[4989] オモシロイ被写体の巻5◇自分の喋りをビデオ収録やってみました

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《一日中ここから海を見ていたい》

■わが逃走[258]
 オモシロイ被写体の巻 その5
 齋藤 浩

■もじもじトーク[127]
 自分の喋りをビデオ収録、やってみました
 関口浩之
 



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■わが逃走[258]
オモシロイ被写体の巻 その5

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20200409110200.html
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新型コロナといえばトヨタ。

中でも、「ジェームズ・ボンドのテーマ」とも、「サンダーボール」とも、微妙に違う音楽にのせて、ロジャー・ムーアが颯爽と運転する7代目コロナのコマーシャルは強烈な印象だった。

当時、私は中学生だったわけだが、素直にカッコイイと思ったものだ。

ところで、コロナとは火の輪っかという意味だそうで、花の輪っかがカローラ、火の輪っかがコロナ、王様の輪っかがクラウンとグレードを表しつつも、イヤミな印象がない。

昭和のトヨタのネーミングセンスは、なかなか秀逸だったと言えよう。

後にカローラとコロナの間の車種が必要になり、名称を検討したところ「冠でよいのでは?」ということで、カムリと名付けられたという話もステキだ。

イイ女になれる基礎化粧品=IONA、と同じくらいイイ話である。

さて前回、前々回、前々々回、前々々々回に引き続き、1月に撮影した尾道の写真を紹介していこうと思ったのだが、予定していた写真をあらためて見てみると、暗い感じのものが多くてどうもいただけない。

まあ当日は曇りだったし、日も傾いてきていたわけだが。

とはいえ、どうせなら明るい気持ちになれるような写真がよいなーと思うに至り、何年か前の快晴の日に撮影した写真を現像し直してみたところ、けっこう楽しかったので、これでいくことにする。

冬だけど夏のような雨上がり
http://bn.dgcr.com/archives/2020/04/09/images/001

アーケード商店街が歯抜けになって久しい。かつて商店だったところが駐車場になっている。

現地到着時は暗雲が立ち込めており、雨もポツリポツリと落ちてきた。尾道ラーメンを食べているうちに本降りになった。

ところが店を出る頃にはすっかり上がっており、ふっと空が見えて、その下の車がシャワーをあびたせいか、どれもピカピカに輝いていた。

率先して駐車場を被写体に選ぶヒトは少ないかもしれないが、『大きな白い雲の下には、瀬戸内海があるよ』的な情報を添えると、こういう写真もけっこう楽しめるんじゃないかなあ。

隙間の向こうに尾道水道
http://bn.dgcr.com/archives/2020/04/09/images/002

ほんとに似たような写真ばかり撮っている。こういった写真が、いずれ人類の役にたつ日が来るのだろうか。

それはそれとして、私はスリットフェチのようだ。チャイナドレスのスリットも嫌いではないが、隙間の向こうにチラっと見える空と海、というのはタマランね。

一日中チャイナドレスのおねいさんのそばにいたい人と同じくらい、一日中ここから海を見ていたい。

立体的なY字路
http://bn.dgcr.com/archives/2020/04/09/images/003

訪れるたびにこの道を通り、訪れるたびにここで写真を撮っている。しかし、訪れるたびに光が異なるのだから、撮らないという選択肢はないのだ。

塀にはさまれた細い道だが、トタン板の隙間から見える海だとか、ちょっと階段を上って振り向くと空だとか、解放と抑圧の対比がタマラナく楽しい路地だと思う。

対比というのは散歩でもデザインでも写真でも大切な要素だ。それが具体的モチーフであれ、概念であれ、「あ、これイイな」と感じるものには、たいてい「対比」が内在しているように思う。

柿とホウキ
http://bn.dgcr.com/archives/2020/04/09/images/004

ヒトサマの庭だったか畑だったか記憶が定かではないが、木の枝にホウキが固定されており、上から落ちてきた柿の実を受け止めている様子にオモシロさを感じてシャッターを切った。

