腕時計百科事典[100]腕時計の発送方法
── 吉田貴之 ──

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1990年代以前は、腕時計を通信販売で購入することはほとんどありませんでした。1990年代後半になって、インターネットが普及し始めると、腕時計を生業にしている業者だけでなく、一般ユーザーも腕時計を宅配便を使ってやりとりするようになりました。





◎腕時計を配送する際の問題点

腕時計は精密機械です。しかも、個人が配送する可能性がある多くの腕時計が中古、またはヴィンテージやアンティークであることが多く、配送には細心の注意が必要となります。これを忘れて他の荷物と同じように梱包すると、故障や破損のトラブルに繋がります。

◎衝撃に備える

一番気をつけるべきことは「衝撃」です。これが理由で、「郵便」での配送は絶対に避けなければいけません。郵便物は、投函時から配達時までの間、投げられたり、落としたりされているからです。

一方、宅配便ではどうかというと、こちらもその道中で何らかの衝撃が与えられていると思ってよいでしょう。投げられていたり、意図せず落としてしまう場合も考えられます。つまり、腕時計を配送する場合は、衝撃があるものとして、それに備えなければいけません。

◎耐衝撃の方法

配送の際の耐衝撃方法といえば、いわゆる「プチプチ」とよばれる緩衝材の使用だと思います。他にもスポンジや発泡スチロールのような、発泡性の緩衝材なども使われます。

気をつけなければいけないのは、梱包時は問題がないようにみえる梱包資材でも、一度でも配送を経るとその体積が減少してしまう、ということです。緩衝材を箱いっぱいに詰めたつもりでも、到着時には隙間だらけになっていた、というのでは緩衝材の意味がありません。

特に、紙やでんぷんを使ったエコ仕様の梱包資材は注意が必要です。新聞紙やコピー用紙を、くしゃくしゃにして詰め込んだものも同様です。

◎水漏れに備える

次に、水漏れについても対策を施しておきましょう。昨今、強い雨が長く続くことがありますが、そんなときも配送業者は休むことなく荷物を届けてくれます。少なからず、荷物が濡れることは想定しておかなければいけません。また、湿気も腕時計の大敵です。できれば、密封性の高い袋などで腕時計を覆うことをおすすめします。

◎明示する

精密機械であること、水濡れ厳禁であることなどの対策をすることは必要ですが、実際に配送してくれる配送業者にもこの旨を知らせておいたほうが良いでしょう。配送時に指定したり、シールによる表示をすることが必要です。次項の補償をうけるためにも、このあたりの手続きはしっかりとしておきましょう。

◎補償を利用する

しっかりと梱包して、配送したにもかかわらず、腕時計が壊れてしまうこともあるでしょう。そんな時、配送業者に補償してもらえることがあります。補償金額の上限があったり、箱の変形が前提であったり、修理自体は自分でしなければいけないなど、難しいハードルはいくつかありますが、知っておいて損はないと思います。

◎みんなが幸せに腕時計をやり取りするために

最後に、長く腕時計を扱っている筆者の経験の中では、配送時のトラブルはほとんどありません。これは、上記の準備をきちんとしていることでトラブルの芽を摘んでいることが一番の理由です。

梱包や手続きに手を抜いてトラブルとなれば、送る自分だけでなく、受け取る人も、配送業者も困ってしまうという、不幸の連鎖が起こります。これを防ぐためにも、梱包や配送は十分注意して行いましょう。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。