[5005] バンクシーとこれからのルネサンス◇通販生活/引きこもり生活の日々

投稿:  著者:  読了時間:23分(本文:約11,000文字)



《My wife hates it when I work from home》

■羽化の作法[106]現在編
 バンクシーとこれからのルネサンス
 武 盾一郎
 
■LIFE is 日々一歩(119)[コラム]
 通販生活/引きこもり生活の日々
 森 和恵
 



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■羽化の作法[106]現在編
バンクシーとこれからのルネサンス

武 盾一郎
http://bn.dgcr.com/archives/20200512110200.html
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●バンクシー

〈Game Changer〉

バンクシーの新作、英病院に登場 医療従事者に感謝のメモ
https://www.bbc.com/japanese/52568993

バンクシーの新作がニュースになっていました。本人のインスタグラムにもアップされています。


この絵のタイトルは『Game Changer』。

まず、ステンシル(またはステンシル風)じゃないところに、ちょっとビックリしました。

ステンシルとはなにか? ステンシルはバチっと面を表現できます。バンクシーは黒を上手く使い、カッコいいデザインをキメるんですよね。またステンシルのシートを実際に使わなくても、わざわざステンシル風に描くアーティストもいます。以下の動画を観ると分かりやすいかと思います。

バンクシーの描き方【ステンシル グラフィティ】
HOW TO GRAFFITI LIKE "BANKSY" with stencils


例えば、オークションで落札直後に、シュレッダーにかけられて話題となった『少女と風船』もステンシル(またはステンシル風)です。




ちなみに『アマビエタムちゃん』の元となった『花束を投げる男』もステンシル(またはステンシル風)です。

『花束を投げるアマビエタムちゃん』


バンクシー『花束を投げる男』
https://www.pinterest.jp/pin/808044358113597108/

このように、バンクシーといえば「ステンシル」なのですが、その経緯が画集『Wall and Pice』に記されていますので引用します。

“18歳のとき、僕はひと晩かけて列車の側面に、銀色のでかいバブル文字で「LATE AGAIN(また遅延)」とペイントしようとしていた。

そこに鉄道警察隊が現れたので、僕は茂みの棘で傷だらけになりながら逃げた。仲間たちはうまく車まで戻って消えてしまったから、僕はダンプカーの下で滴り落ちるエンジンオイルにまみれながら、1時間以上も這いつくばったまま息を潜めていた。

線路にいる警官の声に聞き耳をたてながら思ったんだ――描く時間を半分にするか、全部あきらめるか、どちらかしかないと。

燃料タンクの底につけられたステンシルで書かれたプレートをじっと眺めているときだった。この方法をパクったら、文字の高さを3フィートにできると気づいたんだ。”
https://www.pinterest.jp/pin/126382333282093676/

「書いて逃げる」という活動の必要性から生じたステンシルなのですが、グラフィティにおけるステンシルはバンクシーが発明したわけではなく、60年代からありました。

“ステンシル・グラフィティは1960年代に始まった。フランス人アーティスト、アーネスト・ピグノン・アーネストの原爆犠牲者のステンシルのシルエットが、1966年にフランス南部でスプレー塗装された。”

ステンシル・グラフィティ / Stencil graffiti
https://www.artpedia.asia/stencil-graffiti/

ところが上記ニュースの新作『Game Changer』は、ステンシルには見えません。キャンバスにチャコールとか、オイルスティックとかで描いてる絵なんですね。

写真を画像エフェクトアプリでチャコール風に一発変換して、キャンバスにプリントアウト、とかでなければ、つまり手作業ならステンシルよりも描画に時間がかかってしまう絵です。ステンシルは仕込みに時間はかかるかも知れないけど、描画に時間はかかりません。

バンクシー作品は反体制的だし、皮肉なパンチが効いてるのが特徴です。なの
こちらの記事では、“「都合のいい時だけ医療従事者を英雄と崇めておいて、用が済んだら使い捨てする社会への風刺が込められている」とする意見も多数”と書かれています。

