[4999] コロナ禍の今、自宅で毎日の過ごし方

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《自宅待機3題・日本とイタリア》

■わが逃走[259]
 家の中でじっとしていてもツマランので、脳内で散歩するの巻 その1
 齋藤 浩

■もじもじトーク[128]
 ウェブ会議が当たり前の時代、背景画像にこだわる
 関口浩之

■ローマでMANGA[158]
 ローマでコロナ その6 くたびれる毎日日曜日状態
 Midori
 



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■わが逃走[259]
家の中でじっとしていてもツマランので、脳内で散歩するの巻 その1

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20200423110300.html

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いつも散歩のことばかり書いてるけど、外出自粛要請が出ちゃったから、これからしばらくの間、散歩は脳内ですることとしたい。

脳内で散歩というのは、わざわざ着替えて靴を履く必要もないので、とてもラクなのである。この楽しさは、たとえば実車のレストアを想像しつつバイクの模型を作ったり、実在しない風景の絵を描くのに似ている。

今回は、12年前の今頃の写真を引っ張り出して、そのときの様子を思い出して書こうかと思ったのだが、覚えているようでほぼ忘れていたことが判明。おかげで新鮮な気持ちで脳内散歩を楽しめたのである。

機材はリコーのCaplio GX100。このカメラは名機GRの意匠を踏襲し、黒のアルミニウム合金+レザー調の外装を採用。見ただけで物欲が刺激された。

当時はまだほとんどのデジカメが、メタリックカラーのプラスチックボディだったので、GX100はデジタルにおける高級コンパクトカメラとして、ゲームチェンジャー的存在だったと思う。性能もそこそこ良かった。

一般的な一眼レフにみられる機能はほぼ搭載し、1/1.7型1000万画素CCDセンサーも、当時としては小さいという印象もなかった。アスペクト比が変えられ、外付けEVF(電子ビューファインダー)が用意されていたのも評価ポイントだ。

EVFを装着すると、まるで屋上に物置を増築したかのようなスタイルになってしまうのだが、ファインダーをのぞきながら撮影できるだけでも安心できた。

当時コンパクトデジカメといえば、両手で保持し裏側の液晶モニタを見ながら、腕をぐいーんと前に突き出すポーズで撮影するものと相場は決まっていたのだ。これでは手ブレしやすいし、通行人のじゃまになるし、かっこわるいし、撮ってる感じがしない。

EVFによりそれが解消されただけでも、撮影してるぜ感が増し、イイ写真が撮れるような気になったものだ。ズームレンズの歪みやノイズのざらつきは多少気になったが、それでもけっこう楽しめた。アダプターを介してホルガの魚眼を装着するなど、工夫次第で遊びかたの幅も広がった。

唯一好きになれなかったのは「キャプリオ」というブランド名だ。安っぽいというか、恥ずかしいというか。ソニーはサイバーショット、ニコンはクールピクスと、どのメーカーも20世紀における21世紀っぽい名前をつけていたが、とくに群をぬいてかっこ悪いと思ったのが「キャプリオ」だ。この名前がイヤで購入を躊躇したことを、今思い出した。

購入決意のきっかけは、このカメラのムック本が出版され付録に「Caplio」ロゴを覆い隠すことができる「RICOHFLEX」シールがついていたことだ。これを貼ればかっこわるくない! むしろEVFをウエストレベルで使うにおいてシャレがきいてイイじゃん!

ちなみに、同じように思う顧客が多かったらしく、後継機GX200からは「キャプリオ」の銘が消えたんだった! 商品開発とは、このようにして進んでいくのだなあ。

◎正方形の構図

さて12年前の4月某日、都内のどこかへ来た。おそらくは、早稲田周辺ではなかろうか。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/04/23/images/001

GX100のアスペクト比を1:1に固定しEVFを装着、ウエストレベルでRICOHFLEXごっこをしていたようだ。どうやらこの日の私は都電に乗ってぶらぶらしていたらしい。良い天気の自転車置き場に落ちる影の中に、ビビッドな青い長方形を見つけたことをオモシロがっている。

