crossroads[80]ふるさと納税は寄付ではなく投資である
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。

少し前になりますが、年末にふるさと納税のCMとかネットの記事を見て疑問に思うことがあり、色々考えてみた結果「ふるさと納税は寄付ではなく投資と考えるべきではないのか」という結論に達しました。





■ふるさと納税とは

ふるさと納税は、労働力が都市部に流出し、税収が下がってしまった自治体を救うために設けられた納税制度です。

簡単にいうと「自分は今A市に住んでるけど、生まれ故郷のB町を支援したいからB町に納税する」というのが、本来の「ふるさと納税」の意味です。

よくわかる!ふるさと納税
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/about/


ふるさと納税を行った場合、最低2,000円の自己負担金が発生しますので、実質的には2,000円多く税金を払うことになります。

たとえば、年間10万円の税金を払っている方が、10,000円のふるさと納税をした場合、10,000円がふるさと納税先へ納められ、自己負担金を除いた8,000円が控除となり、92,000円が通常通りに納税されます。

■ふるさと納税は寄付か?

ふるさと納税を呼びかける自治体やメディアでは、「ふるさと納税による寄付」といった表現をすることがあります。

これは、ふるさと納税が「寄付控除」の仕組みを使っていることであったり、元々の税額以上の金額をふるさと納税で納税した場合、元々の税額を上回る部分が寄付と扱われるためです。

しかし、本来の税額相当の部分は元々税金として徴収されるものであって、単に納税先が変わるだけなので、これを寄付と呼ぶことには違和感があります。

もし、ふるさと納税が「寄付」なのであれば、通常の納税も「寄付」ということになります。しかし、納税は法律で定められた「義務」なので、これを「寄付」と呼ぶのは間違っています。

■ふるさと納税の果たす役割をもう一度考える

ふるさと納税って、何のために行うものなのでしょう?

ふるさと納税利用者の中には、「返礼品」目当てという方もいらっしゃるでしょう。「2,000円の手数料を払って納税すると返礼品が貰える」仕組みなので、納税者がそれを目当てにすることを責めるわけには行きません。あきらかに普通に納税するよりお得です。

しかし、ふるさと納税は返礼品として地元の特産品や名産品を売るシステムではないはずです。納税に対して見返りのものを渡すというのもおかしな話です。他の地域の人がふるさと納税して返礼品が貰えるのに、実際に住んでる人が普通に住民税を支払っても、何も貰えないっておかしくないですか?

「ふるさと納税」は、あくまでも税金なので、その地域の政策や施策を実行するために使われるべきものです。と考えれば、「どんな目的で使われるのか」を考えて納税すべきであって、「どんな返礼品が貰えるか」で考えてはなりません。

各自治体は、「どんな目的で」「どれぐらいの金額が必要か」を明らかにした上でふるさと納税を募り、納税者はその内容に賛同できるかどうかで、ふるさと納税するかどうかを決めるべきです。

忘れてならないのは、その分地元の税収が減るのです、もしかしたら、それによって従来実行されていた行政施策が、実行されなくなるかもしれない、というリスクがあることを十分承知しておく必要があります。

「うちの住民税分ぐらい減ったって大したことない」とみんなが思ったら、とんでもないことになります。

■ふるさと納税は投資である

さらにいうと、「どんな目的で」「どれぐらいの金額が必要で」「それをどれぐらいの期間で実行して」「将来的にはどのように展開、維持運営していく」というのも欲しいです。

これって事業計画ですよね。自治体が提出した事業計画に対して、納税者が自分の納税額を振り替えることを判断するのであれば、これはまさしく「自治体への投資」であると言えます。

これが「ふるさと納税は寄付ではなく投資であるべき」と考える理由です。

■私が考える理想のふるさと納税の仕組み

ここまでの考えに基けば、ふるさと納税の募集金額は計画的に決められるべきであり、募集金額に満たない場合や、募集金額を超えた分については受け取るべきではありません。

たとえば、A市がある事業を行うために1,000万円のふるさと納税を募ったとしましょう。しかし、結果として100万円しか集まりませんでした。

この場合、集まった100万円では当初予定してた事業を実行できないので、受け取っても意味がありません。

「いやいや100万円でも貰えるならありがたいじゃないか」と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそもこの100万円は当初掲げた事業のために納税されたものなのですから、それが実行できないのであれば、本来の自治体に戻るべきだと私は考えます。

さらに、1,000万円を超えた分についても、本来の自治体に戻るべきだと思います。何度も言いますが、これは「寄付」ではなく「税金」なのです。

クラウドファンディングでいうところの、「All or Nothing」方式に近い考え方ですが、目標額に段階を設けた「段階的All or Nothing」方式でもいいかなと思います。

500万ならAプランまでを実行、1,000万集まったらBプランまでを実行、というように集まった金額によって実行するプランをいくつか用意しておき、金額によってどこまでをやるかを決めるのです。

この例で、仮に750万円集まったとしましょう。Aプランを実行するには十分ですが、Bプランには足りない。したがって、500万円をふるさと納税として実行し、残りは本来の自治体に返すという考え方です。

もしくはBプランに足りない250万円を自治体が負担して、Bプランまでを実行するという選択肢があっても良いと思います。ここまでやれば、納税者としても納得できるのではないでしょうか?

■ふるさと納税は寄付ではないし、税額が控除されるわけではない

大事なことなので、もっかい書いときますね。

ふるさと納税は「手数料を支払って、税金を自分が住んでいる自治体とは別の自治体に振りかえる納税制度」なので「寄付」ではありませんし、納税額が減るわけでもないので「控除」でもありません。

ふるさと納税というのはその自治体への「投資」として行われるべきであり、返礼品という仕組みを即刻なくし、各自治体は「ふるさと納税」の使途を明確にして運用しなければ、今まで以上に各自治体は疲弊していくことになるかもしれず気がかりです。

脱返礼品で、ふるさと納税を考え直したいものです。


【若林健一 / kwaka1208】
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