ローマでMANGA[154]緊急特番 ローマでコロナ その2
── Midori ──

投稿:  著者:



ローマ在のMidoriです。ローマでコロナその2を。書き忘れたことと、新たな展開があったので書いてみます。

ローマでMANGA[153]緊急特番 ローマでコロナ
https://bn.dgcr.com/archives/20200312110300.html






●その後の展開

書き忘れたのは、首相令で学校閉鎖云々以外に、すべての商業施設(商店、床屋、美容院)は午後6時で閉めること。日祭日は営業しないこと。ということ。
かかりつけの美容師も「午後6時で閉めるのを余儀なくされて、御迷惑をおかけしてます。他の仲間では思い切って閉めてしまうと言ってる人もいるけど、私は店中消毒して頑張るから、予約した人、怖がらないで来て!」と客にメッセージを送っていた。

11日の午後9時40分。「首相から大事なお話があります」とテレビで知らせがあり、新たな首相令の発表があった。4日間で3回首相令が発された。


新しい首相令は、イタリア全土をレッドゾーンとし、3月25日まで、生活に密着した食料品店、薬局などを除き、すべての商業施設は営業を停止する。「午後6時に閉める」ではなく、閉店。各事務所、工場は業務上必須な部署を除き、活動を停止すること。公共交通機関は動くが、なるべく出歩かないように。

「私は家にいる/IORESTOACASA」というハッシュタグが発表された。

人の移動で感染するのだから、こうした思い切った政策が必要だとは思う。24時間経って、フランスも同樣の決定をしたと、ニュースでやっていた。

セリエAのサッカー選手から感染者が出て、多くのイタリア人にはこのウイルスが他人事ではなくなったと思う。

24時間経って、フランスも同樣の決定をしたと、ニュースでやっていた。

経済活動が停止するわけだから、イタリアの経済がガタ落ちになるわけだけど、首相は「国民の健康を第一に考える」とはっきり言った。さらに、この令が出たからと言って食料を買いだめに走る必要はない。食料の
供給は止まらない、とも断言した。

●私の周り

今日、スーパーに行ってきた。1メートル以上離れる、ということで、スーパーでは係員が一人づつ入れていた。家族であっても、一緒に並んで入れない。
https://photos.app.goo.gl/2d1jp1ZkdYRurWkF9


店内は一度にたくさん入れないし、通常より出歩く人がすくないので閑散としていた。客もスーパーの人もマスクをしている人が多い。そして互いに近づかないように気をつけていた。互いを牽制し合って、というより、互いに互いを守ろう、という感じ。

ギスギスしたり、怯えるような雰囲気ではなかった。ローマはそれほど感染者が出てないから、まだ身に火の粉はかかっていない。でも、度重なる報道のおかげでコロナの危険性は皆理解して、決まりを守ろうとしている感じ。

これで、イタリア人も「決まりを守るとスムーズに行く、災ではなく、安心になる」という経験をすることになる気がする。なにか、「決まりを守る」ということを楽しむというか、この非日常に好奇心で臨んでいるような感じを受けた。あくまでも、犠牲者が身近にいないからこその雰囲気なのだと思う。

「度重なる報道」と書いたけど、マスメディアの報道もきちんと事実を報道する形になっている気がする。それこそ「国を挙げて」事にあたり始めた感じ。

一つの国になって150年しか経っていない国の人に、「国」とか「国民」とかいう言葉はあまり大きな意味を持たないのだ。地元や家族という、近いところがテリトリーなのだ。

旦那と私とカートを一つづつ持って、買いだめする気ではなかったけど結構いっぱいになった。私のカートには、りんご2キロ、パン、ヨーグルト(大型二つ)、鶏肉一羽丸ごと、鶏肉背中肉(安い)、猫の砂と餌、トイレットペーパー4巻入り、キッチンペーパー2巻入り、羊のチーズ、キャベツ1個、ジャガイモ3キロが入っていた。郊外でちょっとそこまで牛乳買ってくる、というわけに行かないので、スーパーに行くたびに普通に買う量だ。

レジの前には1mごとにテープが貼ってある
https://photos.app.goo.gl/NGT8RmichGdgryep7


レジの前で前の人と距離を保つ
https://photos.app.goo.gl/NTQkX9vtjtmqw3Bv6


工場地帯で、いつでもやや渋滞気味の道が空っぽ
https://photos.app.goo.gl/PJdiHcp9P3TAWyUX6


こちらはメディアからのコピペで空っぽのローマ 70年くらい前のローマがこんな感じ
https://www.tgcom24.mediaset.it/cronaca/lazio/foto/coronavirus-da-piazza-navona-alla-fonatana-di-trevi-roma-deserta_16001932-2020.shtml


●看護婦さんの投稿

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10157439866733611&set=a.10151380203773611&type=3&theater