めずらしく花を撮っている。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/04/23/images/002

しかし、これは壁とジョウロを撮ったら、たまたま花が写り込んだというのが正解だろう。私は花が嫌いではないが、ひねくれ者ゆえ「花はきれいなものだ」という既成概念が気に入らない。

このときもそういった根性が出たのは間違いないといえよう。ポッカのロゴが目立ちすぎると思わなくもないが、トリミングするとレンズの歪みの影響で逆に不自然になるので当時のままとする。

シャッターと青空。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/04/23/images/003

ミニマルなオモシロさを発見して撮影したっぽい。無彩色の水平の流れと青の色面との境界を、斜めの線で区切ることで正方形の構図の中にリズムを見つけたのだろう。

他人の写真をエラそうに講評しているような文章である。しかし、撮った本人が忘れているんだから似たようなもんだ。手前の黄色が青の補色関係にあり、面積比も効いていると思う。

スリリングな階段。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/04/23/images/004

いまにも落ちそうでコワイ。サビの進行もいい具合だし、階段につながる建物の扉に高電圧注意のマークがあることも、コワさを引き立てていると思う。よく見ると画面全体がほぼ直線のみで構成されている! それを意識して撮ったのか否かは、もはや知る由もなし。

家具
https://bn.dgcr.com/archives/2020/04/23/images/005

家具屋さんだったんだろうねえ。はたしてこの建築は現存してるのかしら。かなり年季が入ってるから、戦前の物件かなあ。いずれにせよ、なかなかのモダニズム物件。

王子あたりの桜
https://bn.dgcr.com/archives/2020/04/23/images/006

前後の写真を見ると、都電で飛鳥山公園のあたりまで行った形跡がある。ちょうど桜が満開だったようだ。それにしても、みんながカメラを上に向けているときに、わざわざ下に向けている撮影者は相当なひねくれ者のようだ。オレのことだが。

正方形の構図というのは、とても面白いがとても難しい。若かりし頃、広告写真撮影の際、正方形写真といえばブローニー判カメラの6×6のことだった。

私の経験では、タテにもヨコにもトリミングできるという意味が半分以上あったので、正方形のまま完結するなんてことは、レコジャケ以外あまり聞いたことがなかった。

そうそう、レコジャケ! 正方形写真の構成に最も参考になるのはコレなのではなかろうか。1:1の矩形をいかにオモシロく、飽きさせず、楽しくフレーミングする! の集大成だ。

とくにデジタル化前のものは、デザイナーの気合いレベルが違う。隙のない画面設計を研究するという名目で、連休はアナログ盤に針を落としつつレコジャケ鑑賞会なんて優雅じゃないか。あ、その前にプレーヤーを手に入れねば。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[128]
ウェブ会議が当たり前の時代、背景画像にこだわる

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20200423110200.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

テレワークを開始して3週間が経過しました。IT企業に勤務していることもあり、今月に入ってから会社に一度も足を運んでないのですが、特に困ることはありません。今までと変わらず、忙しいです(笑)

僕は、1995年10月に、今の会社に転職したのですが、当時からメール環境は整ってました。パソコン内蔵モデムから電話コードでモジュラージャックに接続すれば、自宅からでも、出張先からでもインターネット接続し、いつでもメールで連絡することができました。

20年以上前から、メールだけでなく、稟議や各種申請ワークフローが、Lotus notes等で電子承認できる文化がある会社だったので、いつでも、テレワークできる環境だったのです。

IT環境がとても恵まれている会社だと思います。なお、この20年間、テレワークにおけるセキュリティやコンプライアンスの考え方は、改善を繰り返してきました。

3週間前までは、基本的に、会社に毎日通勤していましたが、僕の仕事においては、テレワークに変わって、業務効率は大幅に改善したと思います。往復で2時間の通勤時間が無くなったのが大きいです。

●ウェブ会議があたり前の時代に

テレワークでは仕事が成り立たないケースも多いと思います。僕が、現在、関わっている仕事においては、幸いなことに、ビデオ会議を活用して、社内のコミュニケーション、お客様とのコミュニケーション、不特定多数の方への情報発信(セミナー配信など)が、日々の生活の中で、当たり前な風景になりつつあります。

