装飾山イバラ道[265]ニュートンにもらう希望
── 武田瑛夢 ──

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4月になった。私は隔週で記事を書いているので、以前とはまた状況もだいぶ変わった。

今はある程度の覚悟ができたので、私自身は逆に落ち着いてきている。しかし日本の現実は、厳しさを増している。今はどこへも出かけないで家でできることをしながら、未来に備えるしかない。

私は山中教授とYOSHIKI氏の対談や、日本を心配する海外YouTuberの真剣さに危機感を感じて、警告を受け取ってきた。それぞれまったく異なるジャンルの活動をしている人々だ。本来なら本業での次の活動を、意気揚々と動画で語っていたような人。

デジクリのMidoriさん、TOMOZOさんの記事のように、個人が各国の状況を伝えてくれることにも感謝。





●予想できない今後

今は飲食業界、学校、イベントなどの人と接する仕事が自粛に追い込まれ、休業がいつまで続くかわからない状況だ。私も学校には関わりが長かったので、今の状況は心配している。

どこを見てこれからの方針を決めたらいいのか、悩む人も多いと思う。ただ、人類規模の大変さだということは、共感できる人が多いという側面もある。

同じ状況の人は必ずいるので、ネットや電話で声をかけあって情報を共有してほしい。情報は自分で取りに行かなければダメだ。今は会わないで、情報交換をしながらお互いを気遣ってほしい。

私もいつも購入している海外の作家から最後の作品を送ってもらい、とりあえずはしばらく世界の様子を見ようという話になった。私が海外に直接メールして購入している人は二人で、あとは販売サイトを利用している。インドのショップはほぼクローズになり、アメリカのネット販売も割引額が増えた。

在庫のある店舗に簡単に行けなくなったとか、運良く商品が手元にある人は早く売りさばきたいのかもしれない。

みんな大変な中にいて、それぞれの感じ方も違う。今回のこの状況で、影響を受けないで済む仕事などないような気がする。

生命、人間関係、経済活動、日常、学習、文化、趣味、娯楽と、あらゆるものがピンチにさらされている。しかも全世界的に。

それでも、いま急速に本気で助け合える場を作り始めている人もいるし、離れた場所からそれぞれの思いを伝えて、繋がりあっているのが見える。

ネットの繋がりで情報交換ができるので、コミュニケーション不足には陥らないで済むのが、昔の疫病との違いだ。

●ニュートンの「創造的休暇」

クリエイターが多く読んでいるデジクリで、今起こっていることの少しでも明るい側面を見つけるとしたら、時間の活用法だ。ニュートンの例を読むと、心に希望が差してくる。

ニュートンは三百年前、同じように流行病ペストが流行った時代を生きた。リンゴで有名なあのアイザック・ニュートンだ。

この時期の長期休暇が、後に三代業績と言われる大発見を産んだのは有名だ。

彼が学位を得た頃に、ペストの流行の影響で大学は閉鎖された。故郷へ帰り、すでに着想を得ていたアイデアの思索に没頭することができたのである。微分積分学や光学、万有引力について深く考える時間を得たという。

わずか18か月の間の成果は、この世の見方を一変させてしまった。この1665年~66年の事は「驚異の諸年」や「創造的休暇」と呼ばれている。

ニュートンがわずか25歳までに三大業績を成し遂げることが出来たのも、集中する「時間」を得たことの恩恵なのだ。

それまでの世界の見方は、自然哲学の「観察を通した思考」によって解釈されていた。特に実験道具も持たずに、考えることによってのみこの世を解き明かそうとしていたのである。

それがニュートンによって、一気に数学、物理学の目で世界の仕組みを発見していくことになるのである。

ニュートンは後に「自然哲学の数学的諸原理」の著書によって、物体の運動、世界の体系を書き記している。近代科学における最も重要な著作のひとつとのこと。

ペストがニュートンにもたらしたものは世界を変えた。コロナは誰に何をもたらすのか。

私たちの時代でもニュートンのように、新しい世界への基盤を作る人が出てくるに違いない。今はまだ何も見えていないような、まったく別次元の仕組み。それが何かは、もちろんわからない。

時間は誰にも平等だ。この集中する時間を生かすことに希望を感じている。

自分がしたいことは、変化していく世界をどう使えば実現できるのか、考える時間を生かして、リラックスしながら頑張ろう。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


冷凍ストック用の料理。ひき肉で麻婆豆腐の肉の部分を大量に作った。食べる時に、角切りにして茹でた豆腐と混ぜて煮込めばすぐできる。今回は大豆ミートも混ぜてみた。夫はまるで気づかなかった。ヤッタァ。