腕時計百科事典[101]腕時計の未来
── 吉田貴之 ──

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2020年に世界を覆ったコロナ禍を経て、新しい生活様式が求められることになりました。不要不急の外出を控える、外出の際にはマスクをつける、こまめな手洗いやうがい、テレワークの推進などです。新しい生活様式の中では、腕時計の登場機会が極端に減っています。





◎腕時計の登場シーン

せっかく買った腕時計を、外につけていくことができずに悔しい思いをしている人もいるでしょう。腕時計は外出する際に、時刻を確認するための道具であり、同時に、自分を飾るアクセサリーでもありました。外出を控えなくてはならない状況では、腕時計を着ける機会を作るのが大変です。

◎実際の売買状況

利用する場面が減るのに伴い、腕時計の取引高も減少しています。ヨーロッパの腕時計の輸出は、前年比で45%減になっているとも報じられました。買うための外出が減っているから、とか、取引量の多い香港の市場が動いていないから、とかの前に、やはり身につけて外出することが少なくなっており、そもそも購入しようとする人が少なくなっているのではないでしょうか。

◎スマートウォッチの状況

一方で、スマートウォッチの売上は好調です。ジョギングやヨガなど、個人でできる運動の際に身につけたり、普段の生活の中で身につけることで活動量を計測したりしているのでしょう。スマートウォッチが、腕の一等地を腕時計から「完全に」奪った形です。

◎腕時計の未来:二極化が進む

それでは今後、腕時計はなくなってしまうのでしょうか。おそらく、市場は縮小しながらも、残っていくとは思います。ただし、新たに製造される時計は二極化していくと予想します。ひとつは、ボーナスをあてにして買うような高級品。もうひとつは、手軽に購入でき、使い捨て感覚でガンガン使える低価格品です。

◎腕時計の未来:未使用品が重要に

また、過去に販売された腕時計の価値が、急にゼロになってしまうようなこともないでしょう。そのかわり、需要の減少に伴って、徐々に低下していくことは容易に想像できます。一方で、「資産」としての腕時計は残っていくように思いますので、高級品に属する腕時計で、その中でも未使用品の価値は維持されていく、あるいは上がっていくと思います。

◎腕時計の未来:スマートウォッチとの融合

これまで、高級品は機械式時計と相場が決まっていましたが、高級腕時計、ブランド腕時計にも、スマートウォッチの機能が組み込まれていく方向で進んでいくでしょう。高級な機械式腕時計と、高機能なスマートウォッチとが、どのような形で融合していくのか楽しみです。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。