ローマでMANGA[159]ローマでコロナ その8 七週間の自粛生活を経て5月4日から段階的に緩和
── Midori ──

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●さぁ、5月だ!

5月1日はメーデー。なんだかんだ言って左的なイタリアでは国の祝日で、普段だとピクニックの日なんだけど、当然それぞれ自宅で過ごした。

(モレスキンの手帳を使っているのだけど、ほぼ世界中の祝日が書いてある。メーデーが祝日の国は40か国以上。正月の次に多い、というのをこの記事を書きながらちょっと見てみて驚いたところ)

そして、例年だと、ローマのサン・ジョバンニ・ラテラノ教会という、ローマの四大教会、かつバチカンの持ち物で、聖ピエトロと聖パオロの遺物があるという重要性を持ち、バチカン市国ができるまでは法王の住居であったカトリックにとって重要な重要な教会前の広場で、コンサートが行われる。

そんな重要な教会の前で左っぽいコンサートって、どういう冗談だと思うのだけど。何しろ主催はイタリアの三大労働組合だ。そもそもカトリックは共産党を認めていないし、どちらかというと敵対する思想だ。それだけ「左っぽい」ことが普通になっているっていうことなんだろう)。

それはRAI(イタリア国営テレビ)三局、かつラジオ一局で全国ネット、いや「ユーロビジョン」でユーロッパ中に放映されるのだ。NHKの紅白並みの重要な(「重要」が多いな)かつ楽しみにしてる人が多いコンサートなのだ。紅白並みに出場するミュージシャン、歌手の数が多く、ヒットを飛ばした歌手や巨匠達が登場する。

でも、今年はコンサートは無し。正しく言うと、広場でのコンサートは無し。午後8時から、ローマのスタジオで司会者が幕を開け、参加者はネットで繋がってインタビューに答えたり、ローマのスタジオに来れる人はスタジオで歌い、ミュージシャンはそれぞれの家で歌ったり、野外、住まいの屋上で録画を送ってきたり、ライブで歌ったりした。

https://www.repubblica.it/spettacoli/musica/2020/05/01/news/concertone_primo_maggio_senza_la_piazza-255397931/

もちろん、みんな頑張ろうね! のメッセージが多かった。





●自粛緩和前夜

七週間の自粛生活を経て、5月4日から段階的に緩和していく。感染者数が少ない南イタリアのカラブリア州は、州知事が「うちは全面解禁にする」と宣言して騒ぎになり、コンテ首相が大急ぎで「緩和に関する首相令は全国だ。勝手な緩和は許さない」と宣言した。

はっきりしっかり宣言するコンテ首相の姿に、ファンになる女性が多い、と前回書いたけど、弁護士の資格を持つコンテ首相は、弁護士だけに「すべての状況を網羅できる表現」を目指すせいか、表現が曖昧になる。

法律が分かりにくいのはまさにそのせいだものね。その曖昧さに、七週間の謹慎を経てくたびれてきている国民からのブーイングが、ネットで盛んに飛び交うようになった。

コンテ首相の顔が疲れてきているように見える。こんな状況での行政は、想像が及ばないほどに大変だろうね。何をやっても文句を言う層があるし、国民の健康を守ることと経済を守ることは、まったく真逆のことをしなくてはならないのだから。安倍首相もだいぶお疲れの様子が見受けられる。どちらにも頑張ってください、としかいえないけど。

6月1日から美容院も営業が再開できる(今のところ)。かかりつけの美容師からメッセージが来た。6月に再開の予定だけど、客は一度に一人しか店に迎えられないだろうから、メッシュやヘアダイの時間がかかる予約からやっていきます。どうぞ、忍耐強く順番を待ってください! とのこと。

これは、容易に想像できたので、カットだけの私は「ちゃんと待ってるよ」と上記のメッセージを受け取る前に彼女に送信していた。

この美容師は一人でやっているので、すべて予約制。常連さんがいるわけで、二か月休業を余儀なくされた上、常連さんを失くすことは避けたいわけで、日本で普及しているLINEと同じ機能をもち、欧州で普及しているWhatsAppを利用して、メッセージを顧客に送って繋がりを保つことに努めていた。

みんな頑張ってる? だの、祝日にはおめでとうメッセージ、首相令が出たときにその対応(残念ながらまだ開けられない、とか)を送り続けた。彼女の営業努力で常連さんが去ってしまっていないことを祈る。

