わが逃走[262]リモート授業 の巻
── 齋藤 浩 ──

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複数の機関でデザイン教育らしきものに携わっている。今年から担当する授業が増えたこともあり、楽しく充実した毎日だ。しかし、使い方がわからなくてビビる。なんの使い方かといえば、リモート授業システムの使い方だ。

デザイナーなので、デザインについてはなんとか答えられるよう努力している。しかしそれ以前、ヒトとコミュニケーションをとるために、なんでいちいちインターネットにつないで、パソコンを介して話さねばならんのかね!

まさか、ヒトと会えない世の中がやってくるとは、誰が想像し得ただろうか。反語。そんなわけで、多くの業界で、多くの人々が、慣れないリモートワークにあたふたした2020年春。

他に選択肢がないんだから、やらないわけにはいかん。また、実際やったらできちゃった、という人多数。





さて私はといえば、パソコンとかインターネットとかいったものが苦手である。

いちおうこの話は『デジタルクリエイターズ』というところに連載されているのだが、わたしゃデジタルが得意ではないのだ。

ちなみに私はデザインのプロだが、これはデザイナーとして一定以上の結果を出している、また日々精進しているということを意味しいるのであり、オレはデザインが得意だぜ、というのとはまったく違う話なのである。

で、つまり何が言いたいかといえば、リモート授業はわからないことだらけで、非常に戸惑っている。

先生も学生も運営側も初めてのことなので、みんなが戸惑っていることと思うが、戸惑いっぷりにかけては人一倍自信がある。

もっとも心配なのは、果たしてこの板っきれ(ノートパソコン)の向こう側に本当に学生がいるのか、ということである。

そう信じて語り続けたあげく、実は誰もいなかったりしたら、その喪失感たるや相当なものだ。

逆もまた恐ろしい。

その向こう側に学生がいると気付かず、見られてはマズいもの(例はとくに省略)が、白日のもとに晒されていたとしたら! そう考えるだけで夜も眠れないのである。
人は必ずミスをする。早くこの状況が収束してくれることを祈るばかりだ。

良いところもある。映らないものは届かないという点だ。下がフルチンでもバレない、加齢臭がバレないなど。とはいえ、その程度である。

なのでもう一度言おう、人は必ずミスをする。早くこの状況が収束してくれることを祈るばかりだ


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられ
ないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィ
ックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。