ローマでMANGA[150]マンガ学校で教え、本から学ぶ/Midori

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりしていきます。

さてさて、今回も講師をしているマンガ学校の話題です。





●中間考査……の前に文句

私が講師をする学校は専門学校で、日本の文科省に相当する教育省の認可外で、卒業証書は本当にただの紙切れで、これがあるからといって出版の際の報酬額などに影響はまったくない。

卒業考査の点数が良いと、出版社からすぐに声がかかるわけでもない。手に職をつけるための、一つの手段にすぎない。すぎない、と言い切ってしまうと身も蓋もないけど、逆に言うと、義務ではないのにこの学校に通うと決めるのは、やっぱり、少しでもプロに近づくためでしょ。

マンガは描けば上手くなるのだから、わざわざ高い月謝を払って通うのはプロになるための、少なくとも近づくための唯一の道、とはいえない。

それでも色々工夫して(親を説き伏せたり、アルバイトをしたり、仕事や大学の時間を上手く調整したり)通うからには、それなりの気概があるからと思うのだけど、違うのかなぁ……授業が始まって半ばすぎて考え込んでしまう。

ちなみに専門学校は大学の授業時間に準ずるので、10月開始で6月に終業する。9か月が一学年で、4か月目の1月に中間考査がある。今年は欠席が多い。だから、上に書いた文句が出てくるのだ。今年の私のクラスは10人。

11月と12月にほとんど姿を見せなかった生徒がいた。生徒間でwhatsapp(ラインと同じ機能を持つヨーロッパで多く使われるアプリ)でグループを作っているので、聞いてもらうと、具合が悪いと言う。秘書課に連絡をしてその旨を伝えると、本人に連絡を取って、病欠であることを確認した。自分から学校に連絡しないんだね。

病欠の場合、医者の診断書があれば欠席扱いにならない。欠席扱いが12日以上に及ぶと、試験(考査)を受けられないことになっている。また、病気など特別な事情があって通学できなくなった場合、在籍の権利を「凍結」することができる。再開するときに入学金を払わなくてもいい。

もう一人、上記の生徒以上に欠席日数が多い生徒がいる。whatsappグループにも連絡がないし、秘書課が連絡を取ろうとしても電話に出ないそうだ。何があったのか知りようがないけど、これも、学校に連絡しないの?

もう一人は仕事の時間と授業日が重なってしまって、なかなか出てこれない、という。職場に事情を話したが、終業時間を変更してもらえなかったそうだ。

でも、このコースに参加を決める前に、授業日は確認できたはず。ユーロマンガではなく他のマンガコースだったら、2年次に火曜と木曜で出席できていたのだから参加できたかもしれない。

路は少しずれるけど、月謝がムダにならない。それでもこのコースに参加したのだったら、欠席した日の授業内容をクラスの同級生に聞いて、課題など仕上げることも出来たはず。気概は?

彼が1年生だった時から知っている秘書課のエリーザによると、仲良くつるんでいた友だちに、同じユーロマンガコースの恋人ができてから変ったようだ。殆どの学生が20歳を少し過ぎていて、そういう悩ましいお年頃。

1月に入ってから、もう一人長期欠席者が出た。大きな交通事故を起こして車はお釈迦、右腕と右脚に大怪我をしたのだ。この生徒はすごくやる気のある子で、今皆が懸命にやっているサイレントマンガオーディションへの応募作品を意気揚々と進めていた。

事故は土曜の夜に起きた。遊びに行っていたわけではなく、実家の家業のピッツェリアを助けて、ピッツァを届ける途中で逢ったそうだ。これは泣ける。

●そして中間考査

繰り返しになるけれど、ここは専門学校。誰かが強制的に生徒を押し込んだわけではない。みな自分の意志で、将来を見据えて選んで来た。かつ、3年制の最終学年。これまで中間考査を2回、学年末考査を2回経験している。

だ か らー、これまで授業でやって来たことを全部持ってくるのは、わかってるだろうに! しかも、中間考査の前の授業でそれは言い渡してある。

日本の専門学校の生徒はどうなんだろう? ぜんぶ手をとり足をとり、講評日に何を持ってくるかなど、先生が再三言い、黒板に書き、かつプリントにして渡したりしてるのかな?

