ローマでMANGA[151]主人公になり切って頭の中で演じてごらん
── Midori ──

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●コースの第二部に突入

マンガ学校の話。参加を強制している「サイレント・マンガ・オーディション」(SMA)の締め切りが1月31日にあり、クラス10人中一人だけ締め切りを守って作品を仕上げ、提出できた。

一か月半で物語を作り、原稿を仕上げるというのはプロ並みのスピードを要求されたわけで、初めて自分で作品をゼロから作る生徒にとっては、かなりの難関だったのは確かだ。とりあえず、中間考査とオーディション参加という二大イベントが終わり、コースの第二部に突入となった。

SMAの締め切りがこれまでの3月末から1月末に変更になり、授業の進め方も変更した。講義とストーリーボードチェックを授業で行い、SMAの原稿制作は家でやってもらうつもりでいた。締め切りが2か月早くなったので、原稿制作を学校ですることを許可し、その分、講義の時間を削らざるを得なくなった。

ただ、生徒のストーリーボードをじっくり見直して、共通する欠点をしっかり把握する事ができた。これは、学校外で私にコンタクトを取って、ネーム(ストーリーボード)のお直しを依頼してくる人にも共通する。




●授業内容の建て直し

共通する欠点を言葉で表現するのに、勉強中の本、「感情から書く脚本術」
(カール・イグレシアス著が助けてくれる。)
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「感情・性格」を表現するのはキャラの行動 ←これが欠ける

本文内に例としてジャック・ニコルソン主演の「恋愛小説家」が出ている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%8B%E6%84%9B%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E5%AE%B6
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主人公の潔癖脅迫症を表現するのに、石鹸で手を洗い、その石鹸を捨ててもう一つの新しい石鹸を下ろして、もう一度手を洗う。カメラは洗面台の家具にいっぱいの石鹸を映す。この「行動」で潔癖症を表現した。

もう一つの例、ケチな人物。ケチであることを表現するには? 食事にプラスチックの皿を使い、それを洗って乾かししてもう一度使う。これも行動だ。

コースの生徒のSMA用ネームも、今お直しを頼まれているネームも、「感情・性格」を表現するためにキャラに行動させる」というのがない。

物語である以上、キャラが何かするのは当然なのだけど、その行動と感情・性格を表現するための行動、というのは意味が違う。物語を進めるためのキャラの行為の羅列では、読者は感情移入できない。

赤頭巾ちゃんが淡々と無表情で花を摘んだら、義務でやってるだけになってしまう。大好きなおばあちゃんに喜んでもらおうと夢中になって摘むのだったら、あっちやこっちに目をやって赤い花だったり、大きい花だったり、自分の目が惹かれるものを探すだろう。

時々束になった花をちょっと持ち上げてみて陽にかざし、その可憐さに微笑むかもしれない。もっと大きい花束の方がいいかしら? と思って、花束と花畑を見比べながら、真剣な眼差しで摘む花を吟味するだろう。

それが「感情・性格」を表す行動なのだ。つまり、シノプシスで「赤頭巾ちゃんが花を摘む」とあったときに、どんな風に摘むのかを具体的に想像できるかが肝要ということだ。

そして、このことを理解してもらうために、どのような例題、課題を作成するのかが講師の腕の見せ所となる。

●「感情・性格」を表現する「行動」

これを理解してもらうために、SMAのストーリーボードを見ながら「この主人公がこれをする時に、なり切って頭の中でいいから演じみて」と、何人にも言った。

例えば、このようなシーンを描こうとした生徒がいた。「姉と喧嘩をした5歳の男の子が、夜、怒りから眠れずに、同じ部屋で寝る姉に、マジックペンで顔にいたずら書きをするという復讐を決意する」

兄がいるというこの生徒に、兄弟喧嘩をしたことがあるだろう、と聞いた。当然ある。その時の気持ちを思いだし、頭の中で自分がこの主人公だったら、ベッドの中でどんな風にイラつく? 何度も寝返りをうつ? いたずらをするためにどうやって起き出す?

