Scenes Around Me[74]小川てつオくんのこと[8]てつオくんと谷根千・イベント「引っ越してはみたものの」(2003年12月)
── 関根正幸 ──

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てつオくんは居候中ずっと私の部屋にいたわけではなく、谷根千(谷中・根津・千駄木)界隈のイベントを見に行ったり、知人宅にあいさつしに行くこともありました。

今回は、記憶に残っているいくつかのことについて書くことにします。





1997年10月のことだと思います。せっかく千駄木に来たのだからということで、当時、作曲家の野村誠さんが住んでいた古いアパートに、てつオくんと一緒にお邪魔したことがあります。あとで知ったのですが、そのアパートは画家の会田誠さんも住んでいた久保荘でした。久保荘は現存せず、今はワンルームのアパートに建て替わっています。
http://ours-magazine.jp/culture/recommend-4/


久保荘で野村さんは、てつオくんに自作曲の演奏会のVTRを渡しました。そのVTRを岡画郎定例会で見た記憶があります。自作曲はガムランのため曲で、途中で大勢の小学生が舞台の袖からワーと言いながら飛び出して、演奏に加わるというようなものだったと思います。

一年くらい前、winds cafe というイベントで野村さんにあいさつしたことがありました。そのとき、てつオくんと久保荘に行ったことを話したのですが、野村さんはそのことは覚えておらず、代わりに私が岡画郎「受験」展の企画で数学の授業をしたことを覚えていました。



2000年10月のことだと思います。てつオくんが、つまらないものを見せられた、と夜10時頃に戻ってきたことがありました。てつオくんは映像作家の大木裕之さんの上映会があると知り、日暮里の諏方神社に行ったそうです。しかし、映像は流れず、いろいろな人が舞台の上に出て何かやっていたそうで、やっている内容がてつオくんには面白くなかったようです。

今回、この原稿を書くにあたり、てつオくんが何を見に行ったのか調べたのですが、アートリンク上野ー谷中の関連イベント『谷中の恋』でした。
http://www.dnp.co.jp/artscape/view/review/0211/murata_hara6.html


記事は2002年のものですが、『谷中の恋』ver.3になっていることから、同じような試みを何年か続けたのかもしれません。

私自身も当時は大木さんの作品を見たことがなかったので、大木さんがそういう作風の作家だと長い間思っていました。2、3年前に見に行った大木さんの個展会場で、諏方神社の話を関係者? にしたところ、大木さんは上映予定の作品が間に合わず、代わりに即興劇のようなものをおこなったという話を聞きました。



前回書いたように、現在、てつオくんと代々木公園でテント生活をしているいちむらみさこさんですが、以前は千駄木の古いマンションに住んでいました。

2003年の居候中、てつオくんといちむらさん宅に何度か遊びに行ったことがあります。当時、ミュージシャン・詩人のTASKEくんがいちむらさんの展示を気に入って、自分がいちむらさんのプロデュースをする、と公言していました。

いちむらさん宅に遊びに行ったとき、TASKEくんがメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」のCDをかけていたことを覚えています。てつオくんは、TASKEがいちむらさんのプロデュースをしているというより、いちむらさんがTASKEの保護者をしているみたいだ、と話していました。



やはり、2003年の居候中のことですが、てつオくんが近所で兄恭平くんの知人(女性)に出くわしたそうです。女性の名前を失念したので、とりあえずEさんと書くことにします。

てつオくんはEさん宅に遊びに行くことになったそうですが、どうやらてつオくんはEさんが苦手らしく、一緒に行ってくれないかと頼まれました。てつオくんはEさんと2人きりになることを心配していたようですが、取り越し苦労だったようで、Eさんも女性を2人呼んでいました。

その2人が田坂博子さんと廣川沙羅さんでした。2003年5月におこなった「ぼくんち現代音楽」というイベントに、いちむらさん、田坂さん、廣川さんが参加したことは前回書いた通りです。

その後、田坂さんと廣川さんは、シェアしていた谷中へび道の近くの一軒家で「引っ越してはみたものの」というイベントを開催しました(2003年12月)。イベント名は、おそらく、小津安二郎の映画のタイトルをもじったのだと思います。家の中に作品を展示したほか、てつオくん、いちむらさん、TASKEくんなどがトークやライブを行いました。
https://live.staticflickr.com/65535/50004453826_622732b1ac_c

谷中在住のフランス人マンガ家の作品
https://live.staticflickr.com/65535/50003933203_a3e7773766_c

てつオくん
https://live.staticflickr.com/65535/50004453006_9c9e042a42_c

いちむらさん
東京都写真美術館にデートで三田村美土里さんの展示を見に行った、という話だったと思います。
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TASKEくん
https://live.staticflickr.com/65535/50003933753_c73754fff6_c

この日、2525稼業というユニットの初ライブが行われました。
https://nikkoniko.exblog.jp


2525稼業は誕生日が同じ平山亜佐子さん、廣川沙羅さんのユニットで、主に戦前日本のポップスをギターの高橋裕さんがアレンジした曲を歌っています。本当は、このイベントで私もあることについて、話をするように打診がありました。ところが、打診を受けた気になったまま返事をせずにいたところ、話は立ち消えになっていました。

あることというのは、次の通りです。田坂さんは当時、ジョンケージやネオダダ、フルクサス関連のアーカイブの仕事をしていました。ある時、田坂さんを通じて、ロバート・ラウシェンバーグのコラージュ作品に使われた東京の空中写真が、どこを撮影したのか教えてほしい、という問い合わせがありました。

私はその写真が新宿付近を写したものであることを伝えました。また、新宿駅西口付近に写っているものの状況から、撮影時期を1964年冬と特定しました。そこで、イベントでは、このことについて話してほしいと頼まれました。

私はその写真がグラフ誌に掲載されたものではないかと考え、国会図書館で当時の朝日グラフなどを片っ端から閲覧しました。ところが、これといった情報を得ることが出来なかったので、打診を受けていたとしても、大した話は出来なかったのでは、と思っています。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://sekinema.com/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