腕時計の真贋を見定める方法の中級編として、「出来の悪い偽物」について紹介していきます。腕時計百科事典では「意図的に既存の商品を模倣してつくり、既存の商品と誤解させて購入させることを目論んで、製造/販売しているもの」を偽物の定義としていますが、中級編で紹介するものの多くは、人の知識の不足に付け込んで騙そうとするものです。
◎付属品がない
新品で、あるいはほとんど使用していない状態で購入するにもかかわらず、箱やギャランティーなどの、付属品がないものは要注意です。実は、腕時計の付属品を手に入れるのは、腕時計本体を入手するのと同じくらい難しいことです。
また、箱やギャランティーの偽物をわざわざつくるのは、偽物の腕時計をつくるよりも優先順位は低いでしょうし、面倒かもしれません。付属品の有無は、真贋を判断するのにある程度役立ちそうです。
◎めっきである
「めっき」は、金属の表面を別の金属で覆うことができるため、物理的な丈夫さと美しさ/化学的な丈夫さを両立することができる素晴らしい技術です。しかし、その技術が人を騙すことに使われた例は枚挙に暇がありません。
金無垢の腕時計がめっきである、というのは古典的なダマシの手法ですが、いまでもたくさん見られます。騙す目的のめっきはコストパフォーマンスを上げるために、薄く施されることが多いため、表面の艶が不安定だったり、表面加工が省かれるなど、質感の違いで判断できることが多いのです。安っぽいな、と感じたらめっきの可能性を疑いましょう。
◎刻印がおかしい
刻印は、上述したような素材(めっきか無垢か)を判断したり、ブランド側が自社製品の証として、また製造管理のために施すことの多い加工です。刻印自体はやろうと思えばすぐにできるものですが、刻印の加工精度を追求したり、連番をきちんと変更させたりすることはコストがかかるため、偽物業者が避けがちな加工でもあります。
あるはずの刻印がなかったり、刻印があまかったりするものは、偽物の可能性が高いと言えます。余談ですが、めっきなのに「14KYG」などの無垢を示す刻印をうってしまうのは、偽物業者の中でもたちの悪い部類に属するのでは、と思います。
◎ムーブメントが異なる
偽物かどうかを一瞬で見分けるには、ムーブメントを見るのが一番です。もちろん「本物がどんなムーブメントなのか」を知っていなければ、その判断はできません。極端に言えば「AUTOMATIC(自動巻)」の表記があるのにクォーツだったり、ローターがなかったりすることもありますので、まずは「本物のムーブメント」を知ることから始めましょう。
腕時計を買いに行って「ムーブメントを見たい」といっても、販売店側に設備がない場合や、防水に影響がある場合もありますので、購入が前提でない限り難しい場合もあると思いますが、特に中古の腕時計で失敗をしたくないのであれば、ムーブメントのチェックはしておいてもよいのではないでしょうか。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。