なにかのオマジナイなのか、実用品(柿の実キャッチャー)だったのか。いずれにせよ構造がイイのだ。形状としての構造もそうだが、ストーリーとしてもイイ。

理屈っぽくいえば、「作為(ホウキの固定)によって無作為(柿の実の落下)を可視化している」と言える。

このように言葉にしておくと、仕事の際ヒントとなることが多い。同じ構造をまったく異なる状況にサシカエてビジュアライズしてみると、そのまま商品広告のアイデアとして成立した! なんてことがよくある。

積み重ねられた幾何形態
http://bn.dgcr.com/archives/2020/04/09/images/005

ブロックとビールケースとタイヤである。言われなくても見りゃわかる。そうですね。これはもっと粘って、もっとオモシロイ構図を狙えばよかった! と思っている。

積んだ人は必要だから積んだのであり、色彩の対比だとか視覚的な図形のリズムなんてことは考えていない。

撮影者はそれらを絶妙な構図で切り取り、独自の抽象画を描くことこそ目指すべきだったのだ。こうなったらまた行くしかない。

ブロックとビールケースとタイヤを撮るために、最適な機材を用意して瀬戸内へと向かうのだ。

うわー、いい季節だけになあ。外出するなといわれても行きたくなるね。まだ行かないけど。また行く。きっと行く。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[127]
自分の喋りをビデオ収録、やってみました

関口浩之
http://bn.dgcr.com/archives/20200409110100.html
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こんにちは。フォントおじさんこと、関口浩之です。

前々回の「もじもじトーク」で『自分の喋りをビデオ収録』を書きました。
http://bn.dgcr.com/archives/20200312110000.html

そして、それを実践すべく、3月28日(土)に一人でセミナー動画を収録し、4月1日(水)にFacebookウォッチパーティー形式にて配信されました。たくさんのみなさんに視聴していただき、ありがとうございました。

さて、リモートワークが強く推奨される昨今、パソコン画面を通じて会議したり、お客様にプレゼンテーションをライブで見てもらったりすることが、あたりまえになってきました。

また、あらかじめ録画した動画をインターネット配信したり、社員へ動画配信する機会が増えてきました。

今回、動画録画するにあたり、どんなことに気をつけて準備したのか、実際やってみて気づいたことや、失敗したことなどを書きます。題して「セミナー動画一発撮りに挑戦しました」をお送りします。

動画配信に関して、少しでも、みなさんに何かの役に立ちたいと思い、実際の体験談を書こうと思います。

●ビデオ録画の準備(環境や機材など)

まず、「どこで収録するか」「機材どうするか」「ひとりでやるのか対談形式か」「スタッフは必要か」「スライド制作、進行台本、シナリオ準備」などがあります。

有料セミナーの動画制作であっても、社内向けの動画制作であっても、基本的に準備すること、考慮することは変わりありません。結構、いろいろと考える項目が多いんです。実際にやってみて、そう思いました。

僕は、趣味レベルですがカメラが好きです。また、小さい頃から、天体写真やっていたので、アマチュアでカメラには詳しいほうかもしれません。でも、動画配信は初心者です。

では、実際にやったことを書き出してみましょう。

◎どこで撮影するか

会社の大会議室(10畳ぐらいかな)を使うことにしました。セミナー会場だと広すぎて大変ですし(音量調整がむずかしい)、4人ぐらい会議室だと、カメラと登壇者の距離が短すぎます。10人ぐらいが入る大会議室が、扱いやすかったです。

◎機材どうするか

iPhoneやスマホでも、高解像度の映像は制作できると思います。僕は、以前、程度の良い新中古で入手したキヤノンのビデオカメラと、ショットガンマイクを使用しました。両方とも約1万円でした。

・CANON ビデオカメラ iVIS HF M41

2011年製の古い機種ですが、高性能なCMOSセンサー「HD CMOS PRO」(1/3型)が搭載されていて、動画解像度はフルHD(1920×1080ドット)です。最近、4Kが流行かもしれませんが、フルHDで十分なのです。

また、撮影時に1080iでHDMI出力できること、マニュアルモードで被写体深度や明るさ、シャッタースピードを調整できることが、大事だったりします。

100インチモニターでプレゼンテーション資料を表示しながら、ニュースのアナウンサーのように画面端で顔を一緒に写すと、顔が逆光みたいに暗くなります。LEDライトで顔を照らしつつ、マニュアルモードを活用して、画面が白飛びせず、顔の表情がわかるようにセッティングすることに気を使いました。