常連さんには小さな店舗を経営してる人が多いので、その店舗も休業してるわけだから収入が途絶えて、美容院どころではない、という人もいるかも。

緩和第一弾前夜、トークショー番組ではっきり物を言う司会者(ジャーナリスト)が、ゲストの厚生大臣(スクリーンでの参加)に「会いに行っていい、という親類とCONGIUNTO(親密な関係にある人)の定義が曖昧ですが、結局誰に会いに行ってもいい、ということになりませんか?」と質問した。

厚生大臣(名前がいいんですよ。SPERANZA、希望です)は、言葉を選びつつ、「親類とは五親等まで。CONGIUNTOは婚約者、恋人の意味ですが、私はイタリア人を信じています」と、言った。結局誰にも会いに行けてしまう、ということですね、と司会者が笑いながら言って、その質問を閉じた。「現実」を愛するイタリア人らしいやりとりだ。

翌日に向けていかに準備をしているかが紹介された。バスも地下鉄も満杯にはしない。ホームで待つ時も車内でも、ソーシャル・ディスタンスを保てるように印をつける(座っては行けない椅子に×のシールが貼ってある)。監視の係員も増やしたいところだけれど、予算がないので無理。市民救護隊の手を借りるか、乗客の民度に頼ることになる。

もっと営業を再開する業界が出てきて、乗客の数が増えたらどうするのかな。それに学校はまだ再開されてないから学生はいない。
https://www.corriere.it/cronache/cards/coronavirus-rebus-mezzi-pubblici-adesso-spunta-nodo-controlli/regole-mezzi-rischio-un-nuovo-boom-dell-auto_principale.shtml

BARとレストランはお持ち帰りとお届けで営業ができる。一般客との接触がない工場も再開できる。入所する時に熱を測る。

それに準じて、自己申告の書類もまた新しくなった。外出理由から「不要不急」の言葉が消えた。

●緩和した日

大きな問題はなく再開。ミラノで「再開おめでとう」のフラッシュモブがあり、マスクをつけ、ソーシャル・ディスタンスを保った集団が踊ったそうだ。ミラノはイタリアでも感染爆発をしたロンバルディア州にあり、ミラノの人達は恐怖に駆られながらこの二か月を過ごしたことと思う。

ローマでも、散歩やジョギングコースとして使われるビッラ・ボルゲーゼ(ボルゲーゼ美術館がある公園)に取材が入って、散歩の人にインタビューをしていた。やっと外に出られて嬉しいと口々に言う、乳母車を押すおかあさん、自転車の女性、セグウェイの男性などなど。インタビューを受けた人は皆、マス
クをしていた。

みんながいっせいになりふり構わず外に飛びだした、というより、少しビクビクしながら出た感じ。ほとんどの人がウイルスの怖さをよく知っており、マスクやソーシャル・ディスタンスの意味も理解しているのだろう。

この緩和をもっと進めていけるかどうかは、二週間後に感染者数の数字、重篤者の数字、退院者の数字、がどうなっているかによる。

日本のニュースを色々見ていくと、自粛は意味がないと言ってる人もいるけれど、イタリアで都市封鎖をしてからどんどん数字が良くなっていった。もちろん翌日からではなく、一か月ほど経ってから効果が目に見えてきた。だから、確かに効果はあるので、日本の皆さんも頑張ってください。

●公的な支援や融資

公的な経済支援を受けられる人、受けられない人がいる。身近なところでは、フリーランスへの金銭援助を受け取れた人がいる。

観光業界においては、日本の観光代理店所属でグループのアシスタント(空港送迎や滞在中のお手伝い)をしている友人は、この経済援助を受けることのできるカテゴリーだった。

法人税務番号を持っていて、かつ昨年の収入がある金額を上回らないという条件に入ったので、3月に600ユーロ(約7万円)、4月に800ユーロ(約9万円)があっさりと銀行口座に送られてきたとのこと。

この人はご主人が一昨年大きな事故に遭って、仕事にも若干支障をきたしていたので良かった。日本から見ると少ないかもしれないけど、普通のサラリーマンの月給が15万円ほどだから、悪い数字ではない。

売れっ子観光ガイドの友人は、昨年の収入が多すぎてこの援助を受けられなかった。

息子は短期契約で空港の障害者介助サービス会社に勤務している。空港内を車椅子であっちからこっちへ運ぶ仕事だ。12月に最後の短期契約が終わった後、3月に再契約のはずだったところ、コロナ渦で空港閉鎖になり、自宅待機になった。

