晴耕雨読[58]バーチャルワールドとVTuberの話
── 福間晴耕 ──

投稿:  著者:



去年の5月に「いまVTuberとVRChatが面白い」というタイトルで、VRのトレンドについて紹介したがその続編。
http://bn.dgcr.com/archives/20190315110100.html

前回は主にVTuber(バーチャルYouTuber)とVRChatについて書いたが、その後どうなったかについて書いてみたい。





VTuber(バーチャルYouTuber)については、あれから数は更に増えついに1万人の大台を超えた。とはいえ、前回の記事では初期のインターネットのように、新規参入者がどんどん入ってきて、次々と新しい出来事が起きている活気に溢れた状況だと書いたが、よくも悪くも、今は一段落した感じがする。

スマホを使って誰でも簡単にキャラを作って、配信できるようになったおかげで、新しくVTuberを始める人は今でもどんどん増えてるし、活躍の場も広がって入るのだが、人が増えた分競争は激しくなった。

今では大手企業のバックアップを受けて売り出しても人気が出ずに、半年も経たないうちに活動を止めるケースも目につくようになってきた。また、ブームに乗って企業がVTuber事務所を立ち上げて参入したものの、ろくにサポートもなくて配信者とトラブルになったり、果ては会社ごと消滅するケースさえ耳にする。

個人でやるにはいくら誰でも簡単に出来るようになったとは言え、やはりちゃんとお金が取れるレベルのことをしようとすれば、手間も時間もそしてお金もかかり、なかなか厳しいのが現状だ。

今後は多くの人が参入できるものの、本当にそれで利益を出して食べていけるのはほんの一握りという状態になっていくのだろう。

だがバーチャルになったおかげで、これまではYoutuberのようなことをしたくても出来なかった多くの人が、参入できるようになった。多くの才能が発掘されただけでなく、バーチャルの利点を生かして場所や時間にとらわれない、新しいイベントの形が生まれつつあるのは面白い。

ちょうどいま、新型コロナウイルスで多くのイベントが中止になっているが、VTuberが参加しているいくつかのイベントは、場所をネット上に変更し、リスナーと直接リアルタイムでやり取りできる、TVやインターネット動画ではできない新しい形の番組が作られつつあるのだ。

もし興味がるなら、是非ともcluster(クラスター)やVARK、SHOWSTAGEといったキーワードで検索してみて欲しい。

そして、もう一つのヘッドセット(パソコンだけでも参加することは可能)をつけて、仮想空間上でチャットや散策ができるオンラインサービスのVRChatの方だが、こちらも一時の爆発的なブームは一段落して、ユーザー数は頭打ち状態になっている。

新規参入者はそこそこ増えているものの、途中で止める人もいてユーザー数自体はそれほど増えていないのだ。とはいえ、去年の爆発的なブームのときはサポートが完全に追いつかない状態だったのに加えて、いわゆる荒らしもユーザー数増加に紛れて増えてしまったせいもあり、よくも悪くも無法状態といって良い状態だったが、一段落したおかげで落ち着いて遊べるようになってきた。

また、VRChatの他にも類似のサービスも多数出てきただけでなく、VTuberのところでも触れたcluster(クラスター)や、ニコニコ動画の3D配信版とも言えるバーチャルキャストなども、VTuberやバーチャルイベントの番組を配信する機能だけでなく、VRChatのような仮想空間で複数のユーザー同士が集まったり、共通の体験が出来るプラットフォームの機能を取り入れ始めたのも面白い。

またVRゲームもガルガンティアやNostosのような、仮想現実大規模多人数オンライン(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)ゲームを目指した多人数協力プレイ機能を取り入れて、単にゲームをするだけでなく仮想空間で複数のユーザー同士が、様々なことができる生活の場になり始めている。

いつかこれらは融合して、ゲームやラノベに出てくるような視覚聴覚のみのVRゲームではなく、マトリックスのように5感すべてで没入できる、大人数参加可能な仮想空間上のプラットフォームになるのだろう。

既にVRChatの上では、多くのフォースと呼ばれるユーザーグループが作られて、毎日のように様々なイベントが行われて、単なるチャットというよりも、一つの共通体験をする場所になり始めている。

その中にはVケットのような、多くの企業も協賛する一大イベントとなっているものや、仮想空間の強みを生かして現実には体験できない様々なワクワクするようなイベントを行っている団体もある。

例えば自分も参加している天文仮想研究所というグループでは、メンバーが作った仮想空間上のプラネタリウムやロケット、人工衛星を使って360度全天を使ったプラネタリウム体験や、目の前に原寸大であるロケットの打ち上げを見ることができるのだ。
・参考:グランドツアー2020 天文仮想研究所 VSP #天文仮想研究所
 https://togetter.com/li/1478912

今は機材の制約や参加できる人数に制限があるものの、これらはいずれ技術が解決するのは間違いない。ラノベや映画で語られていた、現実同様の体験ができる仮想空間へダイブする未来は、もう目の前に来ている。

福間晴耕(Seikoh Fukuma)
CONTACT:
fukuma@kw.netlaputa.ne.jp