メールやチャットでコミュニケーションすることは、直近25年の中で、当たり前になってましたが、テレビ会議は、それほど、当たり前になってなかった気がします。

例えば、東京拠点と大阪拠点で、双方、複数メンバーで会議する際、音声で会議することはよくありました。双方、パソコンで資料を見ながら、iPhoneを双方でオンフック会話すると、結構、クリアに声が聞こえます。

ここ数年、SkypeやMicrosoft Teams、Zoomを使って、ウェブ会議することが増えてきました。うちの会社や、僕の周りでは、新型コロナの感染が広がる前から、お互い顔を出したり、資料を共有しながら、会議することは、週に数回ありました。

ところが、このところの新型コロナの関係で、テレワークが要請されるようになると、すごい速度で、ウェブ会議の活用が進んでいます。

今月に入ると、一日に2〜3回、ウェブ会議することは普通でして、昨日と今日は、一日の大半をウェブ会議(テレビ会議と言ったほうがわかりやすいかもです)に参加しています。

このウェブ会議、お互いが会社の会議室で開催されている時は、違和感がなかったのですが、テレワーク環境で接続するようになると、ちょっと違和感を覚えました。

それが何かと言うとこれです。ジャーン!
https://bit.ly/3eGBdwr


そうです。自宅の部屋の様子が画面に映ってしまうのです。そして服装も映るのです。おまけに顔も映りますし。ビデオマークのボタンをOFFにしたままなら、自分の様子が相手に映らないですが、ウェブ会議で顔を出さないのは感情が伝わらないので、僕は基本的にONのままです。

この背景のままで、先日、Facebook生放送に出演したら、「関口さん、背景のグッズを説明して欲しい~」との意見を、たくさんの方からいただきました。とうことで解説しますね!
https://bit.ly/3cGq9hg


ウェブ会議の背景の件で、最近、面白い記事を見つけましたので紹介します。

【爆笑】テレビ会議後に画面を切り忘れた男性が面白すぎることになっていたと話題に!
https://news.nicovideo.jp/watch/nw6971515


僕はパンツ一枚でウェブ会議には参加しませんが、上半身は、ビジネスカジュアルなボタンダウンシャツ、下半身はスエットズボンで参加することが何度かありました。でも、この動画を見てからは、ちゃんとしたスボンを履いてウェブ会議に参加するようになりました。

参考までに、無料ウェブ会議の比較表を見つけたので紹介します。

Zoomだけじゃない。無料で使えるビデオ会議アプリ徹底比較Teams、LINEのメリット・デメリットとは
https://www.businessinsider.jp/post-210635


●ウェブ会議の背景画像を変更しよう

僕は、フォントおじさんとして社内にも社外にも、かなり広く知られているので、ウェブ会議の背景に、タイプライターや文字グッズが飾られていても違和感はありません。そういうキャラクターだし(笑)

でも、お客様とのウェブ会議では、そこまでプライベートを晒したくないので、背景画像を変更してウェブ会議に参加するようにしています。

今日、Facebookを開いたら、SBテクノロジー関連会社のフォントワークスが、「TeamsのWeb会議で背景画像を簡単に作る方法」というブログが公開されていたので共有します。

TeamsのWeb会議で背景画像を簡単に作る方法
https://fontworks.co.jp/column/8190/


ねっ、面白いでしょ! 「ラグランパンチ」という書体で自分の名前を書くのが、僕のおすすめです。ちょうど、猿渡智明さんが、そんな背景画像を使っています。

あっ、原田愛社長が、「パルレトロン」というゴスロリ感のある素敵な書体で背景画像を作ってますね。このフォントも好きです。

きれいな風景写真を背景に使用するケースが多く見かけますが、僕は、「書体は名を映し出す」「フォントは声である」と思っているので、今回のフォントワークスのブログを参考にして、自分らしい書体をぜひ、発掘してみて下さい。

