crossroads[94]人はなぜデジタルを恐れるのか
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。

このところ、朝晩すっかり涼しくなりました。今朝は半袖で外にでると寒いと思うぐらいに。

私は、奈良の田舎町に住んでいるのですが、自宅は田んぼと水路に囲まれていて、鳥、虫、亀、蛇、魚(奈良は海がないので水路にいます)を普通に見ることができます。

初夏にはカエルの大合唱だったのが、夏にはセミになり、今はまたカエルに戻って、そこにスズムシとコオロギが加わっています。

このように季節ごとの変化を感じられる環境に住んでいるから、ステイホーム期間もストレスを感じにくかったのかもしれません。

大阪や京都にも1時間ぐらいで出られますし、普段は静かな環境で仕事もできます。これからはリモートワーク中心になりそうだなぁという方、ぜひ奈良にお越しください。





■デジタルは難しいという誤解

さて、前回の配信で新しい電子工作の本の発売をお知らせしました。

エレクトロニクスラボ - ものの仕組みがわかる18の電子工作
https://www.amazon.co.jp/dp/4873119243/


この本の翻訳を進める中で、日頃考えていることにひとつの整理がついたので、そのことについて触れてみたいと思います。

私は職業柄、コンピュータやITには詳しいこともあり、PCやスマートフォン、webサービスの使い方について相談を受けることがよくあります。

そんな時に決まって聞こえてくるのが、「私はアナログ人間なので、デジタル機器はダメなんです」というセリフ。どうも、世の中には「デジタル=難しい」「アナログ=簡単」というイメージが浸透しているようですが、それは大きな誤解です。

今年から始まる小学校でのプログラミング教育必修化の流れもあって、世間的にはプログラミング教育ブーム。世の大人たちが、子どもたちにプログラミングをやらせたいと考える要因のひとつに、この「デジタルは難しい」のイメージがあるのではないかと思います。

私は、長い間電機メーカーで、特定の機器専用のソフトウェアを開発する仕事をしていました。その経験でいえば、デジタルよりもアナログの方が圧倒的に難しいです。デジタルの世界はYes・Noがはっきりしているけれど、アナログはそれを自分で決めなければならない難しさがあるのです。

たとえば、ラジオのチューニング。今では周波数がデジタルの数字で表されているものがほとんどで、聴きたい曲の周波数の数字に合わせればきれいな音が流れてきます。

しかし、昔のラジオはアナログだったので、ダイアルを回してきれいに聴こえるところを自分で探さなければなりませんでした。50代以上の人なら、ダイアルをいったりきたりさせる経験をしているでしょう。

今のラジオが使いやすくなっているように、アナログの難しいところをデジタルで包むことによって、誰もが使いやすい機器が生まれています。

使う人にとっては便利ですが、作る人にとってはとても大変な仕事。そういう意味では「デジタルは難しい」かもしれませんが、多くの利用者にとってはデジタルによって簡単になる面もあるのです。

■変化の速さと新しいことへの抵抗

では、なぜ「デジタルは難しい」と言われるのでしょう?

それは、デジタルの世界の変化の速さと、新しいことを覚えることのめんどくささが原因だと考えられます。今までと違うやり方、使い方を覚えなければいけないのに、それに加えて変化が早いので、覚えたころ、慣れたころには変わってしまう。

それはデジタルであってもアナログであっても同じなのですが、デジタルの世界では起こりやすい。だから「デジタルは苦手」となるようです。

私はたいていの機器やアプリを使うことに抵抗はありませんし、新しい操作や使い方を覚えたり理解することに抵抗はないのですが、唯一苦手なことがあります。それは「スマートフォンゲーム」です。

スマートフォンではあまりゲームはしないのですが、話題になっているものは試してみようとするものの、最近のスマートフォン用ゲームは複雑難解。最初に実際のゲームの流れに沿って教えてくれる、チュートリアルを理解するのが苦痛で苦痛で……。

いわれるがままに操作はしてみたのの、自分が何をしているのか理解できていないので、チュートリアルが終わって頃に残っているのは疲弊感のみ。多くの場合、チュートリアルが終わる前に削除してしまっています。

こんな時に「あぁ、デジタルが苦手だという人が感じているのはこういうことなんだな」と気づかされました。使いたいというモチベーションと、そこにいたるまでのハードルの高さのバランスが悪い。

このようなことが起こらないようにしなければ、デジタル化に対する世の中の理解は得られないのだなと。

デジタル化の世界をリードしていく人たちは、使う人のモチベーションを高める努力をしなければならないとあらためて思います。

■これからの社会は変化の連続

しかし、残念なお知らせがあります。これからの社会は変化の連続です。これに追いついていく努力もしなければなりません。

ここ数か月を見ても多くの変化がありましたが、これらは特別な事象のせいではなく、起こるべくして起こったものばかり。これからも多くの変化が怒涛のごとく押し寄せてきます。デジタルごときに屈している場合ではないのです。

デジタル化をリードしていく方々の努力はもちろんですが、それを使っていく私たちも、日々アップデートしていかなければならないのです。


【若林健一 / kwaka1208】
https://crssrds.jp/aboutus/

10月10日発売「エレクトロニクスラボ - ものの仕組みがわかる18の電子工作」
https://www.amazon.co.jp/dp/4873119243/