この場合はコロナによる特別処置ではなく、普通の「失業手当」を受け取っている。失業手当は永久に貰えるわけではなく、毎月少しづつ減って行き、再就職しなければゼロになる。6月にはほぼゼロになるはずだったが、コロナ渦の手当てで二か月支給が延びたそうだ。

息子の場合は、契約が切れた時期が上手く合って、まだもらえるので幸運だった。もっと前に契約が切れた人は資格がなくなり、収入がゼロになる。このような短期契約者はフリーランスではなく、法人税務番号を持っていないので、先述した約7万円、約9万円は受け取れない。

契約がまだ切れていなくて業務中止になった場合は、契約が切れるまでレイオフの支給を受けられる。

やっぱり困るのは中小企業の経営者だ。今のところ、担保なく融資を受けられることになっているが、融資であって支給ではないので、いずれ返さなければならない。残念ながらにっちもさっちも行かなくなって自殺した経営者が出た。

私はそういう目に遭わない家庭環境で、本当に良かった……と自己中心的に思うのみだ。

●まだまだマスク不足

外科用の不織布マスクを50セント(約70円)以上で売ってはいけない、という首相令が出ている。だが、まだ薬局には届いていないようだ。相変わらずマスクの数は足らない。

有名ブランドのグッチはマスク、ゼーニャとH&Mは医者用の保護服を製造と、対コロナに協力をしている。かと思うと、そのブランド名をかたり、マークをつけた偽マスクを警察が押収する、という出来事もあった。

●注目される治療方法

北イタリア、ロンバルディア州のマントヴァ市の病院で、呼吸器内科医長をしているデ・ドンノ氏、新コロナから回復した人から摂取した高免疫血漿を治療に使い効果をあげている。高免疫血漿を使った治療自体は目新しいことではないが、新コロナには一般的につかわれていない。

ワクチンのようにある程度の期間、効果があるわけではないようだが、デ・ドンノ医長は「ともかく、患者を回復させ、死から救うことができる!」と声を上げ、なぜアカデミーが彼を攻撃してくるのか(メディアを使って、副作用がわからない、費用がかかりすぎる─患者負担はほぼ1万円─予防にならないなど)わからない、と言う。

国は国で、テストを重ねて効果と安全を確認できなければ、国として推すことはできないというのもわかるけど。デ・ドンノ医長は、軍隊警察のカラビニエリから書類提供を求められたとかで、「人の命を救えるなら牢獄送りになっても構わない」といい、同病院ではこの治療法で80人の回復者を出している。
http://www.trnews.it/2020/05/04/plasma-terapia-cosi-il-salentino-de-donno-ha-curato-a-mantova-80-pazienti/287114

https://it.businessinsider.com/giuseppe-de-donno-burioni-ci-attacca-ma-il-plasma-iperimmune-e-sicuro-economico-e-batte-il-coronavirus/

高免疫血漿を使った治療は、パヴィア市(ロンバルディア州)でも3月から行われていて効果を上げている。4月にはベネト州のパドヴァでも効果をあげている。集中治療室へ行くほどの重篤ではないが、酸素吸入が必要な重症患者に有益とのこと。
https://www.osservatoriomalattierare.it/news/attualita/15985-coronavirus-speranze-dall-approccio-terapeutico-con-plasma-iperimmune

日本では武田薬品がプラズマ(血漿)を使った治療薬の開発を進めているとか。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO57729810W0A400C2TJC000?s=5

●そして、自粛は続く……

段階的に緩和が始まり、二週間後に数字が良くなればさらに緩和ができるが、変わらなければ緩和はさらにゆっくりになる。

本来であれば、天候の良くなる5月には海岸の施設が開く。BAR、レストラン、パラソル、チェアがあって日光浴をしながらのんびり休日を過ごす。

次の緩和で施設が開けられる、かもしれないということことで、そうなったらすぐに開けられるように準備を始めている。消毒やソーシャル・ディスタンスを保てるための、今までには必要のなかった準備もあって大変そうだけど。

農家も大変そうだ。ニュースで見たのは苺農家。取り入れには、従来は旧東欧からの出稼ぎをあてにしていた。コロナ渦で出稼ぎ者はイタリアに来ることができない。取り入れができなければ苺は腐るだけ。農家は収入を得られない。

