腕時計百科事典[92]腕時計の秒針
── 吉田貴之 ──

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一般的に、時計には「時針」「分針」「秒針」の3つの針が備わっています。このような時計を「3針(さんしん)」といいますが、秒針のない「2針(にしん)」の時計もたくさん存在します。「腕時計には秒針が必要かどうか」について、考察してみました。




◎掛時計

腕時計について考える前に、掛時計についてみてみましょう。オンラインショップで販売されている掛時計をざっとみたところ、秒針があるものとないものは半々、といった印象でした。どちらかというと、デザイン性の高い掛時計には秒針がついておらず、実用的なものには秒針がついている、ということが多いようです。

◎デジタル時計

一方で、針をまったく持たないデジタル時計についてもみてみると、こちらもアナログ時計同様、秒の表示があるものとないものにわかれていました。デジタル時計で秒の表示があるものは、表示が目まぐるしく変わることになりますので、時と分の間のコロン(:)を点滅させることで秒を表現しているものもありました。

◎腕時計

上記の前提を鑑みて、本題であるアナログ表示の腕時計をみてみると、これも半々くらいの感じでした。なお、3針が同軸のものではない、いわゆるスモールセコンドのものも、「秒針あり」としてカウントしています。

腕時計も掛時計と同様、デザイン性の高いものには秒針がついていない印象ですが、併せて高級に分類されるブランドの腕時計では秒針があることが多く、リーズナブルな腕時計には秒針がないことが多いという、別の視点も発見しました。

◎初期の腕時計

機械式腕時計の初期には、秒針を実装するのが技術的に難しく、先に登場したのは前述のスモールセコンドタイプの腕時計でした。後に、時針や分針と同じ軸に秒針を備えた同軸タイプのモデルが登場しました。当時、秒針は「秒単位の精度を備えている」ことを表す役割を担っていたのではないでしょうか。

◎クロノグラフ針にポジションを奪われる

また、機械の進化により、腕時計にストップウォッチ機能を実装できるようになると、秒針が再びスモールセコンドの位置に移動します。たしかに、ストップウォッチ機能を使いたいのであれば、秒針よりもクロノグラフ針の方を大きく、目立たせるほうが理にかなっています。余談ですが、クロノグラフ針を秒針と間違えて、動作させたまま使用している人を稀に見かけますね。

◎クォーツ式

世界で初めてのクォーツ式腕時計「セイコークオーツアストロン35SQ」には、秒針が備えられていました。当時(1960年代後半)は高度経済成長期でもあり、時間を惜しんで働くビジネスマンも多く、最新のクォーツ式腕時計がその象徴ともなっていたと推量します。

◎必要か不要か

このような流れを見ていると、秒針が機能として必要だったシーンはほとんどないように思います。あるときは精度を表すしるしとして、またあるときは機械が動作している指標として用いられてきたのではないでしょうか。

デザイン性の高い腕時計を身につける状況や、リビングに置いた掛時計を眺める状況など、一分一秒を争わないような場面では、「時」と「分」だけで十分なのかもしれません。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。