それと、シャッタースピードによってスクリーンが波打ったりするので、微妙に調整しました。また、ライブ感を出すために、テロップボードを出したり、活字ネタで電動タイプライターの活字を持ってカメラに少し寄っても、ピントがずれないように絞り調整(被写体深度)しました。

それらを確認するために、1080i対応HDMI出力できるカメラが欲しかったのです。そうすることで、大型の液晶モニターに撮影時の映像が自分にも見えるので、事前セッティングで役立つのです。

そして、ビデオカメラのリモコンも必須アイテムです。録画ボタンON/OFF、ズーム操作も自分でできます。

・指向性マイク DM-100

指向性の高いガンショットマイクだと、ビデオカメラに載せても、10畳ぐらいの部屋だと音声がきれいに拾えます。事前にジングル音声やCM音声、自分の声を、録音ピークインジケータを介しモニターに表示しながら、それぞれの音をバランスよく、割れない程度の高めのレベルで設定します。

映像も大事ですが、それ以上に、クリアで聞きやすい音量で録音することが、聴く人にとって重要であると思いました。

あとは、三脚(SLIK製2本)、バッテリー式LED照明(Suntech PL150)、Bluetooth対応ワイヤレススピーカー(JCV SP-ABT1)、iPhone2台(音楽再生用、シナリオ台本表示用)、HDMI対応30インチモニター(ビデオ映像の返しモニター)です。

モニター以外は趣味の写真撮影で使用している個人持ち物なので、自宅からスーツケースに入れて、会社へ運び込みました。

◎ひとりでやるのか、対談形式か

今回、一人でのセッション登壇でした。対談形式のほうが、ボケ役とツッコミ役みたいに話がキャッチボールできるので緊張しません。しかし、ひとりでしゃべる録画だと、心の準備、つまり、しっかり作り込んだスライドとシナリオ台本が頭に入っていないと、グタグタになります。

◎スタッフは必要か

シナリオ台本があって、スタッフと事前打ち合わせをする時間的余裕があれば、スタッフはいたほうがいいです。録画ボタンON/OFFや、ズームアップやズームダウン、ジングルやCM時の音楽再生などやってもらえます。

実は、一度、3月25日(水)に2名のスタッフに手伝ってもらって、80分のフォント講座の一発撮りをおこないました。日常業務がお互い忙しくて、セッティングは手伝ってもらったのですが、シナリオ台本なし、スライド事前共有なしで、いきなり、本番録画しました。

自宅に帰って再生してみたら、予想通り、進行がボロボロでした。

なので、シナリオ台本の練り直しを行い、頭の中で数回リハーサルを実施した上で、週末に一人で自撮り録画しました。

つまり、ビデオボタンON/OFFやズームアップやズームダウン、ジングルやCM時の音楽再生も、すべて自分で行いました。自己完結できて、自分のペースで80分、がっつり集中して一発録りしました。

◎シナリオ準備、進行台本、スライド制作

機材セッティングが入念にできているならば、セミナー講座形式の録画においては、「シナリオ準備、進行台本、スライド制作」が一番重要だと思います。

そして、何度も、イメージトレーニングして、本番に臨みましょう。

あくまでも、僕の感覚での個人の意見になります。会社の公式コンテンツとして予算があれば、スタジオを利用してプロの撮影スタッフで収録するでしょうし、個人の趣味レベルなのでiPhoneだけで、もっと手軽に収録することもあるでしょう。

今回のケースは、少ない予算(もしくは手持ちの機材を使って新規投資0円)で、できるだけ、クオリティにこだわってみた、というケースにあたリます。

●仕切り直し、そして、開き直り

週末一人で、半日かけて、気兼ねなく、収録し直しをしたことが良い経験になりました。もちろん、「あ~ あそこ、こう説明すればよかった」とか、「あー」とか、「えー」とかが多いとか、反省すべきことだらけです。

でも、自分が伝えたことは、概ね話すことができたし、格好つけるとか上手に見せようとかでなく、自分が楽しいと思っていることを伝えることに専念した80分間でした。いい意味で、開き治りですね。