マルティーナ・ベネデッティさんのFB投稿が、約10万に近い「LIKE」をもらっている。童話作家になりたかった、ということもあって文章がうまい。ハードな実体験を、ゴーグルとマスクの跡で真っ赤になった顔写真とともに掲載した。

日本のどこかのブログで、「10時間勤務したからってヘタってる看護婦の投稿が……」とだらしねーと言う感じで書いてあったのをちらっと見たけど、この人のことかな。

でも、彼女の文を日本語要約ではなく、ちゃんと読んだらそんな感想は出ないと思う。彼女はこの時期、仕事がきつくてつらいと嘆いたのではなく、病院の実情を掲載することで、まだまだウイルスの恐ろしさを理解してない人にわかって欲しかった、とも書いている。

●自宅待機を有意義に。

イタリアを挙げての自宅待機に、様々な会社が無料サービスを提供し始めた。

携帯電話プロバイダーはGBの無料提供、SNS無料提供など、出版社はディジタル書籍の無料提供、などなど。政府広報でもこうした各種サービスを一覧できるページを作成した。

ディジタル書籍の無料提供をする出版社の中にはマンガ出版社も含まれる。3月12日から4月3日まで無料閲覧できる。
https://www.fumettologica.it/2020/03/shockdom-fumetti-coronavirus-yep/


美術館も負けてない、というか、この時期だけではなくてバーチャル訪問ができる美術館はすでにあるわけで、その一覧がメッセージで回ってきた。

1. Pinacoteca di Brera - Milano
https://pinacotecabrera.org/


2. Galleria degli Uffizi - Firenze
https://www.uffizi.it/mostre-virtuali


3. Musei Vaticani - Roma
http://www.museivaticani.va/content/museivaticani/it/collezioni/catalogo-online.html


4. Museo Archeologico - Atene
https://www.namuseum.gr/en/collections/


5. Prado - Madrid
https://www.museodelprado.es/en/the-collection/art-works


6. Louvre - Parigi
https://www.louvre.fr/en/visites-en-ligne


7. British Museum - Londra
https://www.britishmuseum.org/collection


8. Metropolitan Museum - New York
https://artsandculture.google.com/explore


9. Hermitage - San Pietroburgo
https://bit.ly/3cJHdnj

※編集部注 いま繫がらないようです

10. National Gallery of art - Washington
https://www.nga.gov/index.html


この機会に、マドリッドのプラドは行ったことがあるけど、もう一度見てもいいな。ニューヨークのメトロポリタン美術館は、行ったことがないから見てもいいな。

日本のサイトで知ったのだけど、ポルノ業界もお役に立ってくれるそうだ。「人気ポルノサイトPornhubが新型コロナウイルス流行による全土封鎖中のイタリアで「プレミアムサービス」を無料提供(Gigazine)

https://gigazine.net/news/20200313-pornhub-premium-content-free-italians/


●暗くなれないイタリア

「13日の午後6時、皆楽器持って窓際で演奏しよう。イタリア中がコンサート会場になる!」「13日の午後6時、窓から顔を出して皆で国家を歌おう!イタリア、負けるな!」というメッセージが、12日にイタリア中を駆け巡った。

と、いうわけで…
屋上にスピーカーと機材を運び出して……
https://www.facebook.com/1518977723/posts/10221467427144620/?app=fbl


この映像を撮ったのは、知り合いじゃないけど、友人がまさにこの建物に住んでいて、彼女も国家を歌ったそうだ。オーディオ機器が本格的で、そういうマニアなのかお仕事なのか。

同じ建物で、同じ人が本日、14日はルチアーノ・パヴァロッティの「誰も寝てはならぬ」をガンガン。「VINCERO’(勝つぞ!)」の歌詞が、今の状況にぴったりという訳。

https://www.facebook.com/yuko.nakagawa.12/videos/2792079194206899/


これは私の友人撮影。ローマだけではなく、本当に各地で窓から、バルコニーから歌ったらしい。

https://youmedia.fanpage.it/video/aa/Xmu_vOSw6MIm2cnu


私は窓からじゃないけど、キーボードで演奏した。こういうお祭り好き。祭りはもともと感謝、祈り、慰霊の儀式なのだし、こういう時こそ、「祭り騒ぎ」があっていいのだと思うよ。「私だけが辛いんじゃない」とも思えるしね。

●まだまだ戦いは続く

本日14日。患者数は増加している。累計感染者数が2万人を超えた。

回復した人も増えているけど。二週間、イタリア中でしっかり自宅待機できたら感染者増加が収まっていくのではないかと思う。首相もテレビで「すぐに、一日や二日で結果は出ません。忍耐強くこの二週間を乗り切ってください」と言っていた。

若い人がFBで「こんなふうに閉じ込めるなんて、政府の横暴だ、我々若者は立ち向かおうよ!」と呼びかけ、大人がそれを諌める投稿をしていた。だからこそ、看護婦のマルティーナさんの投稿が大きな意味を持ってくる。

【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】