こんにちは、森和恵です。
じんわり暑い中で頭の中をウニウニさせながら、このコラムを書きはじめて4時間が経とうとしています。
今回は、書くことへの葛藤と、それを少しだけ救ってくれた本を紹介します。
● 昨夜のライブ配信
まずは、定期のお知らせから。昨夜のYouTubeライブ配信では、CSSのフレックスボックスを楽しく学べるゲームの解説をしました。
【Flexbox Froggyを一緒に解いてみよう!・前編】
CSSを用いて《カエルを蓮に並べる》ゲームなのですが、可愛くアニメーションしたりして、なかなか楽しいゲームです。
ぜひ、動画詳細をチェックしてみてくださいね。
●『読みたいことを、書けばいい。』という本
今年は人格改造を試みているのですが、課題のひとつに“70点ぐらいの文章を速く書く”というものがあります。
デジクリのコラムだと、関心のあることをなんとなく調べて、ある程度情報がまとまったら、テーマを決めて、2~3時間ぐらいかけて書くのが平均です。
延べの時間にしたら、半日×2回ぐらいをかけています。
実際に画面に向かって書いている時間に対して、大半が調べ物をしたり、試して検証している時間の方がはるかに長くなります。
このコラムだけではなく、どんなジャンルでも、人に役に立つ情報をまとめたいと思うと、掘り下げて調べたり、実際に体験したりする時間が必要です。
と、これが悩みでした。
書く原稿の量に対して調べ集めた情報が多く、廃棄率がはんぱなく高いのです。効率が悪いなぁ……と思ってしまい、自分の容量の悪さに辟易していました。
そんなとき、一冊の本に出会い、それでいいのだと納得することができました。
『読みたいことを、書けばいい。――人生が変わるシンプルな文章術』(田中泰延著、ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478107225.html
この本は、よくある《文章の書き方》教本ではありませんでした。実際に文章を書いて人生を渡ってきたライターさんが語る、文章を書くための心構えが繰り広げられていました。
・《物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛》
・ネットで見かける文章は《随筆》
《事象と心象が交わるところに生まれる文章》
という言葉が、とても刺さりました。この本を要約すると、《愛と敬意を持って書く事柄についてしっかり調べ、最後にほんの少しだけ、自分の感想を述べる》とのことでした。
なんだ。やってたことは間違いなかったのか。自分に知識と経験が少ない分は、調べるのに時間がかかるのはしょうがないことなんだと、納得することができました。
ただ、このままの状態がずっと続くというのも心が折れそうなので、情報収集の効率化を考えないとなと思っています。
●《一次資料をあたる》のが、結局は近道だ
『読みたいことを、書けばいい。』にも、一次資料をあたって調べることの大切さが書かれていました。
実際にわたしがどのように、どう思って、読みにくい一次資料をあたることにしているのか、体験談を書きたいと思います。
いま、YouTubeライブで配信している【いまどきのHTML&CSSレイアウトにチャレンジ】では、HTMLやCSSの文法を解説していますが、その台本(講義テキスト)を組み立てる際は、たとえ知っていたとしても、一度は仕様書の原本やそれに近いものをつど調べることにしています。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL7LtdGFp5DwSevXeQeEF2kHqiTRjTo1cL
知っているのにわざわざ調べているのには、理由があります。
HTMLやCSSの仕様は、ルールや解釈の変更が結構な頻度で行われます。過去に知った情報では、古かったり、自分の調べや検証が浅かったりと、そのタイミングで必要十分の情報を得ていないことがあるのです。
例えば、HTMLの策定は、昨年から WHATWG の HTML Living Standard が原本ということに変わっています。
ちょうど1年ぐらい前に、HTMLの策定を行っていた W3C と WHATWG との間で覚え書きが交わされて、WHATWG Living Satndardに一本化されたのです。
https://www.w3.org/2019/04/WHATWG-W3C-MOU.html
だからといって、HTMLが大きく変わったわけではありませんが、WHATWGが策定したものに一本化されることで、細かい違いが生まれています。
ということで、現在のHTMLを調べるための代表的な資料は、次の3つとなっています。
▼HTML Standard
https://html.spec.whatwg.org/multipage/
※WHATWG がまとめている仕様書。もちろん、英語で掲載されている。最終アップデートは「Last Updated 5 June 2020」。
▼HTML Standard 日本語訳
https://momdo.github.io/html/
※有志の方が日本語訳している仕様書。最終アップデートは「Last Updated 3 June 2020」と、数日だけど原本に比べて遅くなっている。
▼HTML: HyperText Markup Language | MDN
https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/HTML
※仕様書ではないが、ウェブ標準を学ぶためのサイトとして歴史のあるサイト。仕様に書かれている内容だけではなく、その歴史・背景や使用例なども掲載されていて、学習するのに適している。
わたしは、もっぱらMDNのサイトを使って調べていますが、あいまいな部分などはHTML Standardの仕様書を確認しています。
いずれも、読み物としてはほど遠く、そこに書かれていることを正しく読み取って使うためには、深い知識と経験が必要です。
たとえば、最近こんなことがありました。
一度はHTMLの仕様から破棄された、hgroup要素が戻ってきているというのです。
▼HTML Standard 日本語訳
https://momdo.github.io/html/sections.html#the-hgroup-element
▼ - HTML: HyperText Markup Language | MDN
https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/HTML/Element/hgroup
この2つを調べてみると、確かに仕様書に復活しています。なぜこんなことに、という経緯は、MDNのサイトの方に書かれてあり、なるほどということになりました。
一次資料を調べる癖がなければ、hgroup要素は廃止されたと思い続けていたかもしれません。
Googleで『hgroup』と検索すると、あわせて「廃止」という言葉がでてきたり、昔かかれた古い記事には「廃止予定」と書いてあるままです。
そして、書店で販売されている紙の書物は、古い情報のまま。
自分で一次資料をあたって知識のアップデートをしなければ、誰も連絡をしてくれません。正しい情報は、いつも一次資料にあるというわけです。
もちろん、初学者が学び始めるときには、無駄なようでも、読みやすく、とっつきやすい入門書・教科書が必要だと思います。
はじめて触れるテーマに対して、系統立てて一度は学ぶ必要があるのです。
そして、その知識を維持するための新しい情報のアップデートには、できるだけ一次資料をあたり、自分でサンプルコードを作り、検証することが必要です。
その頃には、基礎が身についているので、読みづらい一次資料も使えるようになっているはず。正しい知識を得て、使ってみて経験にすることができます。
手前味噌ですが、毎週放送しているライブ配信では、わたしが一次資料にあたって作成したばかりの教材を、リアルタイムでお届けしているので、初学者の方にもぜひご覧頂きたいなと思います。
最後、宣伝になってしまいましたね。
……というわけで、今回はここまで。
文章を書くスピードをあげるには、道具の選定も大事なようで、《アウトラインプロセッサー》という種類のエディターを導入しようとしております。できるだけ、使い慣れたシンプルな道具にしたいな。
新しいものを取り入れるには、コストも勇気も必要になりますね。うまくいったら、またここで報告します。
ではまた、次回お目にかかりましょう!
(^^)
【森和恵 r360studio ウェブ系インストラクター】
mail:r360studio@gmail.com
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サイト:http://r360studio.com/