伝統的な書体から、ポップな書体まで選べます。ぜひ、背景画像作成に挑戦してみてください。

では、二週間後(?)に、また、お会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

Facebook
https://www.facebook.com/hiroyuki.sekiguchi.8/

Twitter @HiroGateJP
https://mobile.twitter.com/hirogatejp


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。


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■ローマでMANGA[158]
ローマでコロナ その6
くたびれる毎日日曜日状態

Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20200423110100.html

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●イタリアの現状……

コンテ首相の警護に当たっていた警察官(52歳)が新コロナウイルスで死亡。国会では安全距離を保っていたといい、感染経路は不明。なお、コンテ首相はテストの結果、陰性。ひたひたと何処へでも忍び込むウイルスが怖い。
https://www.agi.it/cronaca/news/2020-04-04/coronavirus-agente-scorta-conte-8182805/


話はずれるが、この時期ほどイタリアの首相がこうも頻繁に、国民に向けてテレビ画面に現れることはなかったのではないか。コンテ首相は1964年生まれの56歳。2018年に首相に就任した時には政治家出身ではなかったこともあって、威厳が足らない感じを受けていた。

今回、イタリアの緊急時でしっかりした意思を持って呼びかける姿は、頼り甲斐のある雰囲気が身につき、甘いマスクも手伝ってイタリア女性のファンを増やしているらしい。

ジュゼッペ・コンテ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュゼッペ・コンテ


日夜、新型コロナウイルスと前線で戦う医療関係者たち。疲労困憊だろうけど、回復して退院する人に拍手と花贈呈、「ここの滞在どうでした? 食事は美味しかった?」なんてインタビューまがいをしたり……


ローマの子供専門病院で看護師と医師の当番交代時に、出る3人と入る3人が踊りながら入れ替わったり……ほんと、頭が下がります。


ベランダでのフラッシュモブで「一分間、医療関係者に拍手を捧げよう」というのがあったりで、国民も感謝している。

かと思うと、一方で休憩時間に何かお腹に入れるものを買おうと、病院近くのスーパーへ行って事情を話して、並ばずに入れてもらおうとしたら(一時間も並んでいる時間がない)並んでいた人が口々に文句を言ったとか、自分に害が及ばない範囲で、医療関係者を尊敬してるということになるのかな。

テレビでは、番組途中のコマーシャル前後に政府広報で、自宅待機を頑張って続けてウイルスに勝ちましょう! とか、手を洗うなどの予防策を知らせることを毎日何度も放映している。

画像や動画もネットで色々出ていて、当然紹介しきれないけど、それぞれ一点
づつ。

かのグレタ嬢。画像は上下に分かれ、上は地球の画像で「コロナウイルス。環境汚染が減り、地球が息を吹き返した。」のキャプション。下の画像はグレタ嬢の顔で、研究者の白衣を着た画像のキャプション「やった! クソどもめ」
https://photos.app.goo.gl/QkuNf8Ec2MT8ZT4e8


こちらは可愛くも、自宅謹慎が新コロナに有効な事が一発で理解できる動画。
https://photos.app.goo.gl/UCP9qsMg7VgiNzAQ7


●「復活祭は外で」という習慣も……

4月12日は復活祭だった。キリスト教的には、クリスマスよりむしろ復活祭の方が重要なようだ。人類の咎を背負って無実のまま処刑され、三日後に復活したという、神の子の神の子たる所業なのだ。

その前の3月27日、四旬節と呼ばれる儀式が例年通り、サン・ピエトロ寺院で行われた。例年通り、というのはカレンダー通りという意味で、状況はおそらくカトリック教会の歴史でも初めてではないだろうか。誰もいないサン・ピエトロ広場で、フランシスコ法王が一人でパンデミック終息を祈った。

https://www.ilfattoquotidiano.it/2020/03/27/coronavirus-papa-francesco-prega-in-una-san-pietro-deserta-e-invoca-la-fine-della-pandemia-fitte-tenebre-addensate-nelle-nostre-vite/5751574/