イタリア国内で報酬がなく困っている人を雇ったらどうだろう、と一瞬思ったけど、苺はデリケートだ。摘み方を知らない素人が摘んだら、痛めてしまうだろう。

それに、ずらっと何本も並行する苺の畝の間に藁を敷き詰め、膝で進みながら苺を摘んでいくのだ。慣れない人は(見たところ、慣れている人でも)かなりきつい作業だろう。

旧東欧の人を呼ぶのは、賃金を低く抑えられるからだ。きつい作業を安い賃金で引き受けるイタリア人がいるだろうか。他に何もなければやるしかないけど、先に言ったように慣れない人がやると果実を傷つけてしまうだろう。まぁ、私が悩んでもしかたないけど。

鯛とスズキを養殖をしている業界も、レストランが閉まっているので、ちょうど食べ頃に育った魚を売ることができず、売れなければ餌を買えないので、稚魚は死んでしまう……と嘆いていた。

暗い話ばかり並べてしまったが、言われてみればそうだけど、まったく考えが及ばなかった業界の大変さを知り、無駄につらい気持ちになってしまった。

大した収入がない私だけど、なるべくお金を使って少しでも経済を回さなくちゃ、と思った。その一環として、家にある足踏みミシンを使えるようにする。いや、どこも壊れていないのだけど。

先日、マスクを縫おうかと動かしてみたら、上糸が切れ続けて縫えない。ネットで原因を探したら、針の太さや糸の種類でも上手く縫えなくなることがあるとか。だから、針と糸を何種類か買う。縫いながら使うのに便利な、コード無しで使えるミニアイロンも買う。

ミシンが使えるようになったら、和服に興味が出ているので半幅帯を自分で縫う。そのために面白そうな生地を買い、帯芯にする背広の襟芯を買う。以上は今月の報酬を待つ。(払ってもらえるよね……)

元教え子がまずフランスで作品を出し、それが今月からイタリアでも発売になるので、これはオンラインで買った。
https://anime.everyeye.it/notizie/kasaobake-porta-italia-flare-zero-salvatore-nives-volume-uscita-maggio-432377.html

もう一冊、mangaを買った。最近知った亡き今敏さんの「海帰線」。絵がきれいで、紙で欲しいのでイタリア語版を購入。日本のオンラインでも購入できるけど、こっちに送ってもらうと送料が高いし、実家に送ってもらっても、いつ手にできるかわからない。
https://www.amazon.it/stirpe-della-sirena-Satoshi-Kon/dp/8822614771

さらに、企画している自分のmanga一つを描きあげたら、自費出版する。自費出版の印刷屋さんに、少しお金が回ることになる。多分、12月からフリマが再開するので、そこで売って、私にも回って来るようにしてもらう。皆が経済的に苦しくなる中、私の本など買ってくれるかだろうか、と不安になったりもするけど、考えないことにする。

●意外な人気者

この渦で、あちこちの州知事がテレビに顔を出すことが多くなった。その中で人気急上昇なのが、ナポリが州都であるところのカンパーニャ州の知事、デ・ルーカさんだ。

3月20日に、大学卒業者のパーティに言及して、「とんでもない話だ。そういう奴には火炎放射器をお見舞いしてやる」と発言し、炎上するどころか、「よく言った!」という声の方が多かった。
https://togetter.com/li/1485760

カンパーニャ州の市民救助隊が配った、細長い布の両端に切り込みが入ったマスクを手に、「これは何というか、バックスバニー用だね」と言ったビデオも、あっという間にソーシャルメディアを駆け回った。

そして、話題になったのが、ナポリの女子大生が卒業記念に親類や友人に配る、お祝いの砂糖菓子につける人形に、デ・ルーカさんが火炎放射器を持っているものを選んだこと。ちょっと欲しいかも。
https://www.napolivillage.com/cronaca/il-lanciafiamme-di-de-luca-diventa-una-bomboniera-di-laurea/

●あまりにも怪しい「良き信心」

コロナ渦でマフィアボス、ドラッグ密輸入犯罪者376人釈放。

法務大臣のボナフェーデ(良き信心と言う意味の苗字)が次々と釈放、自宅待機に移している。新コロナウイルスに対する囚人の健康が守れないから、というのがその理由。

だったら、すべての囚人も釈放すべきじゃないの? マフィアボスのように他と接触させないため(他の囚人と接触すると、「仕事」を続けられる)独房にいるのだから、感染の危険は低いはず。

あまりにも怪しいと、巷で騒がれているけど、釈放し続けている。大丈夫か、五つ星(政党の名)
https://www.tgcom24.mediaset.it/politica/scarcerazioni-per-covid-bonafede-vuole-far-tornare-i-boss-mafiosi-in-cella_17983480-202002a.shtml

さて、自粛緩和第一弾の二週間後はどうなっているでしょうか。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】
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