腕時計百科事典[95]腕時計の消毒
── 吉田貴之 ──

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毎年秋から春にかけて、ウイルスや細菌による病気の流行が伝えられます。常にマスクをつけて、手洗いやうがいをこまめに行なったとしても、罹るときは罹るものだ、と半ばあきらめてしまっている人も多いでしょう。これが全国的な、あるいは世界的な流行ともなればなおさらです。人体で一番汚いとされる手に近いところに身につけるにもかかわらず、案外見落としがちな「腕時計の消毒」について考察しました。





◎ウイルスのいる場所と感染方法

考察の前提として、一般的なウイルスについての知識をまとめておきましょう。ウイルスはいろいろな場所に潜んでおり、ウイルスが付着したモノへの接触や感染者が飛ばす飛沫、飛沫が乾燥した際に放出される核を含んだ空気などから感染する可能性があります。

ウイルスのいない場所はない、といっても過言ではありません。ただ、多くの場合、目の前で感染者がくしゃみをするような直接的なケース以外では、モノに手で触れたりするだけで感染するケースは少なく、その手で鼻や目の粘膜を触ったりして感染するようです。

◎ウイルスの生存時間

ウイルスは本来、宿主となる生物の中でしか生息できませんが、モノの上や空気中でもある程度生存することが可能です。モノの上での生存率は素材によって異なります。

ウイルスの種類によってことなりますが、紙の上では数時間、木材や布の上では数日感、ステンレスやプラスチック、ガラスではさらに長く生存します。表面がツルツルなものは長く、表面がザラザラしている、あるいは細かい穴が多いものは比較的短い、と考えてもよさそうです。

◎腕時計にウイルスは付着しているか

さて、腕時計を構成する素材は、ステンレス、金、チタン、セラミックス、ガラス、プラスチック、ラバー、宝石、革、布などです。ほとんどが「ツルツルした素材」であることがわかります。チタンなど一部ウイルスが生存しにくい素材もありますが、基本的には「ウイルスが生存しやすいモノ」であることがわかりました。

◎腕時計を洗う?

外出から戻った際、念入りに手を洗うひとは多いですが、腕時計も一緒に洗う、というような人は少ないでしょう。古い機械式時計などはできる限り水を避けたいですし、現行品の腕時計もG-SHOCKなどの防水タイプの時計でもない限り、石鹸をつけて洗う、というのは抵抗感があります。

◎腕時計を消毒する?

だからといって、アルコールや塩化ベンザルコニウムで消毒するのは難しそうです。モノによっては変質や変色、剥がれなどの可能性がありますし、一部のガラスはアルコールと反応してひび割れてしまう場合もあります。せいぜい、ステンレス部分をアルコールで拭うくらいでしょうか。

◎放置する

では、「今日はちょっと怪しいかも」と思ったときには、どうしたらよいのでしょうか。正解は「そのまま放置する」です。室内にウイルスが放出されたら意味がないので、できればケースや箱に入れて、一週間以上放置しましょう。ウイルスの種類や条件によっては一週間でも十分な時間ではない場合もありますので、複数本の腕時計を使い回すか、ウイルス性の病気が流行する時期には腕時計をつけない、というのも選択肢に入れましょう。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。