他にも、足の悪いホームレスが朝、公園で目覚めて起きる、というシーンを描いた生徒がいた。あっけらかんと、パッパッと起きてしまう。

「いつも邪魔者扱いをされている人は、目が覚めて自分の隠れ家から出る時に、どう出ると思う? 用心しながら、そーっとゆっくりと、周りを確認しながら出るんじゃないの? しかも足が悪いということがこの物語の中で重要な要素なのだから、パッと起き上がれずに、杖に頼ったりしながら起きるんじゃないの?」と言った。頭の中で演じてご覧、とも。

もう一人は「水が怖くて泳げない男の子が、好きな女の子にプールでのパーティに呼ばれ、恥をかかないために友達に助けてもらって泳ぎの練習をする」という話を持ってきた。

「水が怖くて泳げない」ということを表現するのに、セリフで済ませる(これはSMAではなく、別の話。SMAではセリフを使えない)。水が怖いというのは、好きな子のためにこれを克服する話の中では大事な要素だ。

ここをしっかり、それも、主人公の立場から描くことが肝心だ。それを伝え、「例えば、プールを恐る恐る覗き込む主人公。主人公が見る「悪意に満ちた」水の表面。後退りする主人公……といった情景が浮かぶけど、主人公が抱く恐怖を絵で説明してみて」と言った。

返って来た修正ネームでは、震える主人公のコマの後、北斎の有名な絵のように波がたつプールの水のコマがあった。「水が怖い」はこの2コマでおしまい。

うーむ、つまり、「頭の中で演じてみて」とか、私が脳内演劇で出てきた行動を解説してもわかってもらえない、ということがはっきりした。では、どうやればいいいのか?

●「SIMPLYPIANO」方式

一昨年の1月から「SIMPLYPIANO」というアプリでピアノキーボードの練習をしている。一年で(簡単な)楽譜を読めるようになり、両手で(簡単な)曲を弾けるようになった。

このアプリの優れたところは、手取り足取りという感じで、すごく簡単な右手で弾く節を繰り返し、次にその節の伴奏になる左手を繰り返し、次に両手で何小節かを繰り返す。

つまり、「演じてみて」というのは、例として何小節かを流して聞かせ、突っ放してることなのだ。「演じてみる」やり方を教える必要がある。(演劇の本を読もうか)

つまり、ある状況を生徒に示し、みんなでこの状況にあった時、どんな行動を取るかを、ディスカッションしてみるのもいいかもしれない。そして、この時、この行動が感情を表すようになるよう、繰り返し繰り返し訂正していくことで、スイッチが入るかもしれない。

つまり、次の講義に向けて私がやることは、課題に適した「ある状況」の例をいくつか考えだすこと。もちろん複雑なものではだめだ。

「性格」を表す状況と「感情」を表す状況を考案する必要があるかも。あるいは、状況によっては両方に共通して使える例があるかもしれない。

この稿を書きながら今後の講義をどうしていくか、という方針がはっきりしてきた。書くという行為は、漠とした考えを言葉に翻訳していくから、助けになりますね。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

月一のフリマで墨絵による似顔絵を描いて、お小使い稼ぎをしている。会場で「似顔絵師」の名刺を勝手に持っていってもらって、その宣伝効果が少しずつ現れ始め、メールでの問い合わせが増えてきた。

最近もらった依頼では、ある女性の似顔なのだが、写真を三枚送ってきてこれを墨絵と、できればカラーでも描いて欲しい、と言ってきた。写真に写ってる人は同じ女性。さらに追加でもう一枚写真を送ってきてこれはカラーのみ。

カラーは水彩で描いた。しばらく水彩をいじってなかったので、不安の中にも楽しみがあった。もう一歩強弱をつけられるとなお良し、と自分で判定した。今のところ、どうやったらもっと強弱がつけられるのかわからない。

それと、写真を元に描くと、パッとみて印象に残った部分をつい大きく描いてしまう癖を発見。それが効果的ならば、私のオリジナルなスタイルになるかもしれないが、今のところそこまでいってないので、気がついて慌てて下書きを消したりした。

それと、初めてのケースの依頼。送ってきた写真はいずれもセルフで、う〜む、ひょっとして、インスタで知って岡惚れして、自分の部屋を彼女の顔でいっぱいにしたいのか……などと想像を巡らせた。あ、「ソーシャルネットワークで片思いした人がとる行動」の例になるね、これ。

[注・親ばかリンク]息子のバンドPSYCOLYT (このバンドは解散。最近新しいバンドを組んでレパートリーを増やしてるところ)


お絵かきインスタ
https://instagram.com/midoriyamane

MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/

主にイタリアのレストラン情報のブログを書いてます。
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