シトシトと降る雨の中、法王一人で暗い広場に立つ姿は印象的だった。その時に、バチカン秘宝の、1522年のペストを治めたと言われる木製の十字架を置いての祈りだった。ただ、その木像が雨に濡れて、崩壊の危機が危惧されている。

復活祭の翌月曜は小復活祭でこれも休日。平素なら、復活祭かその翌日は外でレストランかピクニックで食事するのが普通の過ごし方だ。ただし、例年、どちらか天気が崩れる確率が高い。自宅待機の今年、二日とも晴れた。なんの嫌味だ。

晴れた二日、「復活祭は外で」という習慣をどーーーーーーーしても外せない人がいるらしく、海に近い我が家のそばを通る国道が、警察のコントロールもあって渋滞したことをニュースで知った。復活祭と小復活祭の二日で、イタリア中で3万件の罰金が発生したとのこと。
http://www.askanews.it/cronaca/2020/04/14/coronavirus-tra-pasqua-e-pasquetta-30mila-multe-e-236-denunce-top10_20200414_152239/


●自宅待機で四六時中家族と過ごす時に起こること

一般的な事情ではなく、私個人の場合を書いていく。家の広さ、家族の人数、構成要素(子供の有無、いるならその年齢)、家族の性格、経済的不安の有無でかなり様相が違ってくると思う。

それでもまことに私的な事情の中から、もしも日本で自宅待機要請が出た時に、あなたにも起こり得るかも知れないことを書いてみる。
※このテキストは

美容院も床屋も閉まっている。それにはお構いなく髪は伸びる。特に短髪の男性軍は困る。電気バリカンとハサミを使って旦那と息子の髪を切る。何年かぶりに「母の散髪屋」の開店だ。

息子が小さい頃は郊外住まいだったため、いちいち車を使わないとどこにも行けないので、私が散髪していた。特にそういう訓練をしたことがあるわけではないけれど、見よう見まねで、美容師のように左手の人差し指と中指で髪を一列に挟んで出た部分をハサミで切ってなんとか形にした。

何年かぶりでまた息子の頭を触ってると、なんと言ったらいいのかな、成長したあとはそうそう息子の体を触る機会はないわけで、小さかった頃の感覚が蘇る。オムツを取り替えたり、沐浴させたり、母乳をあげたりで体の接触が濃厚だった。

サン=テグジュペリの「星の王子さま」で、キツネが王子様に言った「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のためにひまつぶししたからだよ」を思い出す。

私は在宅ワークだったので、息子を相手に「ひまつぶし」をした。ちょっとワクワク、ニヤニヤ嬉しい時間をこの自宅待機はくれた。無事につつがなく育ってくれたことも、つくづくありがたい。

夫婦共稼ぎで、日中は子供をおじいちゃん、おばあちゃんかベビーシッターに預けてる夫婦が、今までになかったほどに子供と向き合って濃厚に過ごして、とても大切な時間を過ごしていると、ソーシャルネットワークに書いてる人がいた。ストレスにもなるだろうけど、色々関係を見直す機会になっている。いやおうなくだけど。

しかし、だ。家族全員自宅待機が始まって10日ほどして、イライラしてきていることに気づいた。家族への返事がつっけんどんで、気がつくと無意識に「なんで私が」とか、「うるさいな」とか、ブツブツ不平で頭を一杯にしている。三年ほど前に同じ種類のイライラを経験していたので、原因はすぐにわかった。

炊事だ。家事炊事をとりあえずやっているけど、料理が特別好きなわけではない。掃除や整頓も苦手。好きでもなく、苦手だけど、義務感でやっている。自宅待機がない時は、週に二度学校へ行って、お昼は同僚と外で食べる。つまり、週に二回は炊事をしないでいられる。

また、旦那は友達が多く、週末はしょっちゅう誰かの家に集まって夕食を一緒にする。外食だったり誰かの家だったり。あるいは、ピッツァを買ってきて食べたりする。

それが一切ないので、昼夜、毎日食事の支度と後片付けをすることになる。夕食の後、旦那と息子がソファにくつろいで、テレビを見たりスマホを見たりしてるのを横目に台所の片付けをする時が一番イライラがつのる。

