腕時計百科事典[99]腕時計の真贋を見定める:上級編
── 吉田貴之 ──

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腕時計の真贋を見定める方法の上級編として、「見分けるのが難しい偽物」について紹介していきます。

腕時計百科辞典では「意図的に既存の商品を模倣してつくり、既存の商品と誤解させて購入させることを目論んで製造/販売しているもの」を偽物の定義としていますが、上級編で紹介するのは分かっていながら偽物を買おうとする人に向けたものや、組織的に制作して模倣したブランドの経営を脅かすものなどがあります。





◎スーパーコピー

いわゆる「スーパーコピー」と呼ばれる偽物は、ただデザインや雰囲気を真似た偽物とは違い、一見するとほぼ本物にみえる精巧なコピー品です。スーパーコピーの多くはアジアで製作されていますが、以前は日本でも同様の行為が行われていた、というような話も耳にしたことがあります。スーパーコピーは情報や技術の更新頻度が高く、時間を重ねるごとにその精度を高めていく傾向にあります。

◎部品の一部が差し替えられている

このようなスーパーコピー品には、まるごとスーパーコピーである場合から、部品の一部が差し替えられている場合まで、色々なパターンがあります。例えば、購入者が確認するポイントがあらかじめ分かっている場合には、その個所だけ本物を使い、それ以外はスーパーコピー品である、といった工夫で売り切ろうとしてきます。

◎付属品が揃っている

中級編で紹介した、付属品についてもしっかり揃っているケースも多いです。本物を購入したユーザーから付属品を買取り、スーパーコピー品と組み合わせる手法です。オークションやフリマアプリなど、CtoCの販売サイトで流通している付属品の使い道の一つです。

これを防ぐためにも、付属品が不要なのであれば、フリマアプリで少額を回収するようなケチくさい真似はやめて、正規代理店で処分してもらうなどの対応が期待されます。

◎刻印があまい

スーパーコピーとなると、刻印くらいはしっかりとおさえてきますので、刻印のみで判断するのが難しくなります。とはいえ、ブレスレットのフラッシュフィットやコマ、ムーブメントのネジなどに刻まれる極小の刻印は、再現するのが難しいらしく、刻印が潰れていたり、文字サイズや文字間がおかしかったりするので、判断の基準にする場合もあります。

◎仕上げがあまい

スーパーコピーを判断することができる一番の方法は、極論すると「仕上げ」をみることかもしれません。本物は、たとえ同じ素材であっても、複数の表面加工を施すことで質感を高めています。

最先端の加工技術によって醸し出されるユニークな雰囲気は、長く高級腕時計を制作してきたブランドのみが出すことができます。特に、ムーブメントの仕上げは大変面倒なので、ここが真贋判断の要点となり得ます。この「仕上げ」から真贋を見分けるためには、「本物」をどれだけ見るかが勝負となります。

◎偽物は買ってはいけない

偽物に対抗するために、ブランド側も対策を施しますが、その開発や管理に必要な費用はすべて正規品を購入するユーザーの負担となります。その結果、高くて買えない高級腕時計が、さらに高額になってしまうのです。

現代の腕時計は、その機能や目的から考えると、適正価格から外れてしまっているようにも感じます。良いものを適正な価格で流通させるためにも、腕時計に限らず、偽物を買ったり売ったりするのはやめましょう。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。