録画開始後、途中で何度も、「最初から撮り直したい」と思ったけど、集中力が持たないと思って、一度限りのワンテイクで編集作業一切なし、一発録画で収録しました。

フォント講座の動画は下記でご覧になれます。3,000円かかります。でも、豪華セッションが5本視聴できて、全部で7時間ぐらいあるので、ウェブデザインの最新トレンドに興味ある方はお買い得です。4月末まで何度も見ることができ、スライドもダウンロードできます。

◎第40回リクリセミナー【動画配信版】
Webデザイントレンド in 大阪 2020
主催:「Re:Creator's Kansai」(通称:リクリ)
https://recreators.doorkeeper.jp/events/104637

フォント講座の20秒ダイジェスト版は、もちろん無料なので、ぜひ見てね(笑)
https://www.facebook.com/fontplus.jp/videos/644426579744671/

あと、動画収録会場でのドタバタの雰囲気を、こちらの写真お楽しみください。
じゃーん!
https://bit.ly/mojimojitalk127

●今夜、ライブ配信します!

本日、4月9日(木)22時から、ライブ配信の業界ではプロフェッショナルな田口真行さんと、フォントおじさんとで、「動画配信」をテーマにした生放送を無料配信します。

現在の社会情勢において、旬なテーマと言える「動画配信」をメインテーマとして、基本的ないろはの話からマニアックな深い話まで、そして、多分、フォントの話や脱線話が半分ぐらいになるかと思います。

肩の力を抜いて、楽しく、でもマニアックな内容でお送りいたします。お気軽に、遊びに来てください。

◎日刊デジタルクリエイターズ『もじもじトーク』との連動企画!
https://www.facebook.com/TaguchiMasayuki/posts/2674148852714857

Facebook動画なので、Facebookログインしないと、視聴できないかもしれません。ご了承ください。

なお、[☆リマインダーを設定]をオンすると、時間になると、Facebookからお知らせが来るので、興味のある方は、ぜひ、ポチッとしてもらえるとうれしいです。冒頭の10分だけでも参加してもらえてもうれしいですし、途中から参加してもうれしいです。

今、そして、今後、ビジネスでもプライベートでも、コミュニケーション手段が変容していく可能性があります。それが、ライブ配信であり、録画コンテンツだと思います。

YouTuberになって、生計を立てるためにコンテンツを収録したいと思う人や、有名なYouTuberになりたいと思っている、「もじもじトーク」の読者は多くないと思います。でも、情報を正確に、そして楽しく伝えたいという気持ちはあるかと思います。

そんな時、音声や映像を利用したコミュニケーション手段は、効率的であり、アーカイブとして価値が高まります。少ない投資で、楽しくて、エモーショナルなコンテンツを制作するためのヒントを学ぶことは、かなり、おすすめです。

僕は、ライブ配信や動画制作は初心者ですが、今回のトークショーの主催者である田口真行さんは、ライブ配信の分野では日本のトップランナーです。田口さんのプロフィールを勝手に、紹介させてください。

◎田口真行さんのプロフィール

株式会社デスクトップワークス 代表取締役 Webディレクタースクール 主宰 社団法人日本ディレクション協会 副会長 株式会社メンバーズ 技術顧問

1999年、フリーのWebディレクターとして独立後、株式会社デスクトップワークスを設立。企業サイトの企画~設計~制作~運用を手掛ける傍ら、「攻殻機動隊トリビュートアルバム」のアートディレクションや、SKYPerfecTV!のクリエイター向け番組『DesktopTV』のプロデュース、ライブ配信番組『田口真行のWebディレクション講座』やセミナーイベント『エンタミナ』の主催など幅広く活動。

また、2018年、書籍『ディレクション思考』の執筆及び出版や、Webディレクションを学び身につけるオンラインサロン『4LDK』を立ち上げる。2019年、ライブ配信セミナー『現場学校』やWebディレクターの能力を可視化する業界初の試み『ディレクション検定』をスタート。

この方、すごい人なのですが、ど変態です(←とても褒めてます!)こだわりがすごいです。大好きです。楽しい人です。

ということで、本日22時に、また、お会いしましょう(笑) そうでない方、また、2週間後の「もじもじトーク」でお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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Twitter @HiroGateJP
https://mobile.twitter.com/hirogatejp