これを書いていたら、有名な山本五十六の言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」が浮かんで来た。私の方にも何か足らないことがあるかもしれない。そのへんも知りたい。

中間考査には連絡が取れない生徒と、大怪我の生徒を除いて8人いた。8人中、満点の30点をとった生徒が一人。几帳面で、私の講義中にノートを取る唯一の生徒だ。そういえば、昨年も、一昨年も、30点満点をとった生徒はノートを取っていた。

私の言葉を耳から聞いて、そのままぽわーっと頭の中に霧が広がって行くままにしておくのではなく、手を動かして文字にする(耳からのインプットを頭で整理して手を通してアウトプットし、さらに自分で書いたものを目で読んで再度インプットする)という行程が理解、記憶に止めるのにすごく有効なのかも。

来年度はノートを取ることを大いに奨励しなくちゃ、と思った。効用をちゃんと告げて。効用は、manga言語を理解するだけでなく、自分の作品に応用できる、ということ。これが目的なのだから、やっぱり効果的な勉強のしかたを生徒に伝えなければ。

しかも彼女は全課題をバインダーに時系列でまとめ、かつ表紙イラストまで描いて付けて来た。ギリギリになって支度をするのではなく、ちゃんと時間的な余裕を持って準備することができる。

確かにマンガ家は芸術家的な側面もあって、少し風変わりだったりすることもあるけれど、特にヨーロッパの場合は、自分で自分のマネージメントや営業をし続けねばならない。他に自分の作品を少しでも分かりやすく伝える工夫は、身に付けていていい。

進級ギリギリは18点。それに限りなく近い点を取った生徒が二人いた。二人とも、授業でやった課題作品の一部を持って来なくて、評価できない項目があったのだ。評価の項目は5つ。その5つの評価を合計して、5で割った数字が総合評価になる。5つのうちのひとつが0だったら、そりゃ点数は悪くなります。

だ か ら、全部持って来るようにと言ったではないか。「あ、家に忘れて来た」とか、「必要ないと思った」とか、言い訳すな!

●自らのお勉強

ユーロマンガの授業では、物語の作り方も入る。ちゃんと物語を作ったことがないから、ここ数年、色々本を読んで勉強している。映画の脚本家による、参考になる本を見つけて、鱗を何枚も目から落としている。

一冊は数年前に見つけたスナイダーの「SAVE THE CATの法則」
https://maamaa-create.com/save-the-cat/

基本的な脚本術はこれ一冊でいい! というくらい。これはイタリア語版も出ていて、ユーロマンガコースが始まってから、必ず読むように言っている。(30点を取った彼女は、授業が始まってからすぐに買って、早々と読み終えて「本当に参考になった」と感心していた)

昨年知ったのが、カール・イグレシアス著「感情から書く脚本術」。
http://filmart.co.jp/books/playbook_tech/emotional-impact/

「プロットじゃない、構成じゃない、キャラクター造型でもない。一番大事なのは『感情』なんだ! 心の動きを誘導し、最後までのめりこませる物語を書く。UCLAの人気課外授業、待望の邦訳!」

感情をベースに物語を進める、というのがmangaの基本なのだから、これはまさにユーロマンガコースにうってつけ。

授業の参考になりやすい話がこれでもかと言うほど出てきて、Kindleで読みながら線を引き、さらにノートに書き写して勉強している。これを授業に応用できるような課題を作ろうと書き写しながら、こうできるな、ああもできるかな、とやっていて楽しい。

残念ながらイタリア語訳は出ていない。英語で読んでもかなり分かると思うけど(英語単語の70%はラテン語起源だから、文字面だけ見るとかなりイタリア語に似ている)。

これも授業の初めに生徒に言ったけど、はたして読もうとした子はいるのだろうか。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

この「ローマでmanga」が150回目ですって! 飽きっぽい私が続いているのは、なんでしょうね、柴田さんや濱村デスクが醸し出す雰囲気ですかね。どちらにも、実際にお会いしたことないのに……。

週の時間割を決めた。義務やらやりたいことやらが山のようにあって、毎日、結局目の前に積まれた一部を引き出してやり過ごし、やり残したことが溜まって行く。買っただけの本や、何かに使えると取っておく化粧箱なんかと同じ。

あれもこれもやらなくちゃ! と義務に押されて息苦しくなって、別のことに気持ちが行ってしまって、また新しいことを始めてしまう……。

そこで、断捨離というより、つまり、いらないものを見つけるのではなく、いるものを選択していく、というやり方で、仕事、家事とガーデニング、自分のmanga企画、ホビーの項目に分けて、毎日やること、週に一度やること、二日に一度やること、にわけてToDoリストを作った。

自分のmanga企画は報酬など約束されてない勝手にやりたいことなので、どうしても義務の方を優先して、結局まったくの手つかずになってしまっていた。時間割を決めてから二日。2ページの完成原稿、1ページの鉛筆下書きをした。何か月も進まずにいたことを思うと、いいペース。

昨年の初めに買ったままになっていた布で着物を縫う、というのも週に1時間割り振った。少しずつでも、絶え間なく進めば、間違いなく前進するのはウサギとカメのカメさんが教えてくれた。

[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT (このバンドは解散。最近新しいバンドを組んでレパートリーを増やしてるところ)


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MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
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