「コロナ・バカンス」の機会に作品を仕上げちゃお、と思っていたのに、なかなかその時間が取れやしない、という不満が一番大きいかな。

ただイライラしているのはよくない、と治療をした。一度、「本日の夕食は、冷凍ピッツァを温めるだけ、お皿もコップもプラスチックを使用して洗わない。キッチンも洗わなくていいように使わない。なんとなれば、義務でしている炊事でイライラしてきているから」と宣言してその通りにした。

そうしたら、旦那がトマトとモッツァレッラを切って、アンチョビーをのせたおかずを作ってくれた。その後、時々何かを作ってくれる。食卓にお皿などを運んだりし、片付けは息子も毎回手伝ってくれてはいる。

つまり、言いたいのは、普段以上に顔を合わせると細かいことに目が行ったり、私のように不得手だけど義務でしているような作業が増えることになって、イライラしてくる。それを膨れるに任せるのではなくて、話し合えるような家族にしていくことが大事。そして細かいことは気にしない。

例えば、私は季節の野菜を食べるのが良いと思っているが、旦那はトマトが好きで、今のように季節ではないのに買ってくる。そういうことにイラついて、責めても仕方ないということ。誰もコロナウイルスに感染せずにいる事実に目を向けた方がいい。

小さい子供がいる家庭では、夫婦の協力が絶対必要だろうな。ただでさえ小さい子がいるお母さんは、自分の時間がない、自分のリズムで事を進められない。幼稚園や学校がある時は少々自分が計画を立てられるけど、全員自宅待機だと毎日日曜日状態。それが何日続くかわからないと、思っただけでくたびれる。

家族全員、互いにそれぞれを尊重する、理解する態度が必要な期間なのだ。

【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】 midoriyamane@gmail.com


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編集後記(04/23)

※業務連絡(本気)5000号コメントは本日正午が厳格な締切です!

●コロナ退散を祈願しようと東京大仏に行ったら、コロナに負けて扉が閉まっていた。好天なのに、荒川土手や河川敷に人はそれほど多くいない。なんか元気ないような。東北大震災のあとの憂鬱な日々を思い出す。ところで、どうして「まぐまぐニュース」は、安倍首相叩きに突っ走るのか? 異常なくらい。デジクリもメルマガサービスの利用者だが、敢えて言わせてもらう。(柴田)


●大阪府知事の吉村さんの顔は毎日見ているような気がする。他府県の知事の顔も見るようになった。

/大阪市広報のミルクボーイによる感染症拡大防止の手洗い動画を見た。オカンテンプレート最強やわ。ミルクボーイは大阪市天王寺区の住みます芸人。そのうち東京行っちゃうのかな。

/大阪府フードデリバリー利用促進キャンペーン。外出自粛と飲食店応援のためのもので、500円分のキャッシュバックやポイント・クーポンがもらえる。半分の250円は大阪府負担。

出前と縁のない生活をしている。徒歩圏内に複数のコンビニやスーパー、商業施設やファストフード、飲食店がある。デリバリーピザだって近いから取りに行ったりする。

ある日、キャンペーンきっかけで出前を取ってみた。ごめん大阪、250円使っちゃったわ。

商品とともに、漫画の試し読み小冊子が入っていた。本屋さんで吊り下げられてある、一話だけ読める冊子。

添えられている紙には「講談社様より 外出自粛中のお客様へのプレゼント」と書かれてあった。さすが。他の企業も通販チラシやら何やら、この機会に配ってもらえばいいのに〜。(hammer.mule)

ミルクボーイによる感染症拡大防止の手洗い動画(2分バージョン)

全部で4種類あるよ

住みます芸人 ミルクボーイ
https://osaka24web.jp/tennoji/


キャンペーン
http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyochosei/deli-jigyosya/

デリマは注文時値引き

画像。「転生したらスライムだった件」の小冊子

気になってた漫画なので嬉しい。

転生したらスライムだった件
https://www.ten-sura.com/