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/

Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/


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編集後記(04/09)

●偏屈BOOK案内:稲盛和夫「心。」

「心。」漢字一文字に句点という、シンプル過ぎるタイトル。副題もない。表紙では「。」の上に「人生を意のままにする力」と11文字が配置されているがこれは表紙デザイン上の処理であり副題ではない。稲盛氏の著作は「生き方」「働き方」「考え方」などもあるが、おそらく偏屈老人には無用の書だろう。

少年期から社会に出るまでの彼の人生は、挫折と苦悩、失意の連続だった。そんな人生の流れが大きく変わったのは、大学を卒業し京都にある碍子メーカーに就職してからだ。不況時の就職難でようやく入れた会社は、銀行管理下のボロ会社、同期は次々と辞め、とうとう彼だけになる。どんな環境であれ、できる限りの仕事をしようと腹を据え、泊まり込みも度々、研究開発に没頭した。

やがて成果が出始め、周囲からの評価も高まり、ますますやり甲斐を感じて研究に邁進、当時世界的に見ても先駆的な独自のファインセラミックの合成に成功する。能力向上や環境改善があったわけではない。「ただ考えを改め、心のありようを変えただけで、自分をとりまく状況が一変した」というのだ。

「人生とは心が紡ぎ出すものであり、目の前に起こってくるあらゆる出来事はすべて、自らの心が呼び寄せたものである……少年のころつかんだその法則を、このときあらためて実感し、人生を貫く“真理”として心に深く刻みつけることとなったのです」。以来、彼の人生は常に「心」について探求を重ね、自らの内側に目を向けて、正しい心のありようを問い続ける日々であったという。

「なかでも人がもちうる、もっとも崇高で美しい心──それは、他者を思いやるやさしい心、ときには自らを犠牲にしても他のために尽くそうと願う心です。そんな心のありようを、仏教の言葉で『利他』といいます」「たしかに利他に基づいた『善なる動機』から発していると確信できたことは、かならずやよい結果へと導くことができたのです」。第二電電の設立、日本航空の再建が好例。

「心を高めること、そして『利他の心』で生きること、この二つは一体かつ不可分で、他のために尽くすことによってこそ心は研磨され、また美しい心をもつからこそ、世のため人のために働くことができるのです」「すべては“心”に始まり、“心”に終わる─それこそが、私が歩んできた八十余年の人生で体得してきた至上の知恵であり、よりよく生きるための究極の極意でもあります」

「奇跡」と言えるのは、彼が仕事で海外に赴くと、着く寸前まで荒天だったのが一転して雲一つない青空になる。滞在中は好天に恵まれ、彼が空港から飛行機に乗り込んでその地を発つと、とたんに暗雲がたちこめ雪が降り出す。この類いのことが度々。同行者はよく経験するという。このエピソードを読んで分かった。彼と会ったことのある人は、この本に書かれたことを理解できる。

彼と会ったことのない人は、この本に書かれたことをよく理解できない。正直、何言ってるんだ、とわたしは思っていたが、自転車で走行中に突然閃いた。筆者は悟りにいたった人なのだ。まっさらな心の、物事の真実の姿が見える人なのだ。だが、紙に印刷したものには、その力が宿らないのではないのか。理解力のないわたしがひねり出した「稲盛和夫聖者説」いかがでしょう?(柴田)

稲盛和夫「心。」2019 サンマーク出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763132431/dgcrcom-22/


●トヨタの車種名のこと、初めて知りました。素敵。/田口さんのセミナー大好き!

/国や自治体の告知について。大阪では入学式が中止になったんだけど、告知が前日だったせいもあって、知らずに登校しちゃう家族がいた。大多数の人は告知に気づいているし、学校から電話が来た人もいるらしい。

今って新型コロナ情報のチェックしてるよね? 動向が気になるよね。海外も地元も。

以前、北海道旅行をしたグループが、北海道知事の緊急事態宣言を知らなかったとコメントしていて、テレビやネットニュースを見ない人がいるのではと気になった。

三連休の外出自粛要請を知らず、トイレットペーパーのデマすら知らず、今回の緊急事態宣言も知らない人がいるのかもと、ふと思った。エリアメールで緊急事態宣言を流すべきなのかも。(hammer.mule)