覆面アーティストのバンクシー、英国の病院に新作を寄贈
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200508-00010001-elleonline-ent

『バンクシー:アート・テロリスト』の著者である社会学者の毛利嘉孝さんも、“すでに指摘されているように、もう少しひねくれた作品だと思う。もちろん作品を販売しNHSに寄付することから、医療従事者に対するリスペクトが最大のメッセージであることは確かだが、ヒーローを作っては即座に表層的に消費する子ども(=メディア)の残酷さも描かれている。”とツイートしています。


『バンクシー:アート・テロリスト』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334044468/dgcrcom-22/

ちなみに毛利嘉孝さんは、著書『ストリートの思想』で、私たちが描いた新宿西口段ボールハウス絵画の『新宿の左目』を、表紙に採用されています。
https://www.pinterest.jp/pin/126382333282093675/

一方、脳科学者の茂木健一郎さんは、かつてのヒーローの男性性や暴力性などへの批評性は含まれているものの、うがった見方をしないで素直に受け止めよう、と言ってます。

『バンクシーの「看護師」ヒーローの作品は皮肉なのか。』


このように、観る側にいろんな解釈をさせてしまうのが、これら素晴らしい作品の特徴です。

他にも看護師が黒人っぽいとか、遊ぶ子供は白人に見えるし、笑ってないし、とか、描かれている記号をピックアップすればやっぱりバンクシーらしい作品なのですが、もしこれがステンシルだったら、その記号の意味性が強烈に出るので病院に飾るには不向きでしょう。

金髪っぽい髪の毛の陰影や、オーバーオールのしわなどが丹念に描写され、グラフィティではなく絵画っぽさを出してるところに、病院という場所への配慮を感じさせます。

そして、もしこの作品が手描きなら「メタファーは相変わらずバンクシーらしく、アイロニカルだけど病院への敬意は本心ですよ」というメッセージのように思えてくるのです。

〈My wife hates it when I work from home〉

ところで、バンクシーは『Game Changer』の前に、このコロナ状況に対しての作品をインスタグラムにアップしています。


このことは記事にもなっています。『バンクシーも自宅で仕事中? 新作をInstagramで公開。「妻が嫌がる」』
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/21717

“バンクシーは、「My wife hates it when I work from home.(家で仕事していると妻が嫌がるんだ)」というコメントとともに、この作品を投稿。作品を描いた場所がバンクシーの自宅かどうかは定かではないが、新型コロナウイルスで世界的にリモートワークを余儀なくされている現状を、ユーモラスに伝えている。バンクシーの本来の舞台はストリート。彼もこの事態の収束を願っているのだろうか。”と書かれています。

いわゆるアーティストの立身出世が、美術館やヴェネチアビエンナーレなどのアートフェスティバルを目指すのに対して、バンクシーはストリートで活動してきました。

ストリートは美術館の対立軸として価値を持っていたのです。ところがこのコロナ時代、美術館もストリートも「人が集まる場所」という意味において、同じであることが顕在化します。権威や主流に対抗する「オルタナティブ・スペース」も、「人が集まる場所」という意味において、実は同じくくりだったことが分かってしまったわけです。

人々は「自宅」というプライベート空間を拠点に、情報空間で集います。すると「人を集める装置として場所や施設にインストールするパブリックなアートの意味」が薄れます。

アートはこれから「アーティストの部屋」から、「アートを楽しむ人の部屋」を繋げる仕事が重要になってくると思います。

バンクシーの『My wife hates it when I work from home』は、アートのステージが変わる時代の方向性に対して、これまでの「バンクシーの方法論」ではうまくいかないことを、ちょっと自虐ネタのように表現しています。

バンクシーは家に定番の「ネズミ」を書き散らかしてます。筆で描いてるようですが、ステンシル風に(ストリートに書くグラフィティとして)描画されています。そうしたら(当然ですが)妻の顰蹙を買います。

