で立ちで登場する。多くの人の目にそれが焼きつくのを知っているのだ。きっと皆、末長く覚えているだろう。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


最近話題の会話型AIシステム「グーグルアシスタント」の音声通訳機能を、夫が面白そうに使っていた。これ結構楽しい!! 自分がスマホに話しかけた日本語を、すぐに滑らかな発音の英語で聞けるのは画期的。

煩わしいボタン操作もなく、マイクボタンを最初に押して始めれば、AIが勝手に補正してくれる。少し噛んだ程度の言い間違いは拾わずに、言いたかった文章に整えてくれるのだ。バカ正直でもない感じが凄い。しかも無料。

今日は英会話の話題を書いたのに、通訳アプリの驚異が迫る。いよいよAIと複雑な意見を述べ合うまでになったら、困る人は続出しそうだ。ん? 何が困るのかな。