腕時計百科事典[89]腕時計を修復する動画を楽しむ
── 吉田貴之 ──

投稿:  著者:



AmazonプライムビデオやHulu、Netflixなど、動画配信サブスクリプションサービスが一般的になって久しいですが、YouTubeなどの動画共有サービスもまだまだ人気です。

そんな動画共有サービスにおいて、筆者が好きなジャンルの一つに「壊れたものを直す」動画があります。長く放置されていた機械や、事故などでグシャグシャになったバイク、川や海の底から引っ張り出した腕時計などを、まるで新品のように蘇らせる類のものです。そんな「修復動画」の魅力と、そこから得られる腕時計の知識を紹介します。





★ボロボロの状態で発見

修復動画を撮影するためには、まずはボロボロの腕時計を見つけなければなりません。自動車やバイク、冷蔵庫などは、探したり運ぶのがなかなか大変なようですが、腕時計は比較的簡単にみつけることができます。

誰かの家の倉庫や引き出しで眠っていたものや、燃えないゴミとして放置されているもの、水の底から掘り出したものまで、色々な場所からボロボロになった腕時計がみつかります。単純に、使用中に落としてしまったものを修復する動画もたくさんみられます。

★洗浄する

多くの場合、ボロボロの腕時計にはホコリや砂、泥などが付着しているため、それらを洗ってきれいにするところから修復がスタートされます。大胆に水洗いをしているのを見ると不安になりますが、クォーツ式だろうが機械式だろうが、ガシガシと洗う姿は見ていて爽快です。

余談ですが、腕時計よりも繊細そうなスマホなどを遠慮なく水洗いしているのを見ると、不思議な気持ちになります。

★分解する

きれいになったら、次は丁寧に分解する作業が始まります。パッキンやプラスチック部品が劣化したり、ネジの頭が潰れていたり、錆びて固着したりなどしているため、一番時間がかかり、職人の苦労が偲ばれるのがこの過程かもしれません。ナイフやナタのような道具で力まかせにこじ開けたり、ドリルで穴をあけるなど、思い切りの良さが楽しめるパートでもあります。

★研磨/塗装/めっきする

分解できたら、今度は研磨や塗装の工程に入ります。ここで、各部品の状態をチェックしたり、必要であれば代替部品を探す流れになることが多いようです。金属製の道具はたいてい研磨と塗装で新品同様に蘇りますが、腕時計の歯車などの場合はむやみに研磨することもできないため、調整が難しいところです。曲がった時計の針を真っ直ぐに修復する工程は、ほとんど運頼みのように思われます。

★組み直す

きれいに仕上がった部品と、破損等により別途手に入れた部品がそろったら、最後の工程である組み直しにはいります。おそらくこの工程に入るまでに、微調整や微修正が沢山行われているとは思いますが、うまく編集されているので、どんどんと組み上げていく様子をたのしむことが出来ます。

ボロボロのものがきれいになって、再度使えるようになっていく快感をわずか10分前後の動画で堪能できますし、腕時計や他の機械の構造や仕組みを学ぶこともできますので、機械好きの方にはおすすめです。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
https://www.idia.jp/

腕時計ポータルサイト:腕時計新聞
https://www.watchjournal.net/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。