そして、次の『Game Changer』ではステンシル(風)をやめて描画タッチにしています。バンクシーはシチュエーションと時代の変化を読み取って、タッチを変えてきているのです。

これはアーティストが犯しがちな間違いについて学べる、とても良い教科書です。自分がポリシーを持っていると思い込んでいるアーティストだと、『Game Changer』でも「俺はストリート出身だから」と、ステンシルにこだわってしまうでしょう。

バンクシーがすごいのは、メタファーや記号の選び方のセンスやデザイン性もさることながら、こういった変化の速さや柔軟さですよね。

●これからのルネサンス

前にも書きましたが、ペストとルネサンスに密接な関係があったように、そしてルネサンスで(神から)人間にテーマがシフトしたように、人間賛歌というか、人類を肯定しようとする美のテーマって勃興する気がしています。

羽化の作法[105]現在編 疫病を肯定してみた/武 盾一郎
http://bn.dgcr.com/archives/20200414110200.html

それは、「日本スゲー」みたいな薄っぺらな肯定ではなくて、「冷静に考えれば考えるほど、人類って地球から滅びた方がいいよね」ていう絶望をくぐり抜けて、そこから少しずつ確かめながら肯定するやり方です。

今まで、疫病で政治がすんごく変わるという視点を持っていませんでした。なんだかんだ社会や政治は、理想や欲求といった人間由来の人間力で変化すると思い込んでいたのです。

しかし、「疫病には為政者も罹患する事実」こそ政治が大きく変わる要因である、と思い知らされました。

例えば、貧困問題を政治がスルーするのは、単純に為政者に貧困当事者が存在しないだけだったことが可視化されたのです。為政者は為政者にとって心地良い政策をどうしても作ろうとする。なので、忖度と利権が決定の最優先になる。ちょっと残念な気もしますが、きっとそれが人間の本性なのでしょう(そうではない国もありそうですが)。

しかし、絶望的か言えばそうではなく、ツイッターなどで声を上げることによって覆ることも実際にありました。でなければ今頃、和牛券を手にしてため息を吐いていたことでしょう。

だからこそ現在は政治が変わる絶好の機会なのです。政治だけではありません。個人の生き方も、そしてアートも。

人間には莫大な潜在能力があるのに、なかなか自力では開花させられない。疫病(または天災)という非常に恐ろしい、畏怖すべき存在の後押しがあってこそなんだと思ったのです。または他者とかね。

そう考えると、人類って結局、大自然の大河に揺れる一枚の葉っぱに過ぎないんだなあって実感します。そんな人間を愛おしく思うのです。やっぱり肯定していこうと思うのです。

それが、これからのルネサンス。


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/断酒124日目】

武盾一郎ライブ個展『Mのkiseki』開催中! 5月16日(土)まで
https://picaresquejpn.com/takejunichiro_koten_2020_04_05/
販売は 5月17日(日)24時まで。先着順での販売となります!
主催:ギャラリー ピカレスク
https://twitter.com/picaresquejpn

・ガブリエルガブリエラ
Twitter https://twitter.com/G_G_jp
Instagram https://www.instagram.com/gabrielgabriela.jp/
ブログ「13月世の物語」
http://gabrielgabriela-jp.blogspot.jp

・武盾一郎
Twitter https://twitter.com/Take_J
ブログ「絵と空の事」
https://take-junichiro.blogspot.com/
Facebookページ https://www.Facebook.com/junichiro.take
take.junichiro@gmail.com


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■LIFE is 日々一歩(119)[コラム]
通販生活/引きこもり生活の日々

森 和恵
http://bn.dgcr.com/archives/20200512110100.html
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こんにちは、森和恵です。GWが終わりましたね。高速道路の渋滞が一回も起こらなかったそうで、こんなGWは生涯二度とないのでは(願わくば)。

こんな時期だけど、できる範囲でそろそろ動き出さなきゃな……という空気を感じる週明けなので、望まずしてなってしまった『完全引きこもり生活』を振り返ってみようかと思います。

●“充実”の通販生活

イオンにも、デパ地下にも、スタバにも、ごひいきの市内のパン屋さんにも、買い物に行くことができなくなっています。

珈琲と紅茶とパンとお菓子を愛する人にとって、この状況は地味にヒットポイントを削っていきます。

嗚呼せめて、少しでも潤いが欲しいと思い、通販で手に入る嗜好品を探して、買い求めました。実際に買ったもの(予定含む)で、おすすめのものを紹介します。

[注]現在、通販を利用する人が多くて物流が滞っているそうです。どのショップもすぐには届けてくれませんので、気長に気長に待てる方のみ、ご利用ください。

▼パン詰合せ(5月)─たねや・CLUB HARIE オンラインショップ
https://shop.taneya.co.jp/i/14740

デパ地下に行ったら立ち寄る、たねやさんのオンラインショップ。あまり知ら
れてないのですが、滋賀の本店にはパン工房があります。めちゃくちゃ美味し
いのでおすすめです。もともと通販を利用していましたが、これを機に。

▼アンガス牛Lボーンステーキ─大同門
https://shop.daidomon.com/?pid=149889455

Facebookでお友だちに聞いて知りました。小さいときに連れて行ってもらった大同門さんが、憧れの骨付きステーキ肉を驚くほどお安く通販してくれてます。

▼シナボンは愛
https://cinnabonshop.com/

実は、シナボンは店舗がなくて、関西で買うことができません。催事で出店するときは長蛇の列になります。シナボンのInstagramで「期間限定で通販を始めました」と聞きつけて、すぐ購入しました。

▼特選セット商品 ストレート・コーヒーお試しセット:焙煎珈琲豆の心斎橋コーヒ院研究所
https://item.rakuten.co.jp/coffeein/414998/

美味しい珈琲が買えない……。できるだけ近所にある、豆が美味しいだろうという珈琲屋さんを発掘しました。これから配送されるようですが、新しいよい出会いになればいいなと思います。

▼処分販売 まつや とり野菜みそ:北陸うまいもん屋
https://item.rakuten.co.jp/hokuriku-umaimon/26004010-11116-20/

お友だちのツイートで知りました。実家の金沢を応援したいのと、一人用のとり野菜味噌(通常のパッケージの半分サイズ)は、使いやすいだろうということで購入。

▼元町セット(神戸の味を味わって)通販|patisserie AKITO
http://www.kobe-akito.com/shopdetail/000000000130/

こちらは、これから購入予定。昨日のニュース記事で知りました。神戸にある洋菓子店が結集した焼き菓子のコラボ商品です。生まれた土地、神戸の洋菓子を応援したい!

●推しが次々とYouTubeチャンネルを開設

新型コロナウイルス感染症による影響で、2月・3月と立て続けに予約を取っていた舞台やコンサートは中止になりました。

誰が悪いわけでもなく、ましてや自分のせいでもなく、薄くぼんやりとした悲しみとやるせなさに、心が死ぬ思いでいました。

生きていくだけなら困らない日常を暮らせていることに感謝をしつつも、「生きているだけなら、死んでいるのと変わらないじゃん……」という拗ねた気持ちで、3月は暮らしていました。

ところがです。4月になってから、推しているファンの声優さん達が、次々にYouTubeチャンネルを開設してくれました。

▼マフィア梶田と中村悠一の「わしゃがなTV」─YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCReBAqqC-hc9d70gOftfitg

▼杉田智和/AGRSチャンネル─YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCbPVSXP89cDlsiMf0jet1zQ

声優さんのプライベートを垣間見れるような動画や、長時間の生配信などが見られるなんて……。幸せすぎます。

大げさな表現ではなく、本当に生きることに彩りが戻ってくれました。

だって、こんな事態が起きなければ、こんなコンテンツを見る機会は一生なかったかもしれません。

YouTube動画なので無料で視聴できますが、できればお金を払わせて欲しい。感謝の気持ちであふれています。ありがとう。

そうこうするうちに、見られなかった舞台の動画配信も決まりました。

▼音楽朗読劇READING HIGH『El Galleon~エルガレオン~』〈Familia〉
─DMM.com
https://www.dmm.com/digital/cinema/-/detail/=/cid=5559anip00053a/

5月1日に配信が始まってすぐに視聴しました。親子の心温まるストーリーにパソコンのモニターの前で、ボロボロと号泣しました。

舞台装置も演出も素晴らしい公演だったので、大きな劇場スクリーンで見たかったなという気持ちもありますが、配信動画なら何度でも見返すことができるので、これはこれでよかったなという気持ちです。

これから配信がスタートしますが、もうひとつの舞台も見のがさないようにしたいと思います。

▼プレミア音楽朗読劇『ヴォイサリオン VII』
https://www.tohostage.com/voicarion/2020voicarion/queen/index.html

●のんびり構える自分の仕事のこと

さて、最後に私の近況を少し。暗い話になりそうだけど、締めは明るい話にしようかと思います。

わたしは、単発でウェブ制作を教える授業を請け負うインストラクターです。ですので、人が集まる講習会が開催できないとなれば、仕事がなくなります。

本来ならば、今年度の講習会のスケジュールを決める段階なのですが、先行きがわからず仕事が空白の状態です。

ですが、従来の貧乏性が功を奏して、生活に困らない分ぐらいの多少の蓄えがありますし、毎月固定費が出ていく商売でもありません。

とりあえずは困らない……ので、ここはのんびり構えて、日頃は忙しくてできなかったことを、ボチボチとこなしていく日々を過ごしております。

っていうか、忙しくてできてなかったリストをこなす日々って、忙しいんです(苦笑)。

忙しさにかまけて、これまでサボり続けてきた結果ですね。この停滞時期を利用して、綺麗でクリアーな私に生まれ変わりたいと思っております。

そのひとつに自分のサイトのリニューアルがあるのですが、5月中にはやってしまいたいなと思います。

とりあえずのサイトのプレオープンと、プレゼント企画を予定しておりますが、友だちと一緒にお届けしているYouTube番組の明日の放送にて、情報を公開いたします。

▼第130回「5周年記念!」はざくみ&もりかずの見切り発車でいこか~


お楽しみに。

……というわけで、今回はこちらまで。

低め安定の平常心を保ちつつ、気分を斜め上に上げて、ちょっとでも楽しい日々を過ごしましょうね。

ではまた、次回お目にかかりましょう!
(^^)


【 森和恵 r360studio ウェブ系インストラクター 】
mail: r360studio@gmail.com
YouTubeチャンネル: https://youtube.com/r360studio
サイト: http://r360studio.com/


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編集後記(05/12)

●偏屈BOOK案内:嵐山光三郎「文人悪食」/三島由紀夫

「鳩よ!」1993〜1996に連載されたものに加筆。夏目漱石から三島由紀夫まで37人、うち女性は樋口一葉、与謝野晶子、岡本かの子、林芙美子の4人。一人あたり11ページ。総430ページ超の重量級で、厚さ3cm。定価も1967年で1854円と高価。装幀は菊地信義、本文の絵は嵐山が肖像写真を模写したもの、いい味出してる。あとがき2ページのあとは、主要参考文献一覧、32行×18ページ!

一言で言えば、作家の偏食伝説である。文人たちの日常をいろいろ調べていくうち、彼らの食の嗜好は作品の生理と密接な関係があると気づき、「近代文学史を料理によってたどってみよう」という壮大な構想に辿り着いた。なにを飲み食いしていたかで、見えてくるものがあるはずだ。「文士の食事には、みな物語があり、それは作品と微妙な温度感で結びついている」。何という慧眼!

この本を書くには、資料集めから始めて5年を要した。近代文学館、大宅文庫、多くの古書店のおかげだ。林芙美子は醜く太り、鰻飯を食べすぎでトン死、島崎藤村は粗食淫乱の人、宮澤賢治は清貧の菜食主義者だと思ったら、飲酒、肉食で煙草も吸い、高級料亭に行き、芸者に指輪を買ってやった。700余の文献を参考とし、草稿は2倍の量、学術論文ではないからこの分量に抑え込んだ。

夏目漱石「ビスケット先生」から始まり、三島由紀夫「店通ではあったが料理通ではなかった」で終わる。各作家に冠されたタイトルは、短くパンチのきいた嵐山流であるが、どうしてトリの三島だけこんなつまらんタイトルにしたんだろう、わざとか。三島は嵐山よりずっと小柄で、身長158cmの小男である。嵐山が若僧編集者の時代に三島邸で、緊張感満開で取材していた。微笑ましい。

三島は虚飾と純粋を併せ持っていた人である。三島は努力を惜しまない生一本の性格である。小林秀雄に「きみは天才だ」とまで言わせた人である。努力家と見られるのがいやで、堕落に憧れ、克己心も併せ持っていた。三島はまったく無駄のない時間を、命がけで費やしていた。「いっさいの誘惑に対し、三島はぎりぎりの絶壁の壁を彷徨しながら戻って来た」。料理には向かわなかった。

有名料理店の店通ではあったが、料理通ではなかった。「ボディビル、映画、歌謡曲にまで突入した勢いで料理の悪魔的領域にまで耽溺していれば、はたして、あの自決はあったかどうか。(略)三島氏はつねに『何物かへの橋』を渡っていたが、ついに『そこを渡れば戻ることのできない橋』を渡ってしまった。三島氏の自決は、思想をアリバイにした死であった」。なんですって?

太宰治の自殺は女がアリバイであり、芥川龍之介の自殺は文学がアリバイだった。「三島は長生きして自らの肉体が醜く崩れることを恐れていた。美食に嵌まって太った谷崎潤一郎のことが頭にあったのかもしれない」。こんな見方もあったのか。「しかし、かりに、三島氏が自決せずにすんでいれば、三島氏は谷崎潤一郎をこえる料理小説を書けたはずである。読んで見たい」。(柴田)

嵐山光三郎「文人悪食」三島由紀夫 店通ではあったが料理通ではなかった
1997 マガジンハウス
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4838706200/dgcrcom-22/


●居酒屋さん続き。どう関係があるのかわからないけれど、数駅離れたステーキ屋さんのお弁当も売っていた。こちらは1,000円。スープつき。

車で来る人までいるぐらいで、常に人が待っていて、売り切れ発生。その場で焼いてくれるから待たないといけないんだけれど、中で待てるから急な雨の時に助かった。客席が広くて、離れた場所でゆったり座れた。お茶も出る。電話すれば受け取り予約もできる。

お酒を提供できないと儲からないんだろうな。どちらのお弁当も、単品の焼き鳥も、出来たてということもあって美味しかったので、自粛解除後も続けてくれたらいいのになぁと思った。店内でも食べたいなぁと思うようになったよ。(hammer.mule)

備長炭串焼 名物しろ鍋「馳走庵」
http://www.chisouan.com/

ステーキ弁当はここの。「やっぱりステーキ」というらしい。
https://yapparigroup.jp/

フランチャイズ契約して、大阪はここが出しているのか
http://www.chisouan.com/kaisyagaiyou.html

電話番号のところで結構きつい会社だなと思ったら、
http://www.chisouan.com/kaisyagaiyou.html

こっちには「店員に、イケメンは居ますか?」
http://www.chisouan.com/faq.html