ネタを訪ねて三万歩[185]「推測力」を強化しよう
── 海津ヨシノリ ──

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●道具に振り回されない自分磨き

大学で講師をするようになって、気付いたことがあります。まっ、これは誰にもあてはまることなので、特別、今の学生は〜という意味ではありません。

その気付いたこととは「推測力」です。ITの世界で説明すると、たとえば自分が最初にある程度マスターしたソフトがあったとします。新しく使い始めたソフトの使い方は、メニューの位置や意味などから推測するはずです。

「多分このあたりだろう」と。これがとっても大切な事なのです。「そんなの当たり前でしょ」と突っ込まれそうですが、まったく推測しない人は意外と多いのですね。

世の中の道具や事例に、まったく同じは存在しません。推測できるか否かが、マスターあるいは理解の近道なのです。ここまで説明したのだから、わかるでしょ? というシーンに出くわしたことがありませんか。




とはいうものの、「わからない人にとってはすべてが疑問符」と言い返されそうですが、言い方を換えれば、言われた範囲の中だけで結論を出す受け身よりは、言われた範囲に推測を働かせて攻撃的に結論を絞り出して欲しい? かな。

便利さは必要ですが、過度に便利すぎると人間はオバカになりますね。そこそこ不自由な環境が一番ではないかといつも感じています。

少し脱線しますが、前々回に紹介したVisual Studio Code(VS Code)のオプションで、文章校正ができる「テキスト校正くん」では、格助詞、接続助詞だけでなく、読点などの繰り返しのチェックや漢字多用への注意などを、いろいろ突っ込んでくれるので、文章を書くことが今までよりも楽になっています。

言い回しの重複や変更などは、かなり改善できるようになりました。つまり、期せずして、推理力をいつもより強く働かせられるようになったわけです。自分の文章の癖も解るようになりました。まだまだ凡ミスは多いのですが、長い目で見てください。

直しませんけど、実はこの連載のタイトル「ネタを訪ねて三万歩」も「ネタを訪ねて3万歩」にしなさいと指導されました(^o^)。

話を戻すと、つまりは道具に振り回されない自分磨きといったところかも。どんどん便利で安くなるソフトウェアは、ドラえもんのポケットのようですが、それに頼りすぎると、結局は最新環境がないと何もできない人になってしまいます。それ、かなりイタイ人かもね。

学生にWordで地図を作らせると、シンプルな2つの図形をグループ化すればできる形状なのに、「そんな図形はありません」とリアクションが返って来ます。いやいや、少し考えてよ。組合せの話もしたでしょ……と切り返すのですが、受け身過ぎるとこんな流れになっちゃいますね。

●やはり構図とトリミングはとても大切

ある教育機関で写真の授業を担当しているのですが、いきなり「どんなカメラを買った方がいいですか?」と質問を受けます。

そんなときは、質問者が現在スマートフォンで撮影している写真を見せてもらいます。そして、その写真が一定のレベルを超えていたら、購入は勧めません。そして横位置での撮影を推奨します。

逆にイマイチのレベルであったら、まずスマートフォンで、今撮影したい被写体をどうトリミングするのかを、しばらく試行錯誤することを勧めます。

つまり、どちらにしても取り敢えずスマートフォンを勧めます。それでも、どうしてもカメラが欲しいという学生には、中古のミラーレス一眼を推奨します。

フイルムカメラと異なり、デジタルカメラは息が短いですからね。レンズも中古のマニュアルレンズ(24〜35mmなどが安くて明るい)を勧めます。デジタルの標準ズームは、F値が暗すぎて勉強になりません。

そして、このスタート出費であれば、万が一自分に向いていないと悟ったときの「授業料」が少なくて済みます。

どうして24〜35mmかというと、安いミラーレス一眼だとAPS-Cなら焦点距離は1.5倍(メーカー毎に若干異なるので1.5で話を進めます)で、36mm〜52.5mm相当になるからです。

マイクロフォーサーズなら2倍の28mm〜70mm。F値も1.4~2.8ぐらいの明るいレンズが手に入るはずです。この環境で基本をマスターしつつ、ジックリと作品を溜め込むことが一番大切だと思います。

露出計も最近はスマートフォン用に色々なものが出ているので、積極的に活用するといいです。カメラの露出計は反射光測光なので、極端に色味が偏っていたり、逆光だと正しい露出を得られないからです。

スマートフォン用ならば、カメラ設定を自撮りにするだけで入射光測光が可能です。あと、絞り優先で撮影すると勉強になると思います。マニュアルレンズも、絞り優先ならどんなに古くても使えますからね。

Light Meter - Free(Android)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.willblaschko.android.lightmeterv2.free&hl=ja


Lghtmtr(iOS)
https://apps.apple.com/jp/app/lghtmtr/id956251190


とにかく、写真にはこだわりたいと思います。べつにカメラマンを目指しなさいと言っているワケではありません。

私が学生の頃はデザインを学ぶ上で、一眼レフはマクロレンズと共に必須でした。原稿の複写という第一目的があったからです。それに加え、モノクロ写真で構図とトリミングを学ぶ、という目的がありました。

この構図とトリミングはとても大切です。フレームは決まっています。その中にどう収めるかが、とても勉強になります。

私は今でも指定される場合を除き、どんな状況下でも写真は横位置で撮影します。それがたとえ東京タワーであっても。実は、そんな縛りを設けることは、写真に限らず、色々なシーンで感覚が培われます。

しかし、突然、OLYMPUSがカメラ部門(一般消費者向け製品すべて)を手放すというニュースは、大きなショックですね。

フイルムの時代は、父の愛用していた露出計連動式レンズシャッターカメラ・オリンパスオートから写真に目覚め、XA、OM-1、OM-4。そして初のデジタルカメラはCAMEDIA C-800L、続けてC-4040ZOOM。

そして、PEN Lite E-PL1s、PEN Lite E-PL2と愛用していたので、残念な気持ちでいっぱいです。もちろん、新しい会社から引き続き販売され続けるとは思いますが、会社が変わるのでOLYMPUSの名称はなくなるかもですね。

時代は激変していますね〜。学生に「写真は何で撮る?」というアンケートをしたことがあります、98%がスマートフォンでした。当然の結果ですけれど。


■えこひいきミュージックと映画

"The Aggression Scale" on Directed by Steven C. Miller in 2012(USA)
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邦題「キッズ・リベンジ」。直訳だと「攻撃の尺度」かな。内容的には復讐劇(ここのところ、こういうのばかり)なのですが、過激版「ホームアローン」といった方がいいかもしれません。

主演のライアンハートウィッグ演じるオーウェンは、劇中で一切セリフを言わないので、とても不気味でインパクトがあります。ちなみに普段の彼は、イケメンの好青年です。

85分という短い作品ですが、ムダがなくテンポもいいですね〜。ラストもいいです。

キッズ・リベンジ(日本語吹替版)(予告編)


The Aggression Scale Official Trailer #1


"The Rain, The Park and Other Things" by The Cowsills 1967(U.S.A)
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邦題「雨に消えた初恋」。グループ名のThe Cowsillsって、昔から意味が分からずモンモンと。"cows ills"とすると「牛の悪さ」「牛の不調」なのですが、深く考えても仕方がないですね。

色々カバーされていたようですが、肝心のオリジナルメンバーは家族構成かつ双子がいたので、後になって存在を知って調べて見ると、見間違うことが多かったように記憶しています。

ちなみに50代あるいは60代前半ぐらいで亡くなる方が多く、現在は4名が存命中で、ときどき活動しているようです。

The Cowsills - The Rain, The Park and Other Things


The Cowsills - The Rain, The Park and Other Things (Live)



【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/お菓子研究家

初対面で、瞬間的に「あっ、この人ダメだ〜」を強く感じる人が、ときどきいます。うまく説明できないのですが、拝金系あるいは打算系かな。

とにかく、相手の社会的な立ち位置で態度を変える人ですね。直ぐ解っちゃうんです。まっ、しかしさすがというか、そういった方達って人脈作るの凄く得意ですね。メリットのある人を見付けるのがうまいからでしょう。

見ていてビックリするほど気持悪いです。私はそういったことが苦手なので、ある意味尊敬してしまいますが、個人的には距離を取ります。その打算的なイヤラシイ眼差しは、見たくないですから。

それはそうと、これまで月に一度の出番が、編集の都合で二度になるそうです。7月は三度になります。これは緊急出動です。多分これからも、こういうケー
スがありそうです。